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最低でも春と秋、半年に一度はこのネタが使えるので助かっています(笑)。

知恩院春のライトアップ2025(夜間特別拝観)

期 間 : 2025年3月26日(水)~4月6日(日)
時 間 : 17時45分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       友禅苑 国宝三門周辺 女坂 国宝御影堂 阿弥陀堂(外観のみ)
料 金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)

京友禅の祖・宮崎友禅翁ゆかりの庭園「友禅苑」や、日本最大級の木造二重門である「三門」、「男坂」など境内各所をライトアップいたします。ぜひこの機会に、知恩院へお参りください。

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みどころ

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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御影堂(国宝)
寛永16(1639)年、徳川家光公によって再建されました。間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。
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関連行事
聞いてみよう!お坊さんのはなし
 テーマ『心に芽(め)ばえを~くらしの中に生きる仏教~』
 開始時間:18:00~/18:45~/19:30~/20:15~
 (各回お話15~20分、木魚念仏体験5~10分程度)

月かげプレミアムツアー
ライトアップ拝観エリアすべてを僧侶と一緒に巡る特別ツアーです。御影堂内陣や大方丈などの通常非公開部もご案内! 1時間30分たっぷりと知恩院の魅力をご体感いただけます。
 日程:木・土・日
 開始時間:18:00~
 所要時間:約1時間30分
 定員:各回30名様まで
 料金:お1人様3,000円(小・中学生1,500円)
 ライトアップ拝観料込み。
 料金は拝観受付にて現金でお支払いください。

おてつぎフェス2025 有志メンバーによる京都市ジュニアオーケストラ 室内楽コンサート
 3月26日(水) 18時30分~ / 19時50分~ (各40分) 浄土宗総本山 知恩院 集会堂
京都市東山区に位置する歴史深い知恩院にて、京都ジュニアオーケストラの有志メンバーが、春のライトアップにあわせて室内楽によるコンサートを開催します。
弦楽四重奏、ヴァイオリン四重奏、木管五重奏、弦楽合奏のさまざまな編成によるフレッシュなアンサンブルにぜひご期待ください!
会場は畳となります(椅子の持込は可能です。他のお客様の妨げにならないようにご配慮をお願いします)。満員の場合は、ご入場をお断りする場合があります。鑑賞無料 別途ライトアップ拝観料が必要 大人800円。当日は高校生以下無料
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ライトアップ同時開催企画展示
 『夢中 伝承の川―春―』 3月28日(金) ~ 3月30日(日)
  場所 友禅苑 茶室「白寿庵」・「華麓庵」
  林 侑子(陶芸家)、REKAO(千代紙)
  京焼・清水焼、友禅和紙
  ともに長く受け継がれてきた京都の伝統工芸、
  やきものと和紙が作り出す今の工芸の"二祖対面"。
  孔雀や川をモチーフに表現した作品を展示します。

 『千代紙の色と模様』 4月4日(金) ~ 4月6日(日)
  場所 友禅苑 茶室「華麓庵」
  REKAO(千代紙)
  桜柄の千代紙をあしらった金屏風を展示いたします。
  金屏風は前のものを輝かせるという存在でもあり、
  御来苑される方々を輝かせたいという
  願いを込めて制作いたしました。

 『鬼より強い守り神』
  場所 友禅苑 茶室「白寿庵」・「華麓庵」
  吉田瑞希(陶芸家)
  魔除け・勉学の神様「鍾馗(しょうき)」をテーマにした展示。
  京都の町家で見かける屋根瓦の鍾馗とは異なる表現で、
  京都の民間信仰を新たな視点から紹介します。
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光太郎の父・光雲の聖観音像(上記マップの右下です)、正確には東京美術学校として依頼され、光雲が主任となって制作されました。明治25年(1892)のことでした。原型は美校の後身・東京藝術大学さんに残されています。
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ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

毎日いそがしくやつて居ます、今年は来月十和田湖に遊びにまゐる予定です、

昭和27年(1952)5月23日 永瀬清子宛書簡より 光太郎70歳

十和田湖にまゐる」は、生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作の下見のため。ただ、まだ青森県からの依頼を受けるかどうか確定していませんので、事情を知らない相手には詳細は伏せていました。

春と秋、年2回恒例のイベントの「秋」編です。一昨日には始まっていました。

浄土宗総本山知恩院秋のライトアップ2024

期 間 : 2024年11月14日(木)~12月1日(日)
時 間 : 17時45分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       友禅苑 国宝三門周辺 女坂 国宝御影堂 阿弥陀堂(外観のみ) 大鐘楼
料 金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)
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みどころ

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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御影堂(国宝)
寛永16(1639)年、徳川家光公によって再建されました。間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。
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大鐘楼(重要文化財)
大鐘は高さ3.3m、直径2.8m、重さ約70トン。寛永13(1636)年に鋳造され、日本三大梵鐘の1つとして広く知られています。僧侶17人がかりで撞く除夜の鐘は京都の冬の風物詩として有名です。
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関連行事
聞いてみよう!お坊さんのはなし テーマ『縁に導かれて』
 開始時間:18:00~/18:45~/19:30~/20:15~
 (各回お話15~20分、木魚念仏体験5~10分程度)

月かげプレミアムツアー
ライトアップ拝観エリアすべてを僧侶と一緒に巡る特別ツアーです。御影堂内陣や大方丈などの通常非公開部もご案内!1時間30分たっぷりと知恩院の魅力をご体感いただけます。
 日程:水・土・日・祝日
 開始時間:18:00~
 所要時間:約1時間30分
 定員:各回30名様まで
 料金:お1人様3,000円(小・中学生1,500円)
 ライトアップ拝観料込み。
 料金は拝観受付にて現金でお支払いください。

フォトコンテスト
 応募締切:12月4日 (期間中は何度でも投稿が可能です)
 12月中旬に入賞者を知恩院ホームページ、各SNSにて発表!

ライトアップ同時開催企画展示
 『夢中 伝承の川』 11月22日(金) ~ 11月24日(日)
  場所 友禅苑 茶室「白寿庵」・「華麓庵」
  林 侑子(陶芸家)、REKAO(千代紙)
  京焼・清水焼、友禅和紙 ともに長く受け継がれてきた京都の伝統工芸、
  やきものと和紙が作り出す今の工芸の"二祖対面"。
  孔雀や川をモチーフに表現した作品を展示します。
  REKAOの千代紙を使った御朱印帳を朱印所にて販売します。

 『吉田瑞希×中川彩河 二人展』 11月29日(金) ~ 12月1日(日)
  場所 友禅苑 茶室「白寿庵」・「華麓庵」
  吉田瑞希(陶芸家)
  「鍾馗(しょうき)」という中国から日本に伝わってきた、
   屋根に佇む魔除けの神様を中心に展示します。
  中川彩河(書道家)
   例年好評の『新年をことほぐ干支色紙』など日常に楽しめる書作品を中心に展示。
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当会としては、光太郎の父・光雲が主任となって東京美術学校として請け負ったブロンズ露座の「聖観音像」のライトアップが推しです。一昨年には、たまたまこの時期にお友達と京都旅行に行った妻に写真を撮ってきて貰いました。

その他、関連行事等も充実。ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

彫刻家はどうしても光線に神経を左右せられがちです、ロダンの彫刻なども光線によつて見違へるやうに変ります。ロダンがバルザツク像は月光の下で見てくれなどとぜいたくな事をいつてゐるのもそのせゐでせう、


昭和25年(1950)6月1日 奥平英雄宛書簡より 光太郎68歳

人工的な光ではありますが、紅葉をバックに浮かび上がる観音像、幻想的なヴィジュアルでしょう。

京都府の書画骨董店・思文閣さん。代表取締役の田中大氏は、テレビ東京系「開運! なんでも鑑定団」鑑定士のお一人としてご活躍中です。

年に数回、「大入札会」と銘打ち、「下見会」として展示を行った上でのオークション形式での販売にも力を入れられています。昨年は光太郎の父・光雲の木彫「聖徳太子像」や光雲の書なども出品されました。
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当方、だいぶ以前にオークション形式でない出品物(楠公銅像の錦絵――一昨年、花巻高村光太郎記念館さんでの企画展「第二弾・高村光太郎の父・光雲の鈿女命(うずめのみこと) 受け継がれた「形」」の際にお貸ししました。)を一度購入、それから同社刊行の書籍を3回程購入しました。平成8年(1996)に思文閣美術館さんで開催され、観に行けなかった智恵子抄展の図録、同じく平成23年(2011)に大阪の逸翁美術館さんでの「与謝野晶子と小林一三」展の図録。後者は平成30年(2018)に神奈川近代文学館さんで開催された特別展「生誕140年 与謝野晶子展 こよひ逢ふ人みなうつくしき」にも出品された光太郎と晶子のコラボによる屏風絵2種が載っており、亡き北川太一先生に頼まれて2冊買いました(どちらもまだ在庫があるかも知れません)。
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その程度の購入歴なのですが、思文閣さん、律儀に毎回目録を送って下さっています。オークション形式でない通常の販売品の目録も。恐縮です。

で、今月開催の大入札会の目録も。
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手元に届く前にネット上の情報で知り、仰天していたのですが、今回、光太郎の書が2点出ています。

2点とも色紙ですが、まず短歌「吾(われ)山に流れてやまぬ山みづのやみがたくして道はゆくなり」。
吾山に
もう一点は詩、というか七五調四句の今様スタイル。
観自在
「観自在こそたふとけれ/まなこひらきてけふみれば/此世のつねのすがたして/吾身はなれずそひたまふ」。

どちらも「中原綾子旧蔵」のキャプション。中原綾子といえば、つい先だって、令孫から光太郎の中原宛書簡がごっそり花巻市に寄贈されました。その際に、「書は寄贈されませんでしたか」と問い合わせたところ、「それはなかった」とのことでした。なぜそんな質問をしたかというと、中原の詩集『灰の詩』(昭和34年=1959)に、光太郎の書が2点、口絵として使われていたためです。

1点は「不可避」と書いたもの。
灰の詩 不可避
そしてもう1点が、今回、思文閣さんで出品している「観自在こそ」です。
灰の詩 観自在
これが出て来たので、仰天した次第です。

「不可避」は思文閣さんの出品に含まれず、逆に思文閣さんで出している「吾山に」の書は中原の著書に使われていません。

ちなみに「吾山に」「観自在こそ」「不可避」、それぞれ光太郎が戦後に好んで書き、複数の揮毫が知られています。その意味では新発見ではありませんが。

さて、冒頭近くに書いた通り、下見会が昨日から開催中です。

令和6年9月 思文閣大入札会 下見会

期 日 : 2024年9月9日(月)~9月15日(日)
会 場 : ぎゃらりい思文閣 京都市東山区古門前通大和大路東入ル元町386
時 間 : 10:00~18:00 最終日は17:00まで
料 金 : 無料

光太郎以外も逸品ぞろいで、目録を見ただけでクラクラするレベルです。

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ぜひ足をお運び下さい。

それから、先回りしておきますが、光太郎書を落札された方、死蔵にならないよう、依頼があれば快く貸し出すといった対応をしていただければと存じます。

 【折々のことば・光太郎】

其後真剣に考へてみましたが、東京へ行つてアトリエを建てる金がまづありません。アトリエが無いとしたら、東京に居ても此処に居ても同じことです。 原稿でわづかに金をとるとしても彫刻ではとても取れないでせう。従来とても彫刻では殆ど金をとつてゐなかつた次第です。

昭和24年(1949)6月5日 草野心平宛書簡より 光太郎67歳

当会の祖・心平らは、花巻郊外旧太田村での光太郎のある意味凄惨な蟄居生活を見て、何よりその身体を心配し、再三、上京を促しました。

この頃には後に光太郎が借りる中野のアトリエ(現在、保存運動を行っております)が貸し出され始めたと思われますが、そういうシステムはおそらくそれまでに無く、心平も光太郎も気づかなかったのではないでしょうか。

京都の和菓子店・一夢庵さん。主力はようかんマカロン。それぞれに『源氏物語』などの古典文学や「文豪」ということで近代文学、そして流行りの刀剣などをからめ、様々な商品を販売なさっています。

光太郎がらみもラインナップに入れて下さっていて、いつ頃商品化されたのかよくわからないのですが、最近気が付いて早速2点取り寄せしました。

まず「文豪ようかん 高村光太郎 智恵子抄 柚子味」。
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パッケージを剥くと、こんな感じ。一口サイズ的な。
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白あんベースにレモンならぬ同じ柑橘系ということで柚子ジャムが練り込まれています。

それから「文豪マカロン 高村光太郎 道程 塩キャラメル味」。
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こちらも一口サイズで、周りをキャラメルソースで固めています。どこに光太郎との関連が、という感じではありますが(笑)。まぁ。遊び心あふれる品々、ということで。

他に食品でない雑貨類もいろいろ販売されており、ようかんを切るナイフなども、絶大な人気を誇る「三日月宗近」や新選組鬼の副長・土方歳三の愛刀「和泉守兼定」だったりします(笑)。

ちなみに文豪は以下の通り。

芥川龍之介 有島武郎 泉鏡花 井伏鱒二  江戸川乱歩  尾崎紅葉 織田作之助 梶井基次郎  川端康成  河東碧梧桐 菊池寛 北原白秋 国木田独歩 久米正雄 小林多喜二  坂口安吾   佐藤春夫 志賀直哉 島崎藤村 高浜虚子 高村光太郎 太宰治  谷崎潤一郎 田山花袋 檀一雄 坪内逍遙 徳田秋聲 永井荷風 中島敦 中野重治 中原中也 夏目漱石 新美南吉 萩原朔太郎 樋口一葉 二葉亭四迷 正岡子規 宮沢賢治 武者小路実篤 室生犀星 森鷗外 山本有三   夢野久作 与謝野晶子

ようかんとマカロン、双方がある者と、片方だけの者とに分かれているようで、光太郎は双方あってありがたいところでした。

代金、送料等は以下の通り。
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クール宅急便での配送となり、その分、送料がちょっとかさみます。

ちなみに自宅兼事務所には悪い奴がいて、油断するとこうなります。過日、九州に行っていた妻の土産。
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犯猫(はんにゃん)。
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マカロンはまだ食べていないので、気をつけます(笑)。

皆様もぜひお買い求めを。

【折々のことば・光太郎】

小屋につきますと文部省から手紙が来てゐまして、帝国芸術院会員に推せんするから承諾しろといふ事でした。あのよぼよぼな敬老院は閉口なので謝絶するつもりですが御意見如何でせう。


昭和22年(1947)10月16日 佐藤隆房宛書簡より 光太郎65歳

結局、断りました。また、のちに昭和28年(1953)にも芸術院会員への推薦があったのですが、こちらも受けませんでした。

そろそろ桜便りも届き始めていますね。それに合わせて全国各地で夜間ライトアップ等が催されます。光雲、光太郎ゆかりの場所でのそれをご紹介します。

まず京都。光太郎の父・光雲が主任となって原型を制作した鋳銅の聖観音像(露座)もライトアップされます。

春のライトアップ2024

期 間 : 2024年3月23日(土)~4月3日(水)
時 間 : 17時45分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       友禅苑 国宝三門周辺 女坂 国宝御影堂 阿弥陀堂(外観のみ) 大鐘楼
料 金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)
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みどころ

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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御影堂(国宝)
寛永16(1639)年、徳川家光公によって再建されました。間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。
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大鐘楼(重要文化財)
大鐘は高さ3.3m、直径2.8m、重さ約70トン。寛永13(1636)年に鋳造され、日本三大梵鐘の1つとして広く知られています。僧侶17人がかりで撞く除夜の鐘は京都の冬の風物詩として有名です。
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関連行事
聞いてみよう!お坊さんのはなし テーマ『一心に専(もっぱ)ら』~開宗850年への思い~
手の正しい合わせ方が分からない。仏教の話は難しそう…。お坊さんの話を今まで聞いたことがない。どのようなお方も大歓迎です! 気軽に御影堂へいらしてください。正座じゃなくて大丈夫です。椅子席もありますよ! お話の後、木魚にふれ「南無阿弥陀仏」とお称えする、木魚念仏体験の時間があります。日常を忘れ、心静かなひとときを味わってみませんか?
開始時間:18:00~ 18:45~ 19:30~ 20:15~(各回お話15~20分、木魚念仏体験5~10分程度)
知恩院七不思議のひとつ「忘れ傘」をモチーフにした缶バッジを参加者全員に差し上げます!(無くなり次第終了)
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月かげプレミアムツアー
ライトアップ拝観エリアすべてを僧侶と一緒に巡る特別ツアーです。御影堂内陣や大方丈などの通常非公開部もご案内!1時間30分たっぷりと知恩院の魅力をご体感いただけます。
 日程:毎夜開催
 開始時間:17:45~/19:30~
 所要時間:約1時間30分
 定員:各回30名様まで
 料金:お1人様3,000円(小・中学生1,500円)
 ライトアップ拝観料込み。料金は拝観受付にてお支払いください。
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ライトアップ同時開催企画展示
 「鬼より強い守り神」 3月23日(土) ~ 3月27日(水)
  吉田瑞希・陶芸家
  「鍾馗(しょうき)」という中国から日本に伝わってきた、屋根に佇む魔除けの神様。
  友禅苑 茶室「白寿庵」(23日(土)・24日(日)のみ)、茶室「華麓庵」
 「千代紙の色とデザイン」 3月29日(金) ~ 3月31日(日)
  REKAO 桜柄の千代紙の屏風や、14枚の型で染め上げられた椿柄の屏風等を展示。
  友禅苑 茶室「華麓庵」
  REKAOの千代紙を使った御朱印帳を御朱印所にて販売します。
  販売日:3月23日(土)、24日(日)、29日(金)、30日(土)、31日(日)
 「花明 Ceramic × Scissors Vol.2」 3月29日(金) ~ 3月31日(日)
  林侑子・陶芸家
  土をハサミで切る、新しい装飾技法から生まれる土鋏作品を展示します。
  友禅苑 茶室「白寿庵」
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関連行事等も充実していますね。

もう1件、光雲、光太郎、そして智恵子らが眠る髙村家墓所のある、駒込染井霊園です。

染井霊園ライトアップ

期 日 : 2024年3月23日(土)~4月7日(日)
会 場 : 都立染井霊園 東京都豊島区駒込5-5-1
時 間 : 17:30~20:00
料 金 : 無料

園内には約100万本ものソメイヨシノが植えられ、高村光太郎、智恵子をはじめ、岡倉天心、二葉亭四迷など多くの偉人が眠っています。開花の時期には園内が一部ライトアップされ幻想的な夜桜を楽しめます。
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このブログでご紹介するのは今年が初めてですが、「染井よしの桜まつり」の一環としてかなり前から行われていたようです。今年は案内に「高村光太郎、智恵子」とあったのでこちらの検索網に引っかかりました。

夜の霊園で、というとちょっと怖いかなと思われる向きもいらっしゃるかもしれませんが、染井霊園、きれいに整備され、いわゆる「墓場」という感じではありません。

そして何と言ってもこの辺り一帯、ソメイヨシノの発祥の地です。そう思って見ると、また格別なのではないでしょうか。

それぞれ、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

入口の戸は夜になると凍りついて中々開きません。急須の蓋も凍りついて、湯を上からかけないととれません。


昭和22年(1947)2月3日 宮崎稔宛書簡より 光太郎65歳

花巻郊外旧太田村の山小屋、前年の冬よりは寒くなかったそうですが、それでもこういうありさまでした。

3月となり、そろそろ受験シーズンも終わりに近づきつつありますね。

そんな中、先月25・26日に行われた国公立大学の2次試験のうち、京都大学さんの前期日程文系国語の問題に光太郎の文章が出題されました。

昭和15年(1940)11月に書かれ、翌年元日発行の雑誌『知性』第4巻第1号に発表された「永遠の感覚」の全文です。
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小問が5問設定され、全て記述式。字数制限はありませんが、解答欄のスペースから適度な長さで書け、ということですね。

大手予備校河合塾さんによる解答例。

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同じく代々木ゼミナールさん。
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駿台予備校さん。
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来年度以降の受験生向けでしょうか、「問題分析」も。

駿台予備校さん。
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河合塾さん。
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ちなみにこの問題、随筆扱いで、文学的文章としての出題でした。筑摩書房さん『高村光太郎全集』では第5巻、すなわち美術評論の巻、それから光太郎生前にはやはり評論集的な位置づけの『美について』(昭和16年=1941、道統社)に収められているのですが。しかし同じくこの文章を収めた『高村光太郎選集 第Ⅴ巻』(昭和26年=1951)は副題が「随想 上」で、まぁ、どちらとも取れるかなというところです。

それにしても、泉下の光太郎、このような形で自分が書いた文章が俎上に乗せられていることに苦笑しているかもしれません(笑)。

【折々のことば・光太郎】

何か揮毫する事はいつでもしますが、紙が乏しいです。和紙が不自由ですから紙さへお送りあれば書きます。


昭和21年(1946)10月18日 寺神戸誠一宛書簡より 光太郎64歳

自身では書家を名乗ったことはありませんが、特に戦後になって花巻郊外旧太田村に移ってから、頼まれて書を揮毫する機会が大幅に増えました。そして書けば書くほど、その腕前が上がっていったようです。

しかし戦後の物資不足が解消していなかったこの時期、やはりきちんとした紙は不足していまして、時に粗悪なボール紙や障子紙に揮毫することもありました。

まだだと思っていたら、始まっていました。

秋のライトアップ2023(夜間特別拝観)

期 間 : 2023年11月16日(木)~12月2日(土)
時 間 : 17時30分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       三門周辺、友禅苑、女坂、国宝御影堂、阿弥陀堂(外観のみ)、鐘楼
料 金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)
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みどころ

国宝 御影堂
寛永16(1639)年、徳川家光公によって建立されました。
間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。
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友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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重要文化財 大鐘楼
大鐘は高さ3.3m、直径2.8m、重さ約70トン。寛永13(1636)年に鋳造され、日本三大梵鐘の1つとして広く知られています。僧侶17人がかりで撞く除夜の鐘は京都の冬の風物詩として有名です。
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近年はプロジェクションマッピング(鐘楼の画像に見える葵の御紋など)も取り入れたりしています。

また、例年そうですが、「月かげプレミアムツアー」や「フォトコンテスト」など期間中にさまざまなイベントも企画されています(最上部リンクご参照)。ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

今は青葉の世界となり、北上川がこんこんと満溢して流れてゐます。朝夕河畔へ散歩にゆきます。ここに居ると宮沢賢治の詩がよく分かります。


昭和20年(1945)7月2日 椛澤ふみ子宛書簡より

5月に東京から花巻に疎開し、この時期は未だ花巻に空襲が無く、つかのまの平和でした。

光太郎の父・光雲と、その師・東雲系の情報です。

まず、昨日の『北海道新聞』さんから。

小さな工芸美術館、乙部の街かどに 鋳金造形家が築130年の蔵に開設

【乙部】栄浜地区在住の鋳金造形家、中川真一郎さん(84)が10日、同地区の国道沿いに小さな私設美術館を開いた。自らの作品のほか15人の工芸作家の陶芸や彫刻、レリーフなどを紹介している。「街かどの小さな工藝(こうげい)美術館」と命名した。予約制だが「特に、子どもたちに見にきてほしい」と話している。
 約130年前に建てられた約20平方メートルの木造の蔵を、地元事業者の協力を受けながら手作業で2年がかりで改装した。現在は約40点の作品を展示しており、今後も未整理の作品を随時紹介していくという。「子どもたちにも分かる工芸美術館」をコンセプトとし、各作品に「子ども達へ」と題した解説文を添えている。
 美術館の入り口には地元の指物師による120年前の欄間を縦にして展示。中川さんの作品では日展で特選を受賞した「蝕」や、館浦温泉公園にあるモニュメントの原型になった鋳金作品、聖武天皇の法要で使われた風鐸(ふうたく)(鐘形の鈴)を再現した「風を待つ鎮鐸」などが目を引く。風鐸は実際に鳴らすことができ、解説にも「そっと触れて千年前の音を聞いてみて」と記した。また、後志管内黒松内町出身の工芸家、阿部憲司さんの複雑なやじろべえなども触って遊ぶことができる。
 明治期から昭和初期に活躍した彫刻家高村光雲のレリーフや昭和期の洋画家小磯良平の陶器の飾り皿など、貴重な作品も紹介している。中川さんは「大人と違い、子どもたちはみんな目を輝かせて工芸作品を見てくれる。多くの子どもたちにさまざまな作品に接してほしい」と話している。
 開館は土、日、祝日の午前10時~午後4時半で、事前予約が必要。予約、問い合わせは中川さん、電話0139・62・3783へ。
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この手のミニ美術館、なかなか運営していくのは大変とは存じますが、頑張っていただきたいものです。

続いて京都から、展覧会情報。先週始まりました。

超細密工芸

期 日 : 2023年6月10日(土)~9月3日(日)
会 場 : 清水三年坂美術館 京都市東山区清水寺門前産寧坂北入三丁目337-1
時 間 : 10:00~17:00
休 館 : 月・火曜日(但し、祝日は開館)
料 金 : 一般:1000円 大学・高校・中学生:600円 小学生:300円

 江戸から明治期の日本においては、金工、漆芸、彫刻といった手工芸の分野が技法的にも芸術的にも頂点に達した時代といわれています。戦のない泰平の江戸時代に大名や町人らが身の回りの調度品や刀装具などに趣向を凝らすようになったことで、多様で豪華な細工を施す職人たちが現れ、技術が発展していったのです。度重なる奢侈禁止令を潜り抜け、写実表現を取り入れた精緻なもの、更には原寸よりずっと小さく作られたミニチュア工芸といったものも制作され、人々の目を楽しませました。
 本展では、当館の所蔵品の中でもひときわ細密で精緻な作品の数々を展覧します。刀装具、印籠、根付やミニチュア作品など、極小の世界に施された超細密な技の数々をどうぞご高覧ください。
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主に明治期の「超絶技巧」系の作品を数多く所蔵されている清水三年坂美術館さん。光雲作品も多数お持ちで、昨年開催された「明治・大正時代の木彫」では、光雲作品を14点も出されました。

今回、出品目録に「高村東雲」の名。「十一面観音菩薩像」が出品されています。
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「高村東雲」を名乗った彫刻家は三人。初代東雲(文政9年=1829~明治12年=1879)は、光雲の師匠です。光雲は元々中島姓でしたが、徴兵遁れのため師匠の姉・悦の養子となり(最初期の徴兵制では長男は免除)、高村姓となりました。

初代の子息が二代東雲を名乗ったのですが、残念ながら大した腕ではなかったようです。

そしてさらにその子息が三代目。はじめ、「晴雲」と号していましたが、戦後、三代目を襲名しました。晴雲時代に光雲に師事し、こちらはなかなかの作を遺しています。

007今回出ている「十一面観音菩薩像」が何代目の作なのか不明ですが、通常、「東雲」と云えば初代を指します。しかし、厨子の制作者である伊藤銕石は明治後半から大正期にかけての木彫家で、初代とは時期的にずれています。ただ、厨子は後から作られて添えられた可能性もあり、何とも云えませんが……。

追記:清水三年坂美術館さんのツイッターに画像が出ました。初代の作、厨子は後からだそうです。

それから同館、一階では常設展示も為されており、そちらでは光雲の「法師狸」が展示中。こちらは平成26年(2014)から翌年にかけ、日本橋の三井記念美術館さん他を巡回した「超絶技巧!明治工芸の粋―村田コレクション一挙公開―」に出たもので、併せてご覧頂きたいところです。

さて、北海道乙部町・街かどの小さな工藝(こうげい)美術館さん、清水三年坂美術館さん、それぞれぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

いつぞやの木彫小品は詮衡の上、貴下にお送りするのは「蟬」と定めました。只今桐箱を造らせて居ります故、不日御送付いたし得る事と存じます。 蟬は小生の愛着深きもの、最初の入会者たる貴下にお送りするのを喜びます。

大正13年(1924)10月7日 平野源蔵宛書簡より 光太郎42歳

平野源蔵」は富山県八尾の呉服商。「最初の入会者」は光太郎が入会者を募って木彫を頒布する「木彫小品を頒つ会」。関東大震災後、ブロンズの胸像等は世の中がそれどころではなく、注文が途絶えましたが、ふと再開した木彫は世間からも受け入れられ、「蟬」をはじめ、「柘榴」「鯰」「白文鳥」などの優品が次々生み出されました。

平野に送られた「蟬」は、5点確認されている「蟬」のうち、「蟬 1」のナンバリングで登録されているもの。現存します。

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光太郎歿後の昭和32年(1957)封切りの東宝映画「智恵子抄」(原節子さん、山村聰さん主演)では、この現物が映画の中で使われました。

東雲、光雲と続いてきた木彫の伝統、新しいエッセンスも加えながらしっかりと光太郎にも受け継がれていました。

今日開幕です。光太郎の父・光雲が主任となって制作された鋳銅聖観音像のライトアップも為されます。
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上の画像は昨年秋のライトアップ時。愚妻がお友達と京都に行くというので撮ってきてもらいました。

春のライトアップ2023

期 間 : 2023年3月24日(金)~4月2日(日)
時 間 : 17時45分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       友禅苑、国宝三門楼上、女坂、国宝御影堂、阿弥陀堂
料 金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)
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みどころ

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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国宝 御影堂
寛永16(1639)年、徳川家光公によって建立されました。間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。
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国宝 三門 回廊公開は春季9年ぶり
元和7(1621)年、徳川秀忠公が建立した高さ24m、幅50mの日本最大級の木造二重門。悟りの境地に到る「空門」「無相門」「無願門」の三解脱門を表すことから三門といいます。
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関連行事
聞いてみよう!お坊さんのはなし テーマ『機をはからう』~その身そのまま、あなたのままで~

正座じゃないといけないの?手の合わせ方が分からない。仏教は難しそう…。お坊さんの話を今まで聞いたことがない。どのようなお方も大歓迎です! 気軽に御影堂へいらしてください。気さくなお坊さんたちが皆さまを温かくお出迎えいたします。お話の後、木魚にふれ「南無阿弥陀仏」とお称えする、木魚念仏体験がございます。日常から離れた心静かなひとときをお坊さんと味わってみませんか?

開始時間:18:00~ 18:45~ 19:30~ 20:15~(各回お話15~20分、木魚念仏体験5~10分程度)
知恩院七不思議のひとつ「鴬張りの廊下」をモチーフにした缶バッジを参加者全員に差し上げます!(無くなり次第終了)
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月かげプレミアムツアー
ライトアップ拝観エリアすべてを僧侶と一緒に巡る特別ツアーです。御影堂内陣や大方丈などの通常非公開部もご案内!1時間半たっぷりと知恩院の魅力をご体感いただけます。
 日程:毎夜開催
 開始時間:17:45~/19:30~
 所要時間:1時間半程度
 定員:各回25名様程度
 料金:お1人様3,000円(小・中学生1,500円)
 ライトアップ拝観料込み。料金は拝観受付にてお支払いください。
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特別展示 Tradition : Redefined
3月25日(土) / 26日(日)
『千代紙 色とデザイン』RE:KAO
「椿柄」を十四色という多色で手摺りされた千代紙。今回は屏風に仕立てました。
3月31日(金) / 4月1日(土) / 4月2日(日)
『花明 Ceramic × Scissors』林侑子・陶芸家
「白磁」をハサミで切る独自の技法土鋏(つちばさみ)。磁器と鋏で「花明かり」を作り出す。

『鬼より強い守り神』吉田瑞希・陶芸家
「鍾馗(しょうき)」という中国から日本に伝わってきた、屋根に佇む魔除けの神様。

場所 友禅苑 茶室「白寿庵」・茶室「華麓庵」
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ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

自分は芸術家です。芸術三昧のうれしさと、芸術的全生活の貴さとは既に味ひもし知りもしてゐました。しかし日本に帰つた時日本の社会状態をつくづく見るに及んで此を吾人に近くしてみたいといふ考を起しました。此が動機で琅玕洞も造りました。其他種々の計画でまだ実行されなかつたのも沢山あります。芸術家にこんな事をさせたのは今の社会です。僕は我慢に我慢をしてやつてゐました。然るに此頃つくづく其の馬鹿げてゐた事を感じました。そこで美術国たる日本に全然背中を向けるのです。日本の恩を蒙りたくなくなりました。

明治44年(1911)4月8日 山脇信徳宛書簡より 光太郎29歳

山脇信徳は画家。明治42年(1909)の第3回文部省美術展覧会(文展)にコテコテの印象派風の絵画「停車場の朝」を出品しました。これを光太郎は是とし、石井柏亭などは「日本の風景にこんな色彩は存在しない」とディスり、所謂「地方色論争」が巻き起こりました。さらにそれが光太郎の評論にして我が国最初の印象派宣言とも言われる「緑色の太陽」につながります。

さて、その山脇に宛てた書簡から。芸術後進国・日本を啓蒙しようと、画廊・琅玕洞を開いたりしたことについて、芸術家自身がそんなことをすべきでなかったし、結局うまくゆかなかったとしています。

京都と岡山から音楽公演の情報を。

まず京都。

東日本大震災復興支援ライブ「琵琶もの語り」

期 日 : 2023年3月4日(土)
会 場 : Caffe flook 京都市西京区大枝西長町7-21
時 間 : 15:00~
料 金 : ワンオーダー&投げ銭(義援金)

演 奏 : 宇佐美周子(筑前琵琶)

演目は本曲より「関ヶ原」、高村光太郎詩「雪白く積めり」。

演奏は3月で京都は梅が咲き陽光も春っぽい頃ですが、今年の1月に京都(にしては)も大雪に見舞われました。冬が好きで花巻に関連のある高村光太郎を紹介するなら今回!という思いです。

皆様のお越しをお待ちしております。
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筑前琵琶の演奏で、光太郎詩「雪白く積めり」。原詩は昭和20年(1945)、光太郎が花巻郊外旧太田村の山小屋に移った最初の冬に書かれた作品です。オリジナルの曲が付けられているのでしょう。
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奏者の宇佐美周子さんという方、花巻の宮野目地区ご出身だそうで、彼の地で市民講座講師などもなさったことがおありとのこと。そういう関係もあって「東日本大震災復興支援」と冠されているのだと思われます。

右は『広報はなまき』令和元年(2019)10月号より。

当方、琵琶の生演奏は一度だけ拝聴したことがあります。もう6年前になりますが、千葉県の柏市で開催された「智恵子から光太郎へ 光太郎から智恵子へ ~民話の世界・光太郎と智恵子の世界~」でのことでした。

偶然ですが、その際に大久保光哉氏という方が歌われた「智恵子抄三章」という歌曲がプログラムに入った演奏会が岡山で開催されます。

佐々木英代の日本のうた講座【最終話】第30話 岡山の作曲家と歌手の選んだ名曲編

期 日 : 2023年3月5日(日)
会 場 : 天神山文化プラザ 岡山市北区天神町8-54 
時 間 : 13:30~
料 金 : 一般1,000円 中学生以上、学生500円 小学生以下無料

「日本のうた」の隠れた名曲や、知らなかった秘密を解き明かすおはなしを楽しむレクチャーコンサート。2008年から始まったシリーズの最終話となる今回は、岡山の作曲家から、米倉由起、青木省三、上岡洋一の3人をご紹介します。聴きどころや、作曲家の身近なエピソードを交えながら生演奏でお届けします。音楽が好きな方はもちろん、どなたでもお気軽にご参加ください!

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フライヤー等に演奏曲目が入っていないのですが、中国二期会理事長でテノール歌手の松本敏雄氏が「智恵子抄三章」を歌われるそうです。

それぞれ、お近くの方(遠くの方も)ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

ダンテ、ヸンチ等の曾て吸ひし空気の中に来りたる事を思ひて嬉しきこと限りなく候。 フイレンツエは美しき街、なつかしき街に候。街ゆく女の美しさはヹニスとは又異りて、風俗の都めきたるが心を惹き申し候。女の美しき街ならでは世に美しき街は有之まじく候。


明治42年(1909)4月1日 与謝野寛宛(推定)書簡より 光太郎27歳

欧米留学最後を締めくくる1ヶ月のイタリア旅行。ダンテやダ・ヴィンチが居た街としてフィレンツェをほめ、さらに道行く女性の美しさに鼻の下を伸ばした光太郎でした(笑)。一転、3ヶ月後に帰国した日本では、日本女性に失望させられます。

光太郎の父・光雲が監督となって制作された聖観音像もライトアップされる、京都東山知恩院さんのライトアップ。一昨日から始まっています。

秋のライトアップ2022

期 間 : 2022年11月12日(土)~12月3日(土)
時 間 : 17時30分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       三門周辺、友禅苑、女坂、国宝御影堂、阿弥陀堂(外観のみ)
       経藏(外観のみ・11年ぶりの公開)、大鐘楼
料 金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)
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主な見どころ

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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大鐘楼
大鐘は高さ3.3m、直径2.8m、重さ約70トン。
寛永13(1636)年に鋳造され、日本三大梵鐘の1つとして広く知られています。僧侶17人がかりで撞く除夜の鐘は京都の冬の風物詩として有名です。
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経蔵
内部の天井や柱、壁面は狩野派の絵師の手によって荘厳されています。また、徳川2代将軍秀忠公の寄附によって納められた『宋版一切経』約6千帖を安置する八角輪蔵が備えられており、その輪蔵を一回転させれば、『一切経』を読誦するのと同じ功徳を積むことができるといわれています。 ※ライトアップの拝観は11年ぶり
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昨日から、妻がお友達と京都に行っておりまして、「では、知恩院さんのライトアップ観に行って、聖観音像の写真を送ってくれ」と頼んでおいたところ、届きました。
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池の水面にも映り込む紅葉、風情がありますね。

昨年11月、BSイレブンさんで放映された「京都紅葉生中継2021 古都を照らす希望の光〜曼殊院の紅葉を堪能!」という番組から。
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まずは事前に撮影しておいた昼間の映像等。
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そして「生中継」。
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光雲の手になる作である解説もあり、ありがたく存じました。

他の場所も。
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例年、そうですが、期間中にさまざまなイベントも企画されています(最上部リンクご参照)。ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】001

難波田さんくる、夫人よりガウンをもらふ、手製の由、


昭和29年(1954)12月30日の日記より
 光太郎72歳

難波田さん」は難波田龍起、かつて駒込林町にあった光太郎アトリエ兼住居のすぐ裏手に住んでいた画家です。光太郎に私淑して美術の世界に入り、詩作にも取り組みました。

難波田夫人も、光太郎終焉の地となった中野の貸しアトリエを訪問したことがありました。その夫人から贈られたという手製のガウン、1年ほど後の写真ですが、これかな、という気がします。

京都から演劇の公演情報です。

演劇ビギナーズユニット2022(#28)修了公演XX文士(ハロゲンブンシ)「日本文学盛衰史」

期 日 : 2022年9月24日(土)・9月25日(日)
会 場 : 京都市東山青少年活動センター
時 間 : 9月24日(土)①13:30/②18:00 9月25日(日)③13:00
料 金 : 前売900円(日時指定でのご予約になります) 当日1,200円

6月から始まった初心者対象の演劇セミナーの修了公演です。今年で28回目の公演。演出を担当する岡本昌也さん(安住の地)と、演出補の中村彩乃さん(安住の地/劇団飛び道具)と初めて出会った17人の仲間が一緒に創作しました。ぜひご来場ください。
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「日本文学盛衰史」は、高橋源一郎氏の原作、平田オリザ氏が脚本を書かれ、平成30年(2018)に劇団・青年団さんによって初演されました。夏目漱石、島崎藤村、田山花袋、石川啄木、芥川龍之介、北原白秋ら、近代の文豪達の群像劇だそうで、光太郎も登場人物の一人に名を連ねています。

コロナ感染には十分お気を付けつつ、お近くの方(遠くの方でも)、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

奥平さんの帖にウエルハアランの詩をペンでかきかける、


昭和29年(1954)1月2日の日記より 光太郎72歳
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奥平さん」は美術史家の奥平英雄。「」は、奥平に請われて書くことにした書画帖で、光太郎自ら「有機無機帖」と名付けました。全18面、途中で入院等もあり完成には2年以上かかりました。
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現在、目黒区駒場の日本近代文学館さんに所蔵されています。昨年、富山県水墨美術館さんで開催された「チューリップテレビ開局30周年記念「画壇の三筆」熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」で展示させていただきました。

「智恵子抄」などの光太郎詩にオリジナルのメロディーを附けて歌われているシャンソン系歌手のモンデンモモさん。先月から西日本を中心に「ありがとうコンサート」と題するツアーを展開なさっています。
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会場ごとにコンセプトやコラボ出演者等いろいろのようで、詳細な曲目等発表されていませんでしたので、これまで紹介せずにいました。

ただ、今週行われる京都でのステージで、「智恵子抄」が前面に押し出されるという情報を得ましたのでご紹介します。何と、生け花とのコラボだそうで。

モンデンモモありがとうコンサート 「はじまりは 花に溢れ」

期 日 : 2022年9月15日(木)
会 場 : 池坊学園こころホール 京都市下京区四条室町鶏鉾町491
時 間 : 15:00~
料 金 : 無料

花と言葉が舞ふ そこに はじまる みち  ある秋の1日 智恵子は かえってきた そしてレモンと歩んでいく  あなたの こころへ

出 演 : モンデンモモ(Vo) 小室弥須彦(Pf) ロザリア(生け花)
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お近くの方(遠くの方でも(笑))、ぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

奥平さんくる、電通ラジオの人五人くる、奥平さんとの対談30分ほど録音、

昭和28年(1953)12月27日の日記より 光太郎71歳

奥平さん」は美術史家の奥平英雄。光太郎とは戦時中からのつきあいで、昭和19年(1944)には光太郎の評論「天平彫刻の技法について」を含む『天平彫刻』の刊行に奔走した他、この後、昭和30年(1955)に岩波文庫の一冊として現在も版を重ねる『高村光太郎詩集』の編集等にあたりました。

対談」は翌年、文化放送でオンエアされたもので、その一部は「新潮カセットブック 高村光太郎詩集」(平成2年=1990)に収められている他、奥平著『晩年の高村光太郎』特装本(昭和51年=1976 瑠璃書房)に付録としてカセットテープが添えられています。こちらはノーカットです。
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対談を文字起こししたものは、『高村光太郎全集』第11巻に収められていますが、なぜか次の一節が脱漏していました。

奥平 良寛なんてものには、やっぱり好意をお持ちなんですか。
高村 まあ、やっぱり、素晴らしいと思うんですよ。
奥平 いや、私はねえ、やっぱり、先生が「昭和の良寛」のような気がするんですけどね、字から受ける感じが。
高村 それは大違いだな。僕はもっと悪党坊主だから(笑)。
奥平 いや、やっぱり良寛の書っていうのは、非常に私が好きなのは、清潔なっていうのか、ああいう、その、清らかさなんですけどね。そういう意味で先生の書もやっぱり……。
高村 ただ、良寛の方が書が上手い。実によくあれはね、古来の書を、筆で習ってはいないだろうが、習っているんですよ。これは、ねえ、もう、唐あたりの墨跡の、いや、唐あたりの、あの、あれはあれでしょうかな、刷り物でしょうか。実によく見ているんですね。そして羲之あたりの筆法をちゃんと取り入れて。
奥平 そうそう、ずいぶん勉強したそうですね。
高村 ええ。だから、あの馬鹿げたまずいような字ではちっとも、そうじゃないんですよ、本当は。それで良寛を真似てる奴のは本当にまずいけれども。
奥平 そうですね。
高村 良寛自身のはね、あの仮名の、仮名なんてきたら実に巧みだな。あんなこと僕らにはとっても出来ない。あれは暇があったから出来たんですよ。
奥平 いや、だけど先生の書は、ここ数年ますます良くなるばかりですね。
高村 いや、僕は知らない。責任持たない。

京都精華大学ギャラリーさんで開催中のリニューアル記念展「越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座」の展覧会評が、7月6日(水)、『毎日新聞』さんの大阪夕刊に載りました。

今、11作家が問う「越境」 京都精華大ギャラリーでリニューアル記念展

 人やモノが日常的に国境を越えるグローバル化社会の風景を、新型コロナウイルス禍は一変させた。ロシアによるウクライナ侵攻は、今この瞬間も新たな悲劇を生んでいる。人類の歴史の中で繰り返されてきた「越境」だが、個人の人生に目をやれば、解放や成長をもたらす行為でもある。誰もが経験し直面する「越境」をテーマに据えた展覧会が、京都精華大学(京都市左京区)で開かれている。
 今年2月にリニューアルされた「ギャラリーTerra-S(テラス)」の開館記念展。大学が収蔵するコレクションの中から塩田千春ら6人のアーティストと、2000年代以降に活動を開始した若手ゲスト作家5人の作品を展示する。

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 前身の「フロール」から1・5倍の広さになったギャラリー中央のスペースには、「個と社会(ジェンダー/アイデンティティ/歴史/身体(からだ))」のサブテーマのもと、女性作家4人の作品が並ぶ。陶芸や切り紙のインスタレーションを手がける谷澤紗和子(1982年生まれ)による「はいけいちえこさま」(2021年)は、近年取り組んでいる高村智恵子へのオマージュ作だ。
 高村光太郎の「智恵子抄」で知られる智恵子だが、谷澤は、夫の目を通した智恵子像ではなく、切り紙作家としての智恵子個人に光を当てる。「はいけい―」は谷澤の智恵子への手紙などを切り絵にした6枚の連作。智恵子作品のモチーフを取り入れた1枚は、中央部分に目や口が表現されている。谷澤が、自身の言葉で語る智恵子を想像したという。6枚とも、額には解体された家屋の建材を利用。「家」に縛られてきた女性にとっての越えがたい境界が浮かび上がってくるようだ。
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谷澤紗和子「はいけいちえこさま」(2021年、部分)

 さまざまな角度から越境について考える展示を締めくくるのは、潘逸舟(はんいしゅ)(87年生まれ)によるユニークな作品だ。タイトルは「あなたと私の間にある重さ―京都」。円形に並べられたカラフルなはかりには食器が置かれ、箸やしゃもじで隣のはかりとつながれている。目盛りはそれぞれ数値を示しているが、果たしてそれは何のどの部分の重さなのか。
 上海出身で幼少期に青森に移住したというバックグラウンドを持つ潘は、体を使ったパフォーマンスで、社会と個の関係に感じた疑問や自身のアイデンティティーの揺らぎを表現してきた。今回もサブテーマ「身体/アイデンティティ」のコーナーに、自分と同じ重さの石をテーマにした映像作品「呼吸―蘇州号」(13年)が展示されている。「人間の重さは、自分だけの重さなのかと考えるようになった」。潘は同展の公開トークイベントで、「呼吸―」から「あなたと私の―」に至る数年の変化について語った。「自分の中には量れない重さ、どこかとつながっている部分がある。はかりが示しているのは、フィクションでもあると考えるようになった」
 展覧会を企画したのは、芸術学部の吉岡恵美子教授とギャラリーの伊藤まゆみキュレーター。準備中にウクライナ侵攻が始まり、期せずして「越境」はさらなる注目を集めることになった。「人類にとって、良い意味でも悪い意味でも重要なテーマであり続けてきた。一方で、潘さんの作品からもわかるように、境界はあると思えばあるし、ないと思えばない、曖昧なものでもあると思う」と吉岡教授。
 ギャラリーは同大明窓館3階。23日まで(075・702・5263)。日曜休館。入場無料。教員ら総勢22人が「『越境』を考えるためのおすすめ情報」として書籍や映画、音楽などを紹介する大学ならではの試みも。詳しくは展覧会特設サイト(https://gallery.kyoto−seika.ac.jp/exhibition/220617/)。

谷澤紗和子氏の「はいけいちえこさま」に関しては、以下もご覧下さい。

VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─/「Emotionally Sweet Mood - 情緒本位な甘い気分 - 」。
都内レポートその2「VOCA展2022 現代美術の展望―新しい平面の作家たち―」。

京都精華大学さんでの展示は7月23日(土)まで。ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

午后五時半千光園ほととぎす行、 青森県副知事、佐藤春夫夫妻、土方定一氏、小坂氏、藤島氏、草野心平氏、谷口吉郎氏集る、


昭和28年(1953)6月16日の日記より 光太郎71歳

千光園ほととぎす」は、当時中野区にあった「黄檗流普茶料理」と掲げる料亭。現在、中野区産業振興センターのある場所です。

この日は、生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」の原型完成記念報告会が催されました。

まず、先週の『毎日新聞』さん大阪夕刊記事から。

西洋近代画と民芸、所蔵品から厳選 カンディンスキーやリーチ作品 大山崎山荘美術館

 アサヒビール大山崎山荘美術館(京都府大山崎町)が「コレクション春」展を開催している。収蔵品の中核をなす、近代西洋絵画や民芸運動ゆかりの器を中心に構成。約100年前に同時代を生きた作家たちの作品とともに、その経歴や関わりにも迫る。
 フランスの画家、モーリス・ユトリロの母、シュザンヌ・バラドンの絵画「静物 果物」は1922年に描かれた。バラドンは自身も絵描きであると同時に、ルノワールやロートレックなどが描いたモデルでもあった。自由奔放な性格だったと伝わる。主任学芸員の中村祐美子さんは「意志の強さを感じる強い線が印象的」と評価する。ユトリロの絵も併せて鑑賞でき、画風の違いが面白い。20年ごろに描いた「田舎の村役場」、40年ごろに描いた「雪景色」が並ぶ。前者と比べて後者は色彩が華やか。しかし、空元気のような空虚さを感じる。中村さんは「自らの目と足でモチーフを探していた前者と絵はがきを見て描いた後者。描きたいものの差かもしれません」と指摘する。
 欧州では、20年ごろからドイツでナチスが力を持ち始め、40年にはフランスに侵攻した。ロシア出身の画家、ワシリー・カンディンスキーは22年にドイツの芸術学校「バウハウス」の教授に就任したが、ナチスから逃れるため33年からフランスに亡命。本展では、22年に制作した幾何学的な抽象絵画「コンポジション」が展示されている。「題名はさまざまな要素を組み合わせるという意味。色彩、空間、(音楽の)リズムを組み合わせている」と中村さんは解説する。リズムを含むのは自らも演奏するなど音楽を好んだため。音楽好きの画家、バウハウスの同僚という共通点がある友人、パウル・クレーの絵画「大聖堂(東方風の)」も並ぶ。
 今年生誕135年の陶芸家、バーナード・リーチは日本で暮らし、民芸の人脈とつながりがあった英国人。濱田庄司とともに20年に渡英。失われていた伝統的な陶器、化粧土を使ったスリップウエアの研究をする。同年、同国のコーンウォール州セントアイブスで東洋式の登り窯を築き、工房「リーチ・ポタリー」を設立した。今回は2人のスリップウエアを見比べられる。中村さんは「スリップウエアには2系統ある。飾り皿と実用皿。リーチは両方作り、濱田は実用品のみを作った」と特徴を紹介する。
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 同館が所蔵する民芸運動ゆかりの作品の多くは実際に使われた。元所有者のアサヒビール初代社長、山本為三郎(ためさぶろう)は民芸の草創期からの支援者。手仕事の日用品に美しさを見いだす民芸の考え方「用の美」に共鳴し、普段使いをしたと考えられる。広報の池田恵子さんは「どんな盛り付けをしたか想像すると面白いかもしれません」と視点を変えた楽しみ方を提案する。
 2人が英国生活中に出会った染織家、エセル・メレが20年代に作った上着とショール、服地も見られる。民芸にも影響を与えたとされる19世紀末にイギリスで起こった手工芸の復興運動「アーツ・アンド・クラフツ」の流れをくむ作家だ。羊毛の刈り込みから仕立てまで全て手作業で行う。展示品の状態の良さが驚きである。「大切に保管されたのも大きいが、丁寧に作られたからこそ」と中村さん。
  詩集『智恵子抄』で知られる高村光太郎の妻、智恵子もメレに魅せられた一人。「物をねだる性格ではなかったようですが、とても欲しがったそうです。高価だったために光太郎が頑張ってお金を工面したといいます」と池田さん。
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 「釉薬(ゆうやく)の魔術師」と呼ばれたオーストリア出身の陶芸家、ルーシー・リーの器なども含め全68点で構成。7月3日まで。月曜休館。同館(075・957・3123)。

イギリスの染織工芸家、エセル・メレの関係で、光太郎智恵子の名を出して下さいました。

記事にあるように、光太郎は智恵子にせがまれて、メレ作のブランケットを購入。それがおそらく大正末のことで、奇跡的に2度の空襲(東京駒込林町/岩手花巻)をくぐり抜けて現存し、花巻高村光太郎記念館さんに収蔵されています。令和元年(2019)には盛岡で、翌年には花巻で公開されました。
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光太郎遺品等を突っ込んであった中からみつかったものですが、どうも伝統的毛織物のホームスパンらしいということで、岩手県立大学さんの菊池直子教授らに調査を依頼、その結果、メレかその工房の作で間違いない、と鑑定されました。光太郎の日記の中に「メーレー夫人の毛布」という記述が複数回あり、これがそれである、ということです。

智恵子が欲しがった云々は、光太郎が蟄居生活を送っていた花巻郊外旧太田村にホームスパン制作指導に来ていた福田ハレ(岩手のホームスパンの祖・及川全三の弟子)の回想にありました。

 夫人が作った掛け布を見たのは戦後、稗貫郡太田村(現花巻市)の駿河定見氏宅である。駿河氏のめい・さつ子にホームスパンの紡織を教えてほしいという話があり、太田村に私が初めて行ったとき、駿河氏宅から五百メートルぐらい離れたお住まいから高村先生が持参して見せてくださった。幅五十センチ、長さ二メートルぐらい、地は平織り、両端の柄は筵織り、地色はよく覚えていないが白茶ぐらいだったか、ざっくりとした風合い、その布は驚くほど気楽に織ってあり、それでいて勘どころはちゃんと押さえてある。用途第一のあか抜けた出来栄えだった。
 (略)
 戦災で丸焼けになられた高村先生は、逃げる時それをかぶっていられたという。メレー作品展が銀座の資生堂か丸善だったかで催されたとき、智恵子夫人がこの一点だけは何としても欲しいと懇望された。結婚してから夫人自身が身につけるものなど一度も欲しいと言われたことがないので、望まれるようにしたいと思ったが、その時先生はお金がなくて困ったと笑いながら話された。
   後日、先生の山小屋に伺ったとき、座布団代わりに当てるようにと、小さく畳んで出してくださったが、もったいなくて敷くなどできず、ただなでさすって眺めていたのだった。
(「メレー夫人と高村光太郎」『岩手日報』平成14年)

光太郎生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作のため帰京した後の写真に、このブランケットが写っているものが複数枚ありましたが、最近、花巻郊外旧太田村の山小屋で撮られた写真の中にもそれを見つけました。
メレ毛布太田村
左の方に無造作に置かれています。

菊池教授、花巻のブランケット調査の際、国内でメレ作品を収蔵している数少ない施設の一つであるアサヒビール大山崎山荘美術館さんの、今回展示されているというショールなどと比較検討を行い、花巻のものもメレ(或いはその工房)作と結論づけられました。
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左が花巻、右がアサヒビール大山崎山荘美術館さんのもの。確かによく似ています。ただ似ているというだけでなく、花巻のものは、日本にいない種類の羊の毛を使っているというのも根拠でした。

アサヒビール大山崎山荘美術館さんでは、その際に花巻から調査が入ったことで、光太郎智恵子のエピソードを知られたのでしょう。そして『毎日』さんの取材でご紹介下さったと思われます。ありがたし。

そしてメレ作品以外にも、光太郎の盟友、バーナード・リーチの陶芸作品も展示されています。光太郎が件(くだん)のブランケットを購入したのは、大正末、銀座鳩居堂画廊でののリーチとメレの二人展の際のことと推定されています。

さて、アサヒビール大山崎山荘美術館さんでの展示情報を。実はもう開幕して結構たっています。

コレクション 春 ―所蔵作品による名品展

期 日 : 2022年3月19日(土)~7月3日(日)
会 場 : アサヒビール大山崎山荘美術館 京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
時 間 : 午前10時~午後5時
休 館 : 月曜日
料 金 : 一般900円(団体:800円) 高・大学生500円(団体:400円)
      中学生以下無料 障害者手帳をお持ちの方300円

アサヒビール大山崎山荘美術館は、1996年春に開館しました。所蔵品の中核を成すのが、クロード・モネ《睡蓮》をはじめとする西洋近代絵画と、開館に際して寄贈された、朝日麦酒株式会社(現アサヒビール株式会社)初代社長・山本爲三郎による民藝運動ゆかりのコレクションです。このたびは、当館のおよそ1000件の所蔵品から選出した、多彩な作家たちとその作品をご紹介する展覧会を開催いたします。
地中館では、モネ《睡蓮》をはじめ、シニャック《ヴェネツィア》など水の情景を特集し、「地中の宝石箱」の名にふさわしい小さくも見ごたえのある空間で皆さまをお迎えします。山手館は、カンディンスキー、クレーをはじめ印象派以降の主要な芸術運動に関わった作家を、本館では、生誕135年のバーナード・リーチと同じく120年のルーシー・リー、英国陶芸を代表する二人の作品をその関係性からひも解きます。
美術館の庭園に花々が咲き誇る春から、池が睡蓮で満ちる初夏のころ、遺された貴重な建築物や美しい風景とともに、珠玉の逸品をお楽しみください。
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ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

午前十一時過中央公論社より迎の車くる、出かけて、高輪「松」といふ料亭にゆく、リーチ、柳、濱田の三氏。他に石川欣一氏松下英麿氏あり、和、英の速記者4人、中食を共にしながらしやべる、


昭和28年(1953)2月23日の日記より 光太郎71歳

『中央公論』第68年第4号(この年4月)に載った座談会「敗けた国の文化-東西美術・工芸の交流-」です。2日後にはラジオ放送も為されました(録音音源が残っていないか探しているのですが……)。

」は「柳宗悦」、「濱田」は濱田庄司、「石川欣一」は翻訳家・ジャーナリスト、「松下英麿」は『中央公論』編集者です。

この座談で、メレの話題が出ました。

石川 織物のマダム・メアリーは?
リーチ 去年死にました。
柳 ぼくら訪ねたが、いいことしましたよ。それから何カ月目かに死んだんです。
石川 いいお年でしよう。
リーチ 八十以上です。
高村 どこでやつていたのですか。
柳 デイツチリングといつて、サセツクスです。
リーチ ロンドンからずつと南、四十マイルくらいです。
濱田 近くにブライトンという海水浴場がある。そのブライトンにも店がありましてね。今思うと、あの店へ行つて、品物がもつとほしかつた。僕達が訪ねたことを非常に喜んでくだすつて、いろいろいただきものをして、今私たちやつているのも、今度もらつて来たものですし、それから焼物なんかも、フイツシリーという人の英国の焼物で、最後の伝統的陶工ですが、そういうものをたくさん持つて来られたのです。どれでもいいから持つて行けといつて、みんな出してくださつた。
柳 一番いいのをもらつて来た。
リーチ 私の考えですが、夫人の仕事なんか日本で見せるために展覧会やりたいな。
柳 記念会をやろうよ。
リーチ 英国ばかりじやないのです。世界中の織物に影響を与えた人ですから。
石川 あとを継ぐ人はないのですか。
柳 ほんとうにいい後継者はないですね。


メレは、日本では名前の表記が一定していません。ファーストネームは「エセル」でほぼ統一されていますが、ファミリーネームの方は「メレ」「メーレ」「メーレー」「メイレ」「メレー」、そしてここにもあるように「メアリー」。

それが原因とも思えませんが、光太郎、自分の所有しているブランケットについて話しませんでした。リーチ、柳、濱田の三人は、光太郎がそれを持っていることを知っていたと思われますが。

京都から現代アート系の展覧会情報です。

京都精華大学ギャラリーリニューアル記念展「越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座」

期 日 : 2022年6月17日(金)~7月23日(土)
会 場 : 京都精華大学ギャラリーTerra-S 京都市左京区岩倉木野町137
時 間 : 11:00~18:00
休 館 : 日曜日
料 金 : 無料

​京都精華大学(京都市左京区、学長:澤田昌人)では、2022年2月に学内ギャラリーがリニューアルオープンしたことを記念して、企画展覧会「越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座」を開催いたします。

リニューアル記念展として開催する本展では、既存のジャンルや制度、価値観における「越境」をテーマとし、「ジェンダー/歴史」「身体/アイデンティティ」「土地/記憶」などのキーワードを参照しながら、11名のアーティストの作品を展観します。

過去から今日まで、世界中で地政学上の境界線をめぐる対立や抑圧、秩序の固定化とその崩壊が繰り返されてきました。現在、高度情報化・グローバル化によって人・物・情報の「越境」が日常化し、感染症や環境問題、貧困などの越境的な課題も顕在化しています。一方で、ある集団もしくは個人に固有の慣習や文化、記憶や価値観は、目に見えない境界によって繋ぎとめられ、アイデンティティの構築に結びついています。複雑で緊張に満ちた世界に生きる私たちにとって、時には境界のこちらとあちらを水のように自由に移動し、自分と世界を見つめ直す「越境」の態度が求められるのではないでしょうか。

見どころ①:日本~アジア、近代~現代を見渡す作家たちの眼差し
見どころ②:現代美術の最前線で活躍する作家たちと多様な価値観を発信する注目の表現者たちの協奏
 
本展では、京都精華大学が収蔵するシュウゾウ・アヅチ・ガリバー、今井憲一、ローリー・トビー・エディソン、塩田千春、嶋田美子、富山妙子の作品に加え、2000年代以降に活動を開始した5名のゲストアーティスト(いちむらみさこ、下道基行、谷澤紗和子、津村侑希、潘逸舟)の作品を紹介します。出身や世代、表現手法は多様ですが、個人と社会、自己と他者、想像と現実、ジェンダーなどにおける固定的な輪郭をしなやかかつ鋭く揺さぶる11名の表現者が織りなす本展が、私たちのこれからを予感させる複数のしらべが響く場所となること、そしてその響きが多くの方に届くことを願っています。
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今年3月、東京上野の森美術館さんで開催された「VOCA展2022 現代美術の展望-新しい平面の作家たち-」に、智恵子紙絵、『青鞜』表紙絵オマージュの「はいけい ちえこ さま」を出品され、VOCA佳作賞を受賞された谷澤紗和子氏が、同作を出品なさいます。
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谷澤氏、VOCA展と並行して大阪で開催されていた個展「Emotionally Sweet Mood - 情緒本位な甘い気分 -」でも、智恵子紙絵、油絵インスパイア作品を出品されていました。ありがたし。

コロナ感染には十分お気を付けつつ、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

宮崎丈二氏くる、檜材の事、一緒に中村屋にてライスカレー夕食、別れてタキシでかへる、

昭和28年(1953)2月12日の日記より 光太郎71歳

宮崎丈二は詩人。同じく詩人だった西倉保太郎、西倉と同郷(北海道)出身の材木商・浅野直也と3人で、たびたび光太郎が起居していた中野の貸しアトリエを訪れたり、光太郎を夜の街に連れ出したりしました。

「檜材の事」は、浅野の回想に語られています。

 お酒と木材のお蔭で高村先生にお逢いしお話の出来るようになつたのは本当に喜びでした。お酒の友で詩人の宮崎丈二氏が今日は高村先生を銀座に引張り出して一緒に飲もうと紹介されたのは新橋附近のマーケットの変な店でした。私は若い時から彫刻、詩共に先生の作品は好きでしたのでお逢いする迄はまるで恋人を待つような気持ですつかりあがつてお待ちしていたので、思うようにお話が出来なかつたように思います。その時の先生は、私が木材に関係を持つ者であつたので、木彫に使う木に就いて色々お話しされ、『近頃は良い木の入手が困難で思うようにゆかない。』と嘆かれておられました。お聞きすると、木曽檜の木が欲しいとの事でお送りすることを約束し、後日大阪からお送りした処大そうお喜びで早く元気になつて何か作りたいと話されていました。
(「高村光太郎先生の想出」昭和34年4月『政治公論』第35号)

宮崎は大正期から光太郎と交流がありましたが、浅野は光太郎との初対面が前年秋。この時に檜材の話をしたそうです。

さらにこの年6月、西倉宛の書簡。

檜材、とても見事なものおとどけ下さつて感謝してゐます。檜の膚の香りプンプンする大作をモニユマン製作後に張切つてやりたいと念願したくなりました。浅野直也さんに小さな木彫を作る心算ですので、お礼を言つて下さい。

おそらく浅野は出先の大阪で檜材を入手したものの、光太郎の住所がわからず、西倉宛に発送して転送して貰ったのだと思われます。

ただ、この時期に光太郎が木彫を制作した事実は確認出来ていません。浅野の回想にも木彫を作ってもらったとは書いてありません。結局、健康上の理由もあったりで実現しなかったのではないかと思われます。

中村屋」は、親友だった故・碌山荻原守衛が遠く明治期に世話になった新宿の中村屋さん、「ライスカレー」は今も名物の「カリー」でしょう。

まず『産経新聞』さんの関西版コラムから。

浪速風 言論の自由を考える

ウクライナ侵略でロシアの言論統制・封殺が行われている今だからこそ、注目したい催しがある。「古都・京の記憶に残すべき戦時の日仏交流」。15日にロマン・ロラン研究所(京都市左京区)が、アンスティチュ・フランセ関西稲畑ホール(同)で行うトークと詩の朗読会である
▶ロランは、反ファシズムを貫いたフランスの作家で、高村光太郎、倉田百三らと交友があり、昭和46年、仏文学者の宮本正清(故人)が同研究所を設立した。宮本がロランに共鳴したのは、立命館大教授だった20年6月、京都府警に突然連行され、終戦まで拘束された経験があるからだ
▶反戦思想を持っている疑いだけで拷問され、食事は1日握り飯1個。牢獄では虱(しらみ)による出血でシャツが真っ赤に染まった。そんな日本に二度としないという思いを宮本は詩集『焼き殺されたいとし子らへ』に込めた。会では、その朗読やヱイ子夫人らによるトークが行われる。午後2時から。入場自由。

『産経』さんらしからぬイベントの紹介ですが、詳細は以下の通り。

財団法人ロマン・ロラン研究所設立50周年記念 古都・京の記憶に残すべき 戦時の日仏交流―関西日仏学館―〈トークと詩の朗読〉 

期 日 : 2022年5月15日(日)
会 場 : アンスティチュ・フランセ関西 稲畑ホール 京都市左京区吉田泉殿町8
時 間 : 午後2時~4時
料 金 : 無料

戊辰戦争の始まりである鳥羽伏見の戦いから冷めやらぬ揺れ動く幕末京都、外国人立ち入り禁止の長い眠りから慌ただしく覚めようとしている。時は1868年(慶応4)3月、舞台は京都御所、フランス公使レオン・ロッシュは、じりじりするほど待たされ漸く紫宸殿に招じられた。先帝の急死から即位したばかりの若干16歳、直衣姿の天皇の前にオランダ公使とともに進み出た。これが京都とフランスの交わりの第一歩である。政変混乱のなか、ミヤコにフランスの一粒の種が撒かれ、やがてそのシンボル「関西日仏学館」が誕生。点から線へのタイムトンネルに入ってみませんか。

<トーク>
パネリスト
 加賀美幸子氏 元NHKエグゼクティブアナウンサー(理事待遇)
 ジュール・イルマン氏 在京都フランス総領事、 アンスチティチュ・フランセ関西 館長
 宮本ヱイ子 『京都ふらんす事始め』著者(当研究所理事)
 西成勝好 大阪市大名誉教授(当研究所理事長)
 コーディネーター:和田義之 弁護士(当研究所理事)

<詩の朗読> 
戦時下、関西日仏学館でフランス人教授オーシュコルヌと主事の宮本正清は突然理由なく拘束された。劣悪な警察署で61日間、拷問と生命の危機に晒され敗戦の日を迎え自由の身となる。苦難の歴史が刻まれたフランスのシンボル関西日仏学館の戦時の混乱を記憶すべきであろう。宮本正清(関西日仏学館主事(当時)、ロマン・ロラン研究・翻訳者、研究所設立者)の“戦時のつぶやき”詩集『焼き殺されたいとし子らへ』を読む。
朗読:*加賀美幸子(元NHK 理事待遇のエグゼクティブアナウンサー)
加賀美氏は1963年NHK入局。「女性手帳」「夜7時のテレビニュース」「バラエティー、テレビファソラシド」大河ドラマ「峠の群像」「風林火山」「ラジオ深夜便」「列島縦断 短歌・俳句スペシャル」など報道、教育、教養、情報その他多くの番組を担当。現在も「古典講読」「漢詩を読む」「悩み相談・渋護寺」「ドキュメンタリー」などを担当。「古典講読」は『万葉集』『源氏物語』『枕草子』『平家物語』『徒然草』『奥の細道』など、長年にわたって原文朗読を続けている。著書『こころを動かす言葉』『言葉の心・言葉の力』ほか。高校・中学の国語教科書にエッセイが取りあげられている。NHK会長賞、ダイヤモンドレディー賞、前島(密)賞、徳川夢声市民賞など受賞。「千葉市男女共同参画センター名誉館長」「NPO日本朗読文化協会朗読名誉会長」「放送人の会」理事「公益財団法人長寿科学振興財団」理事「日本文藝家協会員」「NHK文化センター」講師ほか。
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宮本正清。光太郎の朋友だった片山敏彦との関係、さらに光太郎も敬愛していたロマン・ロランとのからみで、何となくは存じておりましたが、光太郎とは直接の交流はなかったようで、改めてこういう人物だったんだ、と知りました。

戦前から戦時中にかけての文学者等への弾圧の歴史、逆に光太郎ら大多数の文学者等が翼賛体制に飲み込まれていった黒歴史、そのあたりは「臭いものに蓋」の感があり、一般にはよく知られていませんね。大杉栄・伊藤野枝夫妻、小林多喜二の虐殺などは比較的有名ですが、それでもまだ多くの謎に包まれています。

そしてロシアによるウクライナ侵攻。当方、非常に気になっているのが、ロシアの一文化人たちの動向です。国営テレビの女性スタッフが番組に乱入、「プロパガンダを信じないで」とのメッセージを出したりしましたが、それ以外の部分での動きが伝わってきません。戦前、戦中の日本よろしく、危険分子は投獄されたりしているのか、光太郎のようにプロパガンダを垂れ流す存在に成り下がっているのか……。

そして恐ろしいのはわが国での動き。「露助や支那が攻めてくるぞ! だから憲法改正だ! 再軍備だ! 核武装だ!」そういう世の中になって欲しくないものです。

【折々のことば・光太郎】

新宿米久にて六人牛鍋、タキシでかへる、十時


昭和27年(1952)11月28日の日記より

新宿米久」は、光太郎が戦前によく行っていた浅草米久の支店でしょう。

昨日、開幕でした

春のライトアップ2022

期 間 : 2022年3月25日(金)~4月3日(日)
時 間 : 17時45分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       友禅苑、国宝三門周辺、女坂、国宝御影堂、阿弥陀堂、大鐘楼
料 金 : 大人600円(高校生以上) 小人300円(小・中学生)

友禅の祖・宮崎友禅翁ゆかりの庭園「友禅苑」や、日本最大級の木造二重門である「国宝三門」、除夜の鐘で有名な「大鐘楼」など境内各所をライトアップします。ぜひこの機会に、知恩院へお参りください。
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みどころ
友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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国宝 御影堂
寛永16(1639)年、徳川家光公によって建立されました。間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。
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大鐘楼(春期初公開)
大鐘は高さ3.3m、直径2.8m、重さ約70トン。寛永13(1636)年に鋳造され、日本三大梵鐘の1つとして広く知られています。僧侶17人がかりで撞く除夜の鐘は京都の冬の風物詩として有名です。
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関連行事
聞いてみよう!お坊さんのはなし テーマ『根を培う』

 正座じゃないといけないの?手の合わせ方が分からない。仏教は難しそう…。お坊さんの話を今まで聞いたことがない。どのようなお方も大歓迎です! 気軽に御影堂へいらしてください。気さくなお坊さんたちが皆さまを温かくお出迎えいたします。お話の後、木魚にふれ「南無阿弥陀仏」とお称えする、木魚念仏体験がございます。日常から離れた心静かなひとときをお坊さんと味わってみませんか?
開始時間:18:00〜/18:45〜/19:30〜/20:15〜(各回お話15~20分、木魚念仏体験5分程度)
状況により時間が変更になる場合がございます。堂内間隔を保つため、人数制限を行う場合がございます。知恩院七不思議のひとつ「大杓子」をモチーフにした缶バッジを参加者全員に差し上げます!
(無くなり次第終了)
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御影堂プライベートツアー
 国宝御影堂の通常非公開部をご案内いたします。御影堂の荘厳な雰囲気に浸りながら、特別な時間をゆっくりとお過ごしください。
 日程:毎夜
 開始時間:18:15~/19:00~/19:45~/20:30~
 所要時間:45~50分程度
 定員:各回25名様まで
 料金:お1人様1,000円(小・中学生500円)
 別途ライトアップ拝観料が必要です。
 当日プライベートツアーの受付(御影堂前)にて現金でお支払いください。

月かげプレミアムツアー
 ライトアップ拝観エリアすべてを僧侶と一緒に巡る特別ツアーです。御影堂内陣や大鐘楼柵内の通常非公開部もご案内!1時間半たっぷりと知恩院の魅力をご体感いただけます。
 日程:3/25(金) 26(土) 27(日) 30(水) 4/2(土) 3(日)
 開始時間:18:00~/19:30~
 所要時間:1時間半程度
 定員:各回15名様まで
 料金:お1人様3,000円(小・中学生1,500円)
 ライトアップ拝観料込み。料金は拝観受付にてお支払いください。

「補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像」は、明治25年(1892)、東京美術学校として依頼を受け、光太郎の父・光雲が主任となって制作されました。鋳造は岡崎雪声、原型は東京藝術大学さんに収蔵されています。
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京都では、清水三年坂美術館さんで、光雲作の木彫が14点出ている「明治・大正時代の木彫」展も開催中です。併せて足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

21日朝山野の山百合一せいに咲きはじめる、壮観、


昭和27年(1952)7月26日の日記より 光太郎70歳

遡ること10年ほど前、まだ駒込林町のアトリエ兼住居にいた昭和16年(1941)、詩人の宮崎稔に宛てたはがきには、以下の記述がありました。

昨日は山百合の花たくさんお届け下され御厚志まことにありがたく存じました、早速父と智恵子との写真に供へましたが殆と部屋一ぱいにひろがり、実に壮観をきはめ、家の中に芳香みなぎり、山野の気満ちて、近頃これほど爽快に思つた事はありません、智恵子は殊に百合花が好きなので大喜びでせう。

昨日は京阪に行っておりました。レポートいたします。

「京阪」と言いつつ、「阪」→「京」の順で、まずは新たにオープンした、大阪中之島美術館さん。こちらでは、オープニング記念の「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」展が開催中。光太郎の父・光雲の木彫「砥草刈」(大正3年=1914)が出ていると云うことで、拝見に伺った次第でした。
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右上は堂島川から見た同館。ビルの谷間の黒い箱状の建物です。
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エントランス前に据えられた、現代アート作家・ヤノベケンジさんの《SHIP'S CAT(Muse)》の前に、テレビ局クルーと思われる皆さん。

ヤノベさんと言えば、智恵子の故郷・福島二本松名物「二本松の菊人形2017」にも猫のオブジェを出品されていました。蛇足ながら、テレビと言えば、先日、とある番組で中之島美術館さんを取り上げた際、アナウンサー氏がヤノベさんを「ヤベノさん」と云っており、呆れました(笑)。

さて、館内に入り、案内の方の指示に従って、当日券の券売機に。12時前に着いたのですが、案内の方は「午後1時からの入場となります」。「まぁ、券だけ買っておいて、昼めし喰って時間をつぶすか」と思いました。ところが、券売機のパネルをタッチすると、午後1時から、そして午後2時からの分も既に完売。1番早くて午後3時からでした。事前にネットでの予約も可能でしたが、「当日券も販売しています」というので、当日券でいいだろ、と思ったのが甘かったのですね。同館、鳴り物入りの開館でしたし、メディアにも随分取り上げられましたから。

遺憾ながら、結局断念し、それでもショップで図録を購入しました。下記が光雲の木彫「砥草刈」。いずれ見られる機会があるでしょう。
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その後、京阪電車の淀屋橋駅から一路、京都へ。

祇園四条駅で下車、八坂神社さんに参拝し、清水方面へ歩きました。

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昨年、「明治の洋館で楽しむドリンクフェア「文学浪漫巡り」~浪漫を味わうひとり時間 レトロなドリンクフェア~」を開催し、『智恵子抄』をイメージして作られた「シトラスジュレのゆずジュース」をメニューに入れてくださった、長楽館さん。
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同フェア、終わっていましたし、日帰りの先を急ぐ旅ですので、外観を撮影したのみでした。
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途中、いかにも京の都、という風情を堪能しつつ、最終目的地、清水三年坂美術館さんへ。
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同館では、3月5日(土)から企画展示「明治・大正時代の木彫」が開催されており、やはり光雲の木彫が十数点出ているということでしたので、こちらがメインの目的でした。
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フライヤーの表に大きく画像が出ているのは、光雲ではなく、光雲と東京美術学校で同僚だった石川光明の作品です。裏面には光雲の「月宮殿」(大正7年=1918)。

出品目録。
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今回、図録は発行されませんでしたが、平成23年(2011)に同館で行われた企画展「高村光雲と石川光明」と、出品作品がかなり重複していて、ショップではその際の図録の残りが勧められていました。オンラインでも入手可です。

光雲作品は14点。「高村光雲と石川光明」の際には伺えませんでして、大半は初見の作品、さらに画像でも見たことのない作品もあったため、文字通り息を呑んで拝見しました。通常の丸彫りだけでなく、レリーフ、香合や菓子鉢などの器もあり、その意味ではバリエーションに富んでいましたし。しかも、それぞれ作の出来や保存状態もいいものばかりでした。

同展、5月29日(日)までと長めの設定です。コロナ感染には十分お気をつけつつ、ぜひ足をお運び下さい。

また、同じく光雲の木彫ということで、花巻高村光太郎記念館さんでの「第二弾・高村光太郎の父・光雲の鈿女命(うずめのみこと) 受け継がれた「形」」もよろしく。

【折々のことば・光太郎】33990

湖を渡りて休屋にゆく、観光ホテルに一泊、 和井内にゆき、ヒメマスのふか場見物、発荷峠、 夕方、 此日アトリエは東京に求むる事を相談の結果きめる、


昭和27年(1952)6月18日の日記より
 光太郎70歳

生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作のための下見中です。七年の蟄居生活を経て、ついに帰京を決断しました。ただしこの時点では、像の完成後にはまた花巻郊外旧太田村の山小屋に帰るつもりでいました。

画像はこの日、同行した詩人の藤島宇内が撮った湖上でのショット。翌年、角川書店刊行の『昭和文学全集22 高村光太郎 萩原朔太郎』の月報に載ったものです。














京都から企画展示情報です。

明治・大正時代の木彫

期 日 : 2022年3月5日(土)~5月29日(日)
会 場 : 清水三年坂美術館 京都市東山区清水寺門前産寧坂北入三丁目337-1
時 間 : 10:00~17:00
休 館 : 月・火曜日(但し、祝日は開館)
料 金 : 一般800円/大学・高校・中学生500円/小学生300円

 日本では古くから木製の仏像・置物・細工物などが盛んに作られてきました。明治は社会変動に伴い、それら木彫を取り巻く環境が変化した時代です。とくに西洋の「美術」および「彫刻」といった概念の流入は、木彫界にも大きな影響を及ぼしました。帝室技芸員として知られる高村光雲・石川光明らはこの激動の時代に台頭し、明治から大正にかけて指導的役割を果たしました。
 明治・大正時代には、木彫の近代化を目指して様々な試みがなされた一方、前近代から存続してきた置物や細工物の世界においても森田藻己の木彫根付など、高い技術力を駆使した名品が作られました。また光雲・光明・藻己ら東京を拠点とした作家のみならず、大阪などの地方でも木彫の作家たちが活躍しました。
 このたびの展示では、当館が誇る近代の細密工芸のコレクションから、多彩な顔ぶれによる木彫作品を紹介します。幅広い近代の木彫の世界をどうぞお楽しみください。
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◆主な出品作品
《鍾馗》石川光明(1852~1913) 高 21.6㎝/大正2年(1913)

《月宮殿》高村光雲(1852~1934) 高 11.3㎝/大正7年(1918)

《龍自在置物》穐山竹林斎(1891~1937) 長 68.0㎝

《根付 薪束》森田藻己(1879~1943) 3.0×5.5×3.7㎝

《童と犬》山崎朝雲(1867~1954) 童 41.5×15.0×22.0cm 犬 15.5×20.5×18.0㎝ 大正8年(1919)

いわゆる「超絶技巧」系の工芸を中心とした清水三年坂美術館さん。木彫のコレクションも充実していて、これまでも光太郎の父・光雲作品を複数展示した企画展をたびたび開催して下さいました。

平成23年(2011) 「帝室技芸員series3 彫刻 高村光雲と石川光明
平成27年(2015) 「明治の彫刻
令和元年(2019) 「帝室技芸員の仕事 彫刻編

今回も光雲作品、複数並ぶことと思われます。「主な出品作」として挙げられているのが「月宮殿」(大正7年=1918)。愛らしい作品ですね。
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他にも関西方面で見ておきたいもろもろがありまして(おいおい紹介しますが)、来月末くらいに拝見に伺おうかと思っております。

コロナ感染には十分お気をつけつつ、皆様もぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

今夕公民館にモンブランの演奏会ある由にて一旦菊屋にかへり、公民館にゆく。九時過終わる。 菊屋にかへり、吉田幾世さん他三四人と演奏会の話、


昭和27年(1952)3月30日の日記より 光太郎70歳

モンブラン」は、フランスのヴァイオリニスト、レイモン・ガロワ=モンブラン。東宝映画「花の中の娘たち」の音楽を担当し、この年と翌年、来日していました。

佐藤隆房編『高村光太郎山居七年』から。

 その日、県公会堂で音楽会が開かれていました。全国主要都市で演奏をし、盛岡に来たモンブラン一行のフランス演奏団の音楽会です。幾世さんは職員にも頼み、いろいろ探してやっと切符一枚を得て先生に上げましたところ大変喜び、急いで会場に車を走らせました。会場の係の人が気をきかせて、一番いい席へ先生を案内しました。
 久しぶりにフランス人の演奏をきくことのできた先生は、いいようのない興奮の中にジイッときき入っておったのですが、終ると感激の拍手をおくり、しばらくは席にじっとしていたということです。
 菊屋旅館に夜九時頃帰りました。そして何か輝かしい目をしながら幾世さんたちに「モンブランに感謝の挨拶をしたかったです。僕はフランス語もできるし。だがこの服装では失礼になるので出ることはできなかった。」とまことに残念そうにいいました。
 あとで、モンブラン一行の人が、「あの前の席にいたおじいさんの熱心なききぶりは普通の人ではない、余程すぐれた人にちがいない。」ともらしていたということです。


単にガタイがでかくて目立っただけのような気もしますが(笑)。

うっかりしていたら、始まっていました。

秋のライトアップ二〇二一

期 間 : 2021年11月5日(金)~11月28日(日)
時 間 : 17時30分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       三門回廊、友禅苑、女坂、国宝御影堂、阿弥陀堂
料 金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)
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主な見どころ

国宝 御影堂
寛永16(1639)年、徳川家光公によって建立されました。
間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。

国宝 三門
元和7(1621)年、徳川秀忠公が建立した 高さ24m、幅50mの日本最大級の木造二重門。悟りの境地に到る「空門」「無相門」「無願門」(三解脱門)を 表すことから三門といいます。※回廊公開は3年ぶり

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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聖観音菩薩像、明治25年(1892)の作で、東京美術学校として依頼を受け、光太郎の父・光雲が主任となって制作されたたものです。木造原型は美校の後身・東京藝術大学さんに収蔵されています。

関連行事として、法話「聞いてみよう! お坊さんのはなし」、御影堂プライベートツアー、フォトコンテスト、限定御朱印授与等が企画されています。

ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

ねてゐるうちよみうり記者来訪、よみうり文学賞に内定の由にて感想筆記。ごく簡単にのべる、

昭和26年5月2日の日記より 光太郎69歳

015前年に始まった読売文学賞の詩歌俳句賞。第一回は当会の祖・草野心平が蛙の詩で受賞しました(他に斎藤茂吉が『ともしび』で)が、それに続く第二回を光太郎が受賞しました。

受賞作は前年に刊行された詩集『典型』。自らの半生を顧みた連作詩「暗愚小伝」20篇を含み、選詩集的なものを除き光太郎生前最後の詩集です。光太郎と共に会津八一も『会津八一全歌集』で受賞しています。

この日、光太郎の語った内容は以下の通り。5月14日の『読売新聞』に掲載されました。『高村光太郎全集』には漏れていたものです。

 典型に文学賞がでるというのは意外だ。典型そのものがよいというのではないだろう。長く詩を書いているから、また年をとつてもまだやつているからという意味ではないだろうか。いずれにしてもまあいらないと断るのはワザとらしくていやだから素直にもらう。
 あの詩集の内容を考えると一つの告白といつたもので文学賞をもらうようなものではなかつた。だから感想といわれても困る。それに年も年だから賞をもらつても感激するということもない。若いときならうれしいものだつたけど――かえつて悪いような気がするというのが本当のところだ。


光太郎、賞金五万円は山小屋近くの山口小学校や地元青年会などにそっくり寄付してしまいました。

京都からコレクション展情報です。

モダンクラフトクロニクル―京都国立近代美術館コレクションより―

期 日 : 2021年7月9日(金)~8月22日(日)
会 場 : 京都国立近代美術館 京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
時 間 : 午前9時30分~午後5時
休 館 : 月曜日、8月10日(火)*ただし8月9日(月・休)は開館
料 金 : 一般:1,200円(1,000円) 大学生:500円(400円)
      ( )内は20名以上の団体および夜間割引(金曜、土曜 午後5時以降)
       高校生以下・18歳未満は無料

1963年に開館した京都国立近代美術館は活動の柱の一つに工芸を置いており、国内有数の工芸コレクションを形成してきました。加えて、当館は「現代国際陶芸展」、「現代の陶芸―アメリカ・カナダ・メキシコと日本」、「今日の造形〈織〉-ヨーロッパと日本―」、「現代ガラスの美―ヨーロッパと日本―」など、折に触れて日本との比較の中で海外の工芸表現を紹介し、日本の美術・工芸界に大きな刺激を与えてきました。本展では、当館の工芸コレクションを用いて、これまでの当館の展覧会活動の一端を振り返るとともに、近代工芸の展開をご紹介いたします。

第1章 世界と出会う 起点としての京都国立近代美術館
第2章 四耕会、走泥社からクレイワーク、ファイバー・ワークへ
第3章 「美術」としての工芸 第 8回帝展前後から現在まで
第4章 古典の発見と伝統の創出
第5章 新興工芸の萌芽 自己表現としての工芸
第6章 図案の近代化 浅井忠と神坂雪佳を中心に
第7章 手わざの行方

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光太郎の父・光雲、それから実弟で鋳金分野の人間国宝だった髙村豊周の作品が出品されます。

まず、光雲。とういうか、旭玉山、石川光明、大谷光利、香川勝廣、加納鐡哉、加納夏雄、柴田是真との合作で「福禄封侯図飾棚」。光太郎が生まれた明治16年(1883)の作となっています。
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おそらく、上部の木彫部分を光雲が手がけているのでしょう。下の扉、鹿の部分は白いので、象牙。牙彫師の旭玉山によるものと思われます。

豊周の作はこちら。
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「蝋型朧銀筒形花生」。昭和38年(1963)の作です。

他に、光雲、光太郎等と交流の深かった人物の作品も多数。バーナード・リーチ、藤井達吉、津田青楓、山本安曇など。

コロナ感染にはお気を付けつつ、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

朝太田中学校の生徒等箒作りに大挙してくる。中学の教師二人立寄られ、一時間ほど談話。青年教師は東京に二十年もゐた由。又女教師さんは福島須賀川の人 東京にゐて今度岩手にはじめて来られし由。


昭和23年(1948)4月9日の日記より 光太郎66歳

新年度早々、山で箒(ほうき)作りというのが笑えます。先生はともかく、生徒さんの中にはまだご存命の方も多いような気もします。

まずプレスリリースから。

​​明治の洋館で楽しむドリンクフェア「文学浪漫巡り」、6月1日より提供開始

~浪漫を味わうひとり時間 レトロなドリンクフェア~

明治の洋館でカフェ・レストラン・ホテル等を経営する株式会社長楽館(京都市東山区円山町、総支配人:吉田 重人)は、「デザートカフェ長楽館」にて2021年6月1日(火)より「Drink Fair ―文学浪漫巡りー」を開催いたします。

デザートカフェ長楽館は、1909年に建てられた京都市指定有形文化財である洋館「長楽館」の、それぞれ内装の異なる7種のお部屋で、スイーツや軽食、ドリンクを提供しております。

この度、建物と同じく明治時代に生まれた文豪の詩や小説の一節を添えて、夏にぴったりのドリンク5種をご用意しました。太宰治・宮沢賢治・吉井勇・高村光太郎・中原中也の5人の文豪の作品の一節から着想を得たドリンクです。

■背景
昨今のコロナ禍で、旅行の機会の減少、緊急事態宣言に伴う美術館や博物館などの休業により、非日常や歴史浪漫を楽しむ機会が減少する一方で、「ひとりで過ごす時間」は増加の傾向にあります。それを受けて、明治時代の調度品が飾られた洋館内のカフェで、ドリンク1杯から気軽に非日常や歴史浪漫を味わっていただきたいと考えました。

■ドリンク紹介(メイン画像:上段左より順に)

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・コーヒーゼリーフロート ¥1,300
「愛は、この世に存在する。きっと、在る。見つからぬのは、愛の表現である。その作法である。」 太宰治『思案の敗北』
長楽館オリジナルブレンドのアイスコーヒーとコーヒーゼリーにミルクを加えたバニラアイスのフロート。
・パイナップルソーダ ¥1,200
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』 宮沢賢治『やまなし』
生のパイナップルから絞った果汁を炭酸水で割った、パイナップルの果肉のはじけるソーダ。
・ストロベリー・ラ・テ ¥1,200
いのち短し、戀せよ、少女 吉井勇『ゴンドラの唄』
自家製のストロベリーベースにミルクを加え、甘酸っぱいフレッシュないちごを添えたラ・テ。
・シトラスジュレのゆずジュース ¥1,200
そんなにもあなたはレモンを待つてゐた 高村光太郎『智恵子抄』
レモン・オレンジ・ライム・バジルを煮出したジュレと、ゆずとレモンのすっきり爽やかなジュースにバジルとミントを添えて。
・すももともものティーソーダ ¥1,200
アメリカの国旗とソーダ水とが恋し始める頃ですね 中原中也『初夏』
自家製のすももシロップと、桃のフレーバーティーのティーソーダ。すっきりしたヨーグルトクリームに、フレッシュな桃とピンクペッパーを添えて。

■開催概要
開催店舗:デザートカフェ長楽館
開催期間:2021年6月1日(火)~8月31日(火)
※定休日:6月9日(水)、7月7日(水)・26日(月)~30日(金)、8月25日(水)
営業時間:11:00~18:30(18:00L.O.)
※料金は税込金額です。別途サービス料10%を申し受けます。
※写真は一例です。食材の入荷状況により変更の可能性がございます。
※情勢により、営業時間の変更の可能性がございます。最新の営業時間・休業日はホームページをご確認ください。

■会社概要
商号            : 株式会社長楽館
所在地           : 〒605-0071 京都市東山区八坂鳥居前東入円山町 604
設立            : 1954年9月
事業内容          : レストラン、カフェ、ホテル、宴会場の運営及び結婚式・宴会の企画
煙草王と呼ばれた明治時代の実業家である村井吉兵衛の別邸「長楽館」(1909年竣工)は1986年に京都市有形文化財に指定されています。往時の洋館建築の造りをそのままに、カフェ・レストラン、バー、スイーツブティック、そして隣接する新館にホテルを設けています。
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長楽館の新型コロナウイルス感染症対策について:
 https://www.chourakukan.co.jp/news/post-11706.html
長楽館公式ホームページ:https://www.chourakukan.co.jp/ 

長楽館さん、当方は前を通ったことがあるだけで、入ったことはありません。知恩院さんや祇園さん(八坂神社さん)にほど近く、実に味のあるたたずまいです。光太郎が3年半に亘る欧米留学から帰朝した明治42年(1909)の竣工。昨年、テレビ東京さん系の「新美の巨人たち」で取り上げられ、興味深く拝見しました。

そしてシャレオツなドリンク。
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この画像では、左から「すももともものティーソーダ/中原中也『初夏』」、「シトラスジュレのゆずジュース/高村光太郎『智恵子抄』」、「ストロベリー・ラ・テ/吉井勇『ゴンドラの歌』」、「コーヒーゼリーフロート/太宰治『思案の敗北』」、「パイナップルソーダ/宮沢賢治『やまなし』」。多少の無理くり感がぬぐえませんが(笑)、いずれもこの季節にぴったりですね。

「智恵子抄」からのインスパイアというドリンク類、これまでも各地で饗されてきました。「日本酒オリジナルカクテル「ほんとうの空」」(福島県)、「自家製レモンシロップのレモンスプマンテ」(東京都)、それからドリンクではありませんが「安達ハチミツと有機レモンのドレッシング」(福島県)。

今後もこうした取り組み、どんどん為されてほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

燈下の関係上、明るいうちに何でもしてしまふ事。


昭和22年(1947)10月24日の日記より 光太郎65歳

花巻郊外旧太田村での蟄居生活、すでに丸2年となりましたが、この時点ではまだ山小屋に電気が通じていません。電線が引かれ、ランプ生活から解放されるのは昭和24年(1949)に入ってからです。

夏場はまだ日が長いのでよかったのでしょうが、10月末とも成ると日没が早まり、大変だったと思われます。

京都東山の浄土宗総本山知恩院さん。春秋に行われている恒例のライトアップ、2021春が始まります。コロナ禍のため、昨春は中止でした。

春のライトアップ二〇二一

期 間 : 2021年3月26日(金)~4月4日(日)
時 間 : 17時45分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       友禅苑、国宝三門周辺、国宝御影堂、方丈庭園(一部公開)
料 金 : 大人600円(高校生以上) 小人300円(小・中学生)

京友禅の祖・宮崎友禅翁ゆかりの庭園「友禅苑」や、日本最大級の木造二重門である「三門」、昨年4月に落慶を迎えた御影堂をライトアップします。ぜひこの機会に、知恩院へお参りください。
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みどころ

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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国宝 御影堂
寛永16(1639)年、徳川家光公によって建立されました。間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。

方丈庭園
江戸時代初期、小堀遠州と縁のある僧・玉淵(ぎょくえん)によって作庭されたと伝えられる池泉式の庭園です。方丈の華麗な建築と背後に迫る東山の風光とともに、情緒あふれる美しい風景をかもしだしています。

聞いてみよう!お坊さんのはなし
お坊さんの話を聞いたことがない方も大歓迎!気さくなお坊さん達が温かく出迎え、身近な仏教のお話をいたします。お話の後には、木魚に触れ「南無阿弥陀仏」とお称えするプチお寺体験もあります。今回は平成大修理の工事を終え、参拝可能となった御影堂にて開催いたします。荘厳な空間の中、日常から離れた心静かなひとときを味わってみませんか?
 日程:ライトアップ期間中、御影堂にて毎夜開催
 時間:①18時00分~ ②18時45分~ ③19時30分~ ④20時15分~
 (各回お話15~20分、木魚念仏体験5~10分程度)
 ※状況により時間が変更になる場合がございます。
 ※堂内空間を保つため、人数制限を行う場合がございます。

「補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像」は、明治25年(1892)、東京美術学校として依頼を受け、光雲が主任となって制作されました。鋳造は岡崎雪声です。
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コロナ感染にはお気を付けつつ、ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

朝こまかい雪ふりしき居る。軒につらら多数下り美し。風出て午后雪やむ。寒さ冴え返る。

昭和22年(1947)3月12日の日記より 光太郎65歳

つららがたくさん出現するのは、却って春が近づいてからだそうですが、花巻郊外旧太田村、まだまだ寒そうです。

この日描いたつららのスケッチがこちら。「大根か」と突っ込みたくなりますが(笑)。
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「最近手に入れた古いものシリーズ」を、もうすこし続けようかとも思っていましたが、3日間それを書いているうちに新着情報がいろいろ入ってきましたので、またそちらの紹介に戻ります。

京都から、展覧会情報、既に始まっています。

黒田 大スケ「未然のライシテ、どげざの目線」

期 日 : 2021年2月20日(土)~4月4日(日)
会 場 : 京都芸術センター 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2
時 間 : 10:00~20:00
休 館 : 3月1日(月)
料 金 : 無料

京都芸術センターが実施する Co-program カテゴリー B では、アーティストと京都芸術センターが共同で展覧会を実施しています。今年度は黒田大スケと共同で、展示『未然のライシテ、どげざの目線』を開催します。

日本において銅像をはじめとする公共彫刻は、ただの彫刻というよりも、そのモデルとなった人物と同一視したり、あるいは服を着せ食事を供えたり、最近でいえばマスクをつけたりと、人格を持った人間のように扱われることがしばしばあります。例えば此処京都芸術センターの入り口にある二宮金次郎像にマスクがつけられているように、(最近は靴も履いています。)ごく自然な振る舞いとして日常に溶け込んでいます。ところでこうした感覚は何処からやってきたのでしょうか?

本展は、京都市内にある有名な公共彫刻を起点に、彫刻が帯びる霊性、言い換えれば、彫刻が人格を持った人間であるかのように感じる感覚を、あらゆる実験的芸術的アプローチによって創造的に視覚化し、彫刻の持つ意味や背景を捉え直す試みを展示しています。また、会場内では黒田のこれまでのリサーチ等の資料も併せてご覧いただけます。その彫刻はなぜ作られたのか?彫刻家は何を目指したのか?彫刻とは何か?彫刻を改めて捉え直し、公共と彫刻の関係について再考する機会となれば幸いです。

黒田大スケ / 美術家
1982 年京都府生まれ。2013 年広島市立大学大学院総合造形芸術専攻(彫刻)修了。橋本平八「石に就て」の研究で博士号取得。2019 年文化庁新進芸術家海外研修制度で渡米。帰国後、関西を中心に活動している。歴史、環境、身体の間にある「幽霊」のように目に見えないが認識されているものをテーマに作品を制作している。最近の展覧会に「本のキリヌキ」(瑞雲庵、2020)、「ギャラリートラック」(京都市街地、2020)等がある。
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関連企画
【作家によるギャラリーツアー】
出展作家の黒田大スケが、館内を巡って展示作品について話をします。
日時:2021年2月23日(火・祝)11:00~12:00頃 3月20日(土・祝)14:00~15:00頃
集合場所:京都芸術センター エントランス
申込方法:公式サイトより申込
定員:10名

基本、ビデオインスタレーション(映像作品による展示)のようです。

核となるのは《地獄のためのプラクティス》 という作品。

パンフレットによると、

 《地獄のためのプラクティス》 は黒田が学び手本としてきた彫刻についての作品です。黒田は自分に身についた彫刻の技術や考え方が、どのようなものなのかを知るために様々なリサーチを重ねてきました。この映像作品は作者の身体化された彫刻、あるいは無意識の造形感覚としての彫刻を取り出すために、黒田が複数の彫刻家を演じるパフォーマンスを記録したものです。台本などはなく、その内容は、これまでの彫刻体験と彫刻に関するリサーチに基づいたもので、即興的に演じられています。作中に登
場する動物は全て実在の彫刻家をモデルにしたもので、彫刻家の魂があの世で彫刻を作り続けている様子が表現されています。具体的には、多くの日本の近代の彫刻家が手本としたオーギュスト・ロダンが日本の近代彫刻の概観を偲ぶ様子を起点にしたビデオインスタレーションで構成されています。そして、個別の物語については地獄めぐりならぬ、日本の近代の彫刻の歴史をなぞるように館内各所に展示しています。芸術センターの建物も非常に趣のある見応えあるものです。各ビデオは 5 分~10 分となっています。ごゆっくりお楽しみください。

多くの日本の近代の彫刻家が手本としたオーギュスト・ロダンが日本の近代彫刻の概観を偲ぶ様子」は、かの「考える人」が、京都国立博物館さんで屋外展示されていることと無縁ではないのでしょう。
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日本の近代の彫刻の歴史をなぞる」「個別の物語」の中に、光太郎も。

6.《高村光太郎のためのプラクティス》 ビデオ、2021
高村 光太郎(1883-1956)
詩人、彫刻家。高村光雲の長男として生まれ幼少期より彫刻に親しむ。彼が編集し翻訳した「ロダンの言葉」は多くの彫刻家のバイブルとして読まれた。また新聞雑誌などで彫刻の批評も旺盛に繰り広げた。彼の批評に一喜一憂する彫刻家は多く、良くも悪くも彼が近代の彫刻表現に与えた影響は大きい。一方で高村自身の作品は他の彫刻家に比べて決して多いとは言えない。また渡仏時にロダンに感化されたはずが、残された作品のほとんどは彼が遠ざけようとした高村光雲的な江戸から続く木彫作品である。卓抜な詩人の才能を駆使し言葉で彫刻を作ったとも言えるだろう。

残された作品のほとんどは彼が遠ざけようとした高村光雲的な江戸から続く木彫作品である。」という部分には疑問が残りますが……。現存が確認できている作品は、ブロンズの方が多いもので……。

光太郎以外のラインナップは以下の通りです。

1.《オーギュス・ロダンのためのプラクティス》 ビデオ、2021
2.《建畠大夢のためのプラクティス》 ビデオ、2021
3.《佐藤忠良のためのプラクティス》 ビデオ、2021
4.《金学成のためのプラクティス》 ビデオ、2021 
5. 小倉右一郎(1881 - 1962)
7.《金景承のためのプラクティス》 ビデオ、2021
8.《本郷新のためのプラクティス》 ビデオ、2021
9.《渡辺長男のためのプラクティス》 ビデオ、2021 
10.《北村西望のためのプラクティス》 ビデオ、2021 


なぜか「オーギュスト」の「ト」が抜けています。また、「小倉右一郎」のみ「~のためのプラクティス」となっていません。何らかの意味があるのでしょうか?

他に、《どげざの目線》《青年の目線》《子供の目線》と題した作品も。制作には「カメラオブスタチュー」を使用したとのこと。

カメラオブスタチューとは、カメラ・オブ・スクラ(現代のカメラの原型となったピンホールカメラのような光学機械)の箱や部屋に当たる部分に彫刻(銅像など)を用いた風変りなカメラのこと。銅像の内に潜むあるいは像の下敷きになっているような霊性を視覚化しようと考案された。
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展示されている映像はすべて「カメラオブスタチュー」で撮影した京都市内の風景で、像の大きさに応じてトラックや自転車などで運び撮影したものです。今回モチーフとしたのは、三条京阪駅前の「高山彦九郎皇居望拝之像」(作者:戦前、渡辺長男・戦後、伊藤五百亀)、京都府立図書館横の「二宮尊徳先生像」(作者:小倉右一郎、上田貴九丸の合作)、「わだつみ像」(作者:本郷新)

だそうで……。「カメラ・オブ・スクラ」は、ヨハネス・フェルメールも使っていただろうと推測されていることが有名ですね。それを彫刻に仕込んで軽トラや自転車に乗せて……これだけでもアートですね(笑)。

コロナ禍には十分お気を付けつつ、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】004

父の十三回忌。朝小屋の西側に栗の実(院長さんよりもらひしもの)四顆を捲く。十三回忌記念のため。昨日棒杭を樹ててその旨墨書し置けり。


昭和21年(1946)10月10日の日記より
 光太郎64歳

昭和26年(1951)7月の『文藝春秋』第29巻第9号の巻頭グラビアページに右の画像が掲載されています。写真家・田村茂の撮影で、のちに標柱を再建した際のものです。

蒔いた栗の実は芽を出し、巨木に成長しました。のちに標柱は石にコピーされてそちらが立てられ、光太郎自筆のものは花巻高村光太郎記念館さんで保存しているはずです。
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ところが、残念なことに、平成29年(2017)頃にこの栗の木が枯死してしまい、倒壊の危険があるということで、やむなく伐採されてしまいました。石の標柱は現存しています。
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京都知恩院さんのライトアップ。光太郎の父・光雲原型制作の聖観音像もライトアップされます。毎年、春秋2回行われていたのですが、今春はコロナ禍のため中止。一年ぶりの開催となります

秋のライトアップ二〇二〇

期 間 : 2020年11月7日(土)~11月29日(日)
時 間 : 17時30分~21時30分(21時受付終了)
場 所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
       三門下周辺、友禅苑、女坂、国宝御影堂
料 金 : 大人500円(高校生以上) 小人300円(小・中学生)

この世の苦しみにあえぐあらゆる人々に寄り添いたい。阿弥陀如来は修行時代にそう願ったと『無量寿経』に記されています。浄土宗では八百年以上にわたりこの願いを語り継いできました。
ライトアップの煌めきは未来を照らす祈りの灯火。御影堂に響くお念仏の声は日々を粛然と生きる願い。
知恩院で過ごすひとときがコロナ禍の心にやすらぎをもたらすよう祈念いたします。
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主な見どころ

国宝 御影堂
寛永16(1639)年、徳川家光公によって建立されました。
間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。
御影堂の夜間の内部拝観は平成23 年以来9年ぶり。
御影堂の落慶後、初めてのライトアップとなります。

国宝 三門
元和7(1621)年、徳川秀忠公が建立した 高さ24m、幅50mの日本最大級の木造二重門。悟りの境地に到る「空門」「無相門」「無願門」(三解脱門)を 表すことから三門といいます。※楼上には上がれません。

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
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001※ライトアップ期間中、白寿庵にて笙の音色を聞くことができる日があります。(不定期で5日間ほど)

聖観音菩薩像、明治25年(1892)の作で、東京美術学校として依頼を受けたものです。木造原型は美校の後身・東京藝術大学さんに収蔵されています。

関連行事として、法話「“今”だからこそ伝えたい仏教(こと)」、限定御朱印「円光大師」授与、フォトコンテスト、川柳コンテスト等が企画されています。例年ですと、さらにコンサートなども開催されていたのですが、やはりコロナ禍を意識してそのあたりは自粛なのでしょう。

例年と異なるといえば、入場料。「御影堂落慶の喜びをより多くの方に感じていただきたく、本年は特別料金となっております」だそうで、調べてみましたところ、昨年までは大人800円、子供400円だったのが、それぞれ500円、300円とのこと。

コロナ禍といえば、今回のライトアップ開催にあたって、いろいろ意見もあったようですが、コロナ禍の今だからこそ、多くの方々を癒やしたいと考え、実施に踏み切られたそうです。詳しくは下の動画をご覧下さい。


というわけで、ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

人間には自己表現の本能があり、青少年期に達し自己表現の道を与へないと自己を破壊する

散文「工場の美化運動」より 昭和17年(1942) 光太郎60歳

戦時下の荒んだ世相の中、光太郎は人心が荒廃することを懸念していました。多くの翼賛詩も、それを防ごうと書かれたものです(中には鬼畜米英殲滅すべし、的なものもありますが)。

コロナ禍の現在にも通じるところがありますね。「自己破壊」の最たるもの、自ら死を選ぶ芸能人の皆さんのニュースが多く、心が痛みます。コロナ禍と無縁ではないでしょう。

そして、こんな時だからこそ、寺門を開くという知恩院さんの取り組み、評価したいと思います。

昨日に引き続き、雑誌系のご紹介をと思っていましたが、開催中の企画展示の情報が入ってきましたので、そちらを。


まず状況をわかりやすくするため、『朝日新聞』さんの京都版の記事。 

京都)戦時中のプロパガンダを紹介 中京区で28日まで

 戦時中の国威高揚のためのポスターや雑誌を展示した「戦争プロパガンダ展」が、京都市中京区壬生馬場町のおもちゃ映画ミュージアムで開かれている。元高校教諭の河田隆史さん(60)=大阪府高槻市=が、歴史の授業で使う平和教育の教材として約30年かけて集めたものだ。28日まで。
 国が発行していた週刊誌「写真週報」やアサヒグラフ(朝日新聞社発行、2000年休刊)、国の情報局などが作製したポスター(複製品)、国策宣伝のための映画作品のDVDなど約100点が展示されている。詩人・高村光太郎が詩を寄せている記事も紹介し、文学者を含む芸術家も戦争協力をしていた様子を伝える。河田さんは「国も民間も危機感をあおって、日本全体で戦争反対と言えない雰囲気をつくっていたことが分かる」と解説する。
 河田さんは現代も似た風潮を感じるという。「SNSでは自分が好む情報しか入ってこないし、世の中に反対意見は許さないという空気が漂っている。戦争はだめだというのは簡単だが、どうやったら本当に防げるのかを考えるきっかけになれば」と話している。
 午前10時半~午後5時。24日休館。入館料一般・高校生500円、中学生300円、小学生以下無料。問い合わせは同ミュージアム(075・803・0033)へ。(向井大輔)


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調べてみましたところ、詳細は以下の通りでした。 

戦争プロパガンダ展 ポスター・雑誌・映画

期  日 : 2019年12月4日(水)~12月28日(土)
会  場 : 
おもちゃ映画ミュージアム 京都市中京区壬生馬場町29-1
時  間 : 10:30~17:00
料  金 : 一般・高校生500円、中学生300円、小学生以下無料。
休館日 : 月曜、火曜


12月8日は太平洋戦争開戦記念日です。1941(昭和16)年12月8日早朝、日本軍がハワイのオワフ島真珠湾にあるアメリカ軍基地を奇襲攻撃し、3年半に及ぶ大東亜戦争対米英戦(太平洋戦争)が勃発しました。それから、日本が辿った歴史はよくご存じだと思います。
この記念日に合わせて、再び同じ過ちを繰り返すことがないよう、当団体理事でもある河田隆史さんのご協力で、「戦争プロパガンダ展」をします。


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似たような趣旨で開催されたのが、平成26年(2014)の「ヨコハマトリエンナーレ2014」中の「大谷芳久コレクション」。こちらは光太郎を含む10名ほどの有名詩人の翼賛詩集、多数の詩人達による翼賛詩アンソロジーなどが出品されました。

今回はポスターなどが多数出ているということで、ヴィジュアル的に非常なインパクトがありますね。この時代を批判するのはたやすいのですが、単に批判するだけでなく、なぜそうなってしまったのかを考える一助としたいものです。この時代をこそ範とするような輩が政権中枢に居座っている現在こそ、必要なことだと思われます。

光太郎がらみは具体的に何が出ているのかわかりませんが、光太郎は生涯に書いた詩およそ700篇中の200篇弱が翼賛詩といえるものですし(何を以て翼賛詩とするかの基準にも左右されますが)、生涯に刊行した詩集6冊(選詩集的なものを除きます)のうち、半数の3冊が翼賛詩集でした。詩以外でも、講演や散文などで国民を煽る発言のオンパレード。そういう意味では光太郎の翼賛活動に関わる展示物、いくらでも存在します。

そうした負の遺産も、次代への教訓、反面教師としての役割という点では、ひた隠しにされるべきものではありません。一部の詩人については、取り巻きや後の時代の狂信的なファンが「あれはなかったことにしよう」と隠蔽する動きがあるのですが……。

というわけで、ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

私はあまりほめたりけなしたりするのを重要に思はない。ただ事実だけを見る。
散文「佐野嶽夫『棕梠の木』序」より 昭和3年(1928) 光太郎46歳

「ただ事実だけを見る」。意外と難しいことですね。

毎年ご紹介しておりますので、失念していたわけではないのですが、いろいろご紹介すべき事項が多く、気がついたら既に始まっていました。

20周年! お坊さんに会いに行こう! 知恩院秋のライトアップ2019


期  間 : 2019年11月1日(金)~12月1日(日)

時  間 : 17時30分~21時30分(21時受付終了)

場  所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
        三門下周辺、友禅苑、女坂、国宝御影堂外観、宝佛殿、方丈庭園

料  金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生)

約8年間の大修理が行われ、2020年春に落慶を迎える国宝「御影堂」や、9年ぶりの夜間拝観となる「方丈庭園」、日本最大級の木造二重門である国宝「三門」、宮崎友禅ゆかりの庭園「友禅苑」など、境内各所をライトアップいたします。

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主な見どころ

国宝 三門

元和7(1621)年、徳川秀忠公が建立した 高さ24m、幅50mの日本最大級の木造二重門。悟りの境地に到る「空門」「無相門」「無願門」(三解脱門)を 表すことから三門といいます。


国宝 御影堂
寛永16(1639)年、徳川家光公によって建立されました。
間口45m、奥行き35mの壮大な伽藍は、お念仏の根本道場として多くの参拝者を受け入れてきました。


宝佛殿

平成4(1992)年に建立。和様式重層寄棟造りで、 堂内には高さ4.8mの阿弥陀如来立像、四天王が祀られています。

方丈庭園(9年ぶり)
江戸時代初期、小堀遠州と縁のある僧玉淵(ぎょくえん)によって作庭されたと伝えられる池泉式の庭園です。方丈の華麗な建築と背後に迫る東山の風光とともに、情緒あふれる美しい風景をかもしだしています。
※11月19日(火)~24日(日)は山内行事のため、時間帯によって拝観できない場合があります。 詳しくは当日スタッフにお尋ねください。

友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。

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京都では珍しい、露座の光雲作聖観音像が毎年ライトアップされています。

法話やコンサート、フォトコンテストなど、関連行事も充実しています。ちなみに昨年のフォトコンテストで最優秀に当たる「ナムいで賞」に輝いたのは、光雲原型の観音像を撮った一枚でした。賞品は「和順会館(宿坊的な)ペア宿泊券(お坊さんの案内付き)」だそうです。

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ぜひ足をお運び下さい。


【折々のことば・光太郎】
ミケランゼロの芸術は、自然の豪壮偉大を最もよく出してゐるが、ロダンはもつと自然的である。小宇宙的である。例へば、花の愛らしさ、岩石の強さまでも表現しわけることの出来るやうな内容的なものとなつてゐる。

談話筆記「巨匠ロダン翁」より 大正6年(1917) 光太郎35歳


こういう場合の常ですが、光太郎が範とした人物の評は、そのまま光太郎の理想的な芸術の一面を物語り、光太郎贔屓の当方などは、そのまま光太郎自身の評としてもいいように感じます。

光太郎の父・高村光雲の関連で3件ほど。

まず、京都から企画展の情報です。

帝室技芸員の仕事 彫刻編

期 日 : 2019年8月24日(土)~11月17日(日)
会 場 : 清水三年坂美術館 京都市東山区清水寺門前産寧坂北入三丁目337-1
時 間 : 10:00~17:00
料 金 : 一般800円/大学・高校・中学生500円/小学生300円
休 館 : 下記参照


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 当館所蔵作品のうち、帝室技芸員による作品を一堂に展示する「帝室技芸員の仕事」シリーズ。今回は石川光明(1852~1913)と高村光雲(1852~1934)の作品を中心に、彫刻分野の帝室技芸員による名品をご覧頂きます。
 帝室技芸員制度は、宮内省(現在の宮内庁)が技術と人柄に優れた当代の美術工芸家を選出し「帝室技芸員」に任命する作家の顕彰制度で、その拝命は作家にとって大変な名誉でした。
 光雲と光明は、帝室技芸員制度が発足した明治23年(1890)、ふたり同時に第一回帝室技芸員に任命されています。光雲が仏師として修業を積み生涯木彫一筋で制作を続けた一方、光明は牙彫を中心に木彫や彫漆にも取り組みました。ふたりはそれぞれ異なる姿勢で制作に取り組みながらも互いに敬意を払い、ともに近代彫刻界の発展に貢献しました。

 この度の展示では、光雲・光明の作品に加え、竹内久一(1857~1916)や山崎朝雲(1867~1954)の作品もご紹介します。作品が持つ気品と迫力、そして人物や動物の描写に発揮された妙技を味わって頂ければ幸いです。また、煙管筒のような小品も多数展示致します。精巧な彫りを作品の間近でどうぞご覧ください。
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というわけで、光雲作の木彫がある程度まとめて展示されます。同館では平成23年(2011)にも「室技芸員series3 彫刻 高村光雲と石川光明」という企画展を開催、その際には、光雲作品は約30点出ました。今回もそれに近いのではないかと思われます。


続いて、新潟県上越市からの展示情報。状況をわかりやすくするため、「上越妙国タウン情報」というサイト、「上越タウンジャーナル」というサイトから引用させていただきます。

高村光雲作 木造毘沙門天像 埋蔵文化財センターで初公開

謙信公祭が近づくなか、かつて春日山城跡の毘沙門堂に安置されていた木造毘沙門天像が、上越市春日山町の埋蔵文化財センターで展示されている。
一般公開は初めてということ。
木造毘沙門天像の大きさは約40㎝。作者は上野公園にある西郷隆盛像などを手がけた仏師、高村光雲。光雲は昭和3年、米沢にあった本物の毘沙門天像が火災の被害を受けたため、その修理を担当したが同時に分身として作ったのがこの像。なかには本物の像のかけらが収められているという。
毘沙門天像は昭和5年、旧春日村に寄贈され、春日山城跡の毘沙門堂に安置され、その後、盗難などの防犯面から春日地区町内会長連絡協議会が保管、現在は埋蔵文化財センターが保管している。協議会では元号が令和になったことにあわせ今回はじめて一般公開した。
木造毘沙門天像は今月30日までの展示。時間は午前9時から午後5時まで入場は無料。

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春日山城跡毘沙門堂にあった彫刻家高村光雲作「木造毘沙門天像」初公開

新潟県上越市春日山町1の同市埋蔵文化財センターで、かつて春日山城跡の毘沙門堂に安置してあり、明治・大正を代表する彫刻家の高村光雲(1852〜1934)が制作した「木造毘沙門天像」が2019年8月19日から展示されている。一般公開は初めてで、期間は8月30日まで。
郷土の戦国武将、上杉謙信は仏教を守護する四天王の一つ毘沙門天を敬い、自らを毘沙門天の化身と信じ、軍旗には「毘」の一字を用いていた。また、出陣前に毘沙門天を安置した毘沙門堂に籠もり、戦勝祈願を行ったといわれている。
上越市によると、謙信が祈願した毘沙門天像は上杉家の移封に伴い会津を経て米沢に移されたが、火災で被害を受けていた。このため1928年、上野公園の西郷隆盛像などを制作した著名な彫刻家で仏師でもあった高村光雲が修理を担当し、その際、像のかけらを体内に収めた分身像を制作。1930年に当時の春日村に寄贈され、翌年に建設された毘沙門堂に安置された。
その後、1969年のNHK大河ドラマ「天と地と」の放送で多くの観光客が春日山城跡に訪れるようになったことから、盗難防止のため、青銅製の像と入れ替え、像は所有者の春日地区町内会長連絡協議会が保管していた。数年前からは埋蔵文化財センターの特別収蔵庫で保管している。
展示は8月24、25日に開催される第94回謙信公祭にあわせて実施。像は木像で大きさは約40cm。左手にやりを持ち、よろいで身を固め怒りの表情をしている。
所有する春日地区町内会長連絡協議会の清水栄一会長は「元号が令和になったこともあり、特別に展示することにした」と話している。開館時間は午前9時〜午後5時。入場無料。

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上越市埋蔵文化財センターさんのサイト等には詳細な情報が出ていません。


最後に、信州善光寺さん。『仁王門再建百年・仁王像開眼百年記念イヤーイベント』の一環として、3月に告知された仁王門の写真コンテスト、光雲曾孫の写真家・髙村達氏らによる審査が終わり、入賞作が同寺のサイトにアップされています。

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なるほど、素晴らしい作品ばかりです。

同寺では、近々、仁王像開眼100周年の記念法要があるはずなのですが、まだ具体的な日程等不明です。詳細がわかりましたらまたご紹介いたします。


【折々のことば・光太郎】

妙な所が戦場になつちやつて、ぼくらの近所はひどかつたですよ。電信柱に足がぶら下つてたりね、往来に靴が落つこつてる、見ると中身があるんだ。気味が悪くつてね。ぼくもいつやられるか、と思つてね。

対談「わが生涯」より 昭和30年(1955) 光太郎73歳

戦時中の回想です。ぶら下がっていた脚の印象はかなり強かったようで、連作詩「暗愚小伝」(昭和22年=1947)の構想段階で書かれた「わが詩を読みて人死に就けり」という詩にも描かれました。

   わが詩をよみて人死に就けり

 爆弾は私の内の前後左右に落ちた。
 電線に女の太腿がぶらさがつた。
 死はいつでもそこにあつた。
 死の恐怖から私自身を救ふために
 「必死の時」を必死になつて私は書いた。
 その詩を戦地の同胞がよんだ。
 人はそれをよんで死に立ち向つた。
 その詩を毎日よみかへすと家郷へ書き送つた
 潜航艇の艇長はやがて艇と共に死んだ。

「必死の時」は昭和16年(1941)作の詩。「年代が合わないじゃないか」という指摘がありますが、戦争画激しくなってから乞われて揮毫したと考えれば符合します。実際、この詩を書いてくれという需めがけっこうあったようで、揮毫も現存します。

こうした事態を弾き起こした責任の一端は自分にもあると考えて、戦後7年間、花巻郊外旧太田村で蟄居生活を送ったわけです。

毎年、春と秋にご紹介しています京都知恩院さんのライトアップ。今年の春は、昨年までより遅い時期の開催となりました。

知恩院 春のライトアップ2019

期  間 : 2019年3月29日(金)~4月7日(日)
時  間 : 17時45分~21時30分(21時受付終了)
場  所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
         友禅苑、三門下周辺、女坂、
阿弥陀堂
料  金 : 大人 500円  小中学生 300円

京友禅の祖・宮崎友禅翁ゆかりの庭園「友禅苑」や、日本最大級の木造二重門である「三門」、御身丈2.7mの阿弥陀如来坐像をお祀りする「阿弥陀堂」をライトアップします。
例年、3月初旬~中旬にかけて行われる東山花灯路に合わせて開催しておりましたが、今年は知恩院の桜の見頃の時期に合わせて3月末~4月初旬の開催となりました。ぜひこの機会に、知恩院へお参りください。

主な見どころ】
友禅苑
友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。
阿弥陀堂
明治43(1910)年に再建。本尊は御身丈2.7mの阿弥陀如来坐像。様々な法要儀式を執り行う堂宇です。堂内に並べられている木魚は自由に叩いて頂けます。法然上人のみ教え「お念佛」に触れて下さい。

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関連イベント

「聞いてみよう!お坊さんのはなし」
ライトアップ期間中には、阿弥陀堂にて「聞いてみよう!お坊さんのはなし」を毎日開催します。お坊さんの話を聞いたことがないという方や、仏教のことをよく知らないという方も大歓迎です。どなたでもお気軽にお越しください。
【テーマ】
・3月29日(金)~3月31日(日) 『あの世のおはなし』
・4月 1日(月)~4月 4日(木) 『阿弥陀様ってどんなお方?』
・4月 5日(金)~4月 7日(日) 『「南無」の心』
【開始時間】
  18時~/18時40分~/19時20分~/20時~(各回お話15分~20分 木魚念仏体験10分程度)
  ※状況により時間が変更になる場合がございます。

切り絵作家望月めぐみ作品展示
ライトアップの期間中、友禅苑の白寿庵にて切り絵作家 望月めぐみさんの作品展示が行われます。約50メートルの機械漉き美濃和紙に施された切り絵作品を、ライトアップされた白寿庵の広間でお楽しみください。
3月29日(金)、4月6日(土)には望月めぐみさんのトークショーも開催されます。この機会に是非お越しください。
19時〜(全2回) 友禅苑内の白寿庵にて 見学無料(拝観料500円別途必要)


光雲作という聖観音菩薩立像。過日、15年ほど前に購入した『東京芸術大学百年史 京美術学校篇 一巻』という書籍を久しぶりに見ておりましたところ、写真が載っていました。この写真の存在、すっかり忘れていました。

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キャプションによれば、明治25年(1892)の作で、後のページの記録等を見ると、上野公園の西郷隆盛像や皇居前広場の楠木正成像などと同様、美術学校として注文を受けたもののようです。「委嘱品竣功ノ分」というリストに、「観音銅像 壹体」「注文者 東京 福田循誘」とあり、おそらくこれがそうでしょう。福田は東京深川本誓寺の住職でしたが、歿後は知恩院さんに墓が建てられています。

やはり西郷像などと同様に、光雲が主任だったということで、光雲作となっているのだと思われます。ちなみに同じリストには西郷隆盛像も載っています。集合写真に写っている岡崎雪声は、西郷像や楠木正成像の鋳造を手がけており、この観音像もそうなのでしょう。明治25年(1892)というと、光太郎はまだ下谷高等小学校に在学中でした。

何はともあれ、ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

家は古風な作りで、表に狐格子の出窓などがあつた。裏は南に面して広い庭があり、すぐ石屋の石置場につづき、その前には総持院といふ小さな不動様のお寺があり、年寄の法印さまが一人で本尊を守つてゐた。父の家の門柱には隷書で「神仏人像彫刻師一東齋光雲」と書いた木札が物寂びて懸けられてゐたが、此は朝かけて夕方とり外すのが例であつた。

散文「谷中の家」より 昭和14年(1939) 光太郎57歳

この文章の書き出しは「明治二十四五年頃の話である。」。まさしく知恩院さんの観音像が作られた頃の回想です。後の本郷区駒込林町(現・文京区千駄木)に転居する前の、谷中に住んでいた時期です。

毎年、春と秋にご紹介していますが、京都の古刹・知恩院さんでのライトアップ。一昨日から始まっています。 

知恩院 秋の紅葉ライトアップ2018

期  間 :   2018年11月2日(金)~12月2日(日)
拝観時間 :   17時30分~21時30分(21時受付終了)
場  所 : 浄土宗 総本山知恩院(京都市東山区林下町400 )
        友禅苑、三門楼上、宝佛殿、女坂
拝観料金 : 大人800円(高校生以上) 小人400円(小・中学生) 

 知恩院は浄土宗の開祖、法然上人(1133〜1212)がお念仏のみ教えを広め、入寂された遺跡に建つ由緒ある寺院です。正式名称は華頂山知恩教院大谷寺という、浄土宗の総本山です。
 江戸時代、浄土宗を信仰した徳川家康公が、当寺を京都における菩提所と定めたことから寺領が拡大され、現在の大伽藍が築かれました。

 2年ぶりのライトアップとなる三門をはじめ、友禅苑・女坂・宝佛殿をライトアップ。広大な境内の随所で、色とりどりの紅葉をご覧いただけます。期間中様々なイベントを開催しておりますので、秋の京都はぜひ知恩院へ。

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主な見どころ

国宝 三門Sanmon(National treasure)
 元和7(1621)年、徳川秀忠公が建立した 高さ24m、幅50mの日本最大級の木造二重門。悟りの境地に到る「空門」「無相門」「無願門」(三解脱門)を 表すことから三門といいます。

友禅苑Yūzen-en garden
 友禅染の祖、宮崎友禅斎の生誕300年を記念して造園された、 華やかな昭和の名庭です。池泉式庭園と枯山水で構成され、 補陀落池に立つ高村光雲作の聖観音菩薩立像が有名です。

宝佛殿Hōbutsuden
 平成4(1992)年に建立。和様式重層寄棟造りで、 堂内には高さ4.8mの阿弥陀如来立像、四天王が祀られています。

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京都では珍しい、露座の光雲作聖観音像が毎年ライトアップされています。


法話やコンサート、フォトコンテストなど、関連行事も充実しています。

また、このところ、PR動画の作成にも力を注いでいるようで……。「紅葉」がほとんど出てこないのですが(笑)。





ぜひ足をお運び下さい。


【折々のことば・光太郎】

抒情から意慾へ。

散文「瀧俊一詩集「波止場」序――パルタンスの青旗――」より
昭和4年(1929) 光太郎47歳

大正末から昭和初期、光太郎の詩に影響された若い詩人達が続々登場します。明治の文語定型詩、その後の白露時代の優美な抒情詩、朔太郎等の感覚的なそれとは一線を画する、述志的な部分をもつもの。アナーキズム、プロレタリア文学の一つの源流と言えるかも知れません。

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