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先ほど、2泊しました宮城県から帰着しましたが、メインの第28回女川光太郎祭をはじめ、3~4回はそのレポート等に費やさねばなりませんので、それを始める前に別件をご紹介してしまっておきます。

新刊書籍情報です。宮城から帰って来ましたら、自宅兼事務所に届いていました。

渡辺えりⅢ──月にぬれた手/天使猫

2019年8月15日 渡辺えり著 早川書房(ハヤカワ演劇文庫) 定価1,620円(税込)

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東日本大震災後に発表された渡辺えりの代表作二篇
高村光太郎と宮澤賢治をモチーフにした、渡辺えりの円熟の夢幻劇二篇

のんさん推薦!
「えりさんの作品から受ける感動は、トラウマとなって記憶に刻まれるような衝撃があります。色んな思考が渦巻いて、見る人を惑わせて不安にさせて、心をかき乱してくる。その中に見えてくる希望が心地いい。ファンタジーな世界が入り乱れる天使猫と、悪夢のように語られる月にぬれた手。私は、えりさんの作品に触れることが出来て良かったなあ…そんな風に感じて胸が熱くなりました。」

〈内容紹介〉
終戦後、花巻郊外の粗末な小屋。高村光太郎は大戦中の自身を厳しく省みる日々を送っている。ある日、亡き妻・智恵子の幻影が現れ――女性と地方の立場から、光太郎が象徴する都会の男性中心社会を問い直す『月にぬれた手』。
東北地方の瓦礫の中でケンジは、妻の遺体を探す「猫」と出会う……東日本大震災と向き合い続ける著者が、宮澤賢治の人生と作品を織り交ぜて描いた、鎮魂と祈りの音楽劇『天使猫』。
解説/山口宏子


渡辺えりさん率いる劇団・おふぃす3○○(さんじゅうまる)さんによる、光太郎を主人公とした平成23年(2011)初演の「月にぬれた手」と、翌年に初演された宮沢賢治が主人公の「天使猫」のシナリオです。もちろんご執筆は渡辺さん。
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渡辺さん、同じハヤカワ演劇文庫で、平成19年(2007)には『渡辺えり子Ⅰ――光る時間(とき)/月夜の道化師』も出されていますが(改名前なので「渡辺えり子」となっています)、こちらは光太郎と交流のあったお父様をモチーフにした「光る時間(とき)」が収められています。

今回の出版に際しては、少しだけ、お手伝いさせていただきました。先月でしたか、渡辺さんから電話があり、「月にぬれた手」中で、平岩紙さん演じた智恵子のセリフに、大正11年(1922)に智恵子が回答したアンケート「哀憐な美しさを見ます」からの引用があるのですが、その出典がわからなくなってしまった(事務所移転のどさくさで資料類が何処にいったかわからなくなったそうで)とのことで、お教えしました。

上記紹介文にある通り、帯にのんさんの推薦文が印刷されています。のんさん、現在公演中のおふぃす3○○さんの新作「私の恋人」で、渡辺さんと共演なさっています。本格的な舞台は初出演だそうで。ご招待いただいておりますので、月末の東京公演を拝見に行く予定です。

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詳細はこちら

さて、ハヤカワ演劇文庫 『渡辺えりⅢ──月にぬれた手/天使猫』、ぜひお買い求め下さい。


【折々のことば・光太郎】

低きに居む      短句揮毫 戦後

「む」はこの場合、意思を表す助動詞。したがって、「低い立ち位置に居よう」といったところでしょうか。

ある意味、上から目線で多くの空虚な翼賛詩文を書きまくり、あまたの前途有為な若者を死地に追いやった反省が、この句にもにじみ出ています。

演劇公演の情報ですが、状況をわかりやすくするため、『朝日新聞』さん大阪版の記事から。

大阪)大阪女優の会が活動区切りとなる朗読劇、9日から

 反戦と非核を訴えてきた「大阪女優の会」が9~11日、活動の区切りとなる朗読劇を大阪市で開く。2003年に結成を呼びかけた関西芸術座の河東(かとう)けいさん(93)が66年の女優生活をかけて「最後」の舞台に挑む。
 きっかけは、2003年3月の米国によるイラク侵攻だ。これに怒った河東さんら関西の演劇人が劇団の枠を超えて集まり、同年8月に大阪市の劇場で第1回公演を開いた。それから毎夏、非暴力を訴える舞台を重ねてきた。
17回目の今夏は、30~90代の女優15人が朗読劇「あの日のこと」を上演する。
 劇は、太平洋戦争が始まった1941(昭和16)年12月8日のラジオ放送を軸に進む。「アメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり」という大本営発表から「輝かしい大戦果」まで刻々と発表されるニュースに人々は何を思ったのか。
 「天地が開けたほどの開放感」(吉本隆明)、「新しい神話の創造が始つた」(火野葦平)、「一死報国の時が来た」(青野季吉)、「世界は一新せられた」(高村光太郎)……。
 当時の著名人の日記などを収めた「朝、目覚めると、戦争が始まっていました」(方丈社)から抜き出してきたセリフからは、高揚感と陶酔感とが少数の怒りや胸騒ぎを圧していく風景が立ちあがってくる。
 興奮の行く末は「空が、赤く、焼けて 原爆で死にゆく子たちとの8日間」(小学館)からの引用としてあらわれる。45年8月6日の原爆投下後の広島をさまよった女性は、圧死した母のかたわらで「お母ちゃんとネンネする」と泣いて死んでいく幼子の姿に絶望的な怒りを書き記す。
 演出と構成を手がけた棚瀬美幸さん(43)=東大阪市=は「開戦の日の爽快感が広島の日につながっていった」と話す。
 河東さんは、開戦の興奮と原爆の絶望との間に無数にあったであろう平凡な日常を生きる主婦を演じる。
 手術を終えたばかりで認知症も進みつつある河東さんは今年6月末、ライフワークだった小林多喜二の母を演じる公演を閉じた。一方、今回の出演には「会が17年目ということは、ちっとも日本が平和にならへんということやね。ますますやらなあかんね」と続行に意欲たっぷりだ。
 会の副代表として河東さんに伴走してきた金子順子さん(67)=大阪市=は「河東の体調を考えて今回で一区切りとするが、演劇人としての河東にはやるべきことがいっぱいある。河東を生かし、受け継ぐ形を考えたい」と話している。
 9日(14時と19時)、10日(13時と17時)、11日(11時と15時)、大阪市中央区のドーンセンター。一般2千円、大学・専門学生1千円、高校生以下500円。大阪女優の会(06・6392・7581)へ。(下地毅)

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というわけで、調べてみました。

 

あきらめない、夏"  2019 大阪女優の会 VOL.17朗読劇「あの日のこと」~『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』『空が、赤く、焼けて』より~

日 時 : 2019年8月9日(金)14時/19時 10日(土)13時/17時 11日(日)11時/15時
会 場 : 大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)1階
       大阪市中央区大手前1丁目3番49号
料 金 : 一般 2,000円  大学・専門学生 1,000円 高校生以下 500円

2003年アメリカによるイラク攻撃が始まり、多くの演劇人が反対の声を上げました。これを機に「大阪女優の会」を立ち上げ、過去の戦争を風化させないためにも「演劇は非戦の力」として、毎年“あきらめない夏”の公演を続けています。
17年目となる今回は、太平洋戦争が始まる日に立ち会った著名人の言葉を集めた『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』、広島原爆の翌日から8日間を記した『空が、赤く、焼けて―原爆で死にゆく子たちとの8日間』から、「言葉」をキーワードに描く朗読劇です。戦争へ向かう空気、そしてその終末に、人はどのように感じていたのか、そこからつながる現代・未来へ向けた私たちの取り組みです。

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元ネタが、方丈社さん編刊の『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』と、奥田貞子さん著、小学館さん刊行の『空が、赤く、焼けて 原爆で死にゆく子たちとの8日間』。前者には、光太郎の翼賛詩が収められており、今回の公演でも取り上げられるようです。

今日、8月6日は広島原爆の日、9日は長崎、そして15日は終戦記念日。この時期にあの悲惨な過ちを繰り返さないためのメッセージとして、こうした取り組みが行われることは非常に意味深いものと存じます。

ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

不可避の道をゆくのみ     短句揮毫  戦後

光太郎が戦時中に大量に書いた空虚な翼賛詩文を読み、多くの前途有為な若者が死地へと旅立っていきました。その反省から、花巻郊外旧太田村のあばら屋(高村山荘)で、戦後の7年間、蟄居生活を送った光太郎。それが「不可避の道」ということです。

しかし、戦時中は戦時中で、大量の翼賛詩文を書き殴るのが「不可避の道」だと捉えていたはずですし、さらに遡れば、妻・智恵子を心の病に追いやった俗世間と没交渉の芸術精進の日々、父・光雲との対立を余儀なくされた留学からの帰朝直後のデカダンの日々なども、それぞれその時点では「不可避の道」だったと思われます。

演劇系イベントを二つ。

まずは仙台発の情報。
会 場 : せんだい演劇工房10-BOX box-1  宮城県仙台市若林区卸町2-12-9
時 間 : 7/5(金)19:30〜 1作品目 7/6(土)19:30〜 2作品目
        7/7(日)13:00〜 3作品目
料 金 : 通し券(木金・土・日の3パターン/全7作品観劇可)
        一般前売:2,800円 一般当日:3,000円 
        学生前売:1,800円 学生当日:2,000円

毎年、大阪・インディペンデントシアターで行われる最強の一人芝居フェスティバル「INDEPENDENT」。2011年夏に行われたジャパンツアー仙台公演を経て、2012年から仙台でも東北の創り手を中心とした「INDEPENDENT:SND」を継続開催しています。今年も多数の応募の中から激選された6組が参戦。東北の俳優と本家大阪で評価を得た招聘作品が競演します。是非ご期待ください!


演劇ユニット箱庭 第5回公演 『38.9℃の夜』
 出演 : しゅー(演劇ユニット あかりラボ)
 脚本 : 長門美歩
 演出 : 志賀彩美(演劇ユニット 箱庭)

「女が結婚しないでいるのはよくないなんて誰が決めたことなの。だいたい世の中の習慣なんて、どうせ人が決めたことでしょう、それに縛られて一生、自分の心を騙し続けて生きるなんてつまらないことだわ。わたしの一生はわたしが決めたい。たった一度きりしかないわたしの一生ですもの。」
と高村智恵子は言ったそうだ。

演劇ユニット 箱庭 第5回公演「38.9℃の夜」では、社会人と演劇・表現活動を両立する、年齢・結婚年数が異なる3人の既婚女性で構成。「結婚して、家族を得ても、孤独だった」と言う感覚をもとに、現代に生きる女性としての生き方と、その苦悩と孤独について描き出す。その舞台の題材として取り上げられるのが高村智恵子という一人の芸術家の一生だ。

「自分の人生を生きた」そういう実感が心から湧くような生き方をしていきたい。ままならないことだらけの世の中で、智恵子は生きました。ままならないことだらけの世の中で、私たちはどう生きていこう。

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「INDEPENDENT:SND19」という演劇フェスティバル的なイベントがあり、7作品(すべてが一人芝居とのこと)が上演される中の1つとして、演劇ユニット箱庭 第5回公演を兼ねる 『38.9℃の夜』だそうです。


もう1件、愛知県長久手市から。

長久手市文化の家自主事業 創造スタッフ七夕企画 文学パフォーマンス

期  日  : 2019年7月6日(土)
会  場 : 長久手市文化の家  2F情報ラウンジ  愛知県長久手市野田農201 
時  間 : 11時00分 15時00分 18時00分
料  金 : 無料

出演 豊永洵子(ダンス) 細川杏子(フルート) 藤島えり子(俳優)

女性創造スタッフ三名によるパフォーマンスイベント。ダンサー×フルーティスト×俳優が文学作品を題材にコラボレーション! 高村光太郎の名作「智恵子抄」を、それぞれの形でお見せします。
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やはり「智恵子抄」系、どちらかというと女性に人気なのでしょうか。仙台の演劇も女性3人組、奇しくも長久手も同じく女性3人組ですね。

現代の素敵な女性達が自分の生涯をさまざまな形で表現し続けてくれていると知り、泉下の智恵子はどう思うでしょうか。


【折々のことば・光太郎】

試験制度をくぐつて来た人間の頭には、どうしても取り去れない或る箍がかかつてゐます。どうしてもコンクリイトで出来た池の中の水のやうな処があつて、海洋の水はおろか、小川の流のやうな処さへ少いやうです。どんなに有為な、立派な、若しくは偉大な人物になつても、その根性の奥にはめられた或る箍は、一生涯つきまとふかと思はれます。

アンケート「もし私に子があつたら何にするか?」より
 大正12年(1923) 光太郎41歳

「箍」は「たが」。「たがが外れる」の「たが」です。

いわゆるエリートの脳内にはその「箍」がしっかりはまっていて、外れることがないと。もちろん融通が利かないとか、思考が硬直化しているとか、そういったマイナスの意味で使われています。

今も昔も、ですね。

演劇公演の情報です。 

Yプロジェクトプロデュース公演 ブーケdeコンセール 詩劇と音楽 「長編詩劇・高村光太郎の生涯 愛炎の荒野。雪が舞う、」

期  日 : 2019年4月10日(水)~12日(金)
会  場 : 渋谷伝承ホール 渋谷区桜丘町23-21 渋谷区文化総合センター大和田6・7F

時  間 : 14:00〜16:10  19:00~21:10 (6公演)
料  金 : 一般前売4,500円 当日4,800円 ペア特別券 8,000円
       学生優待(中・高・大) 3,500円
主  催 : Yプロジェクト
演  目 : 第1部 ラフマニノフの抒情(ロマン) ピアノソナタ2番の〈物語〉を聴く
        ピアノ/八谷晃生
       第2部 長編詩劇・高村光太郎の生涯 愛炎の荒野。雪が舞う、

パリで知った芸術と人間。古き日本とのあまりの落差にデカダンスに走るが、智恵子と出会う。理想の男と女であろうとした生活。敬意と対等と信頼。だが、智恵子は精神を病み、死す。その慟哭が、詩「智恵子抄」となる。そして豹変するように、戦争に突入すると愛国詩を書きはじめる。本来は彫刻家であると自認するが詩人であり、翻訳をし、装丁のデザインをし、書を揮す。この類い希な芸術家=知性の人は時代の分岐点にいつも立ち会っていた。だが、その光太郎はどこへ行こうとしていたのか。

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内容的にはオーソドックスに光太郎智恵子の生涯を追うパターンのようです(ネット上であまり宣伝されていないので、よくわからないのですが……)。あとはそれがどう料理されているかですね。

年に数回、光太郎智恵子をモチーフとした演劇が上演されています。今後もこの傾向が続いてほしいものです。


【折々のことば・光太郎】

「道程」をはじめから読んでみると、さすがに自分の過去がいろいろに思ひ出されていつ知らず感慨に満たされた。初篇から「泥七宝」の終まではまだ死んだ智恵子に会はぬ頃のもので、外国から帰つて来てはじめて日本の情炎に触れ、当時新しい文芸家の間に巻き起つた所謂疾風怒濤時代に身をもまれ、あらゆるものに対する現状憎悪から来るデカダン性と、その又デカダン性に対する懐疑と、斯かる泥沼から脱却しようとする焦燥とでめちやくちやになつてゐた私自身を此処に見る。

散文「某月某日」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

この年、山雅房から刊行された『道程改訂版』に関する文章の一節です。

初版『道程』は大正3年(1914)、自費出版で刊行されましたが、時代の最先端を突き抜けたこの詩集、売れ行きはさんざんでした。その後、ようやく時代が光太郎に追いつき、復刊を希望する声が高まって、改訂版が出版されたわけです。

ただし、この改訂版、初版とはかなり収録詩篇に差異があります。太平洋戦争開戦前夜ということもあったのでしょう、日本人批判の「根付の国」や、英国人陶芸家バーナード・リーチに贈った「廃頽者より」「よろこびを告ぐ」などはカットされるという「忖度」が行われています。

富山県から演劇の公演情報です。

劇団「喜び」公演「智恵子抄」

期   日 : 2019年3月21日(木・祝)
会   場 : 高岡市生涯学習センター (ウィング・ウイング高岡) 
富山県高岡市末広町1-7
時   間 : 14:00〜
料   金 : 前売 一般2,000円 中・高生1,000円 当日 一般2,500円 中・高生1,500円
         お菓子・飲み物付

彫刻家であり詩人である高村光太郎その妻智恵子。珠玉の愛の物語を『智恵子抄』の詩と共にお届けします。
脚本・一人芝居 茶山千恵子

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茶山さんという方、直接は存じ上げませんが、以前にも高岡で光太郎智恵子関連の市民講座や朗読をなさって下さっていた方です。



ありがたいところです。


【折々のことば・光太郎】

あの世とは何も遠いところではない。あの世とはみんなの頭の中にいつでも存在してゐるし、現世といつでも交通してゐるところである。

散文「某月某日」より 昭和14年(1939) 光太郎57歳

前年に亡くなった智恵子の新盆を迎えての感懐です。

同じ文章では「智恵子が今更あの世からのこのこお精霊さまになつて此の家にやつて来るなどとはしらじらしくて考へられず、おまけに智恵子は年中此所にゐるのだから、そんなあらたまつた事をする気が起らない」「私はあの変な戒名といふもので智恵子をよぶ気にはまるでなれない。何々院何誉何々大姉とは随分人を茶にしてゐるもので、たとひ自分の戒名があるとしてもそんな名をよばれて、すぐに「はい」と返事が出来ようとはおもへない」と書いています。

昨日は盆ならぬ、彼岸の入りでした。


第63回連翹忌(2019年4月2日(火))の参加者募集中です。詳細はこちら

山口県から演劇公演の情報です。 

touch the bonnet 10th演劇LIVE 「れもん」

期  日 : 2019年3月9日(土) 10日(日)
会  場 : 菜香亭  山口市天花1-2-7
時  間 : 19:00~
料  金 : 前売 一般¥1,500 大学生¥1,200 高校生以下¥700  当日一律¥500増

作:平田俊子  演出:岩本伸也  出演:細田昌宏/平田珠凛

「れもん」は詩人、彫刻家として有名な高村光太郎と、その妻智恵子の半生を描いた作品。
芸術に携わる方ならきっと共感できる迷いや不安、まっすぐに向き合い続ける情熱とそれを維持する難しさ、そんな思いを沢山混ぜ込んで二人だけで表現する濃厚な作品です。
飛び交う言葉も美しく、高村光太郎の詩も数多く登場します。興味がある方は道程や智恵子抄といった詩集に目を通してから来ていただいても楽しめると思います。そして、その殆どの詩を世に出る前に聞いていた妻の智恵子。智恵子がその詩をどんな気持ちで聞いていたのか?是非皆様も一緒に見守って下さい。
ちなみに!れもんと言えば最近なら米津玄師さんのlemonを思い浮かべた方も多いのでは?米津さん自身もインタビューで高村光太郎の智恵子抄について言及しているようです。皆様は「れもん」から何を連想しますか?
3月9日、10日。高村光太郎と智恵子の一生をどうか見届けにきてください。

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「れもん」は、平成16年(2004)、下北沢のザ・スズナリさんおよび京都芸術センターさんで、柄本明さん、石田えりさんにより初演された2人芝居です。

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ちなみにたまたま偶然でしょうが、来月から再来月にかけ、各地で光太郎智恵子を主人公とした演劇の公演が開催されます。それぞれ追ってまたご紹介します。


【折々のことば・光太郎】

母は無学であつたから私をあやすにもただ祖先伝来の子守歌を繰返すほかに術はなかつた。だがあの「坊やはいい子だ、ねんねしな」の無限のリフレインの何と私の心身を快よくしてくれたことだらう。私は今でもその声の和らかさと軽く背中を叩かれる時の溶けるやうな安心さとを忘れない。

散文「揺籃の歌」より 昭和11年(1936) 光太郎54歳

シニカルな見方で、光太郎はかなりのマザコンだったのではないかと言われています。その根拠として使われる散文の一つから。

そして、その母の面影を智恵子にも求め、それがまた智恵子の重荷になったとも……。

第63回連翹忌(2019年4月2日(火))の参加者募集中です。詳細はこちら

昨日は、今年初めて都内に出ておりました。

メインの目的は、観劇。北千住のBUoYさんという不思議なスペースが会場でした。

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岸井戯曲を上演するinTokyo#1「かり」」。岸井大輔氏という劇作家の方が書かれた同一の「戯曲」を、3組の方がそれぞれの表現で演じられる、といういわば実験的な試みでした。

ただ、それは「PLAYS and WORKS旗揚&新春企画 あそびとつくりごと1 出版記念の2日間」というイベントの一部、という扱いでした。

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先ほど、「戯曲」と書きました。なぜカギカッコつきで「戯曲」なのかというと、通常の戯曲という概念から離れたものだからです。

通常、戯曲というと、ほぼ台本や脚本、シナリオとイコール、すなわち、ト書きがや役者さん達のセリフが書いてあるものだと思いますが、岸井氏の「戯曲」の概念は、違います。

今回、取り上げられた「かり」という戯曲は、以下の通り。

かり
動物を狩り、植物を苅り、カリという語は、自然から借りるからきている。人生も仮住まいというように、生きているのは、何かから借りた、仮の姿であるので、拝借の借りという言葉が、一時的の仮に使われるようになった。
例えば、演技をするとき、私は私をかりている。では私に私をかしているのは誰か。

これで全文、これだけなのです。

ここから、3人の演者の皆さんが、それぞれにイマジネーションを働かせ、自分なりの「かり」を作り上げ、それを披露されたというわけです。

お一人目、キヨスヨネスクさんという方は、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を延々と読まれました。お三方目、佐藤明子さんという方は、葛の葉伝説などを下敷きにした映像作品でした。

そしてお二人目の、辻村優子さんという方。光太郎最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」をモチーフにして下さいました。

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ほぼほぼずっとこのポーズです。基本、セリフは事前に録音されていたものをスピーカーから流す形。ただ、後半、肉声も入りました。

辻村さん、俳優としても各種の舞台などにご出演されているそうですが、本業的には、美術作品のモデルさんだそうで、明治末に智恵子が油絵を学んだ太平洋画会の後身・太平洋美術会さんでもモデルを務められているそうです。

そのモデルさんとしての実体験から、今回の内容を思いつかれたそうで、いわば「モデルあるある」的な(笑)。ある時、大きな彫刻のモデルをなさった折、作家の方が席をはずした際に作品を見てみると、作品の足もとにたくさんの紙切れが……。見ると、すべて某多人数アイドルグループの人気メンバーの写真。彫刻の顔を見上げると、まぎれもなくその方の顔……。というエピソードが挿入されましたが、実話だそうです。

「乙女の像」も、顔は亡き智恵子、ということで、まぁ、それにはそこに至るまでの光太郎智恵子の鮮烈な生の試みや、戦後の彫刻封印と自己流謫(るたく)=自分で自分を流刑に処すること、といった長いドラマがあるのですが、そのあたりは、拙稿も載っております『十和田湖乙女の像のものがたり』をお読み下さい。

終演後、お三方と、司会の方でトークショー。

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ここで、先ほどの岸井氏の「戯曲」の定義、的なお話も出ました。また、やはり辻村さんのモデルとしてのいろいろなお話など、興味深く拝聴しました。

更にその後、辻村さんとお話をさせていただきました。今回、「乙女の像」のポーズをずっとなさってみて、見た目には判らないものの、かなり身体に「ひねり」が入っているというお話を伺い、意外に感じました。「乙女の像」のモチーフの一つが観音像なので、同じ仏像でも、天部や明王などのそれとは違い、まっすぐに立っているというイメージでいたものですから。こういう点は、実際にやってみないとわからないことですね。

さて、今後も、光太郎智恵子の世界、様々な表現者の皆さんが、それぞれの解釈で挑んでいっていただきたいものです。


【折々のことば・光太郎】000

批評精神に満つるが故に却つて分せき的でなくて包摂的な、明徹であるが故に逆説と順応との入りまじる、抑へ難い闘志に燃えるが故にあらゆる人と物との価を発見せずにおかない、単純であるが故に内に複雑な結構の生れる、微妙のものを感ずるが故に感傷性に曾て墜ちない、この放縦にしてしゆく然たる彼の目にふれるのはよさう。

散文詩「ある首の幻想」より
 大正14年(1925) 光太郎43歳

粘土の塑像で、詩人、新聞記者だった中野秀人の首を作っている際の様子を記したものです。彫刻は、おそらく昭和20年(1945)の空襲で焼けてしまって、現存が確認できません。

ここでいう「彼」とは、確かにモデルの中野を指すとも考えられますが、どうも光太郎本人のことでもあるような気もします。

結局、あらゆる芸術作品は、モデルなりモチーフなりの姿を「借り」て、自分の内面を「仮」にこうだと表出するものなのでは、などと思いました。

ちなみに光太郎には、同じ年に書かれた「首狩」という詩も存在します。彫刻のモデルにふさわしい「首」をさがすという内容です。

演劇の公演情報です。 

岸井戯曲を上演するinTokyo#1「かり」

期   日 : 2019年1月5日(土)・6日(日)
会   場 : 北千住BUoY 東京都足立区千住仲町49−11
時   間 : 1/5 18:00~20:00     1/6 13:00~15:00
料   金 : 2,500円

同じ戯曲を、いろいろなアーティストがやってみて、そのあとに対話をする人気シリーズ「岸井戯曲を上演する」。
横浜blanClass、京都UrBANGUILDでの上演シリーズに続き、東京でも定期的に上演します。
東京開催の第一回目に扱う「かり」は、以下の大変短い戯曲です。

かり
動物を狩り、植物を苅り、カリという語は、自然から借りるからきている。人生も仮住まいというように、生きているのは、何かから借りた、仮の姿であるので、拝借の借りという言葉が、一時的の仮に使われるようになった。
例えば、演技をするとき、私は私をかりている。では私に私をかしているのは誰か。
かつて、大石将弘や山田宏平によって上演された、俳優には人気の戯曲に、3人の若手が挑みます。3種類の上演とそのあとのトーク、ぜひご参加ください。

バージョンA 辻村優子(俳優)  バージョンB 佐藤朋子(アーティスト)  バージョンC キヨスヨネスク(俳優)
司会 山田カイル(ドラマトゥルク)


明治末、智恵子が絵画を学んだ太平洋画会の後身・太平洋美術会さんで、モデルを務められている方もご出演なさるそうで、その方から同会の坂本富江さんに情報が伝わり、坂本さんから当方に連絡がありました。

光太郎最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」(昭和28年=1953)をモチーフとして取り上げられるそうで、坂本さん情報では、「乙女の像」の顔が、モデルと全く似ていないことに対する解釈、的な内容だそうです。

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「乙女の像」のモデルを務めたのは、現在も続くプールヴーモデル紹介所に所属していた、当時19歳だったという藤井照子。しかし、戦後すぐの頃から光太郎が構想を抱いていた「智恵子観音」の具現化という意味合いもあり、顔は明らかに智恵子の顔です。

智恵子の顔とからだを持った観音像を一ぺんこしらえてみたいと思っています。仏教的信仰がないからおがむものではないが、美と道徳の寓話としてあつかうつもりです。ほとんどはだかの原始的な観音像になるでしょう。できあがったら、あれの療養していた片貝の町(九十九里)におきたいと考えています。
(昭和25年=1950 神崎清との対談「自然と芸術」)

光太郎は、「乙女の像」の制作が始まると、それが智恵子像であるとは公式には発言しませんでしたが、周辺の人物の証言がいろいろ残っています。

 東京のアトリエのことなどを相談しているうちに、「智恵子を作ろう」と、ひとりごとのように高村さんはいわれた。それはこんどの彫刻に対する作者自身の作意を洩されたものであつたが、高村さんはその言葉のあとで、そんな個人的な作意を十和田湖のモニユマンに含ませることは、計画者の青森県にすまないような気がすると、そんな意味の言葉を申し添えられたのである。
                    (谷口吉郎「十和田記念像由来」 『文芸』臨時増刊号 昭和31年=1956)

 製作にかかる前、
 「智恵子さんの写真もなにも戦災でなくしたのに、どうやってその何十年も前に見た顔をつくるんですか」ときくと、高村さんは、
 「この手に智恵子のかたちがのこってるんですよ。」
と、あの子供の頃から彫刻できたえ上げた大きな両手で、空間に形を示しながら答えていました。
        (藤島宇内「逝ける詩人高村光太郎」 『新女苑』第二十巻第六号 昭和31年=1956)

このあたりがどう表現されるのか、非常に興味がありますので、1/6の部を観に行って参ります。のちほど観劇記をレポートいたします。


【折々のことば・光太郎】

すべての技芸がさうであるやうに、詩の朗読も、その無装飾の基礎から最初は進むべきかと思ふ。今日の実際経験から考へても棒読みに近い朗読ほど詩の内面のニユアンスを抑揚頓挫の烈しい、表情の多い朗読よりも、却て微妙に出すやうである。
散文「詩の朗読」より 大正13年(1924) 光太郎42歳

いわゆる「クサい」朗読を、光太郎は一刀両断にしています。同じ文章に曰く「詩の感動を朗読者の個人癖による趣味から出放題な節をつけて、声をふるはせたりなどされると、背すぢがぞつとして恥かしくなる」。

なるほど、という気がしますね。

演劇系の公演情報を二つ。

まずは先月から既に始まっていますが、かつて光太郎を主人公とした「暗愚小伝」を上演された劇団青年団さんの公演。 

青年団第79回公演 『日本文学盛衰史』

原作:高橋源一郎 作・演出:平田オリザ
2018年6月7日(木)- 7月9日(月) 32ステージ
会場:吉祥寺シアター
前売     一般:4,000円 ユース・シニア:3,000円 高校生以下:2,000円
予約・当日  一般:4,500円 ユース・シニア:3,500円 高校生以下:2,500円

文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか、人には内面というものがあるらしい。そして、それは言葉によって表現ができるものらしい。しかし、私たちは、まだ、その言葉を持っていない。この舞台は、そのことに気がついてしまった明治の若者たちの蒼い恍惚と苦悩を描く青春群像劇である。

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夏目漱石、島崎藤村、田山花袋、石川啄木、芥川龍之介、北原白秋ら、近代の文豪達の群像劇だそうで、光太郎も登場人物の一人に名を連ねています。


もう1件。愛知長久手から。 
会 場 : 長久手市文化の家 
       愛知県長久手市野田農201番地
時 間 : 12:00~/19:00~
料 金 : 無料

高村光太郎「智恵子抄」の一編「レモン哀歌」を躍り・音楽・朗読で考察してみる、実験的な公演です。
【出演】細川杏子(フルート)藤島えり子(演劇)、豊永洵子(舞踊)ほか


「レモン哀歌」にしてもそうですが、詩は小説ほどに具体的な描写が為されているわけではなく、受け取る側が想像をふくらませることが可能です。登場人物の服装だの表情だの、もっと遡れば、場所、時間、人物の配置、その他。そしてその時その場所で何が起こったのか、人物がなんと言ったのか。小説ではそれらが細々と書き表されますが、詩ではそれらは読者の想像にゆだねられます。

それだけに、二次創作の題材としやすい部分もあるのでしょう。さまざまな分野の表現者の方々が、音楽、演劇、舞踊、漫画、小説、映像作品……美術系でも絵画やイラスト、伝統工芸、現代アートなどでさまざまに表現して下さいます。小説や漫画を元ネタにしたそれらは、元ネタの方が情報量が多く、ダイジェストになってしまいますが、詩から出発すると、そうはなりません。

当会顧問・北川太一先生もおっしゃっています。

 はじめこの詩集は光太郎の一方的な思いこみにすぎず、光太郎の声だけしか聞こえない単なる幻想の産物だと批判した者もあった。しかし智恵子に関する資料が徐々に発掘され、智恵子が肉声で語りはじめるにつれて、その生の軌跡はますますリアリティを加え、文学としての評論、創作はもとより、ドラマ、オペラ、歌曲、舞踊、邦楽等々芸術のあらゆる分野の作者、演技者を動かし、それぞれがそれぞれの思いを込めて、その問いかけに答えようとする。 
  (『芸術夢紀行シリーズ 智恵子抄アルバム』 芳賀書店 平成7年=1995)

今後とも、様々な分野の方に「智恵子抄」を取り上げていただきたいものです。ただし、そこにリスペクトの精神を以て、ですが。


【折々のことば・光太郎】

甘いものは飛んでしまひ、苦いもの、渋いもの、ゑがらつぽいもの、すべてけちけちした空気にたまるわらぢ虫のやうな心の中の塵埃は皆焼かれてしまふ。あとには出来たてのやうな心が眼をあける。心が本来の道にかへる。心は少し赤面しながら再び勇気を奮起させる。単に心を感奮させ、いはゆる襟を正させるものは世の中に少くないが、心を必ず原始の生きいきした姿にしてくれるものは、ざらにない。だが芸術にこれを求めないで、その外の何を求めよう。
散文「楽聖をおもふ ベートオヴエン百年忌を迎へて」より
大正15年(1926) 光太郎44歳

そこに病的なもの、頽廃的なものの入る余地を認めなかった光太郎が捉えた、文学音楽美術その他、あらゆる分野の「芸術」の存在意義が語られています。

今年2月に都内で公演があった演劇が、西日本へ巡回します。 

ひとり芝居プロジェクト新作公演 立本夏山 智恵子抄

尼崎公演
 期 日  : 2018年6月26 (火)
 時 間 : 19:00~20:00
 会 場 : 兵庫県立尼崎青少年創造劇場 ピッコロシアター 兵庫県尼崎市南塚口町3-17-8
 料 金 : 前売り:2,000円 /  当日:2,500
 申 込 : 市川 080-4164-4150 mail@kazan-office.com

 期 日  : 2018年6月28 (木)
 時 間 : 19:00~20:00
 会 場 : シアターねこ 愛媛県松山市緑町1-2-1
 料 金 : 前売り:2,000円 /  当日:2,500
 申 込 : mail@kazan-office.com
 備 考 : 6月27日(水)19:30~ プレトーク&パフォーマンス開催

 期 日  : 2018年6月30 (土)/7月1日(日)
 時 間 : 6/30 19:00~20:00   7/1 14:00~15:00 19:00~20:00
 会 場 : ミニシアター蛸蔵 高知県高知市南金田28
 料 金 : 前売り:1,500円 /  当日:2,000
 申    込 : mail@kazan-office.com
 備    考 : KOCHI演劇祭参加

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話題作「智恵子抄」が早くも兵庫尼崎、愛媛松山、高知の3都市で続演される。

夏山は2014年にArt Chiyodaで行われた千代田芸術祭で太宰治の小説「駆込み訴え」を題材にした一人芝居で伊藤千枝賞を受賞するなど、文学を扱った一人芝居も多数手がけてきた。

高村光太郎の「智恵子抄」は光太郎が智恵子に出会って恋に落ちてから、同棲、結婚。闘病、死別、そしてその後、約30年にわたって書いた智恵子についての詩をまとめた詩篇である。

光太郎は彫刻家、智恵子は画家、芸術を志す者同士のお互いを求め合う、愛を越えた絆。俳優の動きを際だたせるシンプルな舞台装置、陰影に富んだ照明、洗練された舞台空間で、濃密かつ重層的に繰り広げられる言葉。

光太郎の情熱的な愛の言葉の濁流に立木夏山がどう挑んでいくのか、見どころです。


お近くの方々、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

 Shûkyôga to iwareru mono wa, mukashi kara dossari atta ga, kindai ni okeru hontô no imi no shûkyôga to iu beki mono wa Millet no “Angelus” de aru. Kore wa Shûkyôjô no gishiki ni tsukau Christ ya Maria nado no e no yô ni tada katachi dake no Shûkyôga to wa chigau. Honrai geijutsu wa mina Shûkyôteki de aru ga, kindai ni oite Millet no e hodo Shûkyôteki na mono wa sukunai.

散文「“Angelus”」より 大正5年(1916) 光太郎34歳

雑誌『ローマ字』に寄せた文000章ですので、全篇ローマ字表記です。ローマ字の普及運動を展開していたこの雑誌に共鳴した光太郎、たびたび寄稿しています。上記は書き下ろしですが、詩の旧作をローマ字にしたものなども掲載されています。印刷は福音印刷。村岡花子の義父・村岡平吉が社主でした。

上記を書き下すと、以下の通り。

宗教画といはれるものは、昔からどつさりあつたが、近代における本当の意味の宗教画といふべきものはミレーの「晩鐘」である。こらは宗教上の儀式に使ふキリストやマリアなどの絵のやうにただ形だけの宗教画とは違ふ。本来芸術は皆宗教的であるが、近代においてミレーの絵ほど宗教的なものは少ない。

この後、ミレーの簡略な、しかし的を得た評伝が続きます。

「晩鐘」は、1857年頃(日本では安政年間)の作です。

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このところ、「智恵子抄」系の朗読、演劇等の公演が立て続けに行われます。
時 間 : 3/2(金)15:00/19:00  3/3(土)15:00 
会 場 : HITOMIホール 名古屋市中区葵三丁目21番19号メニコンアネックス5F
料 金 : 一般 前売り3,000円/当日3,500円  大学生迄 前売り・当日ともに1,500円
申 込 :  http://event.menicon-ba.co.jp/  またはメニコンアネックス窓口

朗読と音楽の融合を目指したオリジナルステージです。
智恵子が愛したベートーヴェンの交響楽第6番「田園」をモチーフに、ヴァイオリン・チェロ・ハープの演奏で、また朗読には、俳優の橋爪淳さんが光太郎役として至情の愛の世界へと誘います。

出演者 橋爪淳/朗読・光太郎  苅谷なつみ/ヴァイオリン  日野俊介/チェロ  
    田中敦子/ハープ

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同じ会場で、一昨年昨年も行われた公演の再演かと思われます。それだけ好評だったということでしょうか。

お近くの方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

生物相互助長の交感力を考へると生物界の微妙な構成に驚く。人倫夫婦道の如きはその極致であらう。人類はそれによつて常に新らしい力の源泉を得てゐるのだ。
             散文「人体について」より 昭和27年(1952) 光太郎70歳

光太郎最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作中の言です。久しぶりにモデルを使い、その人体の美にうたれたことからはじまり、それに伴って自分の生命力も溌剌とさせられたとしています。

そして、像のその顔は今は亡き智恵子。かつて智恵子と共にお互いを高めあった日々を思い起こしているのでしょう。

昨日は男性の一人芝居をご紹介しましたが、今日は逆に女性の一人芝居です。

劇団TANTOO第9回公演「売り言葉」

期 日 : 2018年3月2日(金) ~4日(日)
時 間 : 3/2(金)19:30 3/3(土)14:00 18:00 3/4(日)15:00 各回定員15名
会 場 : アトリエTANTOO  東京都足立区扇2ー26ー41 扇ビルB1
料 金 : 2,000円
申 込 : theatre.tanto@gmail.com

世間一般に流布されている純愛詩集「智恵子抄」。智恵子本人が証言台に立ち、その「智恵子抄」を告発する。

作:野田秀樹  演出:佐藤学二  出演:壱岐照美

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平成14年(2002)、大竹しのぶさん出演で初演されました。脚本が公刊されていることも理由でしょう、その後も全国でいろいろな劇団、個人が取り上げ、昨年も確認できた限り、2回、上演されています。
今回の劇団TANTOOさんも、平成26年(2014)に一度上演されています。その当時は気づきませんで、ご紹介しませんでしたが。

光太郎智恵子の世界をいろいろな分野で取り上げられるで、最もアイロニカルな視点で描かれているものと言えます。単なるお涙頂戴で終わっていないあたり、演劇関係者の皆さんが好んで取り上げ続けられる理由の一つでしょう。

ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

自然に醜はない。人間をも含めた自然の中に醜なるものは存在しない。悉く美である。醜は人工の中にある。

散文「美ならざるなし」より 昭和26年(1951)頃 光太郎69歳頃

光太郎最晩年の言。しかし、若い頃から一貫したブレない考え方です。

「ひとり芝居」だそうです。 

ひとり芝居プロジェクト新作公演 立本夏山 智恵子抄

期 日 : 2018年2月26日(月)28日(水)
時 間 : 26日(月) 19:00   27日(火)/28日(水)  14:00/19:00
会 場 : 3331 Arts ChiyodaB104スタジオ  東京都千代田区外神田6丁目11-14
料 金 : 前売り3,000円/当日3,500円
申 込 : mail@kazan-office.com  TEL: 080-4164-4150 (市川)
          FAX: 03-6453-9333 (Kazan office.)

智恵子抄は光太郎の愛の言葉だ
 
この詩篇を読めば読むほどそれは間違いないと思える。智恵子に出会ってから、恋人時代、結婚、闘病、死別、その後と約30年にわたって書かれたこの詩篇は一時のラブレターや恋物語にはない圧倒的な説得力で僕の心に迫ってくる。しかしそうなればなるほど「愛ってなんだ?」という疑問も自然とわきあがってくる。
 
今の時代は愛というものがとても捉えずらい。多種多様な価値観があり、愛の形も様々。愛なんてよく分からない、結婚なんてしなくていい。そんな言葉がよく聞こえてくる。
そんな時代だからこそ、光太郎の純粋に相手を見つめる視線、相手に対する限りない情熱は意味があると思う。皆さんも光太郎の言葉に焚きつけられてみては如何でしょうか?
 
今回は皆さんに大真面目に愛を贈りたい。

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出演 立本夏山 Kazan Tachimoto

1982年6月7日 静岡県生まれ。
18歳にて文学座演劇研究所に入所。流山児☆事務所、俳優座演劇研究所を経て重力/Note、新宿梁山泊、燐光群などの作品に出演。2014年Arts Chiyoda 3331 千代田芸術祭にて伊藤 千枝賞受賞。2016年7月アヴィニヨン演劇祭・ブラジルMIRADA演劇祭にてアンジェリカ•リデル新作に出演。小池博史ブリッジプロジェクトの「風の又三郎2016 ODYSSEY OF WIND」「世界会議」に出演。


なかなか、というか、かなり、いや、とてつもなくインパクトのあるチラシです。

「智恵子抄」の世界、朗読的なものも含め、お一人で演じられる場合には、女性が多いのですが、こちらは男性。たしかに光太郎は男性ですし、その視点で書かれた詩群ですから、男性が演じることももちろん有りでしょう。まさか、チラシのような出で立ちで演じられることはないと存じますが。

チラシによると、6月から7月にかけては高知での公演があるそうです。

お近くの方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

私にとつて彫刻の道具はこの世で最も神聖なものであり、又最愛の伴侶である。他の一切のものから聖別された此のものは、どんなことがあつても身を以て護り通さねばならない。

散文「信親と鳴瀧」より 昭和25年(1950) 光太郎68歳

既に智恵子逝きて12年。しかし、智恵子存命中も同じ考えだったとしたら、それは危険ですね。

題名にある「信親」は鍛冶職人・栗原信親(のぶちか)、そしてその手になる彫刻刀類。「鳴瀧」は京都鳴瀧産の砥石です。下記リンクをご覧下さい。

演劇の公演情報です。
会   場 : 両国エアースタジオ 東京都墨田区両国2-18-7 ハイツ両国駅前 B1F
料   金 : 3,500円 (要予約)
時   間 :
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平成25年(2013)にも公演があり、当方、その際に拝見しました。調べてみましたところ、平成22年(2010)にも上演されており、けっこう歴史があるのだなと思いました。

前回公演と同じで脚本であれば、かなりオーソドックスな作りです。光太郎智恵子にあまり詳しくない方でもわかりやすい内容となっていました。各回キャストが7人。前回公演もそうでしたので、同じ脚本なのではないかと思われます。7人は、光太郎、智恵子、光太郎の弟・豊周、智恵子の姪・春子、智恵子の親友・田村俊子、光太郎を敬愛する後輩詩人・草野心平と中原綾子でした。当会の祖・草野心平は容貌魁偉(怪異?)の、ある意味とんでもないオヤジでしたが(笑)、役者さんはイケメンで、「美化度200%だろ」と心の中でツッコミを入れたのを記憶しております(笑)。

2週に分けての公演で、1週目と2週目で演出の方が異なっています。キャストもほぼ日替わりのようで、若い方々の育成的な部分もあるのかな、と思いました。1週目に出演される安達慶幸さんという役者さん、智恵子の故郷・二本松のご出身だという情報が入ってきており、智恵子のためにも頑張ってほしいものです。

当方、2週目に予約を入れました。皆様もぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

詩画一如などといふ古人の言葉は、その陳腐にきこえる響きの蔭に、存外よく芸術の根本のことがらを表はしてゐるものかも知れない。本来詩人でなければ画はかけない筈で、画の技術の背後には詩精神がなければならない。

談話筆記「画に於ける詩精神」より 昭和11年(1936) 光太郎54歳

「詩精神」。光太郎は「詩魂」とも表しますが、いわば物事の本質を十分に見極め、それを端的に表現しようとする心の持ちよう、とでも言えましょうか。

たまたまネットで見つけた演劇の公演です。2本立てで、一方が「智恵子抄」。 
期 日 : 2017年11月8日(水) 19:30 11月9日(木) 19:30 11月10日(金) 14:30/19:30
      11月11日(土) 14:30/19:30  11月12日(日) 13:00/17:00
会 場 : 荻窪小劇場 東京都杉並区荻窪3-47-18第五野村ビル1F
料 金 : 前売 3,000円  当日 3,500円
問合せ : 団体直通電話 080-8046-3906


◇門ノ月~Aida~
作 木乃正  演出 大栗田正男
本公演での強いエンターテインメント性だけでなく無駄なものを削ぎ落とし、シンプルな空間と人をテーマにどこまで作品作りが出来るかを追求した実験的企画。

原案 高村光太郎  演出 大栗田正男
日替わりで演者を組み合わせ同じ作品の中で密かにそれでいて確実に起こる科学反応を組み合わせる新たな形のパフォーマンス。 乞うご期待!
出演 神井大治 三味線   木房明音 Dancer   小山千尋 Dancer   藤井弘平 朗読   篠原志奈 朗読
    Dangerous Box   

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ぽつりぽつりと、いろいろな方が、さまざまな切り口で光太郎智恵子の世界を取り上げて下さり、ありがたいかぎりです。

8公演ありますので、いずれかの回を観に行くつもりで居ります。皆様もぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】005

三陸沖から日本海まで ずつとつづいた秋空が いかにも緯度の高いやうに 少々硬質の透明な純コバルト性に晴れる。 東北の秋は晴れるとなると ほんとに晴れてまぎれがない。

詩「東北の秋」より 昭和25年(1950)
 光太郎68歳

当方自宅兼事務所は東北より低緯度の南関東ですが、その中でも田舎の区域なので、秋空の美しさは負けていません。

もっとも、光太郎の言いたかったのは、単なる空の美しさだけでなく、トポスとしての東北、ということなのでしょう。「ほんとの空」を求めてやまなかった亡き智恵子の、「東京に空が無い」というモノローグがイメージされていたはずです。

九州福岡から、演劇の公演情報です。

渡辺隆男さん 

期   日 : 2017年9月8日(金)
時   間 : 14:00~15:30
会   場 : レディスもじ 北九州市立東部勤労婦人センター 
         北九州市門司区下馬寄6番8号
料   金 : 500円(菓子・コーヒー付き)
定   員 : 50名(先着)
備   考 : 託児あり(1歳~未就学のお子さん)有料・要予約
         お申し込み時にご相談ください。
出   演 : 芝居屋企画主宰 玄海 椿

詩人高村光太郎を支えた、妻 智恵子。光太郎は智恵子自身を詩に表現するが、皮肉にもそれが智恵子の心を崩壊させることに・・・
毎年開演している玄海椿さんによる一人芝居。今年は「智恵子抄」です。お楽しみに!

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九州を拠点に、主にご自身で書かれた脚本で一人芝居をなさっている玄海椿さん。「智恵子抄」もラインナップに入っていて、当方、平成24年(2012)に福岡で公演があったのを拝見しました。

会場の「レディスもじ 北九州市立東部勤労婦人センター」が、「健康と情報」をテーマに、働く女性及び勤労者家庭の主婦の福祉増進のために設置された施設だそうで、玄海さん、毎年、こちらの利用者のための公演的な感じでやられているそうです。で、今年が「智恵子抄」というわけです。

光太郎との出会いから、さまざまな挫折と心の病、そしてその死まで、主に智恵子視点で描かれた脚本ですが、よくある「光太郎の芸術精進の生け贄となった哀れな智恵子」という描き方ではなく、ボタンの掛け違いの連続で、そうならざるを得なかった、という流れで、感心させられた記憶があります。

お近くの方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

木の実草の実おもしろや 木の実草の実おそろしや 自然の技術きはまりて あらすさまじのたくみかな 木の実草の実そらをゆき 地をゆき野辺に山にみつ
詩「小曲二篇」より 昭和20年(1945) 光太郎63歳

昨日、前半部分を紹介し、今日は後半部分です。

終戦直前の作と推定されますが、もはや敗色決定的な昭和20年(1945)の8月、「国破れて山河あり 城春にして草木深し」的な感懐があったのではないでしょうか。

大阪から演劇の公演情報です

売り言葉

期   日 : 2017年8月25日(金)~27日(日)
会   場 : 大阪市立芸術創造館 大阪府大阪市 旭区中宮1丁目11−14
時   間 : 25日(金)20:00[S]  26日(土)12:00[A]/15:30[B]/20:00[A]
         27日(日)12:00[B]/15:30[S]
料   金 : 前売/2,500円、当日/3,000円(全席自由席)
主   催 : evkk(エレベーター企画)
出   演 : 一人芝居バージョン[S] >25日(金)20:00、27日(日)15:30  澤井里依  
         複数バージョン[A] >26日(土)12:00、26日(土)20:00
          佐々木穂香、澤井里依、他
         複数バージョン[B] >26日(土)15:30、27日(日)12:00
          宮下牧恵、澤井里依、他

高村光太郎の妻・智恵子の物語。裕福な家庭に生まれた彼女は、東京で高村光太郎と出会い、結婚。才気煥発な智恵子だったが、ふたりの関係は少しづつ変わってゆく。光太郎が芸術家として前進する一方、自分の絵は認められることはなかった。『智恵子抄』に描かれた「あなた」であらんとするため、必死でもがく智恵子-本当に、私はこんなにも綺麗に死ぬことが出来るのかしら。

作・野田秀樹 演出・外輪能隆 上演時間・約1時間30分(休憩なし)

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「売り言葉」は、平成14年(2002)、野田秀樹氏の脚本、主役・大竹しのぶさんで初演されました。登場人物は智恵子のみの一人芝居です。

翌年に新潮社から出版された野田さんの脚本集『二十一世紀最初の戯曲集』に収められ、その後、プロアマ問わず、多くの公演で取り上げられています。

モラハラともいえる光太郎の芸術至上主義の犠牲となった智恵子、という観点で、徐々に壊れていくその描写が秀逸でした。

今回、「複数バージョン」という試みが為されるそうで、元来が一人芝居であるものを、どう複数で演じるのか、興味のあるところです。

お近くの方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

生きた言葉の美しさ。 利害を絶した天の声こそ まことに此世をせいせいさせる。  
 商量思念に我を持つ言葉は 結局あはれな陳列物。 自然と涌いてあやまたない、 さういふ言葉を語る人に 雲のやうな無限がある。

詩「或会議に列して」より 昭和16年(1941) 光太郎59歳

「或会議」は、光太郎も議員として出席した第一回中央協力会議。大政翼賛会中央本部で開催されました。終了後、同じく議員だった菊池寛、尾崎士郎と行った座談会の筆記が雑誌『モダン日本』に掲載されています。冒頭の光太郎の発言。

今日あたり聴いてゐて、人のしやべる欲望の物凄さを感ずるですね。自分でしやべつてゐて、頭がわるくなつてしまふのか、同じことを五人も六人も話したことを忘れて、やつぱりちつともやめないんですね。

それが「商量思念に我を持つ言葉」「結局あはれな陳列物」ということなのでしょう。何だか、どこぞの国の国会や閉会中審査なる会議のようですね(笑)。

しかし、三人とも、議長を務めた後の内務大臣、海軍大将の末次信正については賞賛しています。

尾崎 しかし僕はあの議長は非常に立派だと思つたですね。あの人が変つたら、何か感じが少し変りは
    しない
かと思ふ。(略)僕はちょっと眠つちやつたけれども、気がつくと、末次さんが眼をギ
    ラギラしてやつてゐ
るので、何か壮烈な感じがしたですね。
菊池 長くなつた人なんか遠慮しないで「簡単に願ひます」なんてやつてゐた。
尾崎 はつきり処理しながら、なかなか思ひやりもあつて、情義兼ね備はつてゐるね。
高村 ゆつたりやつてゐるから、面白いですね。

当方も人前で話す機会が結構あるのですが、「自然と涌いてあやまたない、 さういふ言葉」を心がけようと思います。

千葉県柏市から、公演情報です。
場  所 : アミュゼ柏 クリスタルホール 千葉県柏市柏6-2-22
時  間 : 開場14:00 開演14:30
料  金 : 3,000円
主  催 : 民話の世界・光太郎と智恵子の世界実行委員会

プログラム  演出:成瀬芳一
  <第一部>民話の世界  ・耳無し芳一 ・ベロ出しチョンマ
  <第二部>光太郎と智恵子の世界
   ・智恵子抄三章    詩 高村光太郎  作曲  青木省三
   ・星になった智恵子  作 佐藤直江    監修  山田典子

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第二部が「智恵子抄」系で、「歌と朗読とピアノのコラボ」だそうです。

同じ千葉県内ということもあり、拝聴に行ってこようと思っております。皆様も是非どうぞ。


【折々のことば・光太郎】

天然の ふかい呼吸に こころは 沈みまたをどる

詩「海はまろく」より 大正5年(1916) 光太郎34歳

まだまだ寒い日が続きますが、日の光などからは確実に春を感じます。春というと、「春の息吹」という語をよく耳にします。冬の間、息をひそめていた山川草木禽獣虫魚が、ゆっくゆっくり、息を吹き返すようなイメージでしょうか。毎朝、だいたい夜明けとともに愛犬と散歩に出かけますが、地球が呼吸をしているな、と感じる今日この頃です。

名古屋から朗読劇の公演情報です。
会  場 : HITOMIホール 名古屋市中区葵三丁目21番19号メニコンアネックス5F
時  間 : 1/24 19:00開演(18:15開場)
       1/25 1回目 15:00開演(14:00開場) 2回目 19:00開演(18:15開場)
料  金 : 2,500円(全席自由)
出  演 : 朗読・光太郎/榊原忠美 ヴァイオリン/水野慎太郎
       チェロ/河井裕二 ハープ/田中敦子 宗川諭理夫(企画・作曲)
主  催 : メニコンビジネスアシスト(MBA)イベント事業部
問い合せ : メニコンビジネスアシスト(MBA)イベント事業部
電話予約 : 052-938-6232(平日10:00~17:00)
メール予約   : 
mba-event@menicon-net.co.jp
※お名前、チケット枚数、ご連絡先電話番号、チケット郵送先ご住所を明記のうえ、メールを送信ください。

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昨年3月、同じ会場で同名の公演がありました。キャストや音楽の楽器が変更になっていますが、基本、再演と捉えて良いのではないかと思われます。再演されるだけ、初演が好評だったということでしょうか。とすればありがたいことです。


【折々のことば・光太郎】

我等は為すべき事を為し 進むべき道を進み 自然の掟を尊んで 行住坐臥我等の思ふ所と自然の定律と相戻らない境地に到らなければならない 最善の力は自分等を信ずる所にのみある

詩「或る宵」より 大正元年(1912) 光太郎30歳

この時期の光太郎詩文には、「自然」の語が目立つように成ってきます。

一般に「自然」の語には二通りの意味が考えられます。「大自然」という意味で、英語でいうところの「nature(ネイチャー)」的な意味―「天性」の意も含みます―と、形容動詞「自然だ」の語幹用法として、同じく「natural(ナチュラル)」を表す意味。

後の「道程」の、「ああ、自然よ」などもそうですが、光太郎曰くの「自然」は、「nature(ネイチャー)」である大自然、自己内部の天性に対し、「natural(ナチュラル)」に従うこと、といった意味で使われているように思われます。

ネットで検索中に演劇の公演情報を見つけました。

蒼井まつりひとり芝居『売り言葉』

日  時 : 2017年1月21日  18時半開場 19時開演
                 22日 11時半開場 12時開演 / 16時半開場 17時開演
会  場 : 絵空箱 新宿区山吹町361 誠志堂ビル
          (有楽町線「江戸川橋」駅 徒歩2分/東西線「神楽坂」駅 徒歩9分)
料  金 : 前売 3,000円 / 当日 3,500円 (1ドリンク込)
演  出 : 由利江美
出  演 : 蒼井まつり
ピ  ア  ノ : 福島剛
声の出演 : 芝田穂積, 和田安弘
予約/問合   : 090-3233-1249 (波美山) / reliure.ryodan@gmail.com

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「売り言葉」は、平成14年(2002)、野田秀樹氏の脚本、大竹しのぶさん出演で初めて上演されました。登場人物は智恵子のみの一人芝居です。

翌年に新潮社から出版された野田さんの脚本集『二十一世紀最初の戯曲集』に収められ、その後、プロアマ問わず、多くの公演で取り上げられています。

さまざまな要因がからみあい、徐々に心の均衡を失っていく智恵子、そしてその背後に要因の多くを作った光太郎の姿が描かれ、なかなか手厳しい内容ですが、この手のものの中では秀逸といえる作です。

ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

きりきりと錐をもむ 用はなけれど錐をもむ 錐をもめば板の破るるうれしさに
詩「泥七宝(一)」より 明治44年(1911) 光太郎29歳

「錐」は「きり」、「板」はおそらく木彫に使うための材料と推定されます。

それが度を超して昂じると「強迫性障害」という診断が下りますが、誰にでもこのように無意味な行為に没頭してしまうという経験はあるのではないでしょうか。

運命的に智恵子と出会う直前の、焦燥感に満ちた光太郎の内面がさりげなく表されているようです。

九州・福岡から演劇の公演情報です。気がつくのが遅れ、ご紹介が遅くなってしまいました。申し訳ありません。 

サザンクス筑後ぱふぉーまんす集団センゲキ第16回公演「ELEGANCE FIGHT~元始、女性は太陽であった~」

期 日 :  2016年5月15日(日)
時 間
 : 14時開演(13時30分開場)
会 場 : サザンクス筑後 小ホール  福岡県筑後市大字若菜1104
料 金 : 一般1,000円 / 小・中・高校生500円  全席自由 未就学児入場不可
主 催 : (公財)筑後市文化振興公社
後 援 : 筑後市、筑後市教育委員会

原典 : 宮本研・作『ブルーストッキングな女たち』
脚本・脚色・演出 : 久保田りき
キャスト サザンクス筑後専属劇団“ぱふぉーまんす集団SENGEKI

 平塚らいてう/富安美沙子 荒木郁子/久間明日香 神近市子/古賀美紅
 保持研子/角有紗 伊藤野枝/松本渚 尾竹紅吉/後藤杏奈 掘保子/藤木菜穂
 松井須磨子/後藤奈津実 辻三津・市川房枝/澁江綾香
 高村智恵子・与謝野晶子/河口智美

西暦1911年(明治44年)「青鞜(せいとう)」という女性文芸雑誌が発刊されました。編集していたのは女性たち。その中心となった人物は「平塚らいてう(らいちょう)」。彼女のもとに個性豊かな女性たちが集い「青鞜」は生まれたのです。その翌年、明治天皇が崩御し元号は大正となります。時代が移り変わるように、女性たちも「人として生きる道」を探り、戦い、実践した時代。この「青鞜」に関わった女性たちの生き様には『優美』かつ『激闘』という言葉がふさわしいと思い、このタイトルとしました。100年も昔…、いいえ、その時から100年しか経っていないのです。現代に通じる何かを探しながら、ぜひご覧下さい。
作品のベースとさせていただいたのは、宮本研・作「ブルーストッキングの女たち」。ぱふぉーまんす集団センゲキの10人の女性たちに合わせ脚色させていただきました。女性の恋愛を描くには、当然の如く男性キャストが必要です。しかし、現在センゲキは女性ばかり。あえず男性を登場させず女性たちだけで描く内容に挑みました。解釈の違い等もあり、フィクション・ノンフィクション入り混じった構成でありますが、センゲキの描く「青鞜」を…。「女性たち」をお楽しみいただければ幸いです。ご来場心よりお待ちしています。

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youtubeに、プロモーションビデオも公開されていました。かつて『青鞜』メンバーは、光太郎曰く「女水滸伝」と言われていたとのこと。しかし、キャストの皆さん、かわいらしい女性ばかりです(笑)。


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というわけで、日本女子大学校で智恵子と同じ家政科の一級上だった平塚らいてうを主人公とし、『青鞜』の旗の下に集まった女性たちを描く舞台、ということです。智恵子も登場します。ありがたいです。

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その他、日本女子大学校出身の『青鞜』メンバーについてはこちら

ところで、PVの冒頭にあったのですが、九州では今、熊本を中心とする震災により大変な状況です。しかし、彼女たち、今、自分たちでできることを精一杯やることで、復興支援に繋げたいとの思いから、一時は自粛も検討したものの、予定通り公演を実施するとのこと。さらに収入の一部は、被災地に寄付なさるそうです。それでいいと思います。

是非、観に行きたいのですが、残念ながら花巻高村祭と同一の日程のため、行けません。残念です。遠くみちのくから九州に思いを馳せることと致します。お近くの方は是非どうぞ。


【折々の歌と句・光太郎】

口紅の女も買ふや夏蜜柑         明治42年(1907) 光太郎27歳

欧米留学末期、スイス経由イタリア旅行中の作です。「夏蜜柑」というよりオレンジ的なものなのでしょう。石畳のイタリアマルシェ、小太りの陽気なヒゲの店主が「お嬢さん、一つどうだ?」……勝手な想像ですが(笑)。

東京・内幸町から舞台公演の情報です。

第29回ゆーりんプロデュース公演・新人公演 ~詩と語りと芝居で紡ぐ~「智恵子抄」

期   日 : 2016年4月7日(木)~10日(日)
会   場 : 千代田区立内幸町ホール 千代田区内幸町1-5-1
時   間 :
 4月 7日(木) 18:15開場 19:00開演 プロデュース公演☆    
 4月 8日(金) 18:15開場 19:00開演 プロデュース公演◎
 4月 9日(土) 12:15開場 13:00開演 プロデュース公演◎
                    17:15開場 18:00開演 プロデュース公演☆
 4月10日(日) 12:15開場 13:00開演 新人公演
                     17:15開場 18:00開演 新人公演
劇作・脚本 : よこざわけい子
演   出 : こじま智之
音   楽 : 石山理
出   演 : 
 プロデュース公演☆ ・・・ 北斗誓一 池田祐子 山端零     他
 プロデュース公演◎ ・・・ 長野伸二 近藤波美 池田拓馬   他
 新人公演        ・・・ 眞對友樹也 石原佳奈 高塚智人 村上奈津実 他
料   金 : 前売り4000円  当日4300円 (全席指定)

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声優としてもご活躍中のよこざわけい子さんが代表を務められる「ゆーりんプロ」さんの公演です。複数回公演がありますので、行きやすいのではないでしょうか。

このところ、この手の公演が立て続けにあって、ありがたいかぎりです。


奥深く示唆に富む光太郎智恵子の世界、様々な解釈はあるかと思いますが、それぞれの視点で料理していただいて結構ですので、どんどん取り上げていただきたいものです。


【折々の歌と句・光太郎】

しろ菫落しゝながらその水のその平和(やすらぎ)にたゞまかせつる

明治34年(1901) 光太郎19歳

春本番、あちこちで菫の花も目に付くようになりました。

大阪から演劇公演の情報です。
期  日 : 2015/12/11(金) ~ 2015/12/13(日) 
会  場 : 
ABCホール 大阪市福島区福島1丁目1番30号
主  催 : 劇団レトルト内閣

出  演 :
よしもとともしよ、福田恵、川内信弥、Q本かよ、たはらもえ、山浦徹(化石オートバイ)、森田祐利栄(エイチエムピー・シアターカンパニー)、平本茜子(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)、Maa(teamおしとやか。/pat'Z)、鎌谷潤吉(僕らの陰謀)、山田麻結、小佐田貢、福良千尋、田中尚樹(劇団そとばこまち)、北代祐太(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)、野村亮太、古川寛、藤原奈津子、田辺学(カンセイの法則)、佐々木ヤス子、もえこぴーなっつ、sax/武井努、piano/西島芳、bass/井上歩、drums/原口裕司

脚  本 : 三名刺繍
演  出 : 三名刺繍
料  金 : 3,500円 ~ 3,800円  (前売り3,500円 当日3,800円) 5歳未満は入場不可
サ イ ト : 
http://www.retoruto.com/ ※正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

タイムテーブル:
12月11日(金) 19:30
12月12日(土) 15:00/19:00★
12月13日(日) 13:00/17:00☆
★の回はアフターイベント『リーマン俳優こみたおのリーマン講座「まことに神の造りしサラリーマン」』開催
☆の回はアフターイベント『安定志向のネタ披露「安定志向 M-1への道程」』開催

“あなたが黙つて立つてゐると まことに神の造りしものだ”
稀代の詩人として名を馳せた芸術家、高村光太郎。
女流洋画家を志した光太郎の妻、智恵子。
ふたりの愛は詩集『智恵子抄』に綴られ、今なお読み継がれている。
「チエコショウ?名前くらいは知ってるわ」
21世紀のある日、夫は妻に詩集を贈り、妻はその詩にメロディーをつけた。
綴られた言葉は歌になり、時をこえて問いかける―
“あなたが今いるその場所から、ほんとの空は見えていますか?”
劇団レトルト内閣、原点回帰のエレガンスロック音楽劇。
日本史上最も有名なラブストーリー・智恵子抄。

スタッフ :
照明/奥野淳也 舞台監督/奥田宏人 舞台監督補佐/土井隆(劇団そとばこまち)
舞台美術/サカイヒロト 音響/八木進(baghdad cafe') 効果映像/ハシモトシンゴ(paravora)
制作協力/宮崎由美(スタッフステーション) 意匠指導/東學(一八八) デザイン/川内信弥
衣装/Q本かよ・山田麻結・野元楓 写真撮影/一宮辰徳 映像撮影/武信貴行


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だいぶ宣伝にも力を入れているようで、劇団としての「やる気」が感じられます。

せっかくいい取り組みをしていても、事前にこれといった宣伝もないケースが多く見られます。ブログなどで、「光太郎智恵子をとりあげました」とレポート的な記述があり、「ああ、こんな公演があったんだ」と気がつき、しかし、同じブログを遡って調べても、「光太郎智恵子をとりあげます」という事前の告知が書いていない、ということが何度かありました。だからといって、「やる気」のなさの表れというわけでもないのでしょうが、できるかぎりのことはしてほしいものです。

閑話休題。題名の「まことに神の造りしをんな」というのは、「智恵子抄」中の「あなたはだんだんきれいになる」(昭和2年=1927)という詩から採ったものでしょう。
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   あなたはだんだんきれいになる

をんなが附属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際を飛ぶ天の金属。
見えも外聞もてんで歯のたたない
中身ばかりの清冽な生きものが
生きて動いてさつさつと意慾する。
をんながをんなを取りもどすのは
かうした世紀の修行によるのか。
あなたが黙つて立つてゐると
まことに神の造りしものだ。
時時内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる。

この詩はまだ智恵子の心の病が顕著になる前の作。福島の長沼家も健在でした。

智恵子歿後の昭和15年(1940)に書かれた随筆「智恵子の半生」(原題「彼女の半生」)で、光太郎自身が引用、解説しています。

 彼女は裕福な豪家に育つたのであるが、或はその為か、金銭には実に淡泊で、貧乏の恐ろしさを知らなかつた。私が金に困つて古着屋を呼んで洋服を売つて居ても平気で見てゐたし、勝手元の引出に金が無ければ買物に出かけないだけであつた。いよいよ食べられなくなつたらといふやうな話も時々出たが、だがどんな事があつてもやるだけの仕事をやつ003てしまはなければねといふと、さう、あなたの彫刻が中途で無くなるやうな事があつてはならないと度々言つた。私達は定収入といふものが無いので、金のある時は割にあり、無くなると明日からばつたり無くなつた。金は無くなると何処を探しても無い。二十四年間に私が彼女に着物を作つてやつたのは二三度くらゐのものであつたらう。彼女は独身時代のぴらぴらした着物をだんだん着なくなり、つひに無装飾になり、家の内ではスエタアとズボンで通すやうになつた。しかも其が甚だ美しい調和を持つてゐた。「あなたはだんだんきれいになる」といふ詩の中で、

をんなが附属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際を飛ぶ天の金属

と私が書いたのも其の頃である。


二人の生活は、赤貧洗うが如しというほどではなかったにしろ、少なくとも智恵子は着飾ることは無くなりました。

そんな智恵子をして、「あなたはだんだんきれいになる」と謳う光太郎。たしかに智恵子は世間一般の女性よりも、服装その他に頓着することはなかったのかもしれませんが、ここに後の大きな悲劇につながる危険性が見て取れるような気がします。

それを題名に持ってくるあたり、単なる二人の純愛物語、という作りではないのでしょう。といって、PVや公式サイトで見る限り、リスペクトの要素も見て取れますので、期待したいと思います。


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 11月21日

平成12年(2000)の今日、鳥取県立図書館で「高村光太郎の書――用と美の間(あわい)」展が開幕しました。

日本教育大学協会全国書道教育部門、全国大学書道学会、全国大学書写書道教育学会の三学会合同大会を記念する催しでした。関連行事として当会顧問・北川太一先生の記念公演「光太郎の人と書論」が、24日、鳥取県民文化会館で開催されました。

演劇の公演情報です。 
期  日 : 2015/10/29(木) ~ 2015/10/31(土) 
会  場 : 「劇」小劇場 東京都世田谷区北沢2-6-6
出  演 : 田辺誠二 新宮あかり 山田零 篠崎旗江 松本力 河村啓史 金崎敬江 日野加奈愛 他
脚  本 : 平田オリザ(劇団青年団)
演  出 : 川口典成
料  金 : 前売3,000円  当日3,300円

 タイムテーブル :
 10月29日(木)19:00 10月30日(金)15:00/19:00
 10月31日(日)13:00

 説  明 :
J-Theater日本人作家シリーズ 2015年秋
 第一弾は、劇団青年団主催で劇作家・演出家の平田オリザさんの『暗愚小傳』を送ります!
 高村光太郎と智恵子の生活を素材に、変わりえぬ日常を縦軸に、文学者の戦争協力の問題を横軸に、詩人の守ろうとしたものを独特の作劇で淡々と描く・・・。
 (青年団HPより)
 
チケットのご予約はJ-Theater事務局まで info.jheater@gmail.com
公演日時/お名前(漢字+カナ)/ 枚数をご明記のうえ、お申し込みください。

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演目は平田オリザ氏作「暗愚小伝」。光太郎を主人公とした演劇で、初演は昭和59年(1984)。その後、平田氏率いる劇団・青年団さんによって何度か再演され、昨年から今年にかけても公演がありました。

今回演じるのはは青年団さんではないようです。「ドナルカ・パッカーン」というのが劇団名なのだと思いますが、よくわかりません。

詳細な情報をご存じの方は、こちらまでお知らせいただければ幸いです。


【今日は何の日・光太郎 拾遺】 10月16日

昭和4年(1929)の今日、友人達と赤城山に登りました。

同行者は高田博厚、岩瀬正雄、岡本潤、草野心平、逸見猶吉、横地正次郎でした。

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