半年経っていますので、「新刊」と言っていいものかどうか……。過日、都内に出た際に新刊書店で入手しました。
週刊朝日の人気連載(2017年11月〜2019年5月まで)だった「文豪の湯宿」を再編集して収録。夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、森鴎外ら文豪が宿泊した温泉宿を、当時のエピソードとともに見開きで紹介する。温泉ガイドとしての情報も満載なのでこれからの温泉シーズンにぴったり。
2019年11月30日 週刊朝日編集部編 朝日新聞出版 定価1,500円+税
週刊朝日の人気連載(2017年11月〜2019年5月まで)だった「文豪の湯宿」を再編集して収録。夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、森鴎外ら文豪が宿泊した温泉宿を、当時のエピソードとともに見開きで紹介する。温泉ガイドとしての情報も満載なのでこれからの温泉シーズンにぴったり。
目次
小林一茶 湯田中湯本(長野県・湯田中温泉)門弟が営む宿で酒をおねだり
森鷗外 緑霞山宿 藤井荘(長野県・山田温泉)購入を持ちかけて断られた宿
正岡子規 鷹泉閣 岩松旅館(宮城県・作並温泉)疲れ切ってたどり着いたら長階段の湯
国木田独歩 上会津屋(栃木県・塩原温泉)若き独歩が恋人と逃避行した宿
高浜虚子 ふなや(愛媛県・道後温泉)供されたステーキに馴染めなかった虚子
泉鏡花 まつさき(石川県・辰口温泉)愛する叔母に会うための宿
幸田露伴 満寿家(栃木県・塩原温泉)暑い夏を避け、生涯何度も訪れた定宿
夏目漱石 湯回廊 菊屋(静岡県・修善寺温泉)「修善寺の大患」大吐血の舞台
志賀直哉 三木屋(兵庫県・城崎温泉)列車事故の傷を癒やした城崎の宿
久米正雄 旅館 花屋(長野県・別所温泉)支払いを忘れて、仲間とともに放蕩
宇野浩二 聴泉閣 かめや(長野県・下諏訪温泉)思い焦がれた芸者に会うために通った宿
宇野浩二 聴泉閣 かめや(長野県・下諏訪温泉)思い焦がれた芸者に会うために通った宿
室生犀星 香嶽楼(新潟県・赤倉温泉)友・朔太郎と小競り合いした思い出
若山牧水 ゆじゅく金田屋(群馬県・湯宿温泉)鮎料理を“お代わり”して大いに飲食
田山花袋 依山楼 岩崎(鳥取県・三朝温泉)小声で歌って湯でリラックス
有島武郎 ゆとうや旅館(兵庫県・城崎温泉)心中の1カ月前に訪れた温泉場
吉川英治 越後屋旅館(長野県・角間温泉)全財産を投じて籠もった修業の地
葛西善蔵 湯元板屋(栃木県・奥日光湯元温泉)悲惨な生活から遁走した宿
川端康成 湯本館(静岡県・湯ヶ島温泉)10年間、ツケ払いで暮らした伊豆の宿
芥川龍之介 新井旅館(静岡県・修善寺温泉)風呂嫌いで有名な文人も喜んだ湯
武者小路実篤 いづみ荘(静岡県・伊豆長岡温泉)初めて絵を描いた記念の宿
谷崎潤一郎 陶泉 御所坊(兵庫県・有馬温泉)原稿料の前払いを求めた書簡の残る贅の宿
林芙美子 塵表閣本店(長野・上林温泉)子供を預けて執筆した疎開の宿
井伏鱒二 古湯坊源泉舘(山梨県・下部温泉)神経痛を養生した釣りの基点
直木三十五 岸権旅館(群馬県・伊香保温泉)謎の戯れ歌を残した雨の伊香保旅
小林多喜二 福元館(神奈川県・七沢温泉)特高から身を隠した宿
コラム 文豪たちが残した書画
与謝野晶子 大丸旅館(大分県・長湯温泉)「旅かせぎ」で訪れた人気の炭酸泉
高村光太郎 柏屋旅館(栃木県・塩原温泉 塩の湯)智恵子と最後の2人旅をした宿
斎藤茂吉 わかまつや(山形県・蔵王温泉)書の“三無い”をすべて破った宿
坂口安吾 あさま苑(長野県・奈良原温泉)肺病の親友とともに長期滞在した秘湯
横光利一 瀧の屋(山形県・あつみ温泉)夫婦水入らずの“あて”が外れた宿
尾崎一雄 上高地温泉ホテル(長野県・上高地温泉)オフシーズンに格安で連泊
山岡荘八 和泉屋旅館(栃木県・塩原温泉郷福渡温泉)宿主と義兄弟の契りを交わした宿
石坂洋次郎 今井荘(静岡県・今井浜温泉)健康づくりの拠点にした宿
太宰治 旅館 明治(山梨県・湯村温泉)毎日必ず袴を着け執筆した宿
獅子文六 松坂屋本店(神奈川県・箱根芦之湯温泉)名作の“ネタ元”となった宿
佐藤春夫 佐久ホテル(長野県・旭湯温泉)帰京を勧められても断った疎開中の縁
火野葦平 葉隠館(熊本県・杖立温泉)“戦犯作家”の汚名を返上した復活の原点
高見順 仙郷楼(神奈川県・箱根仙石原温泉)画を描いて心身を癒やした箱根の宿
吉村昭 北温泉旅館(栃木県・北温泉)大病から生き延びた自分を見つめた宿
田宮虎彦 藤三旅館(岩手県・花巻温泉郷鉛温泉)スランプ脱出のきっかけをつくった宿
井上靖 白壁荘(静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉)命名の約束を果たせなかった故郷の宿
丹羽文雄 積善館(群馬県・四万温泉)同人仲間と楽しく騒いだ四万の夜
石川達三 強羅環翠楼(神奈川県・強羅温泉)親睦会で無邪気に遊んだ社会派作家
内田百閒 皆美館(島根県・松江しんじ湖温泉)“乗り鉄”がたどりついた宍道湖の名宿
山本周五郎 湯元不忘閣(宮城県・青根温泉)名作のヒントをつかんだ一本の木
新田次郎 旅館二階堂(福島県・微温湯温泉)名物の“ぬる湯”を沸かして入った
松本清張 ゑびす屋(京都府・木津温泉)『Dの複合』執筆のため2ヵ月過ごした宿
開高健 環湖荘(群馬県・丸沼温泉)掃除の従業員も断り籠もった宿
草野心平 神泉亭(福島県・高野鉱泉)いつまでも庭を眺めた「僕の部屋」
小林秀雄 みなとや旅館(長野県・下諏訪温泉)“先生”が何度も満室で断られた名宿
あとがき
版元の紹介文にあるとおり、『週刊朝日』さんで為されていた連載「文豪の湯宿」を再編集したものです。
光太郎の項は、同誌平成31年(2019)2月22日号に「高村光太郎・智恵子×栃木県・塩原温泉塩の湯 柏屋旅館」として載りました。塩原は顕在化した心の病がどんどん進行し、自殺未遂まで起こした智恵子を連れ、恢復への一縷の望みを託して東北から北関東で湯治旅行をした最後の投宿地です。
その他、光太郎以外の人物の項で、光太郎も泊まった宿が何ヶ所か。花巻の鉛温泉藤三旅館さん、四万温泉積善館さん、蔵王青根温泉・湯元不忘閣さんなど。
それから、光太郎と交流の深かった人物の項も充実。当会の祖・草野心平、光太郎の姉貴分・与謝野晶子、東京美術学校での「恩師」・森鷗外、『白樺』での盟友・有島武郎や武者小路実篤など。
このブログで『週刊朝日』さんの連載を紹介した際、「ぜひ単行本化していただきたいものですね。」と書いたのですが、単行本化されていました。ぜひお買い求め下さい。
【折々のことば・光太郎】
次には大正二年信州上高地にて相愛の女性と共に山岳写生に送りし一夏。
版元の紹介文にあるとおり、『週刊朝日』さんで為されていた連載「文豪の湯宿」を再編集したものです。
光太郎の項は、同誌平成31年(2019)2月22日号に「高村光太郎・智恵子×栃木県・塩原温泉塩の湯 柏屋旅館」として載りました。塩原は顕在化した心の病がどんどん進行し、自殺未遂まで起こした智恵子を連れ、恢復への一縷の望みを託して東北から北関東で湯治旅行をした最後の投宿地です。
その他、光太郎以外の人物の項で、光太郎も泊まった宿が何ヶ所か。花巻の鉛温泉藤三旅館さん、四万温泉積善館さん、蔵王青根温泉・湯元不忘閣さんなど。
それから、光太郎と交流の深かった人物の項も充実。当会の祖・草野心平、光太郎の姉貴分・与謝野晶子、東京美術学校での「恩師」・森鷗外、『白樺』での盟友・有島武郎や武者小路実篤など。
このブログで『週刊朝日』さんの連載を紹介した際、「ぜひ単行本化していただきたいものですね。」と書いたのですが、単行本化されていました。ぜひお買い求め下さい。
【折々のことば・光太郎】
次には大正二年信州上高地にて相愛の女性と共に山岳写生に送りし一夏。