仙台に本社を置く『河北新報』さん。先週載ったコラムです。 8月下旬、二本松市西部の安達太良山方面に車を走らせた。市内に入ると、おぞましい「鬼婆(ばば)」伝説が残る安達ケ原や、詩人高村光太郎の妻智恵子の生家がある。
<あれが阿多多羅山(あたたらやま)、あの光るのが阿武隈川>
幼少の頃から、魅惑的で自然豊かな地域だと思っていた。
1車線の国道を走行中、道路脇に野菜の無人販売所を見つけた。真っ赤に熟れたトマト、濃い緑色に染まった全国屈指の生産量を誇るキュウリが並んでいる。
「うまそうだ。買ってみよう」。車を止めようとした瞬間、「除染作業中」の看板が目に飛び込んできた。男性作業員3、4人が側溝の汚泥をスコップでかき出し、1人が小型ショベルカーを操っている。思わずアクセルを踏んだ。
東京電力福島第1原発事故から間もなく5年半。50キロも離れている場所でさえ、このありさまだ。販売所の野菜を買わなかったことを、「風評被害を助長する」と誰かに責められるだろうか。誰が責めを負うべきなのか。そんなことを考えながら、現地で一升瓶の地酒数本を手に入れた。(報道部副部長 末永秀明)
微力ながら復興支援に取り組んでいる身には、悲しい内容でした。しかし、ある意味、正直に書かれていることには敬意を表します。
連日のように原発に関するニュースが報じられています。今日の朝刊では福井県敦賀市の高速増殖炉もんじゅ廃炉の方向に関して。当然の選択ですね。
もんじゅ廃炉で政府が最終調整 核燃料サイクル政策見直し必至
政府は12日、原子力規制委員会が運営主体の変更を求めている日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)を廃炉にする方向で最終調整に入った。政府関係者が明らかにした。再稼働には数千億円の追加費用が必要となり、国民の理解が得られないとの判断に傾いた。核燃料サイクル政策の枠組みの見直しは必至で、関係省庁で対応を急ぐ。
所管の文部科学省は、規制委から運営主体の変更勧告を受け、原子力機構からもんじゅ関連部門を分離し、新法人を設置して存続させる案を今月に入り、内閣官房に伝えた。しかし、電力会社やプラントメーカーは協力に難色を示しており、新たな受け皿の設立は困難な情勢。政府内では、通常の原発の再稼働を優先すべきだとの考えから経済産業省を中心に廃炉論が強まっていた。
政府は、もんじゅ廃炉後も高速炉の研究開発は継続する方向。実験炉の常陽(茨城県)の活用やフランスとの共同研究などの案が浮上している。
原子力機構は2012年、もんじゅを廃炉にする場合、原子炉の解体など30年間で約3千億円の費用がかかるとの試算をまとめている。もんじゅは核燃料の冷却にナトリウムを利用する特殊な原子炉のため、一般の原発の廃炉費用より割高となる。
一方、再稼働するには、長期の運転停止中に変質した燃料を新しいものに交換する必要がある。
もんじゅ本体の施設の維持管理に年間約200億円かかり、茨城県東海村にある燃料製造工場を新規制基準に対応させる工事費も大幅に必要となる。もんじゅ本体の新基準対応費も含めると、再稼働させるためには数千億円の追加負担が見込まれる。
規制委は昨年11月、原子力機構に代わる組織を特定するか、できなければ施設の在り方を抜本的に見直すよう求め、半年をめどに回答するよう馳浩文科相(当時)に勧告していた。
敦賀市の渕上隆信市長は今月8日、松野博一文部科学相と面談し、「一定の成果が上げられないまま撤退という判断になれば、30年の協力は何だったということになりかねない。地元の期待を裏切らないでほしい」と存続を強く求めた。
(『福井新聞』)
その他、最近のニュースでは、福島第二原発で侵入検知器の警報機能を鳴らないように設定していた問題、同じ福島の福島第1原発の凍土壁の不具合、西日本では愛媛県伊方原発や佐賀県の玄海原発、福井県の高浜原発再稼働の件、九州電力が鹿児島県の三反園知事による川内原発の即時停止要請を拒否したこと、そして「制御棒処分のために国が10万年管理」などなど……。よくもまあ、と思います。
関係自治体の皆さんには、最初に引用した福島のような状態になる覚悟はできていますか? と問いたいですね。関係自治体だけでなく、国としても、です。日本に於ける福島の現状が、将来的には世界に於ける日本という構図に成り代わるような気がしてなりません。
登山の世界では、「登る勇気より引き返す勇気」という言葉が教訓として語られています。期待云々よりも、未来へ禍根を残さない英断が求められているのではないでしょうか。
【折々の歌と句・光太郎】
秋風や咫尺に迫る敵の矛 明治43年(1910) 光太郎28歳
敵は「いかにも敵」という顔をしていない場合があるので厄介です。「獅子身中の虫」などというのもいますし……。