昨日は横浜に行き、神奈川近代文学館さんで特別展「佐藤春夫展 情(こころ)あらば伝へてよ」を拝見して参りました。
公式サイトに出品目録が出ていないため、どの程度光太郎に関わるのか不明でしたが、意外と光太郎がらみの展示物も多く、思いもよらなかった展示品もあって驚いたりもしました。
サブタイトルの「情(こころ)あらば伝へてよ」の通り、春夫と他の芸術家達との交流がメイン。「情(こころ)あらば伝へてよ」は春夫の詩の代表作「秋刀魚の歌」(大正10年=1921)の一節です。
春夫から諸家へ、逆に諸家から春夫へのの書簡が多く、特に目立ったのはいろいろな意味で春夫との交流が深かった谷崎潤一郎、芥川龍之介、太宰治ら。他に与謝野寛、生田長江、堀口大学、鈴木三重吉、島田清次郎、室生犀星、林芙美子、永井荷風、井伏鱒二など。春夫の人脈の広さがわかります。
残念ながら光太郎から春夫宛の書簡は現在一通しか確認できておらず今回も展示されていませんし、春夫から光太郎宛だと戦前・戦中のものは昭和20年(1945)の空襲で光太郎アトリエ兼住居と共に焼け、戦後のものは他の人物からの書簡類と共に当会顧問であらせられた北川太一先生が引き取って未だに北川家にあるはずなのですが、未整理です。
光太郎関係の出品物は、まず春夫の故郷・和歌山県新宮市の佐藤春夫記念館さんに寄贈され、現在、同館で展示中の油絵「佐藤春夫像」の写真パネル。おそらく原寸大カラーの高精細複製です。ただ、写真パネル類は上記の「出品目録」には掲載されていません。下の画像は昨年、和歌山県立近代美術館さんで展示された際のもの。
昨日、たまたまこの絵を見ていたら、近くに若い女性の二人連れがいらして、「光太郎、絵、うまいねー」「そうだねー」。こちらは心の中で「そうでしょう!」(笑)。
それから展示の終わり近く、「第4章 真実は、事実にまさる 昭和戦後」という、歴史小説的なものや他の文学者の評伝小説などもけっこう書いていたという項で、光太郎に絞った一角が。
まず光太郎が没した昭和31年(1956)に、光太郎の葬儀委員長でもあった武者小路実篤主宰の雑誌『心』が6月号で光太郎追悼小特集を組みましたが、そこに寄せた「高村光太郎の詩-或は詩人高村光太郎-」の草稿。
それから同じ昭和31年(1956)に書かれた『小説高村光太郎像』の草稿。さらにこの年から翌年に書けて雑誌『新女苑』に連載した『小説智恵子抄』(原題「愛の頌歌 小説・智恵子抄」)の草稿。
『小説智恵子抄』はさん、さん主演の原作と位置づけられていて、そのスチール写真が2葉。当方が寄贈したものでした(笑)。
ネットオークションなどでこつこつ集め続けているのですが、複数点一括で出品の場合、既に持っているものと重複してしまうことがあってそれを寄贈したのですが、まさかそれが展示されているとは(笑)。出品目録に名前も書かれてしまいましたし(笑)。
ところで、このコーナーに掲げられていた、昭和29年(1954)撮影という春夫と光太郎のツーショットという写真パネル。これが光太郎ではありませんでした。禿頭の感じは確かに似ているのですが……。
そこで「こりゃちょっとまずいんじゃないの」と思い、指摘させていただき、善後策を講じるようお願いして参りました。学芸員女史曰く、新宮の記念館さんからお借りしたもので、そちらでも光太郎と伝えられているとのこと。
こういうケースも時々あります。花巻の宮沢賢治記念館さんで常設展示されている宮沢家で撮られた光太郎と宮沢一家らの集合写真が「昭和30年」とキャプションにありますが、昭和28年(1953)の誤りです。これも少し前に指摘したのですが、訂正されているかどうか……。
光太郎がらみの展示はこんなところでした。光太郎生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作の際、太宰の実兄だった青森県知事・津島文治と光太郎の橋渡し役を務めたのが春夫で、昭和27年(1952)6月の光太郎の十和田湖下見や翌年10月の像の除幕式(午前中には奥入瀬渓流での春夫詩碑除幕式も併せて挙行)に春夫が参列していますので、その辺りに言及されていればなおよかったのですが……。
図録を兼ねた書籍が販売されていまして、購入して参りました。帯に「図録」の語が入っていますが、ISBNコード付きですので一般書店でも取り寄せ可能でしょう。
公式サイトに出品目録が出ていないため、どの程度光太郎に関わるのか不明でしたが、意外と光太郎がらみの展示物も多く、思いもよらなかった展示品もあって驚いたりもしました。
サブタイトルの「情(こころ)あらば伝へてよ」の通り、春夫と他の芸術家達との交流がメイン。「情(こころ)あらば伝へてよ」は春夫の詩の代表作「秋刀魚の歌」(大正10年=1921)の一節です。
春夫から諸家へ、逆に諸家から春夫へのの書簡が多く、特に目立ったのはいろいろな意味で春夫との交流が深かった谷崎潤一郎、芥川龍之介、太宰治ら。他に与謝野寛、生田長江、堀口大学、鈴木三重吉、島田清次郎、室生犀星、林芙美子、永井荷風、井伏鱒二など。春夫の人脈の広さがわかります。
残念ながら光太郎から春夫宛の書簡は現在一通しか確認できておらず今回も展示されていませんし、春夫から光太郎宛だと戦前・戦中のものは昭和20年(1945)の空襲で光太郎アトリエ兼住居と共に焼け、戦後のものは他の人物からの書簡類と共に当会顧問であらせられた北川太一先生が引き取って未だに北川家にあるはずなのですが、未整理です。
光太郎関係の出品物は、まず春夫の故郷・和歌山県新宮市の佐藤春夫記念館さんに寄贈され、現在、同館で展示中の油絵「佐藤春夫像」の写真パネル。おそらく原寸大カラーの高精細複製です。ただ、写真パネル類は上記の「出品目録」には掲載されていません。下の画像は昨年、和歌山県立近代美術館さんで展示された際のもの。

それから展示の終わり近く、「第4章 真実は、事実にまさる 昭和戦後」という、歴史小説的なものや他の文学者の評伝小説などもけっこう書いていたという項で、光太郎に絞った一角が。
まず光太郎が没した昭和31年(1956)に、光太郎の葬儀委員長でもあった武者小路実篤主宰の雑誌『心』が6月号で光太郎追悼小特集を組みましたが、そこに寄せた「高村光太郎の詩-或は詩人高村光太郎-」の草稿。
それから同じ昭和31年(1956)に書かれた『小説高村光太郎像』の草稿。さらにこの年から翌年に書けて雑誌『新女苑』に連載した『小説智恵子抄』(原題「愛の頌歌 小説・智恵子抄」)の草稿。
『小説智恵子抄』はさん、さん主演の原作と位置づけられていて、そのスチール写真が2葉。当方が寄贈したものでした(笑)。
ネットオークションなどでこつこつ集め続けているのですが、複数点一括で出品の場合、既に持っているものと重複してしまうことがあってそれを寄贈したのですが、まさかそれが展示されているとは(笑)。出品目録に名前も書かれてしまいましたし(笑)。
ところで、このコーナーに掲げられていた、昭和29年(1954)撮影という春夫と光太郎のツーショットという写真パネル。これが光太郎ではありませんでした。禿頭の感じは確かに似ているのですが……。
そこで「こりゃちょっとまずいんじゃないの」と思い、指摘させていただき、善後策を講じるようお願いして参りました。学芸員女史曰く、新宮の記念館さんからお借りしたもので、そちらでも光太郎と伝えられているとのこと。
こういうケースも時々あります。花巻の宮沢賢治記念館さんで常設展示されている宮沢家で撮られた光太郎と宮沢一家らの集合写真が「昭和30年」とキャプションにありますが、昭和28年(1953)の誤りです。これも少し前に指摘したのですが、訂正されているかどうか……。
光太郎がらみの展示はこんなところでした。光太郎生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作の際、太宰の実兄だった青森県知事・津島文治と光太郎の橋渡し役を務めたのが春夫で、昭和27年(1952)6月の光太郎の十和田湖下見や翌年10月の像の除幕式(午前中には奥入瀬渓流での春夫詩碑除幕式も併せて挙行)に春夫が参列していますので、その辺りに言及されていればなおよかったのですが……。

発行日 : 2026年10月3日
著者等 : 県立神奈川近代文学館/公益財団法人神奈川文学振興会編
版 元 : 港の人
定 価 : 2,200円+税
巻頭言 情あらば伝へてよ 河野龍也
寄 稿 きれいに謳える 蜂飼耳
「秋刀魚の歌」「田園の憂鬱」などで知られる文豪・佐藤春夫(1892〜1964)。明治から昭和にかけて、詩歌・小説・随筆など多彩な分野で活躍した。反骨精神に富んだ春夫の文業をたどるとともに、谷崎潤一郎、芥川龍之介、太宰治ら、多くの作家からの書簡を紹介。〈人間・佐藤春夫〉の実像に迫る。
「特別展 佐藤春夫展 情(こころ)あらば伝えてよ」(県立神奈川近代文学館にて2026年10月3日−11月29日開催)公式図録
装丁 三橋光太郎
目次巻頭言 情あらば伝へてよ 河野龍也
寄 稿 きれいに謳える 蜂飼耳
小田原事件から細君譲渡事件へ 千葉俊二
骨肉相食む師弟関係──佐藤春夫と太宰治 安藤宏
台湾から佐藤春夫を読む 林水福
佐藤春夫の美術愛──旧蔵の美術作品から 宮本久宣
座談会 孫が見た春夫の思い出 高橋百合子 竹田長男 竹田有多子 聞き手・河野龍也
詩 少年の日 ためいき 秋刀魚の歌 海辺の恋 夕づつを見て 淡月梨花の歌
第一章 反骨少年、故郷を出る 明治期
第二章 秋刀魚にそそぐ涙の味 大正期
「田園の憂鬱」 中国・台湾旅行 「小田原事件」 芥川龍之介-交友とその死
間 章 愛用品から 絵画作品 装幀作品 谷中安規
第三章 乱世に生きて 昭和戦前
千代との結婚 太宰治と春夫 戦時体制のもとで
第四章 真実は、事実にまさる 昭和戦後
佐久からの再出発 フィクションで真実を
コーナー 佐藤春夫と犬 春夫と童話 春夫とミステリ 春夫と怪談 関口町の家 春夫と猫
略年譜
主な出品資料
執筆者一覧
出品者・協力者一覧
おまけ、というと失礼かも知れませんが、本展はアニメ「文豪ストレイドッグス」との記念コラボと成っているそうで、入口にはその関係のパネルも。
座談会 孫が見た春夫の思い出 高橋百合子 竹田長男 竹田有多子 聞き手・河野龍也
詩 少年の日 ためいき 秋刀魚の歌 海辺の恋 夕づつを見て 淡月梨花の歌
第一章 反骨少年、故郷を出る 明治期
第二章 秋刀魚にそそぐ涙の味 大正期
「田園の憂鬱」 中国・台湾旅行 「小田原事件」 芥川龍之介-交友とその死
間 章 愛用品から 絵画作品 装幀作品 谷中安規
第三章 乱世に生きて 昭和戦前
千代との結婚 太宰治と春夫 戦時体制のもとで
第四章 真実は、事実にまさる 昭和戦後
佐久からの再出発 フィクションで真実を
コーナー 佐藤春夫と犬 春夫と童話 春夫とミステリ 春夫と怪談 関口町の家 春夫と猫
略年譜
主な出品資料
執筆者一覧
出品者・協力者一覧
おまけ、というと失礼かも知れませんが、本展はアニメ「文豪ストレイドッグス」との記念コラボと成っているそうで、入口にはその関係のパネルも。
そんなこんなですが、皆様方もぜひ足をお運び下さい。
【高村光太郎書誌】
詩華集 85 『現代詩代表選集 1953 4』
昭和28年(1953)10月20日 創元社 日本文芸家協会編
収録作家
足立巻一 尼崎安四 鮎川信夫 安西冬衛 安藤一郎 安東次男 伊賀良一 池崇一
池田克己 石垣りん 石出和 和泉克雄 一柳喜久子 井上充子 入江亮太郎 上田静栄
植村諦 内田豊清 内山義郎 及川均 大江満雄 大岡信 大島博光 大瀧清雄 扇谷義男
岡崎清一郎 岡田刀水士 岡本潤 緒方昇 押切順三 小野十三郎 遠地輝武 金井直
金子光晴 河邨文一郎 上林猷夫 北川冬彦 北園克衛 木島始 木下夕爾 木原孝一
許南騏 草野心平 窪田般弥 黒田三郎 小池亮夫 木暮克彦 後藤郁子 小花道也
近藤東 嵯峨信之 佐川英三 櫻井勝美 笹沢美明 更科源蔵 澤村光博 柴田元男
首藤三郎 杉山平一 高野喜久雄 高橋新吉 高見順 高村光太郎 竹中郁 田木繁
谷川雁 谷川俊太郎 田中冬二 田村正也 田村隆一 壺井繁治 壺田花子 土橋治重
鳥見迅彦 長江道太郎 中桐雅雄 長島三芳 中村千尾 中山きよ 西脇順三郎 野間宏
長谷川龍生 波多野郁夫 濱田知章 原民喜 日向秋子 平木二六 深尾須磨子 藤島宇内
藤原定 真壁仁 馬淵美意子 丸山薫 三好達治 三好豊一郎 宮原和夫 向井孝
村野四郎 山中散生 山之口貘 山村順 山本太郎 吉田一穂 和田徹三
このシリーズ、最初は小山書店から刊行されていましたが、同社がいわゆる「チャタレー夫人裁判」の結果倒産し、版元が創元社に代わっています。光太郎詩は「山のともだち」が採録されています。
収録作家
足立巻一 尼崎安四 鮎川信夫 安西冬衛 安藤一郎 安東次男 伊賀良一 池崇一
池田克己 石垣りん 石出和 和泉克雄 一柳喜久子 井上充子 入江亮太郎 上田静栄
植村諦 内田豊清 内山義郎 及川均 大江満雄 大岡信 大島博光 大瀧清雄 扇谷義男
岡崎清一郎 岡田刀水士 岡本潤 緒方昇 押切順三 小野十三郎 遠地輝武 金井直
金子光晴 河邨文一郎 上林猷夫 北川冬彦 北園克衛 木島始 木下夕爾 木原孝一
許南騏 草野心平 窪田般弥 黒田三郎 小池亮夫 木暮克彦 後藤郁子 小花道也
近藤東 嵯峨信之 佐川英三 櫻井勝美 笹沢美明 更科源蔵 澤村光博 柴田元男
首藤三郎 杉山平一 高野喜久雄 高橋新吉 高見順 高村光太郎 竹中郁 田木繁
谷川雁 谷川俊太郎 田中冬二 田村正也 田村隆一 壺井繁治 壺田花子 土橋治重
鳥見迅彦 長江道太郎 中桐雅雄 長島三芳 中村千尾 中山きよ 西脇順三郎 野間宏
長谷川龍生 波多野郁夫 濱田知章 原民喜 日向秋子 平木二六 深尾須磨子 藤島宇内
藤原定 真壁仁 馬淵美意子 丸山薫 三好達治 三好豊一郎 宮原和夫 向井孝
村野四郎 山中散生 山之口貘 山村順 山本太郎 吉田一穂 和田徹三
このシリーズ、最初は小山書店から刊行されていましたが、同社がいわゆる「チャタレー夫人裁判」の結果倒産し、版元が創元社に代わっています。光太郎詩は「山のともだち」が採録されています。



















































































































































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