昨日公開の映画「この道」、早速、拝見して参りました。
昨年末に小学館さんから刊行された大石直紀氏著『この道』、ほぼその通りのストーリーで(映画のノベライズと謳っていますので当然ですが)、北原白秋と山田耕筰を軸に、物語が進んでいきます。
前半は、隣家の人妻にして、後に白秋の妻となる俊子ともども姦通罪で逮捕されたり、入水自殺を企てるも結局は勇気が無く思いとどまったりといった、ダメ人間・白秋(笑)が描かれます。白秋役は大森南朋さん。
やがて白秋は、EXILEのAKIRAさん演じる山田耕筰とタッグを組み(最初の出会いは乱闘に発展)、関東大震災で力を落とす人々を、白秋の詩と山田の音楽を融合させた童謡で力づけていく、という展開。
その後、日中戦争勃発後は、否応なしに戦時体制に組み込まれてゆく二人……。幼い頃に白秋の家によく遊びに来ていた男の子がが立派な青年となり、兵士として出征してゆくシーンには、じーんと来ました。そして、やがて来るであろう、自由に歌が作れる時代を夢見ながら、白秋は先立ち、残された山田が白秋の分までその思いを背負って生きていく、というストーリーです。
『明星』の与謝野寛・晶子夫妻や、光太郎、萩原朔太郎、石川啄木、鈴木三重吉なども登場します。光太郎のそれには触れられませんでしたが、晶子に関しては、やはり大政翼賛の方向に行かざるを得なかった苦悩が描かれていました。
関連するテレビ番組が、明日、放映されます。昨年5月に初回放映があったものの再放送ですが。
昭和偉人伝 「山田耕筰・北原白秋」
BS朝日 2019年1月13日(日) 11時00分~11時55分国家壊滅の状態から未曾有の成長を遂げた時代・昭和。そこには、時代を先導したリーダーがいた。そんな偉人たちを、独自取材と真実のインタビュー、さらには貴重な映像を交じえてつづる、波乱万丈の偉人伝。
2018年で童謡が生まれて100年。番組では、今も愛される童謡の名曲を数多く生んだ、詩人・北原白秋と作曲家・山田耕筰の足跡をたどり、日本人の心に残る原風景を探る!
「からたちの花」「この道」など、今も愛される童謡の名曲を生んだ、詩人・北原白秋と作曲家・山田耕筰。今回は偉大な芸術家2人の足跡を童謡を中心にたどり、日本人の心に残る原風景を探る。白秋と耕筰は、日本語が持つ美しさを生かした音楽を作り、子どもはもちろん、大人たちにも豊かな心を育んでほしいと願っていた。1918年に鈴木三重吉が「赤い鳥」を創刊し、童謡が生まれて100年以上。詩を読み、旋律にじっと耳を傾ければ、無心で遊んだ幼い頃の気持ちがよみがえるだろう。誰もが持つ“日本心の情景"を探る。
語り 國村隼
白秋、山田、それぞれの人物像のアウトラインが紹介され……
映画「この道」の映像も。
山田耕筰を演じたAKIRAさんや、歌手の秋川雅史さんがゲスト出演。
ぜひご覧下さい。
【折々のことば・光太郎】
人間の首ほど微妙なものはない。よく見てゐるとまるで深淵にのぞんでゐる様な気がする。其人をまる出しにしてゐるとも思はれるし、又秘密のかたまりの様にも見える。さうして結局其人の極印だなと思はせられる。
散文「人の首」より 昭和2年(1927) 光太郎45歳
性格やその時々の精神状態など、顔に表れる情報は隠そうにも隠しきれないということなのでしょう。ある意味、恐ろしいことです。