あどけない話
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ、
阿多多羅山の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ、
阿多多羅山の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
詩集『智恵子抄』にも収められ、あまりに有名な光太郎詩の一つ、「あどけない話」です。
東日本大震災に伴う原発事故以来、福島の復興へのキーワードとして、この詩に繰り返されている「ほんとの空」の語が広く使われています。
英訳すれば「true sky」、カタカナで書けば「トゥルースカイ」……という名前の競走馬がいます。以前にもこのブログでご紹介しました。馬名は父の「ディープスカイ」と、「詩集「智恵子抄」に出てくるフレーズより」ということで登録されています。
当方、競馬はよく知らないのですが、以前にご紹介した後、名前が名前だけに、気になって戦績をチェックし続けていました。その間、中央競馬から地方競馬に移り、昨年11月、12月頃に立て続けに2着が続き、初勝利間近かと思っていましたが、その後ふるわず、やきもきしていました。
すると、一昨日、浦和競馬場で行われた第10レース「幸手のマスコット「さっちゃん」賞C1六」で、みごと1着でゴールイン! 2着ハルノメザメ(これもすごい名前ですが……)に頭の差だったそうです。18戦目にして、初の1着でした。ちなみに賞金は120万円だそうです。
今後もさらにがんばってほしいものです。
ところで「競馬」というと、山本コウタローさんの往年の名曲「走れコウタロー」をリアルタイムで知っているのは一定以上の年代ですね。ちなみに昭和35年(1960)生まれの競走馬で「コウタロー」という競走馬が実在しました。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 3月26日
昭和26年(1951)の今日、花巻郊外太田村の山口小学校の卒業式に出席、来賓挨拶をしました。
以下、当時の校長・浅沼政規の筆録です。
もう春です。きょうはみなさんのめでたい修業式、卒業式だというので、小屋からでてきました。シジュウカラが喜んで鳴いていました。卒業のみなさんをお祝いしているようにきこえました。ほんとうにきょうはよい天気です。みなさんも晴れやかです。年寄りもうれしくて、お祝いを申しあげます。
みなさんはよく勉強して、修業、卒業されたことをお喜びいたします。三カ年も休まない人もあるといいますが、それはずいぶん体の丈夫な人でしょう。体を丈夫にすることは大切なことです。僕も小さいときは弱かったんです。当時は外国から入ってきた体操がありました。
大切なことは努力することです。なるほどこれは大切です。努力なくてはなにもできませんからね。それから正直であることですね。嘘をついても、結局わかるし、またひとつ嘘をいうと、次々と嘘が積まれていきます。世の中は嘘によって暗くなり、正直によって明るくなります。
アメリカの初代大統領のワシントンは、幼いとき、父が大切にしていたサクラの木を切ってしまいました。あとで正直に父に謝りました。正直な心の持ち主であったので、大統領という栄えある仕事もできたと思います。
それから争いをしないことも大切です。そんな人はきっとよい世の中を作る人だと思います。
みなさん、きょうはほんとうにうれしそうですね。僕もうれしさでいっぱいです。おめでとうございます。
こちらは別の日ですが、山口小学校の児童を前に話をする光太郎です。