昭和6年(1931)夏、新聞『時事新報』の依頼で紀行文を書くために、三陸一帯を約1ヵ月、主に船で移動した光太郎。宮城県の女川にも立ち寄ったということで、それを記念して平成3年(1991)に光太郎文学碑が建立され、翌年からは光太郎が三陸に向けて東京を発った8月9日に、「女川光太郎祭」を開催して下さっている宮城県女川町。

女川光太郎祭は、残念ながら、昨年に引き続きコロナ禍で中止となりましたが、町立の女川つながる図書館さんで、光太郎に関する展示をなさって下さいます
期 日 : 2021年8月7日(土)~8月13日(金)
会 場 : 女川つながる図書館 女川町生涯学習センター内 
          宮城県牡鹿郡女川町女川浜字女川178番地 KK-8街区1画地
時 間 : 平日 10:00~20:00  土日祝 10:00~17:00
休 館 : 期間中無休
料 金 : 無料

光太郎と啄木の短歌・詩・評論を通して、作品に流れる人間観や人生観を知っていただくような展示を行います。
◇図書館の館内を巡りながら、特別展の展示を楽しみつつ観ることができます!!
◇高村光太郎と石川啄木を、わかりやすく知ることができます。
◇入館者に手作りの記念品を差し上げます。
※新型コロナ感染症予防のため、マスクの着用・こまめな消毒、三密の回避のご注意をお願いいたします。
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この手の展示で光太郎に触れて下さるのが、毎年この時期の恒例となっていて、今年で3回目です。
女川つながる図書館特別展「詩人・彫刻家高村光太郎と女川 ~えにしをつなごう~」。
宮城レポート その2 女川町内各所。
女川つながる図書館特別展「詩人・光太郎と賢治 ~えにしをめぐる~」。


初回の一昨年は光太郎がピンで、昨年は光太郎と交流のあった、同じくみちのくゆかりの宮沢賢治とからめての企画でした。そして今年は、やはりみちのく出身で、光太郎と交流のあった石川啄木とのタイアップです。

会場が特設される訳ではなく、図書館内の書架の上だったり、カウンターの前のちょっとしたスペースだったりを使ってのミニ展示ですが、こういう取り組みを行うことも、大切なことだと思います。

来年以降も継続していただきたいものですし、来年こそは女川光太郎祭の復活も切に祈念する次第です。

【折々のことば・光太郎】

ひる頃石井鶴三、笹村草家人、有賀剛、千葉金右衛門、旭谷正治郎の五氏来訪。炉辺に招ず。昨夜花巻クルミ旅館泊の由。鶴三氏とは四五年ぶりの面会。他の人は皆初対面。


昭和23年(1948)6月20日の日記より 光太郎66歳

石井鶴三は彫刻家。光太郎と明治期から親しかった画家・石井柏亭の実弟です。笹村草家人も彫刻家で、この後、信州安曇野の碌山美術館建設に奔走、光太郎にも協力を要請しました。

001有賀剛は笹村の友人で、神田小川町の汁粉屋主人。光太郎は2日後には有賀のために複数の書を揮毫しています。そのうち1枚は「悠ゝ無一物満喫荒涼美」。前年に作った連作詩「暗愚小伝」中の「終戦」の一節、「悠々たる無一物に私は荒涼の美を満喫する」を漢文風にアレンジしたものです。

千葉金右衛門は秋田扇田町(現・比内町扇田)の酒造家。旭谷正治郎は同じく秋田横手出身の画商です。平成27年(2015)には、旭谷宛の光太郎書簡などが展示された「横手ゆかりの文人展 大正・昭和初期編 ~あの人はこんな字を書いていました~」が、横手市の雄物川郷土資料館さんで開催されました。