2月5日(金)の『読売新聞』さん夕刊から。

よみうり寸評

つい先日、東京五輪まであと半年という声を聞いたと思ったら、今度は北京五輪まで1年になったという。東京大会の延期で開催時期が近づいた◆羽生結弦、高木美帆…有力選手の活躍が報じられても、大舞台はだいぶ先のように感じていた。虚を突かれたような驚きを覚えつつ、時候ゆえか、ふと連想したのが梅と桜の開花前線だ◆列島を北上するにつれて双方は接近する。リンゴや梨の花も挙げて高村光太郎は〈東北の春〉の味わいを随筆に綴(つづ)った。〈春の花の代表が、前後する暇もなく、一時にぱっと開いて、まるで童話劇の舞台にでもいるような気を起させる〉◆夏季五輪のすぐあとに冬季五輪を観戦できるなら、うれしい話ではないか。と思ったところでコロナ下の厳しい現実に立ち返る◆北京の有力選手の話を本紙で読んだ。「まずは東京五輪の開催を願っている。そうすれば北京もきっと出来ると思う」。切実な気持ちを選手が抱えている時に…。紙幅が尽きるところで、かの発言に一言だけいう。なんてことを。

引用されているのは昭和26年(1951)3月に、『婦人之友』に発表された「山の春」の一節です。同欄では昨年の11月にも「山の春」からの引用がありました。ありがたし。

「山の春」は、数ある光太郎エッセイの中でも珠玉の一篇で、平成25年(2013)には、中学校3年生対象の「全国学力・学習状況調査」で問題文に使われたり、一昨年リリースされた声優の能登麻美子さんの朗読CDで取り上げられたり、昨年はNHKラジオの「石丸謙二郎の山カフェ」で朗読されたりしています。「青空文庫」さんにも登録がありますので、ぜひ全文をお読み下さい。

ちなみに当方自宅兼事務所の裏山では、既に梅は三~五分咲きといったところです。雪国の皆さんには申し訳なく思います。
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蛇足ながら、「かの発言」は、かの老害失言大王の「女性がたくさん入っている理事会は……」云々ですね。かの読売さんでもかばいきれないということでしょう。後から弾丸(たま)が飛んできている感たっぷりですね(笑)。

それでも「夏季五輪のすぐあとに冬季五輪を観戦できるなら、うれしい話ではないか」あたりには、「コロナに打ち勝った証に……」と言っている政権への忖度ありありですが(笑)。

【折々のことば・光太郎】

黒沢尻の郡司氏来訪。先日「ニュース」誌の記者と来て写真をとりし人。岩手地方の仏像の写真撮影をしたものを五六枚持参して見せらる。写真中々おもしろくとれたり。成島の毘沙門堂の諸仏、毘沙門天の足下の地神と称するもの、浄法寺村の天台寺の諸仏、立花村の毘沙門の二天像など。皆優秀な作なり。

昭和21年5月14日の日記より 光太郎64歳

成島の毘沙門堂の諸仏」、「浄法寺村の天台寺の諸仏」、「立花村の毘沙門の二天像」、それぞれ現存しているようです。