最近手に入れた古いものシリーズ、昭和42年(1967)公開の松竹映画「智恵子抄」(中村登監督 岩下志麻さん主演)関連です。

まず、カセットテープ。
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「女優 岩下志麻 美しさと妖しさと 2」という題名。「美しい映画音楽と共に語る名作の精粋」だそうで、岩下さんがご出演なさったドラマ・映画の原作等を、そのドラマ・映画の音楽に乗せて岩下さんが朗読するというコンセプトでした。

ジャケットの隅に「品質保証 1969」とあり、昭和44年(1969)のリリースかと思いましたが、取り上げられている「草燃える」は昭和54年(1979)のNHK大河ドラマでしたので、それ以後の制作です。ちなみに「草燃える」での岩下さんは北条政子役でした。

他の作品はすべて映画で、「雪国」(昭和40年=1965)、「古都」(昭和38年=1963)、そして「智恵子抄」(昭和42年=1967)。すべて中村登監督作品です。

「智恵子抄」では、詩「樹下の二人」(大正12年=1923)、「あどけない話」(昭和3年=1928)、「千鳥と遊ぶ智恵子」(昭和12年=1937)、「値ひがたき智恵子」(同)、「荒涼たる帰宅」(昭和16年=1941)。合間に映画「智恵子抄」の脚本をアレンジしたミニドラマ的なものも挿入されています。史実とは異なりますが、昭和13年(1938)、歿する直前の智恵子が病院を抜け出し、光太郎と共に暮らした駒込林町のアトリエ兼住居へ勝手に帰ってきて……
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この映画、一度拝見しましたが、このシーンの岩下さんの鬼気迫る演技は圧巻でした。光太郎役は丹波哲郎さんでしたが、テープでは岩下さんの一人芝居で構成されています。

これ以外にも、まったく同じ音源を使ったカセットテープがリリースされていました。題して「カセット文芸シリーズ 智恵子抄 婉という女」。こちらはかなり前に入手していました。
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こちらも正確な発行年は分かりませんが、JANバーコードが印刷されていることから、こちらの方が新しいのかな、という気がします。ちなみにカップリングの「婉という女」は昭和46年(1971)公開の今井正監督作品です。

もう1点、映画「智恵子抄」のスチール写真。これ以外に、岩下さんのサイン入りを含め、20数種類、この映画のスチール写真をコツコツ集めましたが、新たに一枚加わりました。
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史実ですと、昭和8年(1933)、光太郎智恵子が東北から北関東の温泉巡りをした途中の会津磐梯山でのエピソード。シナリオは以下。クリックで拡大します。
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詩「山麓の二人」(昭和13年=1938)で謳われた、「わたしもうぢき駄目になる」と呟く場面です。

こういうものにどの程度の価値があるのだ? と問われると、何とも答えに窮するところですが、さりとて散逸するに任せるのも忍びなく……。

最近手に入れた古いものシリーズ、とりあえず明日まで続けます。

【折々のことば・光太郎】

夜久しぶりにみみずくの声をきく。しやがれ声なり。春以来きかざりき。


昭和21年(1946)9月20日の日記より 光太郎64歳

ミミズクの声も、田舎あるあるです(笑)。