こんな企画展が開催中です。
東京での初の紙絵展で、この時から「切絵」「切紙絵」などと言われていた智恵子の作品が、光太郎の発案により「紙絵」の呼称で統一されることになりました。
夏目漱石の美術世界展
2013年5月14日(火)~7月7日 東京芸術大学 大学美術館
近代日本を代表する文豪、また国民作家として知られる夏目漱石(1867~1916)。この度の展覧会は、その漱石の美術世界に焦点をあてるものです。 漱石が日本美術やイギリス美術に造詣が深く、作品のなかにもしばしば言及されていることは多くの研究者が指摘するところですが、実際に関連する美術作品を展示して漱石がもっていたイメージを視覚的に読み解いていく機会はほとんどありませんでした。 この展覧会では、漱石の文学作品や美術批評に登場する画家、作品を可能なかぎり集めてみることを試みます。 私たちは、伊藤若冲、渡辺崋山、ターナー、ミレイ、青木繁、黒田清輝、横山大観といった古今東西の画家たちの作品を、漱石の眼を通して見直してみることになるでしょう。
また、漱石の美術世界は自身が好んで描いた南画山水にも表れています。 漢詩の優れた素養を背景に描かれた文字通りの文人画に、彼の理想の境地を探ります。 本展ではさらに、漱石の美術世界をその周辺へと広げ、親交のあった浅井忠、橋口五葉らの作品を紹介するとともに、彼らがかかわった漱石作品の装幀や挿絵なども紹介します。 当時流行したアール・ヌーヴォーが取り入れられたブックデザインは、デザイン史のうえでも見過ごせません。
漱石ファン待望の夢の展覧会が、今、現実のものとなります。
(チラシより)
過日このブログでご紹介した雑誌『芸術新潮』の今月号が、この企画展とリンクしています。
「序章 「吾輩」が見た漱石と美術」「第1 章 漱石文学と西洋美術」「第2 章 漱石文学と古美術」「第3 章 文学作品と美術 『草枕』『三四郎』『それから』『門』」「第4章 漱石と同時代美術」「第5 章 親交「」の画家たち」「第6 章 漱石自筆の作品」「第7 章 装幀と挿画」という筋立てで、古今東西のさまざまな作品が並んでいます。
光太郎とも縁の深かった作家の作品も数多く出品されています。荻原守衛、岡本一平、南薫造、岸田劉生、斎藤与里、石井柏亭などなど。光太郎の作品が出ていないのは残念です。
漱石は自作の中にさまざまな美術作品をモチーフとして効果的に使っていること、また、津田青楓ら同時代の画家と親交があったこと、そして橋口五葉による自作の装丁が非常にすばらしいこと、さらに「文展と芸術」という有名な美術批評を書いていることなど、美術にも造詣が深いというのが定評です。
絵画などの漱石自身の作品も残っています。しかしこちらは漱石の孫である夏目房之介氏によれば「相当にレベルが低いといわざるをえない」。『芸術新潮』ではむちゃくちゃな遠近法や、むやみに色を塗って破綻している点などを酷評しています。しかし、そこには孫としての暖かな眼差しもまぶしてありますが。
一昨日、NHKEテレで放映された「日曜美術館」も、「絵で読み解く夏目漱石」と題してこの企画展にリンクした内容でした。ちなみに同番組とセットで放映される「アートシーン」では、先月のこのブログでご紹介しました中村好文氏の「小屋においでよ!」展が紹介されました。こちら、明日、行ってくるつもりです。
ところで評論「文展と芸術」について、光太郎が承服できかねる旨を発言し、漱石に噛みつきました。今回の企画展でも、『芸術新潮』でも、「日曜美術館」でもその点に触れられていないのが残念でした。明日はその辺りを書いてみようと思っています。
【今日は何の日・光太郎】 6月4日
昭和26年(1951)の今日、銀座資生堂ギャラリーで「高村智恵子紙絵展覧会」が開幕しました。
東京での初の紙絵展で、この時から「切絵」「切紙絵」などと言われていた智恵子の作品が、光太郎の発案により「紙絵」の呼称で統一されることになりました。