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来る10月5日(金)は、智恵子の命日「レモンの日」です。昭和13年(1938)に亡くなった智恵子、今年で歿後80周年となります。

そういう関係もあり、今月は智恵子の故郷・福島二本松で、智恵子関連のイベント等が目白押しです。

10/4(木)~9(火)     坂本富江展「智恵子抄」に魅せられてそして~今~パートⅡ
           智恵子の生家
10/7(日)         第24回レモン忌  ラポートあだち
10/8(月・祝)       高村智恵子没後80周年記念事業 智恵子検定 市民交流センター
10/11(木)~11/27(火)  智恵子紙絵実物展示  智恵子記念館
10/13(土)~11/25(日)  福島ビエンナーレ重陽の芸術祭 福井利佐展  智恵子の生家
    〃       智恵子生家二階特別公開  智恵子の生家
10/14(日)        第2回ほんとの空マルシェinあだたら    岳温泉

何回かに分けて詳しくご紹介します。  

坂本富江展 「智恵子抄」に魅せられて そして~今~ パートⅡ

期   日 : 2018年10月4日(木)~9日(火)
会   場 : 智恵子生家 福島県二本松市油井字漆原町36
時   間 : 9:00~16:30
料   金 : 智恵子生家/智恵子記念館入館料として大人410円 高校生以下200円

智恵子の足跡をたどりながら、坂本さんが各地で描いてきた風景画等を展示します。

≪坂本富江プロフィール≫
山梨県生まれ。太平洋美術会会員であり、高村光太郎研究会会員でもある。現在は、山梨県韮崎市のふるさと大使を務めている。

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なぜ「パートⅡ」なのか? と思いましたが、今年4月に新宿のヒルトピアアートスクエアさんで開催された坂本さんの個展が「パートⅠ」だったということのようです。

筋金入りの智恵子ファンのお一人、坂本さんとしては、智恵子生家で個展が開催できるというのは望外の喜びでしょう。


続いて、その会期中に行われる、智恵子を偲ぶ集い「レモン忌」。  

第24回レモン忌

期   日 : 2018年10月7日(日)
会   場 : ラポートあだち 福島県二本松市油井字濡石16
時   間 : 10:00~14:00
料   金 : 3,000円

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以前の様子はこちら。


毎年、記念講演があり、当方も仰せつかったことがありますが、今年は坂本さんです。当方もスライドショーの投影でご協力させていただきます。

ご興味のある方、上記連絡先まで。


【折々のことば・光太郎】

人は随分気むつかしくなつてゐる時でも、その気むつかしさをてんで問題にしない、ひろびろとした野原のやうな魂に接すると又思ひかへして、一寸心の転轍の出来る事があるものだ。「小公子」はいつの間にかあのやかまし屋のおぢいさんを軟化させた。

散文「所感――詩人廣瀬操吉観――」より 昭和3年(1928) 光太郎46歳

「小公子」は、アメリカのバーネット夫人が明治19年(1886)に書いた児童文学。明治24年(1891)には若松賤子の訳で日本でも刊行され、昭和2年(1927)には岩波文庫のラインナップに入っていますが、光太郎、こうしたものも読んでいたのですね。

詩人・廣瀬操吉の作品には、そういう魂があると褒めています。

特に智恵子の関連で、新聞雑誌各紙誌にいろいろ出ていますので、ご紹介します。

まずは9月20日(木)、『朝日新聞』さんの北海道版。「歌壇」という欄で、読者の方々からの投稿短歌欄です。

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函館の作山宗邦さんという方の作。

妻持ちし文学全集抜きだして智恵子抄読む新盆の朝

「持ちし」と過去形ですから、「新盆」は奥様のそれだったのでしょう。「智恵子抄」をご生前に好まれていたのでしょうか。切ない歌ですが、厨(くりや)で智恵子の遺した梅酒を見つけた光太郎のような、リアル「智恵子抄」短歌ですね。


続いて、『しんぶん赤旗』さん。9月23日(日)の日曜版で、「智恵子の生家と「ほんとの空」」ということで、智恵子の故郷、二本松の紹介が載りました。

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智恵子生家・記念館を大きく扱って下さいました。同紙では、今年6月にも智恵子がらみで安達太良山を取り上げて下さっています。


それから、日本古書通信社さん発行の雑誌『日本古書通信』9月号。巻末に全国の古書店さんの在庫目録的なページがついていますが、その中で、神田の八木書店さんのページに、光太郎の書簡が。

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出版社文一路社の社主、森下文一郎に宛てたもので、筑摩書房の『高村光太郎全集』に漏れているものです。智恵子が亡くなる前年の昭和12年(1937)のものと推定され、智恵子にも触れています。

拝復 先日はおてがみ忝く拝見しました、一寸いそぎの事がありました為め御返事失礼しました、
今年の暑は殊にからだにこたへ毎日閉口して居ります、やむを得ず仕事はして居りますがはかどりません、
あなたの方はお変りなく御健勝で居られますか、 おてがみによれば何か御用との事ですが、若しお急ぎの事でなければ秋涼の頃まで待つて頂ければありがたく存じます、この暑さで半病人の有様で居ますので殆と人にも会はずに暮して居ます、全く夏ばかりは一切をすてたく思ひます、 智恵子がまだ悪かつたりしますので尚更小生は腐つて居ます、早く秋風高く吹いてくれればいいとそれのみ望んで居る次第です、
御見舞の御礼かたがた御返事まで    艸々
   七月十五日
       高村光太郎
  森下文一郎様
  二伸 若しお急ぎの事でしたらおてがみでおきかせ下されば早速御返事いたします、

何げなく書かれた一言が、やはり切なく感じられます。


最後に、智恵子は絡みませんが、『月刊絵手紙』さん10月号。花巻高村光太郎記念館さんのご協力で、昨年の6月号から「生(いのち)を削って生(いのち)を肥やす 高村光太郎のことば」という連載が為されています。

今号は、昭和29年(1954)に書かれた「書をみるたのしさ」の一節が取り上げられています。

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併せて紹介しておきます。


さらに、雑誌というわけではありませんが、智恵子の故郷・二本松市の広報紙『広報にほんまつ』さんで、今月の様々なイベント等が紹介されています。そちらは明日。


【折々のことば・光太郎】

私はかかる意味のフランスに感謝してゐる。「感謝」といふ詩にも書いた通り其は黙つてゐても物のわかるといふ、あの人間精神文化の最尖端を鷹揚に持つところの一種の気質である。

散文「熱情と理解の人――川路柳虹の印象――」より
 昭和2年(1927) 光太郎45歳

「美」や「芸術」が人々の生活に深く根付き、無意識に文化的な生活を送っているフランス国民への讃仰です。光太郎の朋友だった詩人・川路柳虹もそうした気質を備えていたと言っています。

福島大学うつくしまふくしま未来支援センターさんの主催で、光太郎詩「あどけない話」中の「ほんとの空」を冠した東日本大震災からの復興支援シンポジウムです。これまでに京都東京愛知いわき新潟南相馬、そして仙台でそれぞれ開催されてきました。 

ほんとの空が戻る日まで~被災地が進めるこれからの教育~

日  時  : 平成30年9月25日(火)13:00~16:00
場  所  : コラッセふくしま 4階多目的ホール(福島市三河南町1番20号)
参加対象  : 一般市民、教育関係者、行政職員、大学関係者、団体職員 他
参加定員  : 100名程度
参  加  費  : 無料
主  催  : 国立大学法人福島大学うつくしまふくしま未来支援センター
共  催  : 福島県教育委員会

うつくしまふくしま未来支援センターは、福島県教育委員会との共催により、9月25日に福島市にてシンポジウムを開催いたします。
本シンポジウムでは、東日本大震災で甚大な被害を受けた県内の被災地で行われている新しい教育についてご紹介し、今後の教育・人材育成について参加者と共に考え、復興に活かすことを目的としています。
詳細は下記および別紙チラシをご覧ください。皆様からのご参加をお待ちしております。

[基調講演]13:15〜14:00
ふくしまイノベーション・コースト構想を通じた人材育成について
「福島への思いを育む教育を目指して」 
(一財)福島イノベーション・コースト構想推進機構 コーポレート部門教育・人材育成部人材育成支援課長 飯田喜之 氏

[パネルディスカッション]14:15〜16:00
「被災地が進めるこれからの教育」
 ファシリテーター 三浦浩喜(福島大学理事・副学長)
 コメンテーター 飯田喜之(基調講演講師)
 パネリスト 岩崎秀一氏・丹野純一氏・天野和彦氏・谷信孝氏

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単発で終わらず、継続して取り組まれているのがすばらしいと思います。ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

ホヰツトマンは「詩」が如何にして純粋に人間生活の処女地から全く新鮮に、全く独立に形成され得るかを示した詩人であつて、詩の因習と既成概念との奴隷であつた世人に理解されなかつたのも無理はない。彼は徹頭徹尾詩人である。詞句の錬金家としてのみの文化末期の詩人でなくて、詩人は予言者だといふ意味に於ける新興文化の先駆者としての詩人である。

散文「ウオルト ホヰツトマン」より 昭和4年(1929) 光太郎47歳

光太郎の考える、詩人としての一つの理想形が語られています。大正3年(1914)、美辞麗句ばかりの文語定型詩全盛の時代に、詩集『道程』で口語自由詩を確立させた光太郎も、当初は「詩の因習と既成概念との奴隷であつた世人に理解されなかつた」といえましょう。

昨日、智恵子の故郷・福島二本松に聳える安達太良山系のラジオ・テレビ番組をご紹介しましたが、今日は新聞記事から。

まず、福岡に本社を置く『西日本新聞』さん。8月21日(火)のコラムです。 

「普通の酒」が頂く栄冠 論説委員 長谷川 彰

 安達太良山。「あだたらやま」と読み、福島県二本松市の西にそびえる火山だ。阿多多羅山の漢字を当て、詩人高村光太郎の「智恵子抄」にも登場する。東京には空がないという妻の智恵子が、遠くを見ながら、この山の上に毎日出ている青い空が「智恵子のほんとの空だといふ」とつづられた一節を、ご存じの方も多いと思う。
 二本松市内には、造り酒屋だった智恵子の生家跡が残っているが、程近くに奥の松酒造という蔵元がある。創業300年の歴史を誇り、安達太良山の伏流水を使って醸す地酒の数々は、九州にもファンが少なくない。蔵の営業マン、津島健さん(49)が全国を駆け巡り、その魅力をアピールしていることも大きい。
 その津島さんが苦笑いしながら言うのだ。「四合瓶(720ミリリットル)千円の普通の酒が世界一になっちゃって」
 ロンドンで7月に開かれた世界最大級のワイン品評会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の日本酒部門で、出品した「あだたら吟醸」が最優秀賞に輝いたからだ。9部門の各最高賞から唯一選ばれる「チャンピオン・サケ」の栄冠だ。
 5年前に、福岡県八女市の喜多屋の「大吟醸 極醸 喜多屋」が選ばれて話題を呼んだのを、ご記憶かと思う。
 面白いのは、この「あだたら吟醸」、20年ほど前からの定番商品とか。「主に贈答用だった吟醸酒を、気軽に晩酌で楽しんでもらいたい」と生み出した酒だという。
 お値打ち価格にするため酒米でなく飯米を使い、醸造用アルコールも用いつつ、杜氏(とうじ)の技術で風味と品質を磨き上げたそうだ。大吟醸や純米酒が並み居る中での栄誉に、「社長も私もびっくりで、うれしいやら申し訳ないやら」と謙遜する津島さんだが、手応えを感じている様子だ。
 IWCでは当初、最高の素材と技術を極めたような酒が高く評価されていたが、日本酒が世界で広く飲まれるようになり、審査の目が多様性を帯びてきているらしい。
 日本酒は安物、悪酔いするといったイメージが広まり、地方の酒蔵が次々に行き詰まった時期も「お客に愛飲される酒造りに徹してきた」(津島さん)。そんな取り組みへの評価にもつながるとしたら、今回の栄誉は意義深い。
 津島さんと一緒に味わった受賞酒は、流れる水のようにすっきりとし、程よい甘さと香りが鯛(たい)のカルパッチョと合った。「限定酒とかじゃなかったので、受賞特需にも応じられそうです」。消費税込みで1本1080円の世界一の酒。心意気にも酔いしれた。
=2018/08/21付 西日本新聞朝刊=


奥の松さんの件、調べてみましたところ、先月の福島の地方紙で報道されていましたが、今回の『西日本新聞』さんのように、光太郎智恵子にからめた記事ではなかったので、気づきませんでした。 

奥の松吟醸酒世界一 品評会「IWC」日本酒部門

 世界最大級のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2018」の最終審査結果が十日(日本時間十一日)、英国・ロンドンで発表され、日本酒部門の最優秀賞「チャンピオン・サケ」に奥の松酒造(二本松市)の吟醸酒「奥の松 あだたら吟醸」が輝いた。福島県内蔵元の世界一は二〇一五(平成二十七)年のほまれ酒造(喜多方市)に次いで二度目。
  全国新酒鑑評会の金賞受賞銘柄数で六年連続日本一を誇る県産酒の品質の高さを世界に改めて示す受賞となった。
  ロンドンで行われた授賞式で奥の松酒造の遊佐丈治社長(55)が表彰を受けた。「三百年を超す奥の松の歴史の中で最も素晴らしい賞を受け、うれしく思う。福島には(東京電力福島第一原発事故の)風評の影響が残っており、自信につながる」と喜びを語った。「奥の松 あだたら吟醸」(七百二十ミリリットル、税込み千八十円)はフルーティーな香りと膨らみのある味、バランスの良さなどが高く評価された。
  日本酒部門には日本国外を含む四百五十六社が計千六百三十九銘柄を出品。出品社・銘柄数はともに過去最多だった。
  五月に山形市で日本酒部門の審査会が開かれ、純米酒や吟醸酒など九部門別に最高賞に当たる「トロフィー」受賞酒を選出。県内蔵元は吟醸酒の部でトロフィーを得た「奥の松 あだたら吟醸」と、純米酒の部でトロフィーに選ばれた名倉山酒造(会津若松市)の「純米酒 月弓」が最終審査に臨んだ。「チャンピオン・サケ」は九部門でトロフィーを獲得した九銘柄の中から選考した。

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震災からの復興に、はずみをつける快挙ですね。同じ蔵元どうし、泉下の智恵子やその家族も喜んでいることでしょう。


もう1件、福島県内各地で昨年から行われている体験型イベント、「ふくしま ほんとの空プログラム」関連で。 

安達太良山で心育む 二本松「ほんとの空プログラム」

 豊かな自然環境で子どもの好奇心001や探究心を育む活動「ふくしま ほんとの空プログラム」の安達太良山トレッキングは十九日、福島県二本松市の安達太良山で開かれた。
  県内外から四十人とプログラムサポーターのタレント長沢裕さん(伊達市出身)が参加した。安達太良マウンテンガイドネットワークのガイドで、夏の登山を楽しんだ。一行はロープウエーで八合目の山頂駅に移動し、薬師岳を通り山頂を目指した。登山道ではさまざまな木々や草花、青い空と雄大な安達太良連峰の景色を楽しんだ。山頂では猪苗代湖や磐梯山を望みながら、おにぎりやお弁当を食べた。
  田村市の本田匠君(10)は「初めての登山だったけど、みんなで頂上を目指して楽しかった」と達成感に浸っていた。
  プログラムは福島民報社の主催、オーデン、花王、常磐興産、大王製紙、テーブルマーク、日本シビックコンサルタント、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会の協賛。


同プログラム、今後、鮫川村での宿泊体験、西会津町での探検プログラム、来年2月には郡山での「雪まみれキャンプ」などが計画されています。


「ほんとの空」を合い言葉に、福島がどんどん元気になっていって欲しいものです。


【折々のことば・光太郎】

詩は如何なる生活の片隅にもなければならぬ。決して謂ふところの詩らしい章句の中にのみあるのではない。粗雑であつてはならないが、詩がわれわれの日常生活の中から直接に出て来るのも亦たのしい事である。

散文「雑誌『新女苑』応募詩選評」より 昭和14年(1939) 光太郎57歳

たしかに何げない日常生活の中に「詩」を見つけ続けた光太郎らしい言です。

ラジオ番組とテレビ番組の情報です。 

サマースペシャル「まだまだ夏は終わらない!篠原ともえの安達太良山ガール計画」

TOKYO FM 2018年8月24日(金)00120:00~20:55

篠原ともえが福島県の安達太良山を旅する特別番組 東京FMサマースペシャル「まだまだ夏は終わらない!篠原ともえの安達太良山ガール計画」がオンエアされます!

安達太良山周辺の渓谷や温泉に癒やされ、 福島の美味しい食材を使ったBBQを堪能♪ぜひ山ガールな篠原さんと大地の恵みを感じる旅をお楽しみください☆

出演 篠原ともえ 他

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FM放送なので聴取可能地域が限定されますが、とりあえず。また、当方、ほとんど使ったことがありませんが、ラジコなどのサイト、スマホアプリを使えばインターネットでも聴けるはずです。


もう1件、こちらはテレビのBS放送。

プレミアムカフェ選 名作紀行(1)寺山修司(2)石川啄木(3)高村光太郎

NHKBSプレミアム 2018年8月29日(水)  9時00分~10時23分 
再放送        2018年8月29日(水) 24:45~26:08(=30日(木) 0:45~2:08)

(1) 名作をポケットに 寺山修司   田園に死す 
旅人:萩原朔美  語り:本和之 (初回放送:2002年)
(2) 名作をポケットに 石川啄木   一握の砂
旅人:谷啓  語り:久保田茂 (初回放送:2002年)
(3) 名作をポケットに 高村光太郎 智恵子抄
旅人:山本容子  語り:山本和之 (初回放送:2001年)

スタジオゲスト 澤口たまみ   スタジオキャスター 渡邊あゆみ

今年3月にも、全く同じ内容の放送がありました。過去のNHKさんの番組から、再放送の要望が高かったものをセレクトして再放送するものです。

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「シリーズ東北を旅する」ということで、寺山修司、石川啄木、そしてわれらが光太郎。3本まとめての放映です。

光太郎編のナビゲーターは、版画家の山本容子さん。

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智恵子の故郷・二本松(初回放映当時は安達町)を訪れ、光太郎智恵子に思いを馳せます。

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なかなか見応えがありました。スタジオでのトークを含め、光太郎編で30分ほどです。

ぜひご覧下さい。

ちなみに8月25日(土) 12:00~13:30 には、「新・BS日本のうた選 神奈川県座間市」の再放送があります。森昌子さんによる「智恵子抄」が流れます。


【折々のことば・光太郎】

詩はいかなる時にも純粋でなければならぬ。濁りにも純不純があるのである。純粋といふ事は感じ方にも、表現の技術にも、又知性のはたらきにもある。純粋のものは人の心を捉へる。それは詩の中核を成す。高低深浅の差があつても、しかも其は一様に耳を傾けしめる。

散文「雑誌『新女苑』応募詩選評」より 昭和14年(1939) 光太郎57歳

なるほど、確かに光太郎詩の「純粋さ」に、当方は心惹かれます。

智恵子の故郷、福島二本松からイベント情報です。 
時   間 : 午後6時から
場   所 : 二本松市市民交流センター1階多目的室 福島県二本松市本町二丁目3番地1
料   金 : 無料
講   師 : 安藤享平氏(郡山市ふれあい科学館 天文担当 学芸員)

日本天文学会が毎年主催している「全国同時七夕講演会」の一環で開催いたします。旧暦の七夕をむかえた後ですが、七夕の伝統的行事の話などもお話していただきます。実際に星空を見上げる観望会も実施いたしますのでほんとの空のもとで、星に親しんでみませんか?

現在参加者募集中です。申し込み用紙などは交流センターにお問い合わせください。また、当日参加も受付予定ですので、お越しください。

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「ほんとの空」の語を持ち出されると紹介しないわけに行きません(笑)。

智恵子も見上げた同じ空の元での星空観察と講話。ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

もともと発声によつて生れた詩が、その発声を野蛮視するやうな矛盾が起るに至つて近代の神経は病的徴候を明らかに示した。昔、民の声であつた詩が、いはゆる高度な詩ほど一般世人の心と何の関係も持たない、小さな詩人仲間だけの鑑賞物となつた。

散文「朗読詩について」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

現代の「詩人」諸氏、危機感を抱いてほしいものです。

福島から今週末のイベント情報を2件。

まずは、智恵子の故郷・二本松に聳える安達太良山中腹の岳温泉から。 

第1回“ほんとの空”マルシェinあだたら

期 日 : 2018年8月4日(土) 荒天時中止
会 場 : 湯の森公園 福島県二本松市岳温泉1-97 
時 間 : 10時~17時

高村智恵子が語った“ほんとの空”のある岳温泉で“ほんとの空”の色を感じませんか?

和紙小物体験、井上窯 萬古焼絵付け体験、ドローン体験、 スラックライン、ボルダリング体験など盛りだくさんのイベントです。

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直接光太郎智恵子に関わるイベントではないようなのですが、「ほんとの空」の語を使われてしまっては、紹介しないわけに行きません(笑)。


その翌日には、福島市で下記が開催されます。 

中嶋朋子朗読会

期 日 : 2018年8月5日(日)
時 間 : 14時~
料 金 : 無料

脚本家・倉本聰さんの代表作「北の国から」で主人公の娘・黒板蛍役を演じた女優・中嶋朋子さんが福島県ゆかりの名作をその優しさとしなやかさで読みあげます。ゲストには福島県出身の詩人・和合亮一さんを迎え、中嶋さんの穏やかさと和合さんの激しさがコラボレーションされた朗読会をお届けします。

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同じ会場で開催中の展覧会「森のささやきが聞こえますか―倉本聰の仕事と点描画展」の関連行事的なイベントです。

地元紙『福島民友』さんの記事から。

女優・中嶋朋子さん無料朗読会 福島で8月5日、倉本聰さん企画展同時開催

 名作ドラマ「北の国から」の蛍役で多くの人の心をつかんだ女優中嶋朋子さんを招いて福島民友新聞社が8月5日に開く「中嶋朋子朗読会」の詳細プログラムが決まった。
 とうほう・みんなの文化センター(福島市)で好評開催中の展覧会「森のささやきが聞こえますか―倉本聰の仕事と点描画展」と同時開催で、朗読会は無料。
 中嶋さんは蛍を22年間にわたって演じ表現力に磨きをかけた一方、朗読やナレーションにも意欲的に取り組んできた。今回の公演では、まず、本県ゆかりの名作として高村光太郎作「智恵子抄」、草野心平作「蛙の歌」を、優しくしなやかに読み上げる。
 また倉本さんが富岡町をテーマに描いた点描画「夜の森 桜はそっと呟(つぶや)く」に添えた詩を、ゲストの詩人和合亮一さん(福島市)と2人で朗読。和合さんも自作「詩の礫(つぶて)」などを披露、中嶋さんのトークショーにも出演する。
 開場は午後1時、開演は同2時。問い合わせは福島民友新聞社事業部(電話024・523・1334)へ。
◆日時 8月5日午後2時から(開場・午後1時)
◆場所 とうほう・みんなの文化センター(県文化センター)福島市春日町、電話(024・534・9191)
◆入場無料、全席自由
◆プログラム ▽1部:中嶋朋子さん朗読(高村光太郎作「智恵子抄」、草野心平作「蛙の歌」) ▽2部:和合亮一さん朗読(「詩の礫」、「木にたずねよ」) ▽3部:中嶋朋子さん、和合亮一さんの共演(倉本聰作「夜の森 桜はそっと呟く」) ▽4部:中嶋朋子さんトークショー(ゲスト・和合亮一さん)
◇主催 福島民友新聞社
◇大清プロダクション創立30周年記念事業


中嶋さんといえば、平成24年(2012)、TBSラジオの「ラジオシアター~文学の扉」という番組で、やはり「智恵子抄」の朗読をされ、それがある意味、伝説の朗読的な扱いで今も語りぐさになっています。


今回はさらに当会の祖・草野心平の作品も取り上げて下さるということですし、かくれ光太郎ファン(笑)の和合亮一さんもご登場。それでいて無料というのですから、太っ腹です。おそらく満員盛況となるのでは、と推測いたしております。

というわけで、ほっといても人が集まりそうですが、ぜひ足をお運びください、と記しておきます(笑)。


【折々のことば・光太郎】

演芸物にも注意がいる。いくら一般大衆の需要に応ずる仕事ではあつても、あまりひどいめちやくちやな言葉をしやべり散らす演芸者は避忌すべきである。巷間で勝手に演ずるのは自由だが、放送局で其を取り上げる時には相応の思慮がいる。

ラジオ放送「日本語の新らしい美を」より 昭和7年(1932) 光太郎50歳

光太郎がJOAK(現・NHKラジオ第一)に出演し、ラジオ番組や日本語全般について語った談話の一節です。今日のテレビのバラエティーなどにもあてはまる発言ですね。

「あまりひどいめちやくちやな言葉をしやべり散らす」政治家ばかりのこの国ではありますが……。

テレビ放映情報を2件。

まずは香川県に本社を置くRNC西日本テレビさんで、今日のオンエアです。 

人権啓発映画「ほんとの空」

RNC西日本テレビ 2018年8月1日(水) 10:25 ~ 11:05 (40分) 

高齢者や外国人に対する排除、不利益な扱い、同和問題や原発事故に伴う風評被害の問題、これらに共通する根っこの部分は、誤った考え方や思い込み、偏見という「意識」である。誰もが他者の排除や差別がよくないことは理解している。その一方で、自分や身近な人に関わる出来事には敏感に反応するが、それ以外のことは他人事のように感じたりする。

また、自分や家族の生活を守るため、あるいは誤解や偏見に気づかず、他者を排除したり傷つけたりしがちである。誤解や偏見に気づき人と深く向き合うこと、他者の気持ちを我がこととして思うこと。すべての人権課題を自分に関わることとしてとらえ、日常の行動につなげていくようにと訴える。

白石美帆、鳥羽潤、湯浅美和子、浦上晟周、  石川大樹


元々は平成24年(2012)、兵庫県人権啓発協会さんの制作によるビデオで、制作から数年間は各地のイベントで上映されたり、今回のようにテレビの地方局さんで放映されたりしていました。当方の把握している限り、2年ぶりくらい、久々のテレビ放映です。


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東日本大震災に伴う福島第一原発の事故にからめ、福島からの避難者に対するいわれなき風評差別をメインテーマとしています。「ほんとの空」の題名の通り、光太郎詩「あどけない話」が劇中で使われています。

香川県、それから岡山県でも視聴可能のようです。当該地域の方、ぜひご覧下さい。


続いてNHKさんの全国放映。 

民謡魂 ふるさとの唄「福島県二本松市」

NHK総合 2018年8月4日(土) 15時05分~15時50分002

福島県二本松市での公開収録。詩集「智恵子抄」で有名な高村光太郎と二本松出身の妻・智恵子との知られざる青春時代の恋愛模様を音楽劇で紹介。タレントの福田彩乃が智恵子を熱演!さらに、東日本大震災で被害を受けた浪江町の伝統芸能と浪江町出身の原田直之による共演や、「会津磐梯山」「原釜大漁祝い唄」など民謡どころ福島県の名曲の数々を、藤みち子、小野田浩二、進藤聖子、會澤あゆみの唄でたっぷりとお届けする。

司会 城島茂 塩屋紀克   出演 福田彩乃,渡辺裕太,大方斐紗子,原田直之,藤みち子,小野田浩二,進藤聖子,會澤あゆみ,二代目 藤本ひで丈,藤本秀統,椿正範,菊地河山,美鵬那る駒,美鵬成る駒ほか


先月8日に、二本松市民会館で公開収録が行われました。その情報は得ていましたが、「智恵子抄」がらみの内容もあったとは存ぜず、驚きました。

下記は今日発行の『広報にほんまつ』さんから。

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こちらもぜひご覧下さい。

明日も福島・二本松がらみの情報をお伝えします。


【折々のことば・光太郎】

童謡は子供の為だけのものでは決してない。大人こそ常に童謡の大きな需要者だ。
散文「童謡・民謡・小唄」より 昭和7年(1932) 光太郎50歳

同じ趣旨の事柄は、近年よく巷間に言われていることですが、こうした発言を昭和初めの段階でしていたというのは、かなり新しい見方だったのではないかと思われます。

この文章、永らく初出発表紙が不明でしたが、この年2月の雑誌『新日本民謡』第2巻2号に掲載を確認しました。その名は明記されていませんが、雑誌の刊行に関与していた朋友・北原白秋へのオマージュも兼ねたものです。

毎年恒例、当会の祖・草野心平を顕彰する行事です。今年公開されたドキュメンタリー映画「一陽来復 Life Goes On」の舞台の一つとなった、福島県川内村での開催です。

第53回天山祭

期 日 : 2018年7月14日(土)
場 所 : 天山文庫前庭  福島県双葉郡川内村大字上川内字早渡513
         雨天時は村民体育センター 川内村大字上川内字小山平15
時 間 : 11:30~14:00
参加費 : 500円

今年で53回目を迎える、川内村の三大祭りの一つ「天山祭り」が7月に開催されます。このお祭りは名誉村民である草野心平先生の発案により、天山文庫の落成を記念して始められました。今では、草野心平先生を偲ぶお祭りでもあります。

人と人が出会い、土地のものを食べ、皆で飲み、親睦を深め、川内村の歴史ある文化の伝承とともに楽しんで頂けるお祭りです。
賑いとは少し違う、天山文庫前庭でのしっぽりとした雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。

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会場の天山文庫は、モリアオガエル生息地として有名な川内村が、蛙を愛した心平を名誉村民に選定して下り、その縁で心平が蔵書3,000冊を村に寄贈、昭和41年(1966)、それを収めるために、村人が一木一草を持ち寄り、ボランティアで建設したものです。建設委員には、光太郎の実弟で鋳金の人間国宝となり、光太郎顕彰のため心平と親しかった高村豊周も名を連ねていました。

祭りはその天山文庫の前庭、木漏れ日の中で行われます。

福島川内村・天山祭り。(平成25年=2013)

心平詩の朗読、郷土芸能の披露など、手作り感あふれるイベントです。

当日は郡山との往復、翌朝に郡山へ片道の、無料シャトルバスが出ます(要予約・川内村教育委員会生涯学習係 0240-38-3806)。

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残念ながら当方、岩手花巻の方に行っておりますので欠礼いたします。代わりにぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

巨匠が巨匠について語る言葉ほどわれわれ製作する者にとつて魅力と教訓とに満ちてゐるものはない。わけて前者が後者の単なる盲目的後継者でなく、後者より出でて、しかも後者の為し及ばなかつた領域にその芸術の特質を確立したほどの巨匠である場合、この魅力と教訓とは更に進んで無限の啓示となるのである。

散文「関義訳ブルデル「ロダン」序」より 昭和18年(1953) 光太郎61歳

ここでいう「前者」の巨匠はエミール・アントワーヌ・ブールデル。「後者」の巨匠はロダンです。ロダンより21歳年下のブールデルは、一時期、ロダンの助手を務め、昭和12年(1937)、ロダン評伝「LA SCULPTURE ET RODIN」を著しました。仏文学者・関義(せきただし)によるその日本語訳に寄せた序文の書き出しです。

ブールデルとロダンの関係、「単なる盲目的後継者でなく、後者より出でて、しかも後者の為し及ばなかつた領域にその芸術の特質を確立」云々、心平と光太郎の関係にも当てはまるような気がします。

昨日は、隣町の成田市立図書館さんに行っておりました。目当ては福島関連の報道。自宅兼事務所や、自宅兼事務所のある香取市の図書館さんでは入手できない新聞記事をゲットしてまいりました。

まず、6月10日の日曜日に、南相馬市で開催された「第69回全国植樹祭ふくしま2018 育てよう希望の森をいのちの森を」の報道。成田市立図書館さんでは、地方紙『福島民報』さんと『福島民友』さんが閲覧できます。おそらく東日本大震災に伴う福島第一原発の事故で、成田近辺に避難してきている方がいらっしゃるということへの配慮でしょう。

記事そのものはネット上で拝読できたのですが、やはり実際の紙面でどのように扱われているか気になり、閲覧いたしました。すると、想像していた以上に大きな扱いで、驚きました。

地元の高校生たちが演じた「智恵子抄」をモチーフにしたメインアトラクションに関するページのみ、カラーコピーを取って参りました。

『福島民報』さん。見開き2ページぶちぬきで、メインアトラクションはメインだけに大きな文字で見出しが付けられていました。さらに感心したのは、「主役」の二人――光太郎智恵子――以外の樹木や大地の精と思われる大勢の生徒さんの写真も大きく掲載していること。すばらしいですね。

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『福島民友』さんはグランドフィナーレの写真をメインに据え、やはり大勢の生徒さんの姿を捉えていました。

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続いて、別件ですが、『朝日新聞』さんの福島版に載った連載記事「(お湯ぶら)県北編:4 奥岳の湯 二本松市 白い湯の花「当たり湯」」。先週水曜日・13日の掲載です。

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こちらは、館内のパソコンで『朝日新聞』さんの記事データベース「聞蔵Ⅱビジュアル」が利用できるので、それでプリントアウトして拝読しました。平成27年(2015)、安達太良山の登山口にオープンした「奥岳の湯」を紹介する記事ですが、左下の部分で光太郎太郎智恵子に触れて下さっています。「ほんとの空 高村光太郎の詩集『智恵子抄』の「あどけない話」に登場する。「阿多多羅(あたたらやま)山の山の上に毎日出ている青い空が 智恵子のほんとの空だといふ」。


それから、たまたまなのでしょうが、17日の日曜日、『しんぶん赤旗』さんの別刷り日曜版でも、「ほんとの空」という題名で安達太良山を大きく紹介してくださいました。写真家・西田省三氏による連載「山の季」というコーナーで、まるまる1ページ取られています。

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福島県中部に位置する安達太良山1700㍍。詩人で彫刻家の高村光太郎の詩集「智恵子抄」に出てくる智恵子の故郷の山で、「ほんとの空」のフレーズでもよく知られています。」という書き出しで始まっています。

『しんぶん赤旗』さんは、当方の住まう香取市の図書館さんでも閲覧できますが、そちらでは日曜版は外してしまっており、見られません。成田の図書館さんでは一緒に綴じて下さっていて、ラッキーでした。


「安達太良山」、そして「福島」といえば「ほんとの空」、となるよう、もっともっと「ほんとの空」の語が広まってほしいものです。


【折々のことば・光太郎】

美術家にとつて七十歳代は最も豊穣の十年である。

散文「三つの死」より 昭和15年(1940) 光太郎59歳

この年、相次いで亡くなった恩師と知友三人――日本画家・邨田丹陵、元東京美術学校校長・正木直彦、彫刻家・明珍恒夫――の追悼文の一節で、邨田丹陵の項の終末近くに出てきます。

美術家にとつて七十歳代は最も豊穣の十年」。88歳まで生きたミケランジェロを念頭に置いた表現でしょうが、奇しくも光太郎自身、この12年後、数え71歳になって、生涯最後の大作、「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」に取り組むことになります。

昨日まで「第69回全国植樹祭ふくしま2018 育てよう希望の森をいのちの森を」関連の記事を書き続けましたが、もう一日、福島関連で。植樹祭とは別件ですが。

地元紙『福島民友』さんの記事です。 

プライドブルー...『ほんとの空』イメージ 6次化商品用デザイン

 NPO法人ふくしま飛行協会は本年度、「プライドブルー」と称した包装紙デザインを開発する。本県の「ほんとの空」などをイメージしたブルーで、県内の6次化商品のラッピングに用いて県産品の風評払拭(ふっしょく)やブランド力向上を目指す。10月にデザインを発表する。同NPOの斎藤喜章理事長は「県内にはいい商品がたくさんある。パッケージの面でお手伝いしたい」と話している。
 斎藤理事長が8日、福島民友新聞社を訪れ、明らかにした。県のふるさと・きずな維持・再生支援事業の採択を受けた「ジュエリーふくしま」事業の一環として取り組む。
 プライドブルーは包装紙デザインの総称で、商標登録して県民が誰でも使用できるようにする方針。詩人・彫刻家の高村光太郎が二本松市出身の妻智恵子との愛をつづった「智恵子抄」に登場する「ほんとの空」の青が、県民にとって誇りであることなどから名称を決めた。
 同NPOは3日に開いた総会で本年度事業計画を決めた。ジュエリーふくしま事業のほか、市内の小、中学校を上空から撮影し、ふくしまスカイパークの展示場に地図とともに掲示する事業などにも取り組む。また役員改選で、斎藤理事長と猪口春生副理事長、レッドブル・エアレース・チャンピオンシップに参戦している室屋義秀副理事長、大竹隆監事を再任した。任期は2年。
 斎藤理事長は「昨年は室屋選手が大活躍した。航空教室など家族で楽しめる事業も行っていきたい」と語った。甚野源次郎顧問、山本俊平理事補も訪れた。


農林水産業などの第一次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を「6次産業」と呼び、そこで生産されるものを「6次化商品」というようです。先週のこのブログでご紹介した安達東高の生徒が作る蜂蜜「あいさつ坂」や、それを使った新商品「安達ハチミツと有機レモンのドレッシング」などもその一例でしょうか。

その「6次化商品」などの包装紙用のデザインに、「ほんとの空」をイメージした「プライドブルー」だそうで、広まってほしいものですね。

デザインはこれから作成され、10月(奇しくも智恵子忌日・レモンの日も10月です)に発表されるようですが、続報に注意していたいと思います。

ちなみに記事の最後の方にレッドブル・エアレース・チャンピオンシップの室屋義秀選手の名が。室屋選手、選手活動だけでなくNPOの役員も務められていたとは存じませんでした。先月末に行われた今年の千葉大会は、残念ながら途中棄権の扱いになってしまいましたが、捲土重来を期してほしいものです。


【折々のことば・光太郎】

思出は人を古風にする。ああどんなにわかわかしい熱情を以て二十六年前の私達がこれ等の芸術家及び芸術について語り合つたことかと言つてみたい。

散文「二十六年前」より 昭和8年(1933) 光太郎51歳

「私達」は、このところこのコーナーでご紹介している、バーナード・リーチと光太郎です。「これ等の芸術家」は、オーガスタス・ジョン、モネ、ロダン、セザンヌなど。明治末のロンドンで、芸術論を闘わせた若き日々を懐かしんでいます。

昨日が新聞休刊日だった関係でしょうか、一昨日行われた「第69回全国植樹祭ふくしま2018 育てよう希望の森をいのちの森を」の報道が、今日になってネット上にいろいろアップされました。

「智恵子抄」をモチーフにしたメインアトラクションに関し、さすがに地元紙は詳しく取り上げて下さいました。

まず『福島民友』さん。 

創作ミュージカル...福島の『今』表現 高校生が未来への希望を

 全国植樹祭記念式典のメインアトラクションでは、県内高校の演劇部やダンス部の生徒らが創作ミュージカルを披露した。「智恵子抄」で知られる二本松市出身の洋画家・紙絵作家の高村智恵子と、夫で詩人・彫刻家の高村光太郎をモチーフに大会テーマや県民が希望を持って未来へ進む姿を表現した。
 光太郎役を福島東高3年の安藤優希さん(18)、智恵子役を福島東稜高3年の平舘果菜絵さん(18)が務め、天皇、皇后両陛下の前で本県の復興と「今」を体いっぱいに伝えた。安藤さんは「震災で経験したことを演劇で精いっぱい表現することができた」、平舘さんは「震災から再起し、笑顔であふれる県民の姿を伝えることができた」とやりきった様子で話した。
 両陛下は高校生の熱の入ったミュージカルを、寄り添うような姿で鑑賞され、笑顔で拍手を送った。

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続いて『福島民報』さん。 

息吹空に届け 高校生感動呼ぶ劇 全国植樹祭

 南相馬市原町区で10日に開かれた第69回全国植樹祭は、県内の民俗芸能、復興を象徴するアトラクションが繰り広げられ、全国各地から訪れた来場者を魅了した。若者を中心とした県民が演劇や演奏を繰り広げ、復興に向かって力強く進む県民の姿を表現した。

 メインアトラクションでは県内の高校10校の演劇やダンスなどの部員約130人が音楽劇「あどけない話のその向こう」を披露した。「ほんとの空が見えた」。上演後、出演者からは飛びっ切りの笑顔がはじけた。
 詩「智恵子抄(ちえこしょう)」で知られる高村光太郎・智恵子夫妻と東日本大震災、東京電力福島第一原発事故からの復興を描いた作品。8分間の劇中に震災直後の放射能への県民の不安や困惑も織り込んだ。困難な中でも原発事故から「ほんとの空」を取り戻そうとする姿を描いた。
 智恵子を演じた福島東稜高3年の平舘果菜絵さん(18)=伊達市=は「重圧はあったが笑顔を心掛けた。両陛下がご覧になる中、練習成果を全部出し切ることができた」と手応えを語った。光太郎役で福島東高3年の安藤優希さん(18)=福島市=は「気持ちを込めて表現できた」と充実した表情だった。演出や指導を担当した郡山北工高の佐藤茂紀教諭(54)は「生徒の思いが伝わってきた。感動した」とねぎらった。

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全国紙でも大きく取り上げて下さればよかったのですが……。

それにしても、皇后陛下はこの後、過労のため38℃のご発熱だったそうですが、翌日には相馬市の原釜地区(こちらも智恵子ゆかりの地です)を訪れられ、雨の中、同地区や隣接する尾浜地区などの犠牲者207人の名が刻まれた慰霊碑に供花されたそうで、ありがたいことです。

これを機に、さらに被災地の復興が加速することを祈念いたしております。また、光太郎智恵子に対する関心が高まることも。


【折々のことば・光太郎】

日本へ来ると多くの西洋人は成長を止めて反芻を始め徘徊を始め説法を始める。リーチはまるであべこべだ。リーチは五月の若い薔薇の芽の様にまつすぐに、気力満ちて伸びた。

散文「リーチを送る」より 大正9年(1920) 光太郎38歳

「リーチ」は、明治40年(1907)、英国留学中に知り合ったバーナード・リーチです。

福島の若者達も、「五月の若い薔薇の芽の様にまつすぐに、気力満ちて伸び」て行ってほしいものです。

昨日は、福島県南相馬市をメイン会場に、天皇皇后両陛下をお迎えし「第69回全国植樹祭ふくしま2018 育てよう希望の森をいのちの森を」が開催されました。

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式典内のメインアトラクションが、県内の高校生達による光太郎と智恵子をモチーフにしたパフォーマンスということで、何とか拝見しようと思い、メイン会場には入れませんので、智恵子の故郷・二本松に隣接する安達太良山麓の大玉村にあるサテライト会場・ふくしま県民の森 フォレストパークあだたらさんに行って参りました。

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LIVE中継が行われる式典は午後からですが、駐車スペースが限られているというので、早めに出て、受け付け開始の10時前に到着しました。

こちらがサテライト会場。大型液晶スクリーン搭載の特殊車両が入っており、これでメイン会場から式典の模様が中継されます。

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着いた頃は大丈夫でしたが、やがて雨。それでも多くの方が集まり、にぎわいました。

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係員の方が10時から受け付け、と言っていたのですが、9時30分過ぎには受付が始まりました。始まっているのに気づかずあやうく先着順にもらえる大玉村産コシヒカリ300㌘をもらいはぐれるところでした(笑)。

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さらに受付では、植樹祭を特集した前日の『福島民友』さんの別刷りを下さいました。

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出演者等の紹介も載っていました。メインアトラクションに出場の高校生諸君。学校ごとに集合写真が掲載されていました。

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光太郎役は福島東高校さんの生徒さん、智恵子役は福島東稜高校さんの生徒さんでした。

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ちなみに両陛下の介添えなどを行う「緑の少年団」の中には、川内村の子供達も。

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午後1時35分から、大型スクリーンで、事前に制作されていたビデオ「プロローグ 心から感謝を込めて」の上映。福島県の紹介などでした。歴史上の福島出身者の紹介の中で、智恵子も取り上げて下さいました。

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2時20分から式典の中継。

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内堀雅雄福島県知事の挨拶、両陛下の記念植樹。

そして、メインアトラクション。

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最初に、全体の梗概的なナレーション。曰く、「智恵子は福島にあるのは「ほんとの空」だと言った。私もそう思う。光太郎は「僕たちの前に道は出来る」と言った。私達もそう思う。何があっても、誰が何て言っても、この大地に立って、この風を感じて、私達は生きていくことを決めたのです。この空が「ほんとうの空」であることを信じて。

あれが阿多多良山/あの光るのが阿武隈川」という「樹下の二人」(大正12年=1923)や、「あどけない話」(昭和3年=1928)の「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ。」という一節が使われ、福島の空の美しさが語られます。

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しかし、不穏な効果音と共に、「2011年3月11日、14寺46分」、「大地は割れて、青空は裂けて」「人の温度の消えた街、彼等のいないふるさとの空」……。

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智恵子曰く「嫌だ、こんなの嫌だ、「ほんとの空」を取り戻したいの!

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すると、倒れ込んだりしていた大地や樹木の精たちが再び起き上がり、歌い出します。「小さな希望の緑、育て、育て、大きな大きな命の木へと。育て、育て、大きく育て、ほんとの空へ」「私達は希望の木の種を植える。命の木の種を植える」。

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原発問題には特別な関心を寄せられてきた両陛下のお心にも、しっかりとこのメッセージは届いたのではないでしょうか。

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原発政策を未だに推進している与党の閣僚や議員も多数出席していましたが、こうした内容の上演を許した関係者の英断に敬意を表します。

昨日は、米朝首脳会談関連や残虐な事件の報道、台風関連の災害情報等もあり、テレビのニュースでは植樹祭がらみは短い扱いで残念でした。しかたがないとは思いますが……。

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メインアトラクションはNNN系さんで遠景が写りましたが、全国ネットではそれ以外は無かったようです。

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しかし、関連報道として、両陛下が帰還困難区域に入られたとのニュースもあり、それはありがたく感じました。

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これからも福島の皆さんが、「この空が「ほんとうの空」であることを信じて」。「何があっても、誰が何て言っても、この大地に立って、この風を感じて」力強く生きていっていただきたいと思いました。


【折々のことば・光太郎】

東洋の芸術に惹きよせられた彼の若い悩みのある心持ちは、さながらの詩である。ほんとに芸術を生命とするかういふ青年もあるといふことを私は紹介したい。

散文「日本の芸術を慕ふ英国青年」より 明治44年(1911) 光太郎29歳

「彼」は、明治40年(1907)、英国留学中に知り合ったバーナード・リーチです。

真摯に生きる青年の悩みや夢は、まさに「さながらの詩」だと、昨日の植樹祭を通して感じました。

今日は、福島県南相馬市で、天皇皇后両陛下をお迎えし、「第69回全国植樹祭ふくしま2018 育てよう希望の森をいのちの森を」が開催されます。メインのアトラクション「あどけない話のその向こう」は、光太郎智恵子をモチーフにした音楽劇。両陛下に直に御覧いただけるとは、望外の喜びです。


先月10日のFNNさん系ニュースから。 

全国植樹祭のリハーサル 6月10日に南相馬市で開催

6月10日に開催される全国植樹祭に向けて、福島・南相馬市でリハーサルが行われた。
13日、南相馬市原町区の会場には、アトラクションの出演者や運営スタッフなど、本番に関わる人が集まった。
福島県で全国植樹祭が開催されるのは、昭和45年(1970年)以来、48年ぶりで、天皇皇后両陛下が式典に出席され、苗木のお手植えをされるほか、東日本大震災の津波の犠牲者を慰霊される。
13日のリハーサルは、本番と同じスケジュールで行われ、ハワイアンズのフラガールによるフラダンスや、高村光太郎と智恵子をモチーフにしたパフォーマンスの流れなどを確認した。
平商業高校フラダンス愛好会・伊藤颯伽さんは、「福島の元気を、ほかの県の人にも伝えられたらいいと思います」と話した。
全国植樹祭は6月10日に、南相馬市原町区で開かれる。

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先月のリハーサルは雨の中だったようで、ハンチングに着物姿の光太郎役の高校生、カッパを着ていますね。ご苦労様です。


一昨日の福島中央テレビさんから。 

本番に向け練習続く 全国植樹祭で披露 高校生がミュージカル

あさって行われる「全国植樹祭」では、県内の高校生が福島の復興と現状を伝えるミュージカルを披露する。
ミュージカルを披露するのは、県内の10の高校から選ばれた生徒、120人。
ミュージカルでは、詩人、高村光太郎の「智恵子抄」の内容を盛り込み、若者たちが復興に向けて進んでいく姿を表現する。
*参加する高校生は
「1人1人が福島のことを考えてもらうことをお客様に伝えられるような劇にしていきたいと思っています」
全国植樹祭では、このほか、郷土芸能をモチーフにしたダンスや和太鼓の演奏などが予定されている。

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両陛下は昨日、福島入りされたとのことで、JNNさん系のニュースから。 

両陛下、「全国植樹祭」出席のため福島県に

 天皇皇后両陛下は、「全国植樹祭」に出席するため福島県に入られました。
 両陛下は正午過ぎ、新幹線でJR郡山駅に到着されました。このあと、いわき市内の復興公営住宅で、原発事故で避難生活を余儀なくされた大熊町などの住民と懇談されます。
 10日は南相馬市で行われる「全国植樹祭」に出席し、津波で大きな被害を受けた沿岸部の海岸防災林となる木を植えられます。また、月曜日には相馬市で慰霊碑に花を供え、津波で亡くなった人たちを追悼されます。
 両陛下が天皇皇后として東日本大震災の東北3県の被災地を訪問されるのは、今回が最後になるとみられています。

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当方、安達太良山麓の大玉村にあるサテライト会場・ふくしま県民の森 フォレストパークあだたらさんで式典の模様のLIVE中継を拝見します。雨が心配ですが……。

帰りましたらレポートいたします。


【折々のことば・光太郎】

自分の前に波うつてゐる恐ろしい戦ひの生活に足をふみ入れようとした時、まだ半分睡つてゐる故郷の、庭に草の生えてゐる様なのどかな天然人事が、どの位身にしみて恋しかつたか知れません。

散文「彫刻家・ガツトソン ボーグラム氏」より
 大正6年(1917) 光太郎35歳

明治39年(1906)、生まれて初めて日本を離れ、まずたどり着いたニューヨークでの感懐の回想です。まだ故郷をあとにしてそれほど経っていないにもかかわらず、すでにホームシックになっていたようです。人間にとって、故郷というものがどれほど大きな存在か、ということですね。

東日本大震災に伴う原発事故で故郷を追われ、いまだ避難生活の皆さんの胸中はいかばかりか、と思います。

昨日に引き続き、智恵子の故郷・福島二本松ネタで攻めます。

まず、地元紙『福島民友』さんに昨日載った記事から。  

道の駅・安達でレモンドレッシング発売 安達東高生の蜂蜜使用

 二本松市振興公社が運営する道の駅「安003達」は5月31日、同市の安達東高の生徒が作る蜂蜜「あいさつ坂」を使った新商品「安達ハチミツと有機レモンのドレッシング」を同道の駅で発売した。
 採れたての蜂蜜や、同市出身の洋画家高村智恵子が死の床でかんだレモンにちなんで国産レモンを利用したオリジナル限定商品で、会津若松市の会津ブランド館で製造する。
 ドレッシングはサラダだけでなく、唐揚げなどの揚げ物にも合うよう工夫した。同道の駅で試食した同校3年の生徒3人は「最初はレモンの酸味が強く、後から蜂蜜の甘みがあっておいしい」と口をそろえた。
 問い合わせは同道の駅の上り線、下り線へ。


こちらのドレッシング、6/2(土)の朝、テレビ朝日さん系で放映されている紀行情報番組「朝だ!生です旅サラダ」で紹介されました。

「ラッシャー板前の生中継」というコーナーで、その名の通り、レポーターはラッシャー板前さん。

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それから、KFB福島放送・山崎聡子アナウンサー。

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ドレッシング、というより、その原料となっている蜂蜜を、県立安達東高校さんの農業コースの生徒さんたちが造作っている、という紹介がメインでした。

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ワイプのスタジオMC・神田正輝さんの表情が何とも言えませんね(笑)。

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その蜂蜜を使って商品化されたもの、ということで、まずは蜂蜜そのもの「あいさつ坂」。

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同校正門前の坂の名にちなむネーミングだそうです。

後半は、道の駅「安達」智恵子の里に入っている二本松ベーカリーさんの方々がご登場、蜂蜜を使った料理をご紹介。

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その中で、レモンドレッシングも紹介されました。

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最後は高校生の皆さんも料理を堪能。

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こうして頑張っている若い人達の姿を見ると、まだまだこの国も捨てたもんじゃないと思えます。

ところで、ラッシャーさん、朝早い生中継のため、前日から二本松入りし、智恵子生家・智恵子記念館にほど近い「かねすい智恵子の湯」さんに宿泊されたそうです。ラッシャーさんのブログで、細かくレポートされています。


併せてお読み下さい。


当方、今週末には二本松に隣接する大玉村に行く予定です。余裕があれば、智恵子が死の床でかんだレモンにちなんで国産レモンを利用したドレッシング、購入して参ります。皆様もぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

その描法の強い明暗とキヤロスキユロとは、遠くフランス十八世紀の伝統を引いてゐながら、又それが近代的息吹に蘇つてゐることを感ぜしめる。

散文「ロダンの素描」より 昭和15年(1940) 光太郎58歳

ロダンのデッサンに関する散文です。「キヤロスキユロ」は「chiaroscuro」、仏語かと思ったら伊語で、明暗のコントラストを表します。

ロダンにしても、敬愛していた光太郎にしても、古くからある技法を一切合切否定するのでなく、そのおいしい部分を咀嚼して自分流にアレンジするということに対しては、貪欲とも言える面を持っていました。

この文章、昭和15年(1940)4月刊行の雑誌『造形芸術』に掲載されました。同誌の表紙に「第八号」とあるため、『高村光太郎全集』の解題では「第二巻第八号」となっていますが、正しくは「第二巻第四号、通巻第八号」の誤りです。当時としては珍しく、原色版の口絵が掲載されています。

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『朝日新聞』さんの別刷土曜版be。「みちのものがたり」という見開き2ページの連載が為されており、毎回、日本全国の様々な「道」と、それにまつわるドラマが紹介されています。今年の1月には、「高村光太郎「道程」 岩手 教科書で覚えた2大詩人」ということで、花巻郊外の光太郎が7年間を暮らした山小屋、高村山荘が紹介されました。

昨日は、福島県二本松市。霞ヶ城(二本松城)の東側にある切り通しの坂、竹田坂と亀谷(かめがい)坂が大きく取り上げられました。

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物語の主役は、幸田露伴。明治20年(1887)、電信技師として働いていた露伴は、文学への志を棄てがたく、赴任していた北海道余市から、職を放棄して帰京します。汽車賃もままならぬ青息吐息の強行軍で、行き倒れになりかけることもしばしば。その途次で思い浮かんだ句「里遠し いざ露と寝ん 草枕」から、「露」を「伴」とする、ということで「露伴」と号するようになったとのことです。

で、二本松。この道中を記録した『突貫紀行』に、次の一節があります。

二本松に至れば、はや夜半ちかくして、市は祭礼のよしにて賑やかなれど、我が心の淋しさ云ふばかりなし。市を出はずるる頃より月明らかに前途ゆくてを照しくるれど、同伴者(つれ)も無くてただ一人、町にて買ひたる餅を食ひながら行く心の中いと悲しく、銭あらば銭あらばと思ひつつやうやう進むに、足の疲れはいよいよ甚しく、時には犬に取り巻かれ人に誰何せられて、辛くも払暁(あけがた)郡山に達しけるが、二本松郡山の間にては幾度か憩けるに、初めは路の傍の草あるところに腰を休めなどせしも、次には路央(みちなか)に蝙蝠傘を投じてその上に腰を休むるやうになり、つひには大の字をなして天を仰ぎつつ地上に身を横たへ、額を照らす月光に浴して、他年のたれ死をする時あらば大抵かかる光景ならんと、悲しき想像なんどを起すやうなりぬ。

この時食べた餅が、竹田坂と亀谷坂の峠にあった茶店、「阿部川屋」の「阿部川餅」。その後、茶店は東北本線の郡山―塩竃間の開通後、坂を通る人の減少に伴い、閉店。10年ほど前に、二本松の街作り団体が「露伴亭」として復活させました。近く(歩くには少し遠いのですが)には智恵子の生家・智恵子記念館もあります。

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と、まあ、『朝日新聞』さんでは、こんな感じの紹介でした。周辺ガイド的に智恵子生家・智恵子記念館も紹介して下さいました。


このブログではもう少し、突っ込みます。

露伴が「阿部川餅」を購入した茶店「阿部川屋」。何と当時の主人が、智恵子の実の祖父なのです。その名を安斎彦兵衛。文化12年(1815)、二本松で生まれました。歿したのは明治37年(1904)、数え90歳の長寿でした。

安斎氏は元は安西氏と号し(幕末に改姓)、室町時代の正平元年(1347)、足利尊氏に従ってこの地にやってきた安西太郎左衛門真行を祖とします。真行は上川崎地区に館を築き、子孫は紆余曲折を経て、寛永年間には完全に町人となりました。元禄10年頃に生まれた16代安西元喜は、京都に歌や神道を学びに行き、その帰途、東海道の安倍川宿で食べた「安倍川餅」に感激、職人を一人譲り受けて帰郷、字を変えて「阿部川餅」の製造販売を始めました。

下って安斎彦兵衛は28代目。正妻との間に子がありませんでしたが、茶店で働いていた武田ノシとの間に、戊辰戦役のさなかの明治元年(1968)、女の子が生まれました。その子がセン、智恵子の実母です。やがてノシは、新潟の田上から流れてきた杜氏の長沼次助と所帯を持ち、センも連れ子として後に長沼姓となります。次助は新潟に妻子を残したまま二本松に居着き、長沼酒造を興して大繁盛。それが智恵子の生家です。

茶店は彦兵衛の養子の子、29代賢太郎の代に石屋に転業、現在も安斎石材店として、茶店のあった場所に続いています。また、竹田坂の麓には、安斎(安西)氏の菩提寺、真行寺があり、一族の墓碑等が残っているようです。このあたりもきちんと訪れようと思いつつ、まだ果たせていません。

明治20年(1887)、智恵子の祖父が幸田露伴に餅を饗し(ちなみに智恵子はその前年、長沼酒造で生を受けています)、下ってその露伴の弟子だった田村俊子は智恵子の親友となり、同じく露伴の弟子で俊子の夫だった田村松魚は光太郎と親しくつきあい、光雲の懐古談を筆録……。

つくづく縁とは不思議なものだと思います。

『朝日新聞』さんの「みちのものがたり」、全文はご紹介できませんが、購読されていない方、朝日さんのサイトで読める他、公立図書館さん等にも置かれているでしょう。ぜひお読み下さい。


【折々のことば・光太郎】

世界の幾多の批評家がロダンを寸断する。私は彼等の殆どすべてに不満である。私は日本人であるが、それ故、フランス人よりもロダンが分からないとは思はない。

書き下ろし書籍『ロダンより 昭和2年(1927) 光太郎45歳

光太郎著の『ロダン』。この年、北原白秋の弟・鉄雄が経営する出版社・アルスから刊行されました。翌年にはペーパーバックの普及版も。

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現在でも格好のロダン評伝です。対象に対する深いリスペクトのなせる業でしょう。

一昨日、昨日に引き続き、「ほんとの空」関連です。

まず福島の地元紙『福島民友』さんの連載記事「ふくしま湯けむり探訪」。 

ふくしま湯けむり探訪 【二本松市・奥岳温泉】 ほんとの空...抱かれて 開放感がいっぱい

 「ほんとの空」の下003、眼前に広がる雄大な自然と四季の移ろいを楽しめる露天風呂が、開放的で気持ちいいと聞いた。日本百名山・安達太良山の中腹にある二本松市岳温泉のさらに奥。曲がりくねった山道を約6キロ進み、たどり着くのが標高約950メートルに位置する奥岳温泉「あだたら山 奥岳の湯」である。
 施設は男女ともに内湯と露天風呂が各一つ。泉質は全国的にも珍しい酸性泉で、筋肉痛や神経痛、疲労回復、皮膚病への効能があるという。源泉は岳温泉と同じ鉄山付近にあり、約4キロの距離を引湯している。露天風呂の正面に囲いがなく、まるで自然と湯船が融合しているようだ。40人ほどが入れるという大きな長方形の湯船につかって深呼吸すると、体がすっと軽くなった気分になる。なるほど評判通りの開放感だ。
 安達太良山の標高は約1700メートルで、福島、二本松、郡山の3市と、大玉村、猪苗代町にまたがる。美しい山体が魅力的で、眺める場所によって山容が変わる。個人的には大玉村方面から眺める広々とした光景が好みだ。二本松市側のゴンドラリフトで薬師岳(標高約1300メートルほど)まで上れるため、初心者でも登りやすい。
 ◆要望に応え再開
 日本最古の和歌集「万葉集」では安達太良山について3首も詠まれ、古代の人々も印象深く捉えていた。詩人・彫刻家の高村光太郎は二本松市出身の妻智恵子との愛をつづった「智恵子抄」で、「あれが阿多多羅山~」(樹下の二人)や「阿多多羅山の山の上に毎日出ている青い空が 智恵子のほんとの空だという」(あどけない話)と触れている。
 主要登山口の奥岳には「あだたら高原スキー場」がある。1929(昭和4)年、岳温泉関係者が冬の誘客策としてスキーに着目し、開発が許可されて営業が始まった。規模拡大やリフト増設などが進んだが、運営会社が経営難に陥り、72年から富士山麓一帯の観光開発を進める「富士急行」(山梨県)に移行、新設された富士急安達太良観光(二本松市)の経営で現在に至る。
 「あだたら山 奥岳の湯」も安達太良観光が経営する。前身は77年から一軒宿として営業してきた「あだたら高原富士急ホテル」。東日本大震災で設備が壊れて廃業したが、同ホテル跡地を活用し、2015(平成27)年に日帰り湯として開業した。鷹取健二社長(51)は「富士急は地元の皆さんと手を携えて歩んできた。美しい四季が楽しめる安達太良山の魅力を広く発信したい」と意気込む。
 入湯客は登山者やスキー客ばかりかと思いきや、温泉目当ての人も多いという。「多くの人に癒やしのひとときを味わってほしい」。安斎誠支配人(53)は大玉村出身で、子どもの頃から安達太良山に親しみ、19歳から安達太良観光で働いてきた。震災後に温泉施設の営業が途絶え、再開を求める多くの声に励まされたという。利用客でにぎわう現在の光景に安斎さんは「やっぱり再開して良かった」と安堵(あんど)する。
 きょう20日は安達太良山の山開き。今年も多くの登山客の疲れを癒やすであろう湯船から「ほんとの空」を眺め、至福の時間に浸った。
 【メモ】あだたら山 奥岳の湯=料金は大人600円、子ども400円。日帰り入浴のみ。時間は午前10時~午後8時(11月中旬~4月中旬は同5時)。年中無休。
(2018/05/20)

平成27年(2015)に、中腹のロープウェー駅付近にオープンした温泉入浴施設、「奥岳の湯」が大きく取り上げられました。当方も一度入湯させていただきましたが、標高1,000㍍弱、開放感あふれるいい湯でした。


もう一件、やはり地元紙『福島民報』さんの一面コラム「あぶくま抄」、一昨日の掲載分です。

あぶくま抄 上昇気流

 米国人飛行家チャールズ・リンドバーグはニューヨークをプロペラ機で飛び立つ。正面に窓はなく、視界が遮られる構造だった。決死の挑戦は33時間余り続いた。初めて大西洋を単独無着陸で越え、パリに降りたのが91年前の5月21日だった。
 福島市在住のエアレースパイロット室屋義秀さんも初めは先行きを見通せなかったかもしれない。練習拠点のふくしまスカイパークは農産物を空輸する目的で誕生した。だが、事業はつまずく。周囲は不思議がった。なぜ負のイメージの強い場所を選ぶのか。「比較的自由に飛べるし、何より良い空だ」。屈託のない笑顔は20年前から変わらない。
 「時速400キロでガレージに駐車するようなもの」。ある選手は世界最速レースに求められる技術を、こう表現した。1000分の1秒差が勝敗を分ける。「ほんとの空」で磨いた技が過酷な世界で戦い抜く操縦を支える。
 今季も好調だ。世界に挑む「サムライパイロット」に福島からの声援が上昇気流をもたらす。26、27の両日には大会3連覇を目指して千葉の空をかける。昨年に続く総合優勝にも期待が高まる。希望の翼が今年も大きく広がろうとしている。
(2018/05/21)


「空のF1」とも言われる飛行機競技「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」の室屋義秀選手に触れられています。奈良県ご出身の室屋選手、福島を練習拠点になさっており、「ほんとの空」と切っても切り離せないというわけです。

一昨年の第3戦・千葉大会で優勝し、一躍注目を集め、昨年はなみいる強豪を抑え、年間チャンピオンにも輝きました。今年もこれまで2戦を終えて3位につけ、次戦は今週末、験のいい千葉大会です。ぜひ3連覇を果たし、「ほんとの空」の語をさらに広めていただきたいものですね。


【折々のことば・光太郎】

彼はこつこつと地味な道を歩いた。彼は中世期的写実と古典的優雅とを婚姻させた。製作技法は徹底酷烈な写実で押し通し、主題の取扱や、布置意匠などに古典の美を取り入れた。彼は地上の人間に飽くなき興味を持ち、つひに天上の夢を知らなかつたやうな彫刻家である。

散文「ドナテロ小感」より 昭和18年(1943) 光太郎61歳

「ドナテロ」は14世紀から15世紀にかけてのイタリア人彫刻家。「ドナテッロ」、「ドナテルロ」とも表記されます。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ・ブオナローティら、ルネサンス彫刻家に先行し、彼等に影響を与えてもいます。

徹底酷烈な写実」、「地上の人間に飽くなき興味」といったあたり、光太郎の目指した彫刻の在り方にも通じるような気がします。光太郎自身も、仏像や女神像などをほとんど手がけず、「つひに天上の夢を知らなかつたやうな彫刻家」だったように感じます。

「花がさき 鳥がなき 風かおる ほんとうの空」を今年のキャッチコピーに冠した、智恵子の故郷・福島二本松に聳える安達太良山の山開きが、20日の日曜(今年は奇しくも智恵子の誕生日と重なりました)に開催されました。


NHKさんのローカルニュースから。

安達太良山で山開き

 福島県の中部にある安達太良山で山開きが行われ、家族連れなど大勢の人が登山やイベントを楽しみました。
 磐梯朝日国立公園内にある標高およそ1700メートルの安達太良山は、「日本百名山」の1つに数えられ、毎年、多くの登山客が県の内外から訪れます。
 山開きの20日、晴れ渡った青空のもと、家族連れや登山グループの一行は次々と登山道に入り、標高が高くなるにつれて残雪や氷ついている樹木が現れると、姿を変える山の景色を写真に収めていました。
また、山頂では、山開きを祝う記念のペナントが配られたり、女性登山者のコンテストが開かれたりして、にぎわっていました。
 郡山市からカップルで訪れた20代の女性は、「安達太良山の風景は、とても美しかったので、良い思い出になりました。次は磐梯山に挑戦したいです」と話していました。
また、祖母と山登りをしていた小学生の男子児童は、「初めて安達太良山に登りました。空気もきれいで楽しかったのでまた来たい」と話していました。
 警察では、例年5月ごろから山の事故が増え始めることから、事前に登山届けを出すことや、十分な装備、それに体調の管理や天候のチェックなどを呼びかけています。

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地元紙『福島民友』さんから。 

「安達太良山」山開きにぎわう 1万1000人参加、絶景を満喫

 福島県二本松市などにまたがる安達太良山(1700メートル)の山開きが20日行われ、青空の下、大勢の登山客が山頂で大パノラマを楽しみながら心と体をリフレッシュした。
 山頂付近では登山客が足元に注意しながら残雪を踏みしめ、記念イベントが開かれる山頂を目指した。友人と一緒に登山した福島市の保育士(29)は「会話をしながら楽しく登れた」と笑顔。主催者の安達太良連盟によると、山開きの参加者は昨年の1万3000人を下回る1万1000人となった。
 山頂でのミズあだたらコンテストには40人が参加。ミズに福島市の公務員遠藤由香子さん(29)、準ミズには郡山市の主婦橋本祐子さん(29)が選ばれた。遠藤さんは「同僚と来て、賞をもらえてびっくりしている」、橋本さんは「夫と2人の子どもを抱えて登ったかいがあった」と話した。

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毎年のように、一度は山頂まで登って、そこからの「ほんとの空」を観てみたいと思いつつ、まだ果たしておりません。今年こそは、と004考えております。みなさまもぜひどうぞ。


明日も安達太良山ネタで。


【折々のことば・光太郎】

製作家の側からいうと、ものを大きく見る力のあるということは一つの重要な資質(カリテ)である。ものを小さくしか見られないということは、製作家としての一つの劣性を意味する。これはむしろ製作以前の精神の特性によるものであるところにその運命的深さがある。

散文「古代エジプトの作品」より
 昭和28年(1953) 光太郎71歳

平凡社刊『世界美術全集 第四巻 古代エジプト』に寄せた作品解説4篇のうち、エジプト第四王朝時代の木彫「シエイク エル バラド」(村の有力者の像)解説中の一節です。

上記のような「大きく見る」見方が出来ている実例として紹介されています。

当方、美術の実作はやらないので、なかなか実感がわかないのですが、雄大な景観などで、「大きく見る」ことの重要性を感じることはあります。そういう意味からも、やはり安達太良山頂に行かねばと思います。

このブログで2月にご紹介しましたが、来月10日、福島県南相馬市をメイン会場に、「第69回全国植樹祭ふくしま2018」が開催されます。

今月中旬にはリハーサルが行われたそうで、その報道から。

まずは『福島民友』さん。 

全国植樹祭、福島の復興『演技』で表現 記念式典で高校生披露

 6月10日に南相馬市原町区雫(しどけ003)地区で開かれる「第69回全国植樹祭」で、県内の高校生が記念式典のメインアトラクションとしてミュージカルを披露する。郡山女子大付高で12日、出演する高校生が練習を行い、本県の復興と今を伝える演技を体いっぱいに表現、本番に向け士気を高めた。
 演劇部やダンス部を中心に、県内10校から約120人が出演する。郡山市を拠点に活動する劇団ユニット・ラビッツ代表で郡山北工高教諭の佐藤茂紀さんが演出を手掛け、2月中旬から練習を重ねてきた。
 ミュージカルは8分で、タイトルは「あどけない話のその向こう」。二本松市出身の高村智恵子の故郷への思いを夫である詩人高村光太郎がつづった智恵子抄の詩「あどけない話」を盛り込んだ。東京電力福島第1原発事故で「ほんとの空」を失ってしまった本県に若者が「希望の種」をまき、復興に向け、前に向かって進んでいく姿を描いた物語を繰り広げる。
 生徒は舞台監督小林イワヲさんらの指導の下、練習に臨んだ。智恵子役の平舘果菜絵さん(18)は「これからも復興に向かって進む福島の力を伝えていきたい」と力を込めた。
 全国植樹祭のエピローグで行われる相馬流山踊りをモチーフにした創作ダンスの練習も行われた。ミュージカル出演者を含む県内12校の生徒が太鼓の演奏に合わせて踊りに磨きを掛けた。
 13日には南相馬市で総合リハーサルが行われる。
(2018年05月13日)


続いて『福島民報』さん。  

本番へ迫真の演技 全国植樹祭出演生徒、衣装初着用 郡山 

 6月10日に南相馬市で開催される全国植樹祭のメインアトラクションとエピローグアトラクションに出演する高校生は12日、郡山市の郡山女子大付属高で合同練習に臨んだ。植樹祭で着用する衣装を初めて着込み、本番さながらに迫真の演技を披露した。
 メインアトラクションは音楽劇で、県内高校の演劇部やダンス部に所属する生徒約120人が参加する。生徒は主人公の智恵子や光太郎、希望を植える少女、失望を掘る少年、大地、空などに扮(ふん)し、県民が未来に向かって歩み続ける姿を力強く発信する。
 12日は生徒約90人が振り付け担当や衣装デザイナーから指導を受けた。全身をいっぱいに使って、それぞれの役割を表現し、会場には若者たちの熱気が満ちた。

(2018年05月13日)

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天皇皇后両陛下をはじめ、多くの方々に観ていただくメインアトラクションで、光太郎智恵子をモチーフとしたミュージカルが上演されるということで、嬉しい限りです。

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『民友』さんの記事にある佐藤茂紀さん。もしかして今回のプロジェクトに絡んでいるかな、と思っていたらその通りでした。東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故後、やはり高校生たちによる演劇「この青空は、ほんとの空ってことでいいですか?」、さらに続編の「この青空は、ほんとの空ってことでいいですか? 第二章ばらあら、ばらあ」を上演なさいました。

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ぜひ拝見したいと思っておりましたが、すでに昨年のうちに福島県内在住者に限っての参加者募集が終わっており、会場内には入れませんで、途方に暮れておりました。すると、県内5ヶ所に「サテライト会場・PR会場」が設けられ、プラス南相馬市内でもメイン会場以外の2ヶ所で、それぞれ式典の模様が中継されるとのこと。

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サテライト会場  ふくしま県民の森 フォレストパークあだたら(大玉村)
PR会場     福島駅東口駅前広場 会津総合運動公園
         郡山駅西口駅前広場/白河駅前イベント広場
南相馬市中継会場 鹿島学習センター(さくらホール)、南相馬市民文化会館(ゆめはっと)

式典の中継は14:20から15:10までですが、その前後に「プロローグ」、「エピローグ」があるそうです。
 

当方、いずれかの会場に参上します。皆様もぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

わたしは終戦後七年ほど、岩手県の農村で生活をしていたが、その村の人たちのやさしい、正直な気持ちをいつも忘れることができない。その村では、とうとう一度も殺ばつななぐり合いや、人をあざむくことをみききしたことがなかつた。

談話筆記「おおらかで正直な心」より 昭和30年(1955) 光太郎73歳

光太郎第二の故郷・岩手花巻郊外太田村への讃辞です。光太郎の山小屋に、村人たちが別棟の便所を建ててくれたエピソードを紹介し、念のこもった丁寧な仕事で結局一年がかり、決して早い仕事ぶりではなかったものの、慌ただしい生活を送る都会の人々こそ、こうした東北人気質――イギリス人気質にも通じる――を学ぶべきだとしています。

智恵子の故郷、福島二本松に聳え、その上に広がる空が「智恵子のほんとの空」だという安達太良山関連で2件、情報を。

まずはムックの新刊……といっても2月の発行ですが。

週刊 日本百名山 改訂新版 42号 磐梯山 安達太良山

2018年2月18日 朝日新聞出版 定価556円+税000

磐梯山
 深田久弥 『日本百名山』 磐梯山
 プランニングガイド
 猪苗代登山口から登り爆裂火口を見ながら裏磐梯へ
 レンゲツツジの雄国山とゼンテイカの雄国沼
 自然図鑑
 木原 浩
  バンダイクワガタ、クルマユリ ほか
 山の住人たち コルリ 叶内拓哉
 よりみち百名山 
  猪苗代ライジングサンホテルヴィライナワシロ、
  米澤屋 ほか

安達太良山
 深田久弥 『日本百名山』 安達太良山
 プランニングガイド 山頂駅から登りくろがね小屋を経て奥岳温泉
 プラス1 滝を見ながらたどる安達太良山の渓谷コース 
 自然図鑑 ムラサキタカネアオヤギソウ、オノエラン ほか 木原 浩
 山の住人たち ハイタカ 叶内拓哉
 よりみち百名山 静流とやすらぎの宿喜ら里、二本松市智恵子記念館 ほか

[連載]
 • 登山とからだのはなし 42 増山 茂
 • 岩崎元郎の HOW TO 安心登山 42 岩崎元郎
 • 山のコトバ学 42 三宅 岳
 • 深田百名山からの贈りもの 42 安達太良山 鈴木みき
 • 海外トレッキングスポット 42


「改訂新版」ということですが、元版は2000年頃だったようです。「深田久弥『日本百名山』から」というサブタイトルになっており、手持ちの新潮文庫版と見比べてみましたところ、安達太良山、磐梯山とも全文が再録されていました。

深田氏、光太郎の「あどけない話」をきちんと引用して下さっており、その一文も大きく取り上げられていますし、周辺ガイド的なページには、二本松市智恵子記念館(含智恵子の生家)も紹介されています。

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それ以外のページでも、随所に光太郎智恵子の名、『智恵子抄』や「ほんとの空」の文字、さらにカットなどもあり、嬉しくなってしまいました。

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新刊書店で普通に売っています。ぜひお買い求めを。


もう1件、テレビ放映情報です。  

新 鉄道・絶景の旅 「仙台~三春~いわき みちのく桜紀行」

BS朝日 2018年5月17日(木)  19時00分~20時54分 

日本国内の人気鉄道路線とその車内外からの絶景、名所、食事処、温泉宿など、沿線の魅力を余すところなく紹介。鉄道ファンならずとも楽しめる鉄道紀行番組の決定版!列車を乗り継ぎ南へ北へ…人と触れ合い、地元に密着!定番の観光地から、とっておきの知られざる絶景まで、様々な情報をお届け!

咲き誇る花々が彩るみちのくの春! 宮城から福島へ、満開の桜を楽しむため、絶景列車に乗り込みます。
まだ雪を頂く山々を車窓に旅を進めれば、そこここに出会いと発見が!
ここに来ないと食べられない絶品ソウルフードも満喫します。

船岡の一目千本桜▽二本松・合戦場の枝垂れ桜▽三春の滝桜▽名山!安達太良連峰&蔵王連峰▽色彩のハーモニー!枝垂れ桜&春モミジ▽花の楽園!菜の花で描く…ハートマーク

春のみちのくを満喫!東北屈指の桜の名所めぐり▽8000万年もの歳月をかけて築かれた大自然の造形美!あぶくま洞を探検▽桜の絶景駅▽ビックリ仰天!桁違いの超~デカ盛りメニューを発見▽ビール焼きそば?▽郷土名物!ふくしまブルブル?▽激安!アイスバーガーの元祖…青春の味!?▽三春名物!ピーマン味噌で食べる?三角油揚げ▽白石名物!うーめん?▽地味に有名?評判の駅弁▽鉄道遺産・レンガの油庫▽東北本線▽磐越東線

ナレーター 林家たい平

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こちらでも光太郎智恵子、ほんとの空的な紹介があるといいのですが。

今日明日と、安達太良山の麓を通って岩手花巻に行って参ります。眼がさめていたら、ほんとの空を車窓から眺めようと思います。


【折々のことば・光太郎】

歴史の動きはのつぴきならぬ道を通るが、その道を通らしめるものに人意以上のものを感じないわけにゆかない。

散文「人意以上のもの」より 昭和17年(1942) 光太郎60歳

確かにそうですね。

しかし、太平洋戦争に関して、同じ文章の別の箇所で「大義の戦のまがふなき神意を強く感ずる」としています。それには首肯できません。

智恵子の故郷・福島二本松からの情報です。

まずは智恵子の生家・智恵子記念館さんから。

高村智恵子生誕祭

智恵子の「紙絵」の実物展示
奇跡といわれる実物の紙絵をぜひご覧ください。
期 日 : 2018年4月28日(土)~5月29日(火)
場 所 : 二本松市智恵子記念館  福島県二本松市油井字漆原町36
時 間 : 午前9時~午後4時30分
料 金 : 大人(高校生以上) 個人:410円 団体:360円
      子供(小・中学生) 個人:200円 団体:150円
           ※団体料金は20名以上の利用
休 館 : 水曜日

上川崎和紙で作ろう切り絵体験
智恵子が生まれ育ち、愛した生家。中庭の庭園を眺めながら、切り絵(紙絵)体験ができます。
期 日 : 2018年5月19日(土) 20日(日) 26日(土) 27日(日)
場 所 : 二本松市智恵子の生家「奥座敷」  福島県二本松市油井字漆原町36
時 間 : 9:00~16:00 ※所要時間は10~20分程度
         お一人様1回限り、材料がなくなり次第終了
料 金 : 無料 (入館料に込み)
内 容 : 智恵子の紙絵をモチーフとした切り絵、上川崎和紙を使用したハガキ・しおりの制作
問 合 : 智恵子記念館 ☎0243(22)6151  文化課文化振興係0243(55)5154
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生誕祭としては、先月から今月初めに企画された智恵子生家の二階特別公開がありましたが、裏手の記念館さんでは智恵子紙絵の実物展示(通常は複製)、生家の奥座敷を使っての紙絵制作体験だそうです。


同じ時期に、智恵子が愛した「ほんとの空」の下に聳える安達太良山の山開きがありますので、併せてご紹介します。 

第64回安達太良山山開き

2018年5月20日(日)

【お問い合わせ】  安達太良連盟事務局(二本松観光協会)TEL:0243-55-5122

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◆山頂イベント◆
10:00~ ふくしまアフターDC記念山開き参加ペナント配布(先着3,000名)
11:00~ 安全祈願祭
11:20~ Ms.あだたらコンテスト(ミズ1名、準ミズ1名、入賞6名)
  (未婚、既婚は問いません。入賞者には記念品を贈呈します。)

山頂の天候次第で、途中で中止となったり、予定していた時間も変更となる場合があります。
雨天の場合は、山頂イベントは中止し、奥岳登山口入口にて8時からペナント配布、奥岳登山口(レストラ
ン「ランデブー」)で10時から安全祈願祭を行います。

◆バスでおいでの方へ◆  
岳方面の路線バスは、岳温泉止まりです。 奥岳へは、シャトルバスをご利用ください。

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今年のキャッチコピーは「花がさき 鳥がなき 風かおる ほんとうの空」。たまたまですが、当日、5月20日(日)は智恵子132回目の誕生日にあたります。


ところで上記情報、『広報にほんまつ』さんの今月号を参照させていただきましたが、その表紙がこちら。

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2016「二本松の四季」観光フォトコンテスト「春の風景」部門で入賞した作品で、タイトルは『藤とつつじのコラボ』。撮影されたのは、二本松にお住まいの宮内信雄さんです。霞ヶ城公園内の霞池畔にある智恵子の藤棚――もともとは智恵子の生家の庭先にあったもの――です。例年だと5月上旬から中旬に見頃を迎えるそうですので、あわせて足をお運び下さい。


【折々のことば・光太郎】

兎に角、芸術作品を商品だといふ観念がなくならねばいかぬ。

談話筆記「美術家と生活」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

作品を売って金儲けをし、自宅や庭を俗物根性丸出しに飾る美術家への批判、国や自治体が美術家を支援し、美術家はそれに応えて社会に貢献するシステムの構築、といったことにも言及されています。

智恵子の紙絵は、智恵子が心を病んで南品川ゼームス坂病院に入院してからの作でした。そこには金銭といった感覚は一切なく、純粋な造型への欲求、そして光太郎に見てほしいという願い、それのみでした。ある意味、これぞ芸術、でしょう。

昨夜、NHK BSプレミアムさんの「にっぽん百名山 安達太良山」の放映があり、拝見しました。

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同じ番組で、平成27年(2015)にも安達太良山が取り上げられまして、その際には「智恵子抄」にからめ、光太郎智恵子の紹介が約2分間。そちらは紅葉シーズンのロケでしたが、今回は雪の残る3月。今回も「ほんとの空」の下にそびえる山、的な紹介をして下さいました。

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あとは、山岳ガイド・五十嵐潤さんのナビゲートによる1泊2日の行程。

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3月とはいえ、まだまだ本格的な雪山です。

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しかし、動植物など、そここに春の気配も。

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掛け流しの温泉があるくろがね小屋、それから岳温泉やそこをつかさどる湯守の皆さんの紹介も。

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満天の星、霧氷。高山ならではですね。

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雪原を過ぎ、智恵子が麓の旧油井村(現・二本松市)で油井小学校に通っていた明治33年(1900)の噴火口跡の沼ノ平を横目に、山頂へ。

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山頂からは、昭和8年(1933)、山腹で智恵子が「わたしもうぢき駄目になる」と呟いた磐梯山も望めます。

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来月には、山開き。また近くなりましたらご紹介します。

再放送がありますので、見逃した方、ぜひご覧下さい。 

にっぽん百名山「安達太良山」

NHK BSプレミアム  2018年4月16(月) 12:30~13:00 

3月、雪の残る福島・安達太良山(1700m)で、ウサギやリスなど春を待つ生き物の息吹に触れ、山のいで湯を堪能。さらに「霧氷」など雪山ならではの風景に出会う。

雪山の初級コースとして人気の福島・安達太良山(1700m)。早春3月、出発はあだたら高原スキー場の登山口から。雪の残る森を進み、鳥の巣作り、ウサギの足跡、リスの食べかすなどを次々と発見。山小屋で一泊し、源泉かけ流しの温泉と満天の星空を楽しむ。山頂までの斜面では雪山ならではの風景である霧氷を堪能。山頂からは磐梯山、吾妻連峰など東北の名峰を望む。また雪山で温泉の通り道を守る人々の営みを紹介する。

出演 五十嵐潤    語り 鈴木麻里子 高塚正也


ついでと言っては何ですが、もう1件、テレビ放映情報を。

にほんごであそぼ

NHK Eテレ 2018年4月13日(金)  6時35分~6時45分
再放送    4月13日(金) 17時00分~17時10分  4月27日(金) 6時35分~6時45分/17時00分~17時10分

2歳から小学校低学年くらいの子どもと親にご覧いただきたい番組です。日本語の豊かな表現に慣れ親しみ、楽しく遊びながら“日本語感覚”を身につけることができます。今回は、花鹿亭/「テスト」瀧川鯉八、ここで名文/僕の前に道はない…「道程」高村光太郎野村萬斎/ややこしや「まちがいの狂言」高橋康也、百人一首/かくとだにえやはいぶきのさしも草…(藤原実方朝臣)、名文を言ってみよう!/春はあけぼの、歌/蜘蛛の糸

出演 美輪明宏 野村萬斎 野村裕基 うなりやベベン 瀧川鯉八 ほか


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光太郎詩の代表作「道程」が取り上げられます。以前も取り上げられましたが、同じ映像か、新作か、不明です。

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こうした番組を通じて、「道程」が世の中から忘れられかけている現状に、歯止めがかかってほしいものです。


【折々のことば・光太郎】

彫刻の意義は人体を人体らしく作り、情景を情景らしく表現する程度のところには断じて存在しない。もつと深い彫刻美の、のつぴきならぬ、みつちりした、有機的つながりを主題と表現との間に持つ特質の中にある。

散文「第四回文展彫刻評」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

明治期の青年時代と比べても、光太郎の彫刻観がぶれていないことに、ある意味、驚かされます。

まずはテレビ放映情報から。

にっぽん百名山「安達太良山」

NHK BSプレミアム  2018年4月9日(月) 19時30分~20時00分

3月、雪の残る福島・安達太良山(1700m)で、ウサギやリスなど春を待つ生き物の息吹に触れ、山のいで湯を堪能。さらに「霧氷」など雪山ならではの風景に出会う。

雪山の初級コースとして人気の福島・安達太良山(1700m)。早春3月、出発はあだたら高原スキー場の登山口から。雪の残る森を進み、鳥の巣作り、ウサギの足跡、リスの食べかすなどを次々と発見。山小屋で一泊し、源泉かけ流しの温泉と満天の星空を楽しむ。山頂までの斜面では雪山ならではの風景である霧氷を堪能。山頂からは磐梯山、吾妻連峰など東北の名峰を望む。また雪山で温泉の通り道を守る人々の営みを紹介する。

出演 五十嵐潤    語り 鈴木麻里子 高塚正也

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同じ番組で、平成27年(2015)にも安達太良山が取り上げられまして、その際には「智恵子抄」にからめ、光太郎智恵子の紹介が約2分間ありました。

そちらは紅葉シーズンのロケでしたが、今回は雪の残る3月だそうです。今回も「ほんとの空」の下にそびえる山、的な紹介をしていただきたいものです。


もう1件、「ほんとの空」がらみで、イベント情報です。 

そらのまちマルシェ

期  日 : 2018年4月15日(日)、以後毎月第3日曜日
会  場 : 道の駅 安達 智恵子の里 下り線 福島県二本松市米沢字下川原田105-2
時  間 : 10:00~15:00

福島県内外の作家さんたちが定期的に集まり、売り手と買い手、売り手同士のコミュニケーションの場や手作りした作品を見て触れて楽しむ場として立ち上げたイベントです。

作家さん手作りのオリジナル作品と、昭和レトロな雑貨・古民具や古布、リメイク着物がが並びます。お宝を探しにおいで下さい!

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べつだん光太郎智恵子と直接関わらなくとも、「そらのまち」と銘打たれてしまったら、紹介しないわけにはいきません(笑)。と言いつつ、先月から開催されていたのですが、先月に関しては紹介するのを失念していました。すみません。

先月の様子はこちら。今月も、アンティークのお店ハンドメイドのお店など、楽しそうです。ぜひ足をお運びください。

東日本大震災に伴う福島第一原発の大事故から7年経ちました。しかし、まだまだ福島の復興は途上です。さらに記憶の風化との闘いという側面も大きな問題となっており、ぜひとも多くの方々に関心を持っていただき、真の意味で「ほんとの空」が戻る日を祈念いたしております。


【折々のことば・光太郎】

文句無しに観る者をつかまへるもの、何しろさういふものが欲しい。

散文「上野の彫刻諸相」より 昭和5年(1930) 光太郎48歳

芸術作品にせよ、商品にせよ、およそ世の中に問う性質のものは、すべからくそうですね。

そう考えると、テレビ番組も、文章も、いやいや、人間そのものも、ではないでしょうか。

春の恒例となりつつあります。智恵子の故郷、福島二本松市での智恵子顕彰イベント「高村智恵子生誕祭」。智恵子の誕生日は5月20日ですが、4月、5月と2ヶ月かけて、さまざまな企画が予定されています。

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まずは4月7日(土)から、「智恵子の生家2階特別公開」。平成27年(2015)に始まり、春と秋の観光シーズン、年によっては夏休み期間などに、通常は非公開の、智恵子の生家の2階部分――智恵子の居室があった――に上がれます。

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当方、なんだかんだで5回くらい上がらせていただきましたが、襖を開ければそこに智恵子が座っているような、そんな感じでした。


それから、4月の二本松といえば、桜。『広報にほんまつ』の4月号がこちら。

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智恵子の生家/智恵子記念館周辺にも、見事な桜が点在しています。

そこでこの時期、「二本松の名所旧跡を巡る春さがし号(市内循環臨時バス)」が運行されます。

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ぜひご利用下さい。

それから、「高村智恵子生誕祭」としては、他にもいろいろ企画されていますが、また近くなりましたらご紹介いたします。


【折々のことば・光太郎】

深遠な思想と不惑の意志とのある処にのみ芸術はある。

散文「彫刻に就て」より 大正3年(1914) 光太郎32歳

必死の思いで考えに考え抜き、精魂傾け尽くして制作されたものでなければ芸術の名に値しない、というわけですね。

この文章、本来は文部省美術展覧会(文展)と、国民美術協会展覧会の評ですが、そうでない出品作の多さを嘆く一節です。

テレビ放映情報です。 

三宅裕司のふるさと探訪~こだわり田舎自慢~▽福島県二本松市の旅

BS日テレ 2018年3月6日(火) 21時00分~22時00分

この番組は、東京で暮らす地方出身の方や、地方で暮らす皆さんから番組あてに寄せられた“こだわり田舎自慢"を確かめるべく、三宅裕司が日本中を訪れます。その土地の人の温かさや美味しい料理、素敵な景色などに触れながら、時には毒舌、時には爆笑ののんびり・ふれあい旅。

…今回は福島県二本松市。子供の頃からある丸い羊羹! 提灯祭りに食べる「ざくざく」? 稚児舞台の絶景!

出演:三宅裕司    ナレーター:屋良有作

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智恵子の故郷、福島二本松が扱われます。番組紹介の中に、光太郎智恵子の名がありませんが、話の枕にでも取り上げていただきたいものです。


もう1件。 

プレミアムカフェ 名作紀行 (1)寺山修司 (2)石川啄木 (3)高村光太郎

NHK BSプレミアム 2018年3月7日(水)  9時00分~10時25分  
再放送  24時45分~26時10分(=3月8日 午前0時45分~2時10分)

(1) 名作をポケットに 寺山修司   田園に死す 旅人:萩原朔美 語り:本和之 (初回放送:2002年)
(2) 名作をポケットに 石川啄木   一握の砂   旅人:谷啓 語り:久保田茂 (初回放送:2002年)
(3) 名作をポケットに 高村光太郎 智恵子抄   旅人:山本容子 語り:山本和之 (初回放送:2001年)

“NHK BSの あの番組をもう一度見たい!”
そんなアナタの思いにこたえて、過去のBSの名番組をゲストと共に楽しむのがプレミアムカフェ。
皆さんも、是非リクエストして下さい!

スタジオゲスト 澤口たまみ   スタジオキャスター 渡邊あゆみ

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こちらは平成13年(2001)6月11002日に初回放映があったものの再放送です。これは存じませんでした。

ナビゲーター役は銅版画家の山本容子さん。智恵子をモチーフにした者を含む『婦人公論』の表紙絵を集めた『女・女』(平成16年=2004 中央公論社)、同25年(2013)には雑誌『本の話』の表紙絵集『山本容子のアーティスト図鑑 100と19のポートレイト』(文藝春秋社)を上梓なされ、同27年(2015)には、銀座のノエビア銀座ギャラリーさんで「山本容子のアーティスト図鑑」展を開催。こちらは拝見して参りました

初回放映を見ていないので、「智恵子抄」ゆかりの地のうち、どこが紹介されるか不明ですが、流れ的に青森の寺山修司、岩手の石川啄木と来ていますので、やはり福島だろうかと思いますが、何とも言えません。

右の山本さんの作品は九十九里浜、上記番組公式サイトからの画像は「レモン哀歌」で、東京品川ですが。

いずれにせよ、ぜひご覧下さい。


【折々のことば・光太郎】

人は其の与へられた形式以外の眼を以て自然を観る事が出来ず、出来てもそれを再現するものではないといふ不文律を心の中につくつてしまふのである。
散文「本邦肖像彫刻技法の推移」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

飛鳥時代以来、千数百年の長きにわたって日本で「彫刻」といえば仏像が中心であったことを指しています。

光太郎詩「あどけない話」の一節「ほんとの空」の語を冠したイベントです。福島大学うつくしまふくしま未来支援センターさんの主催で、光太郎詩「あどけない話」中の「ほんとの空」を冠したシンポジウムは、これまでに京都東京愛知いわき新潟そして南相馬でそれぞれ開催されています。

ほんとの空が戻る日まで--震災の記録と教訓を残し、未来に活かす

日 時 : 2018年2月24日(土) 13:00~17:30
会 場 : 
東北大学片平キャンパス 片平さくらホール 仙台市青葉区片平2-1-1
参加費 : 無料
共 催 : 国立大学法人東北大学
後 援 : 文部科学省、復興庁、福島県、宮城県教育委員会、仙台市、双葉地方町村会
         公益財団法人経済同友会他                     

事前申し込みはこちら →http://ws.formzu.net/fgen/S49345558/   当日受付も可 定員150名

 東日本大震災・原発事故から7年が経過しようとしている現在、大きく損なわれた地域固有の歴史・文化・自然とともに、震災によって発生したさまざまな物的・電磁的記録を保全し、未来に伝えていこうとする動きが次第に強まり、復興推進の大きな力になっています。本シンポジウムは、福島県の被災地において残存する資料や記録の保全と活用に取り組むさまざまな活動を紹介し、将来の大規模災害にいかに備え、活かしていくべきかについて議論します。

【シンポジウム構成】
 〈13:00~13:15〉 挨 拶
 〈13:20~14:20〉 基調講演 「災害記録を未来に活かす -古代ポンペイの調査を通じて-」
            青柳正規氏  東京大学名誉教授(前 文化庁長官)
 〈14:30~15:45〉 福島の現状報告
             「福島の現状と課題」     初澤 敏生氏  FUREセンター長
             「避難所運営シミュレーション教材による取組み」 
                    天野 和彦氏  FURE地域復興支援部門 特任教授
             「『社会力』の向上を目指した防災教育」
                      本多 環氏    FUREこども支援部門 特任教授
              「震災関連資料の収集と保存」 
                    柳沼 賢治氏  FURE地域復興支援部門 特任教授
 〈16:00~17:25〉 パネルディスカッション
   テーマ:「震災の記録と教訓を残し、未来に活かす」
    モデレータ:菊地 芳朗  FURE地域復興支援部門長
    パネリスト
    ○佐藤大介氏  東北大学災害科学国際研究所 准教授
    ○髙木亨氏    熊本学園大学社会福祉学部 准教授
    ○佐藤孝雄氏  岩手県山田町職員
    ○瀬戸真之氏   FURE地域復興支援部門 特任准教授
〈17:25~17:30〉  挨 拶

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あと一ヶ月で3.11。あの日から8年となります。あの記憶を風化させないためにも、注目されるべきイベントの一つですね。

お近くの方、ぜひどうぞ。

当方、今回は参加しようと思ったのですが、また今日から秋田県小坂町、青森県十和田市、岩手県花巻市と廻る一泊二日の日程で、そうそう毎週東北まで行けません。残念ですが。

【折々のことば・光太郎】

美の無限を了悟した者にとつてこの世は無二の法悦境である事だらう。美の力の絶大さは其の美を心に養ふ力の絶大さである。美の奥は知れない。前進が万事である。
散文「美を求める欲望」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

「前進が万事である」、被災地もそうですね。

それぞれまだ先の話ですが、2件、智恵子の故郷・福島で行われるイベントにつき、予告的な報道が為されています。

復興や未来発信 全国植樹祭、実施計画決まる

 福島県南相馬市で6月10日に開催される第69回全国植樹祭の県実行委員会は22日、福島市のホテル福島グリーンパレスで総会を開き、記念式典の行事をはじめとする実施計画を承認した。メインアトラクションでは高校生らが高村光太郎・智恵子をモチーフとした演劇や踊りを披露し、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興や未来に向けた県民の歩みを伝える。県内3地方を代表する民俗芸能も紹介する。
  プロローグではフラダンスや霊山太鼓、山木屋太鼓、会津彼岸獅子の実演で来場者を迎える。
  「三春滝桜」の子孫木の苗木などを各都道府県知事や各国大使に贈り、震災後の支援に感謝する。エピローグでは、相馬野馬追の騎馬武者行列が登場し、「相馬流れ山」の主題を用いた変奏曲を奏でて相双地方の文化を発信する。
  22日の総会では天皇、皇后両陛下が着席する「お野立て所」のデザインが示された。県産スギ材を使ったアーチ型の仮設施設で、トルコギキョウなど県内特産の花で周囲を彩る。

(『福島民報』 2018/01/23 )


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福島県産材を積極活用 特別委、実施計画を承認 全国植樹祭

 国土緑化推進機構(会長・大島理森衆院議長)の全国植樹祭特別委員会は2日、衆院議長公邸で開かれ、南相馬市で6月10日に開催される第69回全国植樹祭の実施計画を承認した。県は会場施設に県産材を積極的に活用しながら、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興の現状、これまでの支援に対する思いを国内外に発信する。
  県内開催は1970(昭和45)年の猪苗代町以来、48年ぶり。震災の津波被害を受けた南相馬市原町区雫(しどけ)地区で記念式典を行い、天皇皇后両陛下が「お手植え」に臨まれる。県は各都道府県や各国大使に「三春滝桜」の子孫木や八重桜の新種「はるか」の苗木を贈り、震災後の支援に感謝する。メインアトラクションでは高校生らが高村光太郎・智恵子をモチーフとした演劇や踊りを披露する。
  大玉村のふくしま県民の森フォレストパークあだたらをサテライト会場とするほか、福島、郡山、白河、会津若松の4市に式典を中継するスクリーンを設ける。
  特別委員会で大島衆院議長は「全国植樹祭が復興の大きなスタートとなるように心からお祈りする」とあいさつした。内堀雅雄知事は「記憶に末永く残る素晴らしい全国植樹祭とし、復興を加速する原動力となるようにしっかり準備する」と決意を述べた。

(『福島民報』 2018/02/03 )


6月10日(日)に南相馬市原町区雫地内の海岸防災林で開催される「第69回全国植樹祭ふくしま2018」。光太郎智恵子をモチーフとした演劇、踊りが披露されるということで、ありがたいかぎりです。天皇皇后両陛下もご覧下さるようですし。

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ただ、まだ詳細な情報が出ていませんので、また近くなりましたらご紹介いたします。


もう1件、やはり福島から。

全国「智恵子抄」朗読大会11月に 智恵子没後80年、福島・二本松

 詩集「智恵子抄」で知られる二002本松市出身の洋画家・紙絵作家高村智恵子と、夫の詩人・彫刻家光太郎の世界観を共有してもらおうと、全国「智恵子抄」朗読大会が11月18日、同市で開かれる。
 智恵子没後80年、智恵子純愛通り記念碑建立10年の記念事業で、顕彰団体「智恵子のまち夢くらぶ」(熊谷健一代表)が29日までに、同市の市民交流センターで開いた総会で新年度の事業計画を決めた。
 「智恵子抄」朗読大会は日本中のファンに参加を呼び掛け、有識者らに審査してもらうことを検討している。
 このほかの記念事業として10月に智恵子検定、12月には智恵子カフェの実施に向けて準備を進めていく。
 智恵子生誕祭「智恵子ゆかりの地と二本松名所巡りバスツアー」は4月30日、智恵子純愛通り記念碑第10回記念建立祭は9月16日にそれぞれ開催する予定。

(『福島民友』 2018年01月30日)


この秋行われる、智恵子顕彰に取り組んで下さっている、智恵子のまち夢くらぶさんによるイベントです。朗読系で「智恵子抄」を取り上げて下さっている方々がかなりいらっしゃいますので、ふるってのご参加を期待したいものです。

こちらも詳細が決まりましたら、またご紹介いたします。


【折々のことば・光太郎】

或る一つの芸術作品が永遠性を持つといふのは、既に作られたものが、或る個人的観念を離れてしまつて、まるで無始の太元から存在してゐて今後無限に存在するとしか思へないやうな特質を持つてゐる事を意味する。

散文「永遠の感覚」より 昭和15年(1940) 光太郎58歳

主に造形芸術についての言ですが、文学作品にも当てはまるような気がします。「智恵子抄」なども、こうした永遠性を持った作品であるようにも思われます。しかし、後世の人間がその価値をしっかり受け止め、次代へと引き継いでいく努力は必要でしょう。

福島から写真コンテストの応募案内です。キャッチコピーが「〝ほんとの空〞のあるふくしまの星・月の風景をあなたの感性で捉えてください」だそうです。言わずもがなですが、「ほんとの空」の語は、光太郎詩「あどけない話」(昭和3年=1928)から採られています。 

第5回ふくしま星・月の風景フォトコンテスト

 郡山市ふれあい科学館では、星や月の輝く夜とともに、福島県の豊かな自然・そして人の暮らす風景を捉えた写真作品を募集し、広く全国に紹介することを目的に「ふくしま 星・月の風景 フォトコンテスト」を開催いたします。
 星や月の輝く夜空と地上の夜の景色の融合した風景、月明かりに照らされた幻想的な夜の風景など、あなたの視点での「星・月の風景」を撮影してご応募ください。

作品テーマ 福島県内で撮影された「星・月の風景」
星空や月と風景を併せて写した「星景写真」
月の光を効果的に生かして撮影された「月光写真」や、湖面に映る星などを捉えた写真など、“星や月を
じられる”風景写真を広く対象とします。 
【注意】比較明合成を含め、画像合成などの加工を施した写真は今回の募集対象外です。
   (カメラの撮影モードで、上記と同様の処理がなされた作品も対象外となります。)
主 催
郡山市、郡山市教育委員会、郡山市ふれあい科学館(公益財団法人郡山市文化・学び振興公社)

審査員
― 全体審査 ―
鈴木一雄氏(自然写真家/福島県出身)・渡部潤一氏(天文学者/福島県出身)・郡山市ふれあい科学館長
― 特別賞審査 ―
松本零士名誉館長(名誉館長特別賞選定) ほか

応募締切 2017年11月30日(木) 消印有効

応募規定・形式
カラープリント四つ切(254×305mm) またはワイド四つ切(254×365mm)、A4サイズ、B4サイズ
ポジフィルム(マウントのうえフィルムを保護のこと)
デジタルカメラで撮影の場合、およびトリミングした作品の場合、プリントのうえ応募ください。また、トリミ
ングの有無を応募用紙に記入してください。
画像処理による被写体自体の加工、極端な色彩の変更を加えた作品は失格とします。また、倫理に反する(立ち入り禁止区域での撮影、木の枝を折るなどの行為による)作品は、判明次第失格とします。
応募点数に制限はありません
発表済みの作品でも応募可とします。ただし他のコンテストとの二重応募は不可とします。
応募者はプロ/アマチュアを問いません。モラルとマナーを守って、自然や周囲に配慮しての撮影をお願
いします。

応募方法
作品1点ごとに、必要事項を記入した応募票を、作品の裏側あるいはマウントにセロハンテープでとめて応募ください。

作品の返却
プリントの返却はいたしません。
ポジフィルムの返却は、返却希望とマウントに明記のうえ、返信用切手を貼った封筒を同封ください。

送 付 先
〒963-8002 福島県郡山市駅前二丁目11番1号 郡山市ふれあい科学館 ふくしま星・月の風景フォトコンテスト係
 ※直接持参される場合は開館日の10時~17時の受付となります。

作品の著作権
応募いただいた作品の著作権は、基本的に撮影者に帰属するものとします。ただし、以下の点において、選外作品を含め主催者が作品を使用する権利を有するものとします。
写真展での展示(今後予定している巡回展を含む)
主催者が本事業に関連して発行する刊行物および雑誌・新聞等への掲載、インターネットへの掲載
科学館事業における写真使用
今後の本事業のための宣伝・広告のための印刷物への掲載
このほか(本企画の趣旨に合致した事業を実施するために行う展示への貸し出し、およびその宣伝広告のた
めの印刷物への掲載許可など)については、その都度協議の上で対応するものとします。

選考と発表
表彰作品については、新聞紙上・カメラ雑誌・郡山市ふれあい科学館ホームページなどで氏名とともに発表いたします。
また、平成29年度以降に郡山市ふれあい科学館で行う写真展、および作品写真集「ふくしま 星・月の風景Vol.5」に掲載します。
選考後に、作品原版(ポジ・データ)の提出をお願いする場合があります(原版は一定期間後に返却いたします)。また、応募時より詳細な撮影データ(特に撮影地と撮影年月日)についても、お伺いすることがあります。

表 彰
【大賞】1点(副賞5万円) 【名誉館長特別賞】1点(副賞3万円)
【審査員特別賞】2点(副賞3万円) 
【特別賞】5点程度 【入賞】30点程度
表彰者には、作品写真集を贈呈いたします。

発表
2017年12月以降に、各受賞者へ審査結果を通知いたします。

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当方、第4回の作品展を昨年の5月に拝見して参りました。どれもこれもハイレベルで驚きましたし、福島の「ほんとの空」の魅力を再確認いたしました。

その第4回の募集が昨年の1月〆切で、その後、募集が1年以上なかったものですから、中止になったのかと思っていましたが、復活したようです。

腕に覚えのある方、ぜひチャレンジし、「ほんとの空」の美しさを広めるのに貢献して下さい。


【折々のことば・光太郎】

フランスへ行つて羨ましいのは全体の空気が凡て芸術を発達せしめるやうになつてゐることである。八百屋の下女とか洗濯屋の女房とか云ふ輩(てあひ)でも、サロンの批評位は朝飯前にやつて退(の)ける。私のよく買つた焼栗売のお婆さんは、私が彫刻をやるといふことを知つてゐるので、私を捉まへて、ロダンも昔はえらかつたが、今は大分衰へたやうだと堂々と論じだしたことなどもある。

談話筆記「フランスから帰つて」より 明治43年(1910) 光太郎28歳

職業に対する差別意識が見えますが、それにしても、一般庶民がサロンやロダンをちゃんと論じられるフランスの文化水準の高さに驚く光太郎。それはそのまま、日本人の芸術に対する意識の低さへの失望につながりました。

100年以上経った現代でも、それはあまり変わっていないのかも知れません。

追記 その後、発表された番組内容が変更になり、11/25(土)のオンエアではなくなりました。

さらに追記 結局、12/3のオンエアだそうです。


テレビ放映情報です。

<BSフジサンデースペシャル>『絶景百名山2時間スペシャル 第66回 「安達太良山・西吾妻山 秋」』

BSフジ 2017年11月25日(土) 27時00分~28時55分  (=11月26日(日) 午前3時00分~4時55分)

秋、様々な色に染まった木々の葉が山肌を美しく彩る紅葉の季節。
今回は東北地方の二つの百名山「安達太良山」と「西吾妻山」を2時間SPでご紹介。

安達太良山は、詩人・高村光太郎の「智恵子抄」に登場する福島を代表する山の一つ。
標高1,700mの裾野に広がる紅葉は美しく、秋は特に人気の高い山。

山の案内人は、麓の岳温泉で和菓子屋を営みつつ、山のガイドをしている渡辺茂雄さん(44歳)
幼い頃から安達太良山を見て育ち、その魅力に引き込まれた渡辺さんがガイドをするのは安達太良山のみ。
「多くの人に安達太良山と、自分の生まれ育った岳温泉のすばらしさを知ってもらいたい」
そんな渡辺さんのガイドは、地元の人だからこそ知っている情報が満載だ。
さらに渡辺さんは、温泉の源泉を管理する「湯守」という仕事を冬季限定で行なっている。
安達太良山の麓にある岳温泉の湯は、安達太良山の中腹にある湯元から8キロもの距離を下ろす日本一長い引湯。
冬の間は雪が深い為、登山技術のあるガイドが湯元の管理をするのだそうだ。
安達太良山を知り尽くす地元ガイド一押しの絶景とは…

西吾妻山は、福島県と山形県の境界に位置する吾妻連峰の最高峰、標高2,035mの山。
連峰の山の中で唯一2,000mを超える山であるが、周りの山々がそれに近い高さの為、
飛び抜けて主峰という感じはしない山。
日本百名山の著者・深田久弥も「つかみどころがない」と称するほど。

そんな山を愛してやまないというのが、今回の山の案内人。
西吾妻山の麓、天元台スキー場でペンションを営む山岳ガイドの近藤明さん(62歳)
ガイド歴は40年。8,000mを超えるシシャパンマに登頂した経験があり、
年間200日以上をガイドとしてこなす山のスペシャリスト。

そんな近藤さんにとって、一番好きな山が西吾妻山。
展望がまるでない山頂だが大好きだという。
理由を尋ねると、なるほど納得の答えが返ってきた。
その理由がまた、西吾妻山の魅力を良く表現できていることに驚かされる。
ベテランガイドが愛する西吾妻山の魅力を、絶景とともにお伝え致します。

ナレーター 小野寺昭

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この番組では、平成25年(2013)放映の第26回「秋から冬へ 上高地徳本峠」でも、光太郎智恵子に触れて下さいました。

今回の放映、当初は12月3日(日)と発表され、現在も公式サイトではそうなっていますが、変更になったのか、2回放映されるのか、何とも不明です。とりあえず、11月25日というか26日未明の放映は為されるはずですので、ご覧下さい。


【折々のことば・光太郎】

世界平和と人類破滅とが 仲よく隣同士でそこにいる。 こんな矛盾が矛盾にならないほど 微妙な天秤に人間はのつている。

詩「お正月の不思議」より 昭和30年(1955) 光太郎73歳

暮れも押し詰まりつつあった12月19日の作。光太郎の詩としての絶筆2篇のうちの一つです。翌年元日のNHKラジオ放送のため執筆されました。

最後まで人類の行く末を案じていたユマニスト光太郎の本質がよく表れています。

一昨日の『福島民友』さんの記事から。 

智恵子ゆかりの地へようこそ 福島・二本松、ガイドボード除幕

 福島県二本松市出身の高村智恵子と夫・光太郎の世界観を学び、功績を顕彰している「智恵子のまち夢くらぶ」(熊谷健一代表)は、同市油井の智恵子の生家(旧長沼酒造店跡)近くに智恵子ゆかりの地などを案内する「智恵子のまちガイドボード」を設置した。
 智恵子純愛通り記念碑前に掲げられたガイドボードは縦2.25メートル、横2.7メートル。
 同生家をはじめ「樹下の二人」詩碑、長沼家墓所の満福寺、母校の油井小など18カ所を示した。
 市の「市民との協働による地域づくり支援事業」を活用して整備した。
 12日までに行われた除幕式では、熊谷代表が「訪れる人たちの役に立つことができればうれしい」とあいさつ。新野洋市長や小泉裕明市教育長、服部光治あだち観光協会長らと共にガイドボードを除幕した。

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場所は、智恵子生家・智恵子記念館と、その駐車場の間。故・髙村規氏の揮毫による「智恵子純愛通り」碑(上の画像の右端に写っています)のある小さな緑地です。こちらでは、この碑の建立祭などの催しが開かれたりもしています。

元々は、智恵子のまち夢くらぶさんの編集、A3判二つ折りのカラー印刷で平成26年(2014)に無料配布された「智恵子のまちガイドマップ」。全4ページの1ページめが、今回ボードに拡大された地図。智恵子が居た当時から残っている建造物や石碑、何も無くなってしまっているものの、「ここだよ」という場所がピックアップされています。

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残り3ページが二段組みで地図中の各ポイントの説明になっています。

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この辺りを訪れる皆さん、智恵子生家と記念館を見て終わり、という方も結構いらっしゃるように感じています。少し日程に余裕を持たせ、この地図を元に周囲を歩くことをおすすめします。智恵子と関係のないところでも、「古き良き日本の原風景」的な景観が随所に残っています。


【折々のことば・光太郎】

いさぎよい非情の金属が青くさびて 地上に割れてくづれるまで この原始林の圧力に堪へて 立つなら幾千年でも黙つて立つてろ。

詩「十和田湖畔の裸像に与ふ」より 昭和28年(1953) 光太郎71歳

彫刻家光太郎の最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」に寄せた詩の終末部分です。

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こちらは昔のテレホンカード。現地ではそろそろこういう情景になるでしょう。

この像は、戦後すぐの頃から光太郎が構想を抱いていた「智恵子観音」の具現化という意味合いもありました。

智恵子の顔とからだを持った観音像を一ぺんこしらえてみたいと思っています。仏教的信仰がないからおがむものではないが、美と道徳の寓話としてあつかうつもりです。ほとんどはだかの原始的な観音像になるでしょう。できあがったら、あれの療養していた片貝の町(九十九里)におきたいと考えています。
(昭和25年=1950 神崎清との対談「自然と芸術」)

戦時中の戦争協力を悔い、自らに課した「彫刻封印」の厳罰。それを解く際に作る彫刻は、自らの彫刻家人生の集大成ともいえる、「美」の象徴たるものでなければと考えていたはずです。そうした彫刻を作るとなると、それはどうしても智恵子の姿にならざるを得ませんでした。

  たしかにおれは十和田の宿屋での晩。智恵子の裸かをつくろうと決めた。
  (略)
  湖の。あの一種の絶景を見て。
  あの絶景のなかへなら女の裸をつくりたいと。
  それはほんとうにそう思つた。
  そしてその晩。
  自分の部屋へもどつてきて。電気を消して。
  独り寝つかれずにじつとしていたとき。智恵子はおれにささやいた。
  この湖のほとりなら。あたくしをつくつて下さい。
  そんなささやきをきいた思いをおれがして。いや。おれがきつぱり決めたので智恵子が
   そんな気持ちになつたのかもしれなかつた。
  (略)
  あの十八のモデルのからだを媒体にしておれは智恵子の精神をつくる。
  精神は肉体であるその実在を。
  かたちにする。

そうした光太郎の思いを代弁した草野心平の詩「高村光太郎」の一節です。

もっとも、光太郎自身は、昭和28年(1953)10月23日(「乙女の像」序幕の2日後)、青森市野脇中学校で開催された文芸講演会の席上、心平がこの詩を朗読したことに対し、

 先ほど朗読された草野君の詩『高村光太郎』について、ちよつといつておきたい。十和田の記念像の裸婦は智恵子を偲んで、こさえたように草野君の詩にあるが、必ずしもそうではない。もちろん何かが契機になつていることは確かでしよう。いや、そういうもののない芸術はあり得ないことで、もしそういうもののない芸術があるとすれば、それは公式的なものであつて弱い。そういう意味で私の作つた記念像に何かの契機があつたことは認めるが、あれは草野君のような『詩人バカ』が(笑)誇張していつてるんですヨ。

と、流しています。

しかし、これは「乙女の像」が国立公園指定15周年の記念モニュメントという公的な依頼だったことに起因する、表向きの発言でしょう。

心平以外にも周辺の複数の人物が、いろいろと証言しています。

東京のアトリエのことなどを相談しているうちに、「智恵子を作ろう」と、ひとりごとのように高村さんはいわれた。それはこんどの彫刻に対する作者自身の作意を洩されたものであつたが、高村さんはその言葉のあとで、そんな個人的な作意を十和田湖のモニユマンに含ませることは、計画者の青森県にすまないような気がすると、そんな意味の言葉を申し添えられたのである。
                    (谷口吉郎「十和田記念像由来」 『文芸』臨時増刊号 昭和31年=1956)

製作にかかる前、
「智恵子さんの写真もなにも戦災でなくしたのに、どうやってその何十年も前に見た顔をつくるんですか」ときくと、高村さんは、
「この手に智恵子のかたちがのこってるんですよ。」
と、あの子供の頃から彫刻できたえ上げた大きな両手で、空間に形を示しながら答えていました。
      (藤島宇内「逝ける詩人高村光太郎」 『新女苑』第二十巻第六号 昭和31年=1956)

さて、この項冒頭の詩句。これについては、やはり光太郎と交流の深かった伊藤信吉が、こんな事を書いています。

詩と彫刻の両面から、愛と追慕の思いを最終的に表現したとき、光太郎はすでに死を予感したかもしれない。ほろびるのは自分の肉体であり、残るのは愛の造型とその詩だからである。投げつけるようなこの言葉は哀惜の反語である。同時に生涯の愛の表現を完了したことの嘆息である。
(伊藤信吉 「湖畔の乙女像 十和田―高村光太郎」
 『詩のふるさと』 新潮社 昭和43年=1968)

「生涯の愛の表現の完了」。たしかに、間接的にではありますが、智恵子に関わる詩としては、これが絶筆となりました。

先般、智恵子の故郷・二本松に行った際にチラシをゲットしてきました。

秋の星空講座 月を見上げて in ほんとの空

期 日 : 2017年11月3日(金・祝)
会 場 : 二本松市市民交流センター 福島県二本松市本町二丁目3番地1
時 間 : 18:00-19:00
講 師 : 星空案内人 東前智恵
条 件 : 小学生以上 定員20組 小中学生は保護者同伴
参加費 : 無料
持ち物 : 懐中電灯 防寒着 5円玉 
申 込 : 二本松市市民交流センター窓口 FAX 0243-24-1216


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皆さん秋の月を眺めたことはありますか?
実は日本には十五夜と十三夜の両方の月を眺める独自の月見文化があるほど、秋に月を眺めることが好まれていました。
そこで、これから更に月見を楽しむために月を詳しく知り、「ほんとの空」に輝く月をいろんな道具を使って眺める月見体験に挑戦してみましょう。

内容 : 月の文化・伝説、月の構造紹介  月見体験(伝統的な方法&望遠鏡)


というわけで、月の観察会だそうです。「ほんとの空」の語を入れられてしまったら、このブログでご紹介するしかありません(笑)。

今月5日の智恵子忌日「レモンの日」に開催された「智恵子・レモン忌 あいのうた」の晩が十六夜(いざよい)でした。来月1日が旧暦9月13日(十三夜)、観察会当日の3日が満月です。持ち物に「5円玉」とありますが、満月と5円玉の関係、ご存じの方はご存じですね。

講師の東前さんという方、郡山市ふれあい科学館さんにお務めのようです。同館では「 “ほんとの空” のある、ふくしまの星・月の風景をあなたの感性で捉えてください」とのコピーで、「ふくしま星・月の風景フォトコンテスト」を主催なさっていて、第4回のあと、間があきましたが、第5回の募集も始まっています。〆切が近くなりましたらまたご紹介します。


【折々のことば・光太郎】

わたくしの猛獣性をさへ物ともしない この天の族なる一女性の不可思議力に 無頼のわたくしは初めて自己の位置を知つた。

連作詩「智恵子抄その後」中の「あの頃」より
 
昭和24年(1949) 光太郎67歳

その智恵子の葬儀があった昭和13年(1398)10月8日が、この年の十五夜だったそうです。何だか月に帰って行ったかぐや姫のようですね。

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