こういう映画があったというのを存じませんでした。

一昨日の『デイリースポーツ』さんから

「利用したことのない新幹線駅」にもドラマがある…新花巻駅誕生の「逆転劇」描いた映画が公開へ

002 岩手・新花巻駅に東北新幹線が止まる運動に奔走した地元住民を描いた映画「ネクタイを締めた百姓一揆」が6日から東京・UPLINK渋谷で劇場公開される。「請願駅」が東北新幹線の駅となるまでの14年間の実話を元にした作品だ。東京初公開を前に、地元関係者に話を聞いた。
 新花巻駅は、1971年10月に当時の国鉄が発表した東北新幹線基本工事計画では予定されていなかった。本作は「花巻市に駅の設置を」という市民運動が起こり、決定事項を覆して85年3月に開業するまでの「逆転劇」を描いた群像劇となる。
 新花巻駅設置運動史「耐雪花清(たいせつかせい)」という冊子がある。当時、花巻市役所職員として、運動史の編纂に加わった藤戸忠美さんに話をうかがった。
 「昭和46年当時、花巻市民には『新幹線が止まって当然』という思いがありました。岩手県では、盛岡と最南端の一関の中間地点にある花巻は国鉄の乗降客で盛岡に次いで県内2位であり、温泉などの観光地であることや、宮沢賢治の生誕地であったり、高村光太郎が晩年7年間を過ごしたこともあったので、新幹線が止まるものだと疑ってもいなかった。ところが、決まったのは隣の北上だった。隣町に負けたという悔しい思いがあり、花巻市民として動き出したのです」
 そう振り返る藤戸さんは、運動の中心人物を挙げた。藤戸さんは「小原甚之助さんという市民会議の議長さんです。情熱家で、花巻に新幹線の駅ができないことについて『子孫に対して申し訳ない』という思いを持たれていた。運動のスタート当時は、行政より市民の方が燃えていました」と証言する。
 新花巻駅は東北新幹線と在来線の釜石線との交差地点に設けられた接続駅。JR東日本によると、2019年度の1日平均乗車人員は891人。新幹線駅の1日平均乗車人員は900人ということで、ほぼ全国平均的な数字となる。利用者はやはり観光客が多いのだろうか。花巻市観光課の駒木裕也さんに話をうかがうと、「花巻温泉郷」の存在を挙げた。
 「花巻温泉郷は12の温泉からなり、その泉質も雰囲気もさまざまです。また、宮沢賢治や萬鉄五郎を始めとした著名な先人を輩出し、高村光太郎や新渡戸稲造ゆかりの地として知られ、偉人たちの足跡をたどることができるスポットが数多くあります」
 とはいえ、今年はコロナ禍によって観光地は全国的に打撃を受けた。花巻の場合はどうだったのか。
 「花巻は東北最大の温泉宿泊地であるため、特に宿泊施設に与える影響は相当に大きなものがあります。このため、市では独自に利用助成制度を創設しました。Go Toトラベル事業の効果もあり、9月・10月については、昨年と同様あるいはそれ以上にお客様にお泊まりいただいた状況となっておりますが、今後の情勢を引き続き注視していかなければならないと思っております」
 今回の作品公開について、駒木さんは「花巻に所縁のある方はもちろん、花巻にお越しいただいたことのない方も、本作品を通じて、故郷を思い出したり、舞台となった場所を訪れてみたいと感じていただけましたら」と歓迎。「新花巻駅は文化や産業の結節点としても重要な役割を果たしています。来年にはJR東日本の東北デスティネーションキャンペーンも予定されており、地域にとってなくてはならない存在になっています」とアピールした。
 岩手県在住の河野ジベ太監督は「実在する新幹線の1つの駅にまつわる物語ですが、同時に昭和に整備されてきた様々なインフラに込められた普遍的な物語でもあります。今の私たちにとって当たり前の便利な日本は、かつての人々の熱い思いによって実現されてきたものです」と指摘。「激動の70年代、理想と現実、人と人の思いが真っ向からぶつかった時代。不器用に間違えて回り道してぶつかって、それでもくじけず前を向くエネルギーを大切にしようと思いながら脚本を書きました。おじさんたちの映画なのに青春映画のようになっているのはきっと新しいことに挑戦したときに人は誰でも若者のようなエネルギーを持つからだと思います」とコメントを寄せた。
 ツイッターには「#利用したこと無い新幹線駅」というハッシュタグがある。投稿者が乗降したことのない駅名を列挙していて、新花巻も名を連ねている。だが、そうした「通過駅」の1つ1つにもドラマがあるのだ。
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調べてみましたところ、公式サイトがありました。それによれば映画は2017年の制作。地元・花巻はじめ各地でぽつぽつと上映会が開かれてきた他、平成30年(2018)には「門真国際映画祭2018」に参加、最優秀脚本賞を受賞しているそうです。で、都内での劇場公開が今日からだそうで

ネクタイを締めた百姓一揆

期 日 : 2020年11月6日~11月12日(木)
会 場 : UPLINK渋谷 東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階
時 間 : 11/6・7・9・10 13:15~ 11/8・12 13:10~ 11/11 17:40~
料 金 : 一般¥1,900/シニア(60歳以上)¥1,200/ユース(19歳~22歳)¥1,100
      アンダー18(16歳~18歳)¥1,000/ジュニア(15歳以下)¥800
      UPLINK会員¥1,100(土日祝¥1,300)ユース会員(22歳以下)¥1,000

岩手県に実在する東北新幹線・新花巻駅設置を巡る14年間の物語を、地元在住有志が一切の妥協なく撮り切った長編巨大群像劇。計画にない駅は、出来るのか。時代に翻弄される国鉄を背景に描かれるそれぞれの想い、圧巻の147分。

上映前・後舞台挨拶開催決定!!
11/6(金)【上映前舞台挨拶】登壇者:菅原修(国会議員ミツヅカ役)、菅原季咲良(録音)、河野ジベ太(監督)(約5分)

11/7(土)【上映後舞台挨拶】登壇者:小原良猛(タニカワ産業役兼プロデューサー)、堀切大地(エキストラ)、河野ジベ太(監督)(約5分)

11/8(日)【上映後舞台挨拶】登壇者:小原良猛(タニカワ産業役兼プロデューサー)、河野ジベ太(監督)(約5分)

11/11(水)【上映後トークショー】登壇者:久場寿幸、曽我真臣(共に「カメラを止めるな!」等俳優)、河野ジベ太監督(約15分)

※敬称略
※ゲストは予告なしで急遽変更になる場合や中止になる場合がございますので、ご了承ください。



上記予告編だけでもかなりのストーリーがつかめますね。まさに「長編巨大群像劇」というにふさわしそうです。かなり笑えますが(笑)。新花巻駅は、東京駅や上野駅を除いた東北新幹線の駅の中で、当方が最も多く利用している駅ですが、その背景にこういうことがあったというのも全く存じませんでした。

ぜひ足をお運び下さい。


【折々のことば・光太郎】

東京よりもこつちの方がよい、ただ山荘は越冬設備ができていないので一週間ほど大沢温泉に泊り山荘を整理して再び東京に行きたいと思う

談話筆記「庭木に思い出新た」全文 昭和28年(1953) 光太郎71歳

昭和28年11月27日『河北新報』夕刊に載った「庭木に思い出新た 高村翁岩手の山荘に帰る」と題した記事に附された談話です。記事本文は以下の通りでした。

【花巻】昨秋岩手県稗貫郡太田村の山荘を下山して東京に戻った高村光太郎翁は二十年ぶりにノミをとった苦心の作“乙女の像”もでき上り目的の十和田湖畔に建て、一段落したというので二十五日詩人草野心平氏を伴って再び岩手県入りした。高村翁は相変らずカーキー色の詰えり服といった無造作な姿で部落内にあいさつ回りをし、さらに同村山口小学校児童たちの歓迎会にのぞんだりし、いつもながらの地元民の温情に目を細めて喜んだ。山荘に落着いた翁は庭にある植木をなつかし気になでながらつぎのように語った。

この年、10月21日に「乙女の像」除幕式のため青森十和田湖を訪れた光太郎は、25日にいったん帰京し、1か月後の11月25日から12月5日まで、旧太田村等に滞在しました。宿泊は山小屋ではせず、大沢温泉、志戸平温泉、花巻温泉松雲閣でした。滞在中の前半にはブリヂストン美術館制作の美術映画「高村光太郎」の撮影がありました。記事にある「同村山口小学校児童たちの歓迎会」の模様が映画にも写されています。
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当初の計画では、冬期は東京、それ以外は太田村と、二重生活を送る心づもりもあったのですが、健康状態がそれを許さず、結局、これが最後の太田村滞在となりました。

このころの光太郎、新幹線など想像すら出来なかったことでしょう。