2012年、下北沢の座・高円寺での初演以来の再演、今回は全国11ヶ所を巡回します。
【盛岡】10月19日(日) 盛岡劇場メインホール 14時
【東京】10月23日(木)~28日(火)シアター・トラム
【石巻】11月1日(土) 石巻特設会場 時間未定
【兵庫】11月3日(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター・阪急中ホール 17時
【石川】11月5日(水) 北國新聞赤羽ホール 19時
【山口】11月8日(土)・9(日) 山口情報芸術センター 8日(土)14時 / 9日(日)14時
【宮崎】11月11日(火) 三股町立文化会館ホール 19時
【愛知】11月24日(月・休) 長久手市文化の家・森のホール 18時
【福島】11月27日(木) 南相馬市民文化会館 19時
【宮城】11月28日(金) 日立システムズホール仙台・シアターホール 19時
【山形】11月30日(日) シベールアリーナ 13時/17時
作・演出 渡辺えり
キャスト 大沢 健 大和田美帆 土屋良太 谷川昭一朗 宇梶剛士 大塚加奈子 有賀太朗 藤本沙紀
川口龍 十倉彩子 渡辺えり 他
教師時代の宮澤賢治を主人公に、理想と現実のはざまで苦悩・葛藤する姿が描かれています。そんな賢治を温かく見守る弟の清六や妹のトシ、逆に非難・嘲笑する人々、そして賢治を取り巻く「イーハトーヴ」の大自然とのからみなどが、猫の大群を擁した幻想的な賢治童話に乗せて展開されます。渡辺さんは賢治童話「貝の火」に出てくる子ウサギ、宇梶剛士さんはなんと岩手山の役もなさいます(笑)。
こちらは一昨年の公演のパンフレットです。
光太郎は登場しませんが、ストーリーの中で何度も「高村光太郎先生」として語られます。
山形出身の渡辺さんは、東北への強い思い入れをお持ちのようで、この「天使猫」、そして光太郎を主人公とした「月にぬれた手」を、東北で上演したいと、常々おっしゃっていました。そこで、今回、初日は盛岡ですし、千秋楽は山形。宮城や福島での公演もあります。
各会場、盛況となることを祈念いたします。
また、「月にぬれた手」の東北公演も実現してほしいものです。
【今日は何の日・光太郎 補遺】 10月3日
昭和10年(1935)の今日、中原綾子の詩集『悪魔の貞操』が刊行されました。
「悪魔の貞操」に題す
心法の高圧を放電するもの、
思ひもかけぬ交互無縁の片言隻語、
言語道断の真空界にひらめくものは、
千古測りがたい人間真理。
すさまじいかな此書。
原題は「「悪魔の貞操」に寄す」でしたが、のち、雑誌に再録された際に改題されました。
はじめ、光太郎は序詩として、『智恵子抄』にも収められた「人生遠視」を中原に送りましたが、中原側からのクレームで変更になりました。
人生遠視
足もとから鳥がたつ
自分の妻が狂気する
自分の着物がぼろになる
照尺距離三千メートル
ああこの鉄砲は長すぎる
たしかにこんな詩を送られても困りますね。
この年二月の中原宛の書簡にはこのように記されています。
先日お送りした短詩について発表の御心配をうけ、小生まるで気がつかなかつた事なので成程と思ひました、
(略)
智恵子が全快でもしたあとでそれを見たら変なものだらうとも考へました、何となしに懸念のあるものを折角のあなたの詩集のあたまに印刷するのもいかがと思ひますから、此は撤回いたします、 そのうち何かお送りいたします、
この時期は、ちょうど智恵子を南品川のゼームス坂病院に入院させた時期で、光太郎は確かに大変な時期でした。智恵子の狂躁状態、それに伴う自分の苦労などを、中原に宛てた複数の書簡に書いています。それにしても、他人の詩集の序詩に「自分の妻が狂気する」はいくらなんでも……と思います。そうした当たり前のことに考えが至らないほど、光太郎も追い詰められていたのかも知れません。