カテゴリ: 光太郎遺珠

『光太郎資料』38集を片付け000たと思ったら、もうすぐ39集の編集を始めました。これが自分の勉強にもなっています。
 
『光太郎資料』、メインは筑摩書房の『高村光太郎全集』で未収録だった作品群「光太郎遺珠」をテーマ別に再構築することです。37集では欧米留学関連、38集では新詩社・『スバル』・パンの会・『白樺』をまとめ、39集では造形作家としての光太郎に関わる作品をまとめようと思っています。
 
「光太郎遺珠」、現在は高村光太郎研究会で年刊刊行の雑誌『高村光太郎研究』に連載させていただいておりますが、どうしても「紙幅の都合」があります。自分一人で大量のページを占めるわけにもいかず、いきおい、図版等は絶対に必要なものを除いて割愛せざるを得ません。それでもかなりのページ数を費やしてしまい、他に削れるのは作品解題の部分だけです。ところが、それを言い訳に、調査が不十分なまま解題を書いていたな、と反省しています。
 
改めて個人編集の『光太郎資料』に載せるに際し、こういう所が不十分だったという点が目につき、調べてみるといろいろなことがわかります。そういう点で、自分の勉強にもなるというわけです。
 
例えば、明治 43年(1910)に光太郎は神田淡路町に日本初の画廊・琅玕洞(ろうかんどう)を開きましたが、翌明治44年(1911)に書かれた葉書には、パリにも出店する計画がある旨を記しています。「光太郎遺珠」の段階では、ろくすっぽ調べもせず、解題に「巴里云々は他の書簡等にはその記述が見えず、そうした腹案があったことが初めて確認された。」と書きました。ところが、よくよく調べてみると、この葉書の書かれた年の『読売新聞』にちゃんと同じことが書いてありました。赤面ものですね。
 
「短く書かなければいけない」ということは「調べなくてよい」と同義語ではありませんね。個人編集の『光太郎資料』では、ページ数も気にする必要がありませんから、言い訳もできません。しっかり調べて書きたいと思っています。

当方が編集、刊行しております冊子、『光太郎資料』の第38集。連翹忌の名簿に名前のある方、全国の光太郎智恵子光雲に関係しそうな文学館、美術館、図書館等への発送を完了しました。
 
9/5のブログでも御紹介しましたが、元々は北川太一先生が、昭和35年(1960)から平成5年(1993)にかけ、不定期で刊行されていたもので、その名跡をお譲り頂き、当方が編集、刊行しております。題字は北川先生の時代のものをスキャンして使っています。
 
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刊行といっても、殆ど手作業です。原稿の作成はパソコン(北川先生の時代はワープロが導入された最後の頃を除き、鉄筆にガリ版だったので、雲泥の差だとは思いますが)。印刷は4月に刊行した第37集はパソコンのプリンタでプリントアウトしましたが、インクの消費量とそれに要する時間が膨大で、今回は印刷のみ地元の印刷業者に頼みました。丁合(ちょうあい…… 印刷された用紙を一冊になるようページ順に集める作業)と綴じ込みは自宅での手作業です。したがって、乱丁、落丁があるかも知れません。不良品はお取り替えいたします。
 
大正末から昭和初年、草野心平が刊行し光太郎も時々寄稿した伝説の詩誌『銅鑼』などもガリ版刷りでした。また、昭和37年、光太郎の七回忌に合わせてやはり草野心平が刊行した光太郎詩集『猛獣篇』もガリ版刷り(草野の覚書によれば逆に丁合や製本は業者に頼んだようですが)。光太郎に関しては豪華な製本よりこうした手作業が伝統です。
 
内容的には以下の通りです。

 「光太郎遺珠」から
別に高村光太郎研究会刊行の『高村光太郎研究』に年1回連載させていただいている「光太郎遺珠」。『高村光太郎全集』補遺作品集ですが、見つかったものから順にどんどん採録しているので内容的にはバラバラです。そこで、テーマや関連事項ごとに分類、再構築し、画像や関連資料を交え、紹介するものです。今回は「新詩社・『スバル』・パンの会・そして『白樺』」と題し、後々まで続いたそれらに関わった人々-与謝野夫妻、水野葉舟、伊上凡骨、木村荘太、森鷗外、武者小路実篤、木下利玄他-に関わるものを集めました。
 
 光太郎回想・訪問記
同時代の人の眼から見た光太郎、ということで集成しようと思っています。今回はパンの会の頃の光太郎が登場する木村荘太の自伝的小説「魔の宴」から。
 
 光雲談話筆記集成
大正から昭和初期にかけ、光太郎の父、光雲がさまざまな書籍、新聞等に幕末から明治初年の懐古談を発表しています。それらも集成していこうと考えています。今回は『漫談 江戸は過ぎる』(昭和4年 萬里閣書房)より「歳の市の話」。
 
 昔の絵葉書で巡る光太郎紀行
光太郎関連の資料を収集する中で、光太郎や智恵子、光雲ゆかりの地の古い絵葉書が少なからず手に入っています。それらの画像と共に、その地の概要、光太郎や智恵子・光雲との関わりなどを紹介していきます。今回は十和田湖とその周辺。ただ、失敗したな、と思ったのですが、十和田湖周辺は昔の絵葉書と現在で、あまり変わっていないようです。
 
 音楽・レコードに見る光太郎
光太郎が歌曲として作詞した詩、光太郎の詩に曲を付けた楽曲、光太郎・智恵子を題材とした音楽などを紹介します。第37集と今回で、光太郎作詞、飯田信夫作曲の国民歌謡「歩くうた」(昭和16年=1941)を取り上げました。DTMソフトで入力した楽譜も掲載しています。
 
 高村光太郎初出索引(二)
光太郎の文筆作品、装幀、絵画、題字等について、初出(と思われる)掲載誌を五十音順にソートし、索引の形にしました。第37集であ行、今回はか行。
 
手許にまだ残部があります。欲しいという方はご連絡ください。送料のみ(クロネコメール便で80円)頂く形でお分けいたします。

追記 クロネコメール便はサービス終了、クロネコDM便に移行し、送料160円となりました。

先日、『水滸伝』にからめて、光太郎の周囲は多士済001々、ということを書きました。それは、現在製作中の冊子『光太郎資料38』で、そういった感じの内容の部分があり、そこからの連想なのです。
 
『光太郎資料』。元々は北川太一先生が、昭和35年(1960)から平成5年(1993)にかけ、不定期で刊行されていたものです。結局、36号で休刊という形になっていました。初期の頃はガリ版刷りで、先生が高校に勤務されていた頃の教え子の方々、北斗会の皆さんがお手伝いなさって作られていました。
 
内容は多岐に亘り、一度目の『高村光太郎全集』の補遺、没後年譜、索引類、同時代の光太郎評、その他さまざまな光太郎関連資料が載せられていました。それらの成果は後に文治堂書店から刊行された『高村光太郎資料』全六巻や、二度目の『高村光太郎全集』、それから『連翹忌五十年』という書籍などに反映されています。
 
その伝統ある『光太郎資料』の名跡をお譲り頂き、幸い「好きにやってよい」というお墨付きも頂きましたので、もちろんアドバイスを賜りながらですが、本年4月に『光太郎資料37』を刊行いたしました。内容としては、以下の通りです。
 
 よろこびを告ぐ 『光太郎資料』の新生について  北川太一
 「光太郎遺珠」から   欧米留学をめぐって
 光太郎回想・訪問記   高村光太郎 父光雲をいたわる神々しい姿 大悟法利雄
 光雲談話筆記集成    『明治会見記』より
 昔の絵葉書で巡る光太郎紀行  月寒牧場(北海道・札幌)
 音楽・レコードに見る光太郎  歩くうた(一)
 高村光太郎初出索引(一)
 編集後記
 
メインは「「光太郎遺珠」から」。以前にも書きましたが、二度目の『高村光太郎全集』完結後、さらに見つかった光太郎作品を「光太郎遺珠」として紹介し続けています。しかし、年1回、見つかったものから順にどんどん載せていますので、内容的にはバラバラです。そこで、テーマや関連事項ごとに分類、再構築し、画像や関連資料を交え、紹介するものです。
 
さて、『光太郎資料38』を今、製作中です。とりあえず、年2回の刊行ということにしました。編集の手間だけを考えれば季刊程度は可能なのですが、非売ですので、制作費や郵送料等すべて持ち出し、出せば出すほど赤字という状態となり、年2回が限界です。そこで、1回は連翹忌に合わせて4月2日、もう1回は智恵子の命日、レモン忌に合わせて10月5日の発行と設定しました。次号のラインナップは以下の通りです。
 
 「光太郎遺珠」から        新詩社・『スバル』・パンの会・そして『白樺』
 光太郎回想・訪問記       「魔の宴」(抄)その一 木村荘太
 光雲談話筆記集成        『漫談 江戸は過ぎる』より(一)
 昔の絵葉書で巡る光太郎紀行  十和田湖とその周辺(青森)
 音楽・レコードに見る光太郎   歩くうた(二)
 高村光太郎初出索引(二)
 編集後記
 
前振りが長くなりましたが、メインの「「光太郎遺珠」から」で、新詩社、雑誌『スバル』や『白樺』、そしてパンの会関連の新資料をまとめました。そこで関わってくる人々がやはり多士済々、錚々たるメンバーなので、梁山泊に思い至ったのです。
  
この38号は連翹忌の御案内を差し上げている方には当方から発送します。また、37号もそうしましたが、光太郎と関連のありそうな全国の文学館、美術館、大きな図書館などにも勝手に送ります。この「勝手に送る」というのが北川先生の頃からの伝統でして、それを踏襲しています。
 
それ以外に37、38とも、欲しいという方はご連絡ください。送料のみ頂く形でお分けいたします。

長いこと研究に取り組んでいると、いろいろなことがあります。
 
いろいろな人との出会いがあったり、思わぬところでいろいろなことを依頼されたり、そういう部分が何年も経ってから違う形になってあらわれたり、面白いものです。
 
資料の収集に関してもそうですね。
 
つい先程、何の気なしに部屋の整理をしていたら、PCデスクの足下の棚から、10年近く前に使っていたMO(マグネット・オプティカル・ディスク)が出てきました。専用のリーダーが必要だったり、かさばったりで、最近はコンパクトなUSBメモリに押されて姿を消しつつありますが、これが出た当時は驚異でした。その前からあったCD-RWなどはデータの出し入れが面倒でしたし、外付けハードディスクを持ち歩くという発想もほとんどありませんでしたから。第一、フロッピーディスクがまだまだ現役でした。
 
容量が230MBというのが笑えます。今はUSBメモリでもGB単位です。「DOS/V」とか「PC-98」などの文字も入っており、歴史を感じます。

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さて、何が入っているか、さっぱり覚えていません。早速開いてみましたところ、「光太郎」というフォルダがあり、画像ファイルがたくさん入っています。思い出しました。10年近く前、当時の職場のPCで休憩時間等にインターネットを見ていて、 気になる画像などみつけると「あとで詳しく調べよう」と思って保存していましたのですが、忘れていました。
 
そこで今日、改めて見たところ、なんと、『全集』『遺珠』未登録の書簡(はがき)の画像がありました。いろいろな図書館等に出向いたり(昨年は葉書一通を見に、滋賀県の彦根まで行きました)、いろいろな資料を取り寄せたりして世に知られていない作品を見つけていますが、本当に自分の足下にそれがあったか、と思うと複雑な気持ちです。
 
今度こそ詳しく調査し、来年4月発行の「遺珠⑧」に載せます。

現に知られている光太郎作品のうち、どういった書物にどんな形で発表されたかがわかっていないものが数多く存在します。
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作品自体はのちに光太郎の詩集や散文集に収められたり、手許に原稿が残っていたりして、こういうものだ、とわかっているのに、それがまず最初にどういった書物にどんな形で発表されたかがわかっていない、ということです。
 
中には書き下ろしということもあると思われますが、時期的に見てそうではないだろうというものがほとんどで、こういったものの初出掲載誌をつきとめるということにも取り組んでいます。
 
そこで、今回もお願いですが、以下の作品について、「××という雑誌に発表されたはずだ」「自分が持っている○○という新聞に載っている」といった情報があれば御教示いただきたく存じます。
 
まずは詩です。
小娘                       大6
(奇麗にお化粧した)    大6
序曲        大9/2/9『自選日本現代名詩集』?
(詩歌の城に)      大12
象の銀行                 大15/2/7作
秋を待つ                 大15/9/27作 『群像』?  『地上楽園』第3巻第10号(S3)に『群像』より転載の記述
大きな嚔                 大15/11/20作
二つの世界              昭2/3/12作
不平な人に               〃
あけぼの                  〃
煩瑣派                    総題「エピグラム」昭2/4/15作
卑近美派                  〃
(うやうやしいのは)     総題「偶作」昭3/5/12作
(御岳山の行者は)       〃    
或る日      昭3/9/28作   昭4/2『現代文芸』6巻2号?   素人社?
触知       昭3/11/14作
存在                       昭3/11/30作
或る筆記通話           昭4/9/7作
非ユークリッド的    昭4/9/27作
秋が来たんだ           昭4/10/7作
春の一年生    昭5/5/2作 冨山房教科書?
レオン ドウベル    昭6/12/12作
潮を吹く鯨               昭13/4/8 『グラフィック』?   創美社?
米のめしの歌           昭14/1/6作
上海陸戦隊をおもふ   昭14/6/26作 『我が家』?
五月のうた              昭15/4/1作
雷電の夜                 昭15/6/27作
帝都初空襲              昭17/4/20作
粛然たる天兵          昭18/10/7作 『満州良男』?
全学徒起つ              昭18/10/24作 『立教大学新聞』?
海上日出                  昭18/12/14作 『海の村』?
古代の如く              昭19/5/10作 『壁詩』?
新春に面す              昭19/12/19 『農業新聞』?
皇国骨髄の臣           昭20/1/2 『陸軍画報』(2015/2追記 掲載誌入手できました)
おほぞらのうた       昭20/2/22作 『富士』?
試金石                     昭22/11/22作 『週刊朝日』?
クチバミ                  昭25/6/5作
 
つづいて散文です。
家                                            大10/5作
追憶-山村暮鳥-                     大13/12  新聞『いはらき』?
八十島稔詩集『紅い羅針盤』      昭2作?
揺籃の歌            昭11/8/26作
戦時の文化           昭16/12/13
美術立国            昭21/8/9作 メモ「盛岡美術連盟へ」
五十沢二郎著「歴史教室」推薦文 昭22/3/10作
展覧会に寄する言葉                  昭23/10/27作 『新岩手日報』?
信親と鳴瀧                                昭25/8/26作 『智恵子抄その後』?
十二月十五日                            昭25/12/16作 『いわてじん』?
美ならざるなし                           昭26,7頃
教材社「児童の図画工作」推薦文  昭27/10/4作
工房にて                                   昭27/12/17作 メモ「共同通信社へ」

「小娘」「象の銀行」などは光太郎の詩の中でもかなりメジャーなものなのですが、最初にどこに発表されたのか、未だに不明です。他にもかなり多いのですが、これでも『全集』完結後の「光太郎遺珠」の中で、『全集』の段階で不明・不詳だった初出掲載誌の情報が詩、散文併せて20篇あまり判明したことを報告しています。
 
光太郎はいわゆる商業資本の総合雑誌などにもそれなりに寄稿していますが、地方で発行された同人誌的なものや、まったく畑違いの雑誌などにも寄稿することが多く、なかなか全貌がつかめません。
 
「これがわかったからどうなんだ」と言われると身も蓋もありませんが、人脈的にこういうところにつながっていたんだとか、こういう雑誌に発表されたからこういう内容なんだ、というようなことがわかり、それはそれで重要なことだと思います。
 
というわけで、「××という雑誌に発表されたはずだ」「自分が持っている○○という雑誌に載っている」といった情報があれば御教示いただきたく存じます。

世に知られていない作品をどうやって見つけるか、という話を延々と続けてきました。今日はお願いです。
 
八方手を尽くしていろいろと見つけ続けていますが、中には存在がわかっていながら見つからないものもかなりあります。ソースは『高村光太郎全集』の年譜や解題に書かれている情報、北川太一先生や他の方に聞いて知った情報、古い雑誌に書かれていた情報などです。
 
  ①翻訳「ロダンと言ふ人」明治43年1月 雑誌『秀才文壇』掲載   (見つかりました)
  ②書簡「あめりかよりの書簡二通」明治44年2月? 雑誌『秀才文壇』掲載
  ③散文「感想断片」明治45年4月?  雑誌『秀才文壇』掲載
  ④散文?「皮肉屋と言ふ事は卑怯者と同じだ」大正2年4月? 雑誌『新文林』忠誠堂
  ⑤翻訳「フアン ゴツホの手紙(三)」同
  ⑥詩?「その午後に」大正2年5月 雑誌『水鴬』創刊号
  ⑦表紙画 雑誌『鉄針』大正3年1月 俳句雑誌
  ⑧散文?「文章座右銘」大正2~3頃 雑誌『中央文学』聖書の文句を仏蘭西語で紹介
  ⑨翻訳「テーンの芸術論」大正10年4月
  ⑩散文?「口語歌をどう見るか」『芸術と自由』 大正14年8月 一巻八号 (見つかりました アンケートでした)
  ⑪翻訳「栗色の顔をした野の若者よ」昭和2年1月 雑誌『太陽花』第2巻第1号 太陽花詩社 ホイットマン詩
  ⑫題字 雑誌『巨木』昭和3年6月
  ⑬散文?「生活の光彩」昭和15年5月 雑誌『オール女性』第8巻第2号
  ⑭題字 雑誌『詩層』昭和18年   (見つかりました)
  ⑮題字 雑誌『山脈』昭和24年頃
 
題名や掲載誌名、時期には多少のずれがあるかも知れませんし、結局掲載されずに終わったとか、単純な勘違いとかいうこともあるかもしれませんが、上記に関して何か情報のある方は御教示いただければ幸いです。
 
⑪の、翻訳「栗色の顔をした野の若者よ」に関し、信じられないようなエピソードがありますので、ご紹介します。数年前、掲載誌の雑誌『太陽花』第2巻第1号が、横浜・港の見える丘公園にある神奈川近代文学館に所蔵されていることをつきとめ、意気揚々と閲覧に行きました。所定の続きをし、係員の方に書庫から出してきていただき、手に取りました。まずは目次のページを見ますと、確かに「栗色の顔をした野の若者よ」高村光太郎訳という記述があり「よし!」と心の中で快哉を叫びました。ところが、ページを繰っても見つかりません。よく見ると、なんと、問題の「栗色の顔をした野の若者よ」が載っているはずのページだけが破り取られているのです。諦めきれず、係員の方に破れているページだけ他に保管していないかなど聞いてみましたが無駄でした。こういうこともあるんですね……。
 
ちなみに当方の生活圏にある銚子市青少年文化会館のロビーに、郷土の偉人を紹介するコーナーが作られています。その中で銚子出身の詩人・宮崎丈二も取り上げられており、光太郎から宮崎宛の書簡が4通ほど展示されています。その中の一通は『全集』第21巻に収められた大正15年(1926)11月16日付けの書簡番号2426ですが「太陽花への原稿を忘れないうちにあなたまでお届けして置きます。なるたけ短いものを選びました。」という一節が。しかも封筒には(原稿在中)の文字まで。まさしくこの「栗色の顔をした野の若者よ」の原稿とともに送られた書簡と思われます。銚子市青少年文化会館、時折用事があっていくのですが、そのたびこの書簡を見て神奈川近代文学館での苦い体験を思い出します。

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こうした因縁もあり、「栗色の顔をした野の若者よ」、絶対に見つけてやる!と心に誓っています。
 
2014/4追記 上記光太郎書簡の展示は2014/4現在、無くなっていました。
 
上記で挙げた他の作品も是非見つけたいと思っていますので、ご協力よろしくお願いいたします。

世に知られていない作品104をどうやって見つけるか、の3回目です。
 
昨日は書籍の形で世に出ているデータベースと照合するという話でした。今日はコンピュータを利用してのデータベースとの照合をテーマとします。
 
インターネットの普及により、全国各地の図書館や文学館それぞれの所蔵資料が居ながらにして検索できます。そのシステムも進化し続けており、以前は限られた情報しか得られなかったものが、詳細な情報まで得られるようになったケースも多くあります。
 
特に国立国会図書館さんでは所蔵資料のデジタル化が進み、戦前の書籍、雑誌などはほとんどデジタルデータでの閲覧となっています。以前は普通の図書館のように、申し込んだ書籍そのものを渡され自分で手に取って見ていたのですが、今は館内に設置されたパソコンの画面で目的の書籍を閲覧する、というシステムです。この変更、一長一短なのですが、すくなくともデータの検索の部分では長足の進歩を遂げました。「国立国会図書館デジタル化資料」というサイトを使えば、かなり詳しく検索が可能です。ただし、ほとんどの資料は館内限定閲覧の扱いですので、実際に国会図書館に行かないと見られません。同じ国会図書館のサイトでも「近代デジタルライブラリー」というサイトでは、自宅のパソコンで閲覧が可能です。ただ、こちらは見られる資料の数に限りがあります。それでも閲覧可能な点数がどんどん増え続けていますが。

他にもいろいろな図書館、文学館などで所蔵資料の検索、閲覧が可能です。また、必要な部分をプリントアウトして送ってもらうということも可能な場合があります。
「日本近代文学館」 http://www.bungakukan.or.jp/
「神奈川近代文学館」 https://www.kanabun.or.jp/guide-opac/
「群馬県立土屋文明記念文学館」 http://jmapps.ne.jp/tsuchiyakan/
「日本現代詩歌文学館」 http://opac.shiikabun.jp/opw/OPW/OPWMAIN.CSP?DB=LIB
「CiNii Books」 http://ci.nii.ac.jp/books/
 
また、古書店の在庫目録、新刊書籍の情報などもかなり詳しい検索、一部は閲覧が可能になっており、有効に活用できます。
「日本の古本屋」 https://www.kosho.or.jp/
「googlebooks」 http://books.google.co.jp/
 
さらに新聞記事のデータベース。これは個人で申し込むことも可能ですが、やはり図書館等に出向いて利用するのが賢い方法だと思います。
「朝日新聞 聞蔵ビジュアル」 http://database.asahi.com/index.shtml
「読売新聞 ヨミダス歴史館」 http://www.yomiuri.co.jp/database/
 
この分野は日々進化を続けており、有用なサイトを見つけ出す能力も問われます。
 
しかし、こうした便利なシステムの無かった時代に『全集』の編集に取り組まれ、多くの作品を網羅なさった北川太一先生をはじめとする先人の皆様のご努力には、頭の下がる思いです。

昨日のブログで、世に知ら1007れていない作品の見つけ方-他の人が作成したデータベースとの照合ということを書きました。
 
それではどういうデータベースと照合するのか、ということになりますが、大きく分けて2種類あります。1種類目は書籍の形で世に出ているもの、2種類目はコンピュータを利用してのデータベースです。
 
今回は1種類目の書籍の形で世に出ているものについて説明しましょう。
 
まず、居ながらにして手に入るものとしては、古書店の目録があります。全国の古書店の中には、独自の在庫目録を定期的に発行し、顧客に頒布してくれるところが多数あります。また、一軒の古書店だけではなく何軒かで合同の目録を作成したり、デパートなどでの古書市としてやはり何店か合同で目録を発行したりしているところもあります。そういうところは1、2度大きな買い物をすれば、新しい目録ができたら無料で送ってくれます。それから、『日本古書通信』という月刊誌があるのですが、そちらにも古書店の目録が掲載されていたり、「目録希望の場合は切手××円分送って下さい」といった広告が載っていたりし、非常に有益な雑誌です。
 
そんなこんなで、当方の自宅には月に10冊位の古書目録が送られてきます。こうした目録には「雑誌○○ 大正×年△月 高村光太郎「□□」掲載」などという情報が書かれており、この中でかなり光太郎関連の世に知られていない作品を見つけることができています。ただ、値のはるものもあり、全てを購入するわけにもいきません。そのため、『○○』という雑誌が所蔵されている図書館等を調べ、目的の号を見つけるのです。その際には後で述べる2種類目のコンピュータを利用してのデータベースを活用します。
 
古書目録の他に、いろいろな雑誌の総目録も利用価値の高いデータベースです。例えば、実際に当方が使ったものとしては、国書刊行会から出ている『美術関係雑誌目次総覧 明治・大正・昭和戦前篇』という全三巻の労作があります。これで「高村光太郎」の項を調べると、何年何月に発行された何々という雑誌に何々という作品が載っている、ということが書かれているのです。こうした書籍は雑誌ごとのものもかなり刊行されています。当方、大きな図書館等でこの手の書籍を閲覧し、情報を得るということをよくやっています。ただ、「索引」的な部分が充実していないもの-単に目次だけを羅列しているもの-はこの場合、あまり使えません。ひどいものになると古い雑誌の目次のページだけを画像ファイルにして一冊の本にしただけのものなどもあり、当然文字も読みにくく、もう少し考えてほしいな、と思います。
 
こういった情報の活用能力-受け取る側も、発信する側も-も、いわゆる「IT(information technology)」ということになるのでしょう。発信する側は、受け手がどのような情報を求めているのかを考え、受け取りやすい情報を提供すること、受け取る側はそれこそ情報の洪水の中から、いかに有益な情報にたどり着くか、これからの世の中は、こういった部分が大事だと思います。
 
といいつつ、このブログもどの程度「受け手がどのような情報を求めているのかを考え」ているか、と問われると、自信はないのですが……。
 
明日は2種類目のコンピュータを利用してのデータベースについて説明します。

昨日までのブログで、当方の研究の根幹の一つ、光太郎作品の集成に関わる「光太郎遺珠」を紹介しました。以前にも書きましたが、平成10年に『高村光太郎全集』の増補版全21巻+別巻が完結した後、さらに発見された作品集です。
 
現在、「光太郎遺珠」は野末明氏主宰の高村光太郎研究会が発行する年刊の雑誌『高村光太郎研究』に連載させていただいておりますが、しばらくはその形を取らせていただくことになると思います。まだまだ世に知られていない光太郎作品がたくさんあるはずですので。10ヶ月後の来年4月に出す予定の「光太郎遺珠」⑧、すでに編集が進んでおり、現時点で散文が3篇、書簡が13通(少し前に12通と書きましたが、さらに1通増えました)、雑纂が3篇。他に『高村光太郎全集』解題の補遺(『全集』刊行の時点で判明していなかった初出掲載誌の情報等)もあり、これだけでほぼいっぱいいっぱいのページ数です。
 
したがって、今後見つかるものは、書簡などの短いものであれば何とか収めますが、長いものは22ヶ月後、再来年発行の「光太郎遺珠」⑨に収めるつもりでいます。というか、すでに座談会筆録の長いものが2篇、それから関係各位との交渉が済んでいないため手をつけずにいる講演会筆録もあり、それらだけでも⑨のページが埋まる分量です。どうも長いスパンになりそうです。
 
さて、そういった世に知られていない作品をどうやって見つけるか、何回かに分けて説明しましょう。他の作家、詩人等について研究されている方は当方の手法が参考になるかと思いますし、逆に「こんな方法があるぞ」というのがあれば御教示いただければ幸いです。
 
まずは、言い方は悪いのですが「採集」の済んでいる作品の把握。これをしっかりやっておかないと、光太郎作品を見つけた際、それが既に知られている「採集」済みのものなのか、まだ世に知られていないものなのか、判断が付きません。幸い、『全集』別巻にはジャンルごとの「作品題名索引」が載せられていますし、「年譜」の項にはその年に発表・制作された作品のリストが載せられています。それにあたれば、光太郎作品を見つけた際、それが既に知られている「採集」済みのものなのか、まだ世に知られていないものなのか、判断が付きます。
 
当方はさらに一歩突っ込んで、パソコンで自分なりの索引を作成しました。作品の題名、掲載誌名、雑誌等であればその号数、発表年月日、ジャンル、『全集』「遺珠」の収録巻、その他の備考などの項目で、掲載誌ごとにまとめています(これは今年から当方が発行を引き継いだた冊子『光太郎資料』に少しずつ掲載を始めました)。パソコンデータの強みは「検索」機能が充実していること。データの打ち込みにはかなり時間を要しましたが、その分、検索は一瞬でできるようになりましたので、これは大きいと思います。例えば送られてくる古本屋の在庫目録に「雑誌「○○」 大正×年△月 高村光太郎「□□」掲載」などと書かれていたりするのですが、雑誌名の「○○」や作品名「□□」で検索をかけると、それが既に知られている「採集」済みのものなのか、まだ世に知られていないものなのか、ぱっとわかるというわけです。ただ、いろいろ落とし穴もあるので、そのあたりは後に詳述します。 

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要するに、他の人が作成したデータベース(古書店の目録など)との照合によって、自分のデータベースにないものを見つけるという作業が基本です。では、どういうデータベースと照合するのか、といったあたりを次回で紹介したいと思います。

「光太郎遺珠」(全集等未収録作品集)の内容を紹介する最後です。 

「光太郎遺珠」⑦

平成24年4月2日 高村光太郎研究会編『高村光太郎研究33』所収
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散文「曽遊紀念帖」                                                          明45『旅行』
〃 「西洋画所見十二」                                                      大元『読売新聞』
〃 「詩華集『航海』読後感」                                              昭4『詩集』
〃 「勉強したい 中央協力会議員として(今回限りだが)」           昭15 『読売新聞』
〃 「文部省へ 美の問題の統一」                                         昭16   〃
〃 「国民は誓ふ」                                                          昭18 『読売報知新聞』
〃 「日本美創造の征戦 米英的美意識を拭ひ去れ 」                     〃    〃
〃 「火を噴く“神州の怒り”往け・不退転の道 逞しき素朴美で敵殲滅」昭19『朝日新聞』
〃 「街の健康さ」                                                           〃    〃
〃 「人事を越ゆ神事 日本精神の極致顕現」                              〃    〃
〃 「神風」                                                                  〃  『週刊少国民』
〃 「賞を受けて」                                                           昭26 『読売新聞』
書簡3290伊藤隆三郎宛                  大14
〃3291 八束清宛                            〃   
〃 3292  〃                                  〃
〃 3293  〃                             昭2
〃 3294  〃                               〃
〃 3295 稲垣足穂宛                   昭15
〃 3296 昭森社宛                         〃
〃 3297 角田健太郎宛                  昭16(推定)
〃 3298 高祖保宛                         昭19
〃 3299 森谷均宛                         昭22
〃 3281 武者小路実篤宛              昭23
アンケート「何故詩を書くか」                                昭6 『時間』
雑纂「高村光雲死亡広告」                              昭9 『東京朝日新聞』
〃 「(日本の婦人の頭脳が)」                   大10 『読売新聞』
〃 「(“誓”は立派なものでした)」            昭15 『朝日新聞』
〃 「瀧の流れと同じ気持」                          昭27 『読売新聞』
〃  中西家アトリエでのメモ                      昭30
表紙『デツサン』第三輯表紙                          大15 『デツサン』
〃 『詩之家』第七年第三号表紙                   昭6 『詩之家』
『高村光太郎全集』解題等補遺・訂正
 
今年4月に世に出ました。こちらも野末明氏主宰の高村光太郎研究会発行『高村光太郎研究33』に載っています。ご入用の方は仲介しますのでお声がけ下さい。
 
昨年と今年は、新聞から見つけた作品が多いのが特徴です。そういう関係のデータベースを活用した結果です。そのあたりの新資料の見つけ方について、今後のブログで紹介してみようと思っています。

話があちこち飛んで申し訳ありません。ブログ始めて1ヶ月経ちましたが、読み返してみると本当に行き当たりばったり書いているな、という感じで反省しきりです。とりあえず今日明日で残っているこれまでに世に出した「光太郎遺珠」(全集等未収録作品集)の内容を紹介します。


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 「光太郎遺珠」⑥

平成23年4月2日 高村光太郎研究会編『高村光太郎研究32』所収 

詩 「カジノ・フオリイはいいな」                             昭5 『カジノ・フオーリー』
散文「美術家の眼より見たる婦人のスタイル」           明43 『婦人くらぶ』
〃 「維摩経、自選日記」                                            大13 『東京朝日新聞』
〃 「探してゐるもの」                                                 〃    〃
〃 「いゝモデル」                                                        〃    〃
アンケート「私が一番深く印象された月夜の思出 紐育の満月」  大11 『主婦之友』
書簡3271佐々木繁(喜善)宛                                         明44
〃 3272 水野葉舟宛                                                    〃
〃 3273 吉村行夫宛                                                   大11
〃 3274 与謝野晶子宛                                                大13 『女子作文新講』
〃 3275 宛先不明                                                      大14 『東京朝日新聞』
〃 3276 三田悊宛                                                      昭21
〃 3277  〃                                                              〃
〃 3278   〃                                                               〃
〃 3279 東正己宛                                                       〃
〃 3280 野田宇太郎宛                                                昭24
〃 3281 森口多里宛                                                   〃
〃 3282  〃                                                              昭25
〃 3283  〃                                                              昭26
〃 3284  〃                                                              〃
〃 3285  阿部徹雄宛                                                    〃
〃 3286  〃                                                              〃
〃 3287  〃                                                              〃
〃 3288  〃                                                              昭27
〃 3289 佐藤治助宛                                                     〃
座談 「新女性美の創造」                                             昭16 『読売新聞』
雑纂 高村智恵子死亡広告                                             昭13 『東京朝日新聞』
〃  中西家アトリエでのメモ                                      昭29
『高村光太郎全集』『光太郎遺珠』解題等補遺・訂正
 
最も驚いたのは詩「カジノ・フオリイはいいな」の発見です。光太郎は発表した詩のほとんどすべてを自分の手許に手控え原稿として残しているので、新たな詩はもう見つけられないだろう、見つかるとすればごく若い時期の作品か、即興的にその場で作って人に書いて渡したものだろうと思っていました。ところがこれはきちんと雑誌に発表されたもので、光太郎がうっかり控えるのを忘れたか、あるいは即興的に作ったので控えるまでもないと思っていたのか、今となっては謎です。

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また、書簡に関しては岩手の方で新たな書簡発見がニュースになり、その関係で三田悊宛、阿部徹雄宛をまとめて公にできました。関係者の方々には深く感謝いたしております。

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こちらも、野末明氏主宰の高村光太郎研究会が発行する年刊雑誌『高村光太郎研究』に連載させていただいております。ご希望の方は仲介致しますのでお声がけ下さい。

引き続き、『高村光太郎全集』補遺となる「光太郎遺珠」の収録作品をご紹介します。 

「光太郎遺珠」⑤

平成22年4月2日 高村光太郎研究会編『高村光太郎研究31』所収 
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散文「飛行機の美」                                                 昭18 『飛行日本』
翻訳「日本の国民性に就いて考ふ」バーナード・リーチ     大4 『智仁勇』
書簡3261 島村盛助宛                                           明45
〃 3262 萬造寺齊宛                                             大13
〃 3263 八束まさ子・八束清宛                                 昭4
〃 3264 萬造寺齊宛                                             昭7
〃 3265   〃                                                     昭11
〃 3266   〃                                                      〃
〃 3267 林一郎宛                                                昭15
〃 3268 小田島孤舟宛                                          昭22
〃 3269     〃                                                       〃
〃 3270 川路柳虹宛                                             昭26
短句1篇                                                              昭16頃
題字 「竹内てるよ詩文集『曙の手紙』題字」                  昭5
座談 「現代女性美を語る 各専門家の見た美人の標準」 昭4 『アサヒグラフ』
 〃  「菊池寛・尾崎士郎・高村光太郎文化鼎談」            昭16  『モダン日本』
『高村光太郎全集』『光太郎遺珠』解題等補遺・訂正       
参考資料 「伊上凡骨氏遺作 凡骨版画展覧会」            昭9
 
この年は長文の座談を二篇載せました。「現代女性美を語る」の方は、当時のミスコンテストの講評で、面白い内容です。座談や講演の筆録はもっと他にもたくさん見つかっているのですが、どうしても長文になってしまい、雑誌連載という形を取っている以上、1人で多くのページを割けませんから小出しにしている状態です。
 
こちらも、野末明氏主宰の高村光太郎研究会が発行する年刊雑誌『高村光太郎研究』に連載させていただいております。ご希望の方は仲介致しますのでお声がけ下さい。

筑摩書房さん『高村光太郎全集』の補遺として、当方がまとめ続けている「光太郎遺珠」の内容紹介4回目です。 

「光太郎遺珠」④

平成21年(2009)4月2日 高村光太郎研究会編『高村光太郎研究30』所収 
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短歌「北国の……」                                     昭和初期
散文「『青沼彦治翁遺功録』序」               昭11 『青沼彦治翁遺功録』
〃 「『職場の光』詩選評」                         昭17~18 『職場の光』
〃 「高村光太郎氏の疎開生活」                  昭21 『雄鶏通信』
〃 「若鮎短評」                                           〃   『水脈』
〃 「葡萄の房に寄せて」                             昭23  『詩文化』
〃 「高村光太郎講演会」                             昭25  『きたかみ文学散歩』(平16より)
アンケート「近頃の私の愉しみ 葉書回答」       昭23 『新女苑』
対談「芸術と生活(追補)」                       昭28
書簡3242 伊藤隆三郎宛                              大3
〃 3243 小橋三四子宛                           大7
〃 3244   〃                                              大8
〃 3245   〃                                              大8
〃 3246 郡山弘史宛                                     昭2(推定)
〃 3247 長沼重隆宛                                     昭6
〃 3248 藤本韶三宛                                     昭14
〃 3249   〃                                              〃
〃 3250 篠原眞男宛                                     昭15
〃 3251 藤本韶三宛                                     〃
〃 3252 内山義郎宛                                     昭19
〃 3253 千ヶ崎悌六宛                                  〃
〃 3254 保田與重郎宛                                  昭22
〃 3255 羽仁賢良宛(推定)                        昭23
〃 3256 神山裕一宛                                      〃
〃 3257 野末亀治宛                                      昭24
〃 3258 坂本明子宛                                      昭25
〃 3259 朝日新聞社宛(推定)                    昭27
〃 3260 関覚二郎宛                                      昭30頃
題字「雑誌『南北』季刊 題字・装画」           昭28~
『高村光太郎全集』解題補遺
 
この年は長文の散文類が数多く見つかりました。地方での出版物や同人誌的なものからの採集が多かったのが特徴です。
 
この年から「光太郎遺珠」は、野末明氏主宰の高村光太郎研究会が発行する年刊雑誌『高村光太郎研究』に連載させていただいております。ご希望の方は仲介致しますのでお声がけ下さい。

しばらくは光太郎関連のイベント等ないようですので、現在書き続けているこの項目、かたをつけてしまおうと思っています。 筑摩書房さん『高村光太郎全集』の補遺として、当方がまとめ続けている「光太郎遺珠」の内容紹介3回目です。 

「光太郎遺珠」③

平成20年(2008)4月2日 高村光太郎談話会 小山弘明編
 
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散文「有機的な文化の起る為に」                                 昭9 『生誕』
 〃 「若さ」                                                      昭3 『新制女子国語読本 第二修正版 巻五』
 〃 「『画工志願』読後感」                                          昭8 『ヱツチング』
 〃 「決戦時生活の基礎倫理」                                       昭19 『海運報国』
 〃 「神裔国民の品性」                                                  〃    〃
 〃 「モニユマンの除幕式」                                            昭28  『東奥日報』
 〃 「「十和田記念碑」除幕式における高村光太郎先生のお話」  〃  『教育広報』
雑纂「高村氏制作の苦心語る」                                         〃  『東奥日報』
アンケート「我が好む演劇と音楽」                                        明44 『女子文壇』
 〃 「■花、土地、人」                                                    大7 『文章倶楽部』
 〃 「本年(昭和三年)の計画・希望など」                   昭3    〃
 〃 「名士回答 私が父の愛を最も深く感じた時の思ひ出」     昭6 『婦人世界』
短評「梶浦正之詩集『梶浦正之詩抄』」                         昭15 『梶浦正之詩抄』
書簡3229 前田晃宛                                                         明44
 〃 3230   〃                                                              〃
 〃 3231   〃                                                              〃
 〃 3232   〃                                                              〃
 〃 3233   〃                                                            大元
 〃 3234   〃                                                             〃
 〃 3235   〃                                                            大2
 〃 3236 河野慎吾宛                                                   大7
 〃 3237 笹本寅宛                                                      昭2
 〃 3238 今井武夫宛                                                    〃
 〃 3239 中込純次宛                                                   昭4
 〃 3240 田中冬二宛                                                   昭18
 〃 3241 中山義秀宛                                                    〃
題字「瀧川富士夫詩集『夜道』扉」                                     昭8
 〃 「水野葉舟歌集『滴瀝』題字」                                   昭15
 〃 詩集『典型』扉案                                                      昭25
『高村光太郎全集』解題補遺  
                            
この年はアンケートを含め、散文類が数多く見つかりました。昨日も書きましたが、こういったものをどうやって見つけるのか、後ほどその方法も書いてみたいと思っています。
 
前田晃宛の書簡がまとまって見つかりましたが、この発見は山梨県立文学館様のご厚意によります。このうちの書簡3234により、大正元年、智恵子との結婚前に千葉の犬吠埼で過ごした有名なエピソードがありますが、これまで不明だった帰京の日が9月4日であることが判明しました。
 
また、書簡3241は、以前から知られていた中山義秀のエッセイ「庵の主」(『高村光太郎資料第六集』文治堂書店 昭和52年所収)に、この葉書に関する回想が記されています。
 
このように新しく見つけた資料と古い資料が有機的に結びついた時は、非常に嬉しいものがあります。
 
今回紹介した「光太郎遺珠」③、残部がけっこうあります。ご希望の方はお声がけ下さい。

いったん中断しましたが、『高村光太郎全集』補遺作品集として毎年連翹忌の日に世に出しています「光太郎遺珠」、平成19年に刊行した②の内容を紹介します。 

「光太郎遺珠」②

 平成19年(2007)4月2日 高村光太郎談話会
 
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俳句2句                                                      大3 『睡蓮』
短歌4首                                                     〃
散文「ツルゲーネフの再吟味」                     昭9 『ツルゲーネフ全集内容見本』
 〃 「木下利玄全集内容見本」                       昭14 『木下利玄全集内容見本』
雑纂「日本人名録」                                       昭24 『毎日年鑑昭和二十五年版』
短句1篇                                                         昭23(推定)
書簡3201 平櫛倬太郎(田中)宛                明39
 〃 3202     〃                                      〃
 〃 3203 太田正雄(木下杢太郎)宛          明44
 〃 3204     〃                                         〃
 〃 3205     〃                                      明45
 〃 3206 Henri Matisse(アンリ・マチス)宛          〃
 〃 3207 真山孝治宛                                 大2(推定)
 〃 3208 太田正雄(木下杢太郎)宛          大3
 〃 3209 佐藤春夫宛                                   年代不明(大正期と推定)
 〃 3210 硲眞次郎宛                                   昭5
 〃 3211 米澤理蔵宛                                   昭7
 〃 3212 吉野秀雄宛                                   昭9
 〃 3213    〃                                           〃
 〃 3214    〃                                          昭11
 〃 3215 森川勇作宛                                   昭13
 〃 3216 吉野秀雄宛                                     〃
 〃 3217 神保光太郎宛                                昭15
 〃 3218 吉野秀雄宛                                      〃
 〃 3219 平櫛田中宛                                   昭16
 〃 3220  森下文一郎宛                                 昭17(推定)
 〃 3221 神保光太郎宛                                  〃
 〃 3222 吉野秀雄宛                                   昭20
 〃 3223 天江富弥宛                                   昭21
 〃 3224 黒須忠宛                                      昭26
 〃 3225 長嶌三芳宛                                     〃
 〃 3226 野末亀治宛                                   昭27頃
 〃 3227 谷川俊太郎宛                                昭28(推定)
 〃 3228 武者小路実篤古稀祝賀会宛          昭29
題字「八木重吉詩集のための「麗日」「花がふつてくるとおもふ」    昭18
智恵子書簡68 太田正雄(木下杢太郎)宛   明45
参考資料 パン大会案内                                明43

 
平成18年(2006)に「光太郎遺珠」①を刊行し、その後1年間で見つけた新資料です。この年はやはり書簡がものすごくたくさん見つかりました。特に大きな発見は、智恵子書簡。田村俊子と二人で開いた「『あねさま』と『うちわ絵』の展覧会」の案内状です。
 
こういったものをどうやって見つけるのか、後ほどその方法も書いてみたいと思っています。
 
今回紹介した「光太郎遺珠」②、現物は当方手許にある一冊だけとなってしまいました。ただ、データの形では提供できますので、ご希望の方はお声がけ下さい。

昨日に引き続き、平成18年4月に刊行いたしました『光太郎遺珠』の内容を紹介いたします。
 
書簡
 3102 与謝野寛宛     明37/10     3103 金谷商店御一同宛 明39/3
 3104 中山商店 金谷宛  明39/9     3105 加藤景雲宛    明40/8
 3106 南薫造宛      明40/10(推定)  3107 津田青楓宛    明42/3
 3108 森林太郎(鷗外)宛 明44/1             3109 生田葵山宛    明45/6
 3110 『生活』消息    大2/6                  3111 『生活』消息    大2/7
 3112 野田守雄宛     大3/7                3113 安田秀二郎宛   大4/1
 3114 田村松魚宛     大4(推定)       3115 萬造寺齊宛    大5/1(推定)
 3116 田村松魚宛     大5/8      3117 野田守雄宛    大7/1
 3118 小橋三四子宛    大8/3         3119 竹村俊郎宛    大8/4
 3120 田村松魚宛     大8/4      3121 野田守雄宛    大8/12
 3122 田村松魚宛     大8/12       3123 田村松魚宛    大9/2
 3124 野田守雄宛     大9/5      3125 入江新八(田村松魚)宛  大9/5
 3126 宮芳平宛      大9/8(推定)  3127 泉浩郎宛      大14/1
 3128 林一郎宛      大14/3       3129 千石喜久宛     大15/6
 3130 林一郎宛      昭2/4       3131 福田正夫宛    昭2/11(推定) 
 3132 今井武夫宛     昭2/12        3133 今井武夫宛     昭3/3
 3134 新島栄治宛     昭3/3(推定)  3135 今井武夫宛      昭3/6
 3136 南江二郎宛     昭3/9      3137 南江二郎宛      昭4
 3138 杉浦杜夫宛     昭5/5      3139 佐伯郁郎宛      昭7/4
 3140 佐伯郁郎宛     昭8/7      3141 松井好夫宛      昭10/1(推定)
 3142 新井徹宛      昭10/4       3143 竹下彦一宛      昭10/11
 3144 後藤真太郎宛    昭12/12     3145 佐伯郁郎宛      昭14/6
 3146 伊東静雄宛     昭15/3       3147 昭森社宛       昭15/7
 3148 西倉保太郎宛    昭16/1       3149 佐伯郁郎宛      昭18/12
 3150 臼井喜之介宛    昭19/2       3151 野村沢子宛      昭19/3
 3152 臼井喜之介宛    昭19/4       3153 清水房之丞宛     昭20/3
 3154 清水房之丞宛    昭20/5       3155 清原誠治宛      昭20/11(推定)
 3156 松本政治宛     昭21/1       3157 新岩手婦人編集部宛  昭21/1
 3158 国安芳雄宛     昭21/1       3159 清水房之丞宛     昭21/5
 3160 松本政治宛     昭21/8       3161 東正己宛       昭21/8
 3162 東正己宛      昭22/7       3163 渡邊正治宛      昭22/11
 3164 永瀬清子宛     昭23/1       3165 永瀬清子宛      昭23/3
 3166 八森虎太郎宛    昭23/5       3167 永瀬清子宛      昭23/6
 3168 粕谷正雄宛     昭23/11      3169 肥後道子宛     昭24/6
 3170 八森虎太郎宛    昭24/9        3171 永瀬清子宛     昭24/9
 3172 東正己宛      昭24/10      3173 粕谷正雄宛     昭24/10
 3174 吉田孤羊宛     昭24/11      3175 吉田孤羊宛     昭24/11
 3176 立花貞志宛     昭24/11      3177 粕谷正雄宛     昭24/12
 3178 粕谷正雄宛     昭25/2      3179 佐伯郁郎宛     昭25/4
 3180 和田豊彦宛     昭25/6      3181 池田克己宛     昭25/7
 3182 新井克輔宛     昭25/9      3183 池田克己宛     昭25/10
 3184 三宅正太郎宛    昭25/11       3185 新岩手日報社宛   昭25/12
 3186 三宅正太郎宛    昭25/12       3187 松本政治宛     昭26/3
 3188 鎌田敬止宛     昭26/4       3189 鎌田敬止宛     昭26/4
 3190 式場隆三郎宛    昭26/4       3191 式場隆三郎宛    昭26/7
 3192 宮澤清六宛     昭26/8       3193 式場隆三郎宛    昭26/8
 3194 宮澤清六宛     昭26/8       3195 式場隆三郎宛    昭26/9
 3196 宮澤清六宛     昭26/9       3197 式場隆三郎宛    昭26/9
 3198 吉田孤羊宛     昭26/11      3199 佐久間晟宛    昭26/12
 3200 高藤武馬宛     昭28/7          
題字等
 『土』第廿七輯      昭13
 詩集『典型』自筆装幀原画 昭25
参考作品
 ロダン翁の事 口述    大6
 新女性美の創造      昭16
 高村先生を囲んで     昭27
智恵子書簡
 67 岡田八千代子宛    大4/10
全集解題補遺
 『高村光太郎全集』刊行時に不明だった初出掲載誌、翻訳原典情報等
 
御覧の通り、8年間でおよそ100通の書簡が新たに発見されました。
 
 
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書簡3108 森林太郎(鷗外)宛
 
実はこの後、今年発行の「光太郎遺珠⑦」に到るまでにさらに100通、都合により「光太郎遺珠」に掲載していない田村松魚宛の書簡が約50通、さらに来年4月発行予定の「光太郎遺珠⑧」に載せる予定のものが既に12通。光太郎がいかに筆まめだったかが分かります。今後、どれだけの書簡が出て来るか想像もつきません。
 
「うちにも光太郎の書簡がある」「『××』という本に光太郎の書簡が引用されている」「○○記念館に光太郎の書簡が展示されている」といった情報があったら、是非お知らせ下さい。
 
また、昨日も書きましたが、これらを読んでみたいという方はご一報ください。

「お前はいったいどういう活動に取り組んでいるんだ?」ということをよく訊かれますので、紹介します。
 
基本は「光太郎の事績をまとめること」です。「光太郎という人物はこんな業績を残した」ということをできうる限り正確に、漏れなく、後世に伝えていかなければならないと考えています。
 
そのために、まずは光太郎本人が書き残したものの集成。光太郎の文筆作品については平成十年に完結した筑摩書房刊行の『高村光太郎全集』増補決定版全二十一巻・別巻一が最も信頼できるテキストです。一部、座談会や短い談話等は『高村光太郎全集』には収録されず、文治堂書店刊行の『高村光太郎資料』第三巻(昭47=1972)、第六巻(昭52=1977)がこれを補っています。
 
しかし、その後も光太郎文筆作品は続々と見つかり、北川太一先生と当方によってそれらの集成がなされ続けています。平成十一年から十七年までは『全集補遺』という題でワープロ印刷の小冊子として、連翹忌で配布。平成十八年にはそれらを一冊にまとめ、さらに新発見の文筆作品を所収し、『光太郎遺珠2006・4』(「遺珠」①)がハードカバーの厚冊で高村光太郎記念会から限定二百部で刊行されました。ちなみにこれは光太郎没後五十年記念を兼ねたものです。「遺珠」とは「拾われないで残っている珠」転じて「世人に知られていない傑作の詩文」(『広辞苑』)という意味で、北川先生の命名です。
その後も続々見つかる全集等未収録作品に対し、北川先生のご助言を頂きながら当方が編集にあたり、「光太郎遺珠」の題名を踏襲して、毎年の連翹忌の日に世に出しています。

平成19年・20年(2007・2008)は大島裕子氏編の「没後年譜」と合わせ、高村光太郎談話会から小冊子の形で刊行(「遺珠」②・③)。平成21年2009)からは野末明氏の高村光太郎研究会刊行の雑誌『高村光太郎研究』の中の連載とさせていただいており(「遺珠」④~⑦)、今後もこの形を続けるはずです。これらはすべて国会図書館、神奈川近代文学館他で閲覧が可能です。当然、『全集』未掲載のものですので青空文庫等では閲覧は不可能です。

『高村光太郎全集』が完結したのが平成10年(1998)。ちょうどその頃からインターネットが急速に発展し、さまざまな情報が得られるようになったことが大きく作用しています。
 
ここでは「遺珠」に収めた作品の全文を紹介するのは不可能ですので、目次のみ数回に分けて掲載します。「光太郎にこんな作品があったのか」「是非読んでみたい」という方はお知らせください。 

「遺珠」① 

 平成18年(2006)4月2日 高村光太郎記念会 北川太一・小山弘明編

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俳句4句            明42 津田青楓宛書簡より
短歌3首            大8 逸見久美編『与謝野寛晶子宛書簡集成』第二巻より
 〃 1首           昭5 木彫「栄螺」袋
散文「日本画はめちやめちや」  大元 『やまと新聞』第8525号
 〃 「辞書を喰ふ女優」    大8 『活動旬報』第1巻第1号
 〃 「外国映画と思想の輸入」 大9 『活動倶楽部』第3巻4月号
 〃 「創刊に寄する諸家の言葉」昭12 『詩報』第1年第1号
 〃 「詩集"陽とともに"を読む」 昭15 『石狩平原』第1巻第1号
 〃 「仕事場にて」      昭15 『新女苑』第4巻第5号
 〃 「「動力時代」読後小感」 昭15 竹中祐太郎詩集『動力時代』
 〃 「ことばの美に就いて」  昭18 『さいかち』第15巻第1号
 〃 「新しい女性美」     昭18 『青年』第28巻第1号女子版
 〃 「島田正詩集『結婚』序」 昭21 島田正詩集『結婚』
 アンケート「初めて蓄音機を聞いた時」 大11 『新家庭』第7巻第6号
 〃  「山と海」          昭5 『アスレチツクス』第8巻第8号
 〃  「上州とし聞けば思ひ出すもの、事、人物」        昭10『上州詩人』第17号
雑纂「HENRI-MATISSEの画論(一)前書き」 明42『スバル』第1年第9号
 〃 「略歴」                     昭4『現代日本詩集現代日本漢詩集』
 〃 「前田鉄之助詩集『父童子自然』と諸家の言葉」   昭8 『詩洋』第10年6月号
 〃 「高村光太郎作 木彫小品・色紙・短冊頒布」    昭13 『大熊座』第1年春期版
 〃 「回顧三十年感謝晩餐会御挨拶(速記)」      昭17 『図書』第83号
 〃 「細田明子結婚記念帳に」             昭29 『細田明子結婚記念帳』
短句8篇                        昭和期
対談「「朝の訪問」[未放送]」             昭24
翻訳「J・K・HUYSMANSの『巴里の写生』(四)[○旋頭歌]」 明43『スバル』第2年第2号
 
この後、書簡、題字等、参考作品、智恵子書簡、全集解題補遺と続きますが、長くなるので明日に回します。
 
手許に若干の残部があります。ご希望の方には送料のみにてお分けいたしますのでお声がけ下さい。

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