新刊書籍です。

一色采子のきものスタイルBOOK 母のタンス、娘のセンス

2019年3月20日 一色采子著 世界文化社 定価1,600円+税

あなたの家にも母や叔母からのお下がりきもの、ありませんか?それらはちょっと古臭くさかったり、地味だったりしてタンスの肥やしになっているのではないでしょうか。著者の一色采子さんはそんなきものや帯を、自分のセンスですっかり見違えるようなコーディネートにして着こなし、日々の暮らしを楽しんでいます。
例えば、お母さんの地味色きものに自分の娘時代の派手な帯で大人可愛くしたり、きものの色と帯の色を合わせてワントーンにまとめてハンサムに着こなしたり、レトロな色合わせのきものが白い帯を合わせることで新しく
誂えたきもののように甦ったり。自由な発想から生まれるスタイルは、見ているだけでも楽しくなります。
そして何より、タンスに眠っているお古のきものを簡単に今っぽく着こなすためのアイディア集がたくさん散りばめられているのです。

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目次
 Part.1 母譲りのアイテムをとことん着こなす
  theory.1 母のタンスの渋味きもの着こなし術
    オリエンタル帯で作るオンリースタイル/娘時代の派手帯できりりと引き締めて
    無地感覚の万能帯のススメ/ワントーンでハンサム顔に
  theory.2 母のタンスのレトロ晴れ着の着こなし術
    白地の帯でセンスアップ引き算/銀地の帯で洒脱にドレスダウン/
    金地の帯で華やぎコーディネート
  theory.3 母のタンスの個性派帯の着こなし術
    鮮やかきものと合わせて若々しく/柄×柄でポップアートのように/
    娘から母へのラブレター
 Part.2 娘のセンスで綴るきものダイアリー
    睦月/如月/弥生/卯月/皐月/水無月/文月/葉月/長月/神無月/霜月/師走
    父から母へのラブレター
 Part.3 娘のセンス、アイデア集
    裾回しを染め替え、黒地の江戸小紋を万能選手に/
    羽織の足し算で、ちょい派手きものをエイジレスに/
    小さく赤を効かせて、仄かな色香を演出/お洒落の心意気を映す、草履の春夏秋冬
    と愛用の足袋/
きもの姿に優雅な腕時計を/装いの矜持を忍ばせる扇子
    小粋な遊び心を添える、愛しのアニマルモチーフ/
    ひと工夫で快適に、タンスの収納アイデア
    娘から父へのラブレター
 福島県二本松市の“私的"プチ観光ガイド
    二本松城跡/大山忠作美術館/智恵子の生家・智恵子記念館/
    岳温泉・陽日の郷あづま館/
大七酒造/檜物屋酒造店/
    国田屋醸造・蔵カフェ千の花/母への思いが生んだ“瓢箪から駒”


このブログにたびたびご登場いただいている、女優の一色采子さん。お父様は智恵子と同郷の日本画家・故大山忠作画伯で、智恵子をモチーフにした作品も複数描かれています。ご自身も、連翹忌や智恵子命日のレモン忌にご参加下さったり、智恵子生家で「智恵子抄」の朗読をなさったりしています。昨秋は、お父様が光太郎と交流のあった渡辺えりさん主演の「喜劇有頂天団地」にご出演。当方、新橋演舞場さんで拝見して参りました。

で、その一色さんのご著書が刊行されました。雑誌『家庭画報』さんのサイト「家庭画報.COM」で連載されていた「母のタンス、娘のセンス」がベースです。基本、お母様のお召し物をアレンジしたり、さまざまなコーディネートを加えたりの、和装の着こなし術の指南書的な書籍です。

智恵子とお父様の故郷・福島二本松の観光大使も務められている一色さんですので、最終章は二本松の観光ガイドになっています。

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智恵子生家・智恵子記念館さんもご紹介下さいました。

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素敵なお召し物の数々が、カラー写真でこれでもか、と満載。見ていて楽しい書籍です。しかし、こと和装に関しては女性用はさまざまな生地や柄があり、得ですね。当方も和装は好きで、ちょっとしたお呼ばれの際や、最近は連翹忌も着物で参りますが、男性用の着物はとにかくバリエーションが限られています。アンサンブルはよくある鉄紺色のものと銀ねずのものの2組。それ以外は奇抜に感じて手が出ませんし、他に白紋付きもありますが、普段使いにはなり得ません。また、袴は仙台平の比較的いい物を持っていますが、袴まで着用すると大げさな感じで……。

ところで、一色さん、今年の連翹忌のご案内に対し、一度はご出席の連絡を賜り、またお会い出来るのを楽しみにしていましたが、追ってやはりご欠席とFAXが来まして、残念です。「大山」はご本名です。「喜劇有頂天団地」の後も、横内正さんたちと「マクベス」の舞台にご出演なさったりと、ご多忙のようです。

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というわけで、『一色采子のきものスタイルBOOK 母のタンス、娘のセンス』、ぜひお買い求め下さい。


【折々のことば・光太郎】

極度に純粋になれば人は誰でも狂気になるにちがひない。極度の純粋には社会性の存在する余地がない。社会性の喪失する時当然その人は社会から閉め出される。それを人が狂人とよぶ。純粋である事を理想としながら、しかもあまり純粋すぎる事は人間に許されない。

散文「某月某日」より 昭和14年(1939) 光太郎57歳

当会の祖・草野心平主宰の雑誌『歴程』に発表されたのが昭和14年(1939)ですが、前年に亡くなった智恵子をゼームス坂病院に見舞っての感想ですので、書かれたのはもっと以前と推定されます。

智恵子の陥った状況を冷静に(ある意味冷徹に)分析できているような気がします。とはいうものの、そうした智恵子の姿を見ると、完膚無きまでに打ちのめされて何も手につかなくなる、と、この前段で述べています。


第63回連翹忌(2019年4月2日(火))の参加者募集中です。詳細はこちら