当会の祖・草野心平に関し、出身地・福島の地方紙『福島民友』さんで、先月から一昨日にかけ、3回にわたって大きく取り上げて下さっています。2回に分けてご紹介します。 自然豊かな福島県では昔から、叙情に富んだ多彩な物語が紡がれてきた。表現の形も、詩歌や芸能、映画や音楽、アニメなどと多様化し、フィールドを広げている。今、世の中では『新しい生活様式』が求められ、時代は大きな曲がり角にある。しかし、どんな時代にも古びることのないドラマが、私たちの身近に息づいている。福島県の魅力に満ちた物語の舞台を訪ねる。
アクセス 川内村へは車なら磐越道・小野インターチェンジ(IC)か船引三春ICから約40分、常磐道・常磐富岡ICから約20分。JR利用の場合は磐越東線の船引、夏井、小野新町、神俣各駅、常磐線・富岡駅それぞれの近くから川内方面への路線バスが出ている。
当方も何度か訪れさせていただいた、川内村での心平別邸・天山文庫が取り上げられています。生前の心平が愛し、現在は心平を偲ぶよすがとなっている「天山祭」会場ともなっています。設立準備委員には16名の錚々たる顔ぶれが名を連ねました。井上靖、金子光晴、唐木順三、河上徹太郎、川端康成、小林勇、武田泰淳、谷川徹三、中野重治、西脇順三郎、古田晁、松方三郎、武者小路実篤、村野四郎、山本健吉、そして光太郎実弟の豊周。
喧噪とは無縁の、とてもいい場所です。コロナ禍収束・終息後、ぜひ足をお運び下さい。
第2回、3回の中編・後編は明日紹介します。
その前に、テレビ番組で川内村が取り上げられますので、そのご紹介を。NHK BS1 2020年8月6日(木)24時27分~24時55分=8月7日(金)0時27分~0時55分
豊かな水をたたえる福島。そこには、水を生かす暮らしがある。食べ物をおいしくする湧き水や開拓者によって守られてきた疎水、清流の里の幻の魚など福島の水の恵みを描く。
無数に流れる川に大きな湖や沼、そして豊富な雪解け水。福島は、水をたたえる地だ。そこには、水の恵みを生かす人々の暮らしがある。磐梯山麓の懐、数千年枯れたことがない湧水は食べ物をおいしくするという。また、郡山にはふるさとを築いた“命の水”を守り続ける開拓者の末えいたちがいる。そして、清流の里・川内村には、原発事故からふるさとのシンボルを守ろうと奮闘する男性がいた。福島の人々の水にまつわる物語を紡ぐ。
出演 語り・池津祥子 秋山美和さん(磐梯町) 渡辺秀朗さん(川内村) 武田幸夫さん(郡山市)

NHKさんの福島放送局制作の番組で(以前に智恵子の故郷・二本松の岳温泉も取り上げられました)、県内では既に7月17日(金)に放映されたとのこと。それによれば「ふるさとのシンボル」というのは、イワナだそうです。そう言えば、天山祭りの際に饗されるお昼の弁当には必ず付いています。
ぜひご覧下さい。
【折々のことば・光太郎】
どんな愉しみがあるかとの御質問ですが、あまりいろいろあつて返事に困ります。畑の栽培でも第一に挙げませう。天候や蟲や病気とたたかひながらいろんな蔬菜類を育て、研究するのがなんとも言へずたのしみです。毎日自然に足が畑の方へ出ます。あとは読書、山野の跋渉でもあげませう。
ふくしま物語のステージ 【草野心平の詩(上)】天山文庫「誕生祭」 命あふれる森を愛して
草野心平という詩人は、とらえどころがない、と思う。
カエルを詠(うた)った詩が多く、「カエルの詩人」と呼ばれる。出身地いわきの人々に言わせれば、詩「上小川村」(詩集『牡丹園』)などで故郷を詠った叙情の人であるかもしれない。
個人的には、男声合唱組曲となった詩集「富士山」の印象が強烈だ。叙情の中で、硬くドライな言葉がきらめく。
いずれにせよ、草野心平とその詩には親しみはあるが、実はあまり知らない。そんなことを考えながら阿武隈山地の東端にある山里、川内村へ向かった。
川内村は、心平が人生の後半で深く関わった土地だ。
心平の年譜では、彼が村を初めて訪れたのは1953(昭和28)年、50歳の年。モリアオガエルのすむ沼がある―という、村の僧侶からの手紙がきっかけだった。それから数年、心平が度々訪れ、村と詩人の仲は深まっていったらしい。そして63歳から85歳で亡くなる直前まで、毎年のように村を訪れ滞在した。この頻繁な来訪の契機となり、彼が村での住み家としたのが「天山文庫」だった。
なんだか詩人の草庵のようだが、どんな山奥にあるのだろう。そう思っていたら、村の中心部、農協が立つ交差点の近くで「かわうち草野心平記念館 天山文庫」の看板を見つけた。
向山という小山の緑の中に天山文庫はあった。その手前の草野心平資料館で、天山文庫管理人の志賀風夏さんに話を聞いた。志賀さんは地元出身の25歳。管理人3年目だが、母校の川内一小、川内中では心平作詞の校歌を歌い、天山文庫には遠足で来ていた。その地元っ子に「そもそも天山文庫って何ですか」とおずおずと尋ねた。
天山文庫は、心平から寄贈された書籍類を収蔵する図書施設「心平文庫」として村が計画し66年、現在地に完成した。その発端の逸話が愉快だ。
心平作詞の小学校歌が発表された60年、川内村は心平に名誉村民の称号を贈ることを決め、本人も「本当は断るが『名誉村民』は面白い」と承諾した。その翌年1月、村は1年目の褒賞として、村で焼いた木炭を東京・新宿の心平宅にトラックで届けた。心平も返礼に自宅に山積みにしていた蔵書の一部を贈り、木炭を積んできたトラックが本を載せ村へ帰った。
ただ、木炭は100俵あった。燃料の大量保管には法的規制があり、それ以前に置く場所がない。「心平さんは木炭を学校など方々に配ったり、大変だったらしく『もう木炭はやめてくれ』となりました。それで村も一生分の木炭を贈る経費で、本を収める仮称『心平文庫』の建設を決めたんです」と志賀さん。
村も心平も、少し滑稽だが粋だ。何より楽しそうだ。そう言うと志賀さんも「だから心平さんも、村に居着いたんでしょうね」と笑った。
酒宴引き継ぐ
資料館から坂道を上って行くと、青ガエルが足元を横切った。森にあふれる命を感じる。途中、酒樽(さかだる)を改造した二つの書庫を見学し、少し行くと木立の間に、かやぶき屋根が現れた。
天山文庫のそう大きくない建物は結構モダンだ。60年近く前の木造建築とは思えない清明さがある。玄関を入るとすぐに小さな図書室。2階には6畳の寝室があり、ふすまに「い、ろ、は」と書いた心平の筆字が残る。
1階の広々した居間からは、庭と森、山里の風景も見える。磨き込まれた板張りの床は、秋には紅葉を映すという。片隅の囲炉裏(いろり)と鉄瓶も気になる。志賀さんが「心平さんと村の人たちは、一緒にお酒を飲むことが多かったようです。地元のどぶろくや魚、山菜を持ち寄って」と話していた。この居間で心平は詩を書き、板画家の棟方志功ら友人らと語り合ったというが、当然酒盛りになったのだろう。
彼らの酒宴は、毎年7月16日の文庫の落成記念日前後に開かれる「天山祭り」によって引き継がれたようだ。心平没後も、池のある文庫の庭で村内外の人々が杯を酌み交わすという。その光景を想像すると、心平の詩「誕生祭」の一節と結び付いた。生命があふれ歓喜する光景だ。
〈飲めや歌へだ。ともうじやぼじやぼじやぼじやぼのひかりの渦。/泥鰌(どぢやう)はきらつとはねあがり。/無数無数の蛍はながれもつれあふ。〉(表記は岩波文庫版「草野心平詩集」による)
今年の天山祭りは、コロナ禍で中止になった。こんな時、心平なら、どんな詩を詠んだだろう。
川内村 浜通り中部に位置し、人口約2600人。平均標高456メートルで大部分を山林が占める。モリアオガエルの生息地平伏(へぶす)沼、サラサドウダンが咲く高塚高原、イワナの生息地千翁川などの名所が知られる。特産品はそば、凍(し)み餅、乾燥シイタケなど。イワナ料理などが楽しめる「いわなの郷」、温泉施設「かわうちの湯」がある。詳しくは川内村公式ホームページか同村観光協会(電話0240・38・2346)へ。
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草野心平 1903(明治36)年、石城郡上小川村(現いわき市小川町)で誕生。磐城中を4年で中退後、上京。18歳で中国・広州の嶺南大に入学し、在学中詩作を始める。戦前から昭和末期まで「第百階級」「定本 蛙」「マンモスの牙」、年1冊刊行した年次詩集など多数の詩集を残し、中原中也らと創刊した「歴程」など多くの同人誌を刊行した。84年いわき市名誉市民、87年文化勲章。88年没。
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かわうち草野心平記念館 天山文庫と草野心平資料館(阿武隈民芸館)の総称。観覧料は一般300円、学生250円、小中学生150円。月曜休館。問い合わせは同記念館(電話0240・38・2076)へ。
当方も何度か訪れさせていただいた、川内村での心平別邸・天山文庫が取り上げられています。生前の心平が愛し、現在は心平を偲ぶよすがとなっている「天山祭」会場ともなっています。設立準備委員には16名の錚々たる顔ぶれが名を連ねました。井上靖、金子光晴、唐木順三、河上徹太郎、川端康成、小林勇、武田泰淳、谷川徹三、中野重治、西脇順三郎、古田晁、松方三郎、武者小路実篤、村野四郎、山本健吉、そして光太郎実弟の豊周。
喧噪とは無縁の、とてもいい場所です。コロナ禍収束・終息後、ぜひ足をお運び下さい。
第2回、3回の中編・後編は明日紹介します。
その前に、テレビ番組で川内村が取り上げられますので、そのご紹介を。
東北推し!ココに福あり fMAP「#18 ふくしま“美し水”巡り」
豊かな水をたたえる福島。そこには、水を生かす暮らしがある。食べ物をおいしくする湧き水や開拓者によって守られてきた疎水、清流の里の幻の魚など福島の水の恵みを描く。
無数に流れる川に大きな湖や沼、そして豊富な雪解け水。福島は、水をたたえる地だ。そこには、水の恵みを生かす人々の暮らしがある。磐梯山麓の懐、数千年枯れたことがない湧水は食べ物をおいしくするという。また、郡山にはふるさとを築いた“命の水”を守り続ける開拓者の末えいたちがいる。そして、清流の里・川内村には、原発事故からふるさとのシンボルを守ろうと奮闘する男性がいた。福島の人々の水にまつわる物語を紡ぐ。
出演 語り・池津祥子 秋山美和さん(磐梯町) 渡辺秀朗さん(川内村) 武田幸夫さん(郡山市)

NHKさんの福島放送局制作の番組で(以前に智恵子の故郷・二本松の岳温泉も取り上げられました)、県内では既に7月17日(金)に放映されたとのこと。それによれば「ふるさとのシンボル」というのは、イワナだそうです。そう言えば、天山祭りの際に饗されるお昼の弁当には必ず付いています。
ぜひご覧下さい。
【折々のことば・光太郎】
どんな愉しみがあるかとの御質問ですが、あまりいろいろあつて返事に困ります。畑の栽培でも第一に挙げませう。天候や蟲や病気とたたかひながらいろんな蔬菜類を育て、研究するのがなんとも言へずたのしみです。毎日自然に足が畑の方へ出ます。あとは読書、山野の跋渉でもあげませう。
アンケート「近頃の私の愉しみ 葉書回答」全文
昭和23年(1948) 光太郎66歳
昭和23年(1948) 光太郎66歳
花巻郊外旧太田村の山小屋での生活です。
普段は都内で生活していた心平も、天山文庫を訪れた際には同じようなことを考えたのではないでしょうか。
普段は都内で生活していた心平も、天山文庫を訪れた際には同じようなことを考えたのではないでしょうか。