まずは残念なお知らせから……。

過日、ご紹介しました富山県水墨美術館さんで5月22日(金)から開催予定だった「「画壇の三筆」熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」が、新型コロナの影響で中止となりました。

まあ、ある程度は予想していましたので、驚きはしませんでしたが、やはり残念です。美術館さんとしても断腸の思いだと存じます(「中止で当然だろう」と簡単に片付けないで下さい)。あらためて開催するかどうか、未定だとのことです。ぜひこの騒ぎが終息したのち、仕切り直しで開催していただきたいものです。

2021/3/26追記 「「画壇の三筆」熊谷守一・高村光太郎・中川一政の世界展」展は2021年10月8日(金)~11月28日(日)に、仕切り直して開催されることとなりました。

緊急事態宣言が全国対象となり、ほとんどの美術館さん、文学館さんなどが既に休館となっていたり、これからなったりということになるのでしょう。本当に早く、元に復してほしいものです。

そんな中、やはり休館中の花巻高村光太郎記念館さんで、女性職員の方々が中心となって作られたグッズをいただきました。

まず、「光太郎の食卓カレンダー」。A5サイズ(開くとA4サイズ)の冊子型壁掛けタイプです。今月から来年3月まで、つまりは令和2年度としてのカレンダーになっています。

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『花巻まち散歩マガジン Machicoco(マチココ)』さんに連載中の、「光太郎レシピ」で使われた写真を元に、巻末には簡略な解説も。

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それから、手作りの布製マスク。

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添えられたカードに引用されているのは、昭和20年(1945)8月10日の花巻空襲の際、自らの危険を顧みず、負傷者の看護に当たった当時の総合花巻病院の医師や看護師たちの奮闘をたたえ、終戦直後に行われたその表彰式で光太郎自らが朗読した「非常の時」の一節です。

   非常の時

 非常の時
 人安きをすてて人を救ふは難いかな。002
 非常の時 
 人危きを冒して人を護るは貴いかな。
 非常の時
 身の安きと危きと両つながら忘じて
 ただ為すべきを為すは美しいかな。
 非常の時
 人かくの如きを行ふに堪ふるは
 偏に非常ならざるもの内にありて
 人をしてかくの如きを行はしむるならざらんや。
 大なるかな、
 常時胸臆の裡にかくれたるもの。
 さかんなるかな、
 人心機微の間に潜みたるもの。
 其日爆撃と銃撃との数刻は004
 忽ち血と肉と骨との巷を現じて
 岩手花巻の町為めに傾く。
 病院の窓ことごとく破れ、
 銃丸飛んで病舎を貫く。
 この時従容として血と肉と骨とを運び
 この時自若として病める者を護るは
 神にあらざるわれらが隣人、
 場を守つて動ぜざる職員の諸士なり。
 神にあらずして神に近きは
 職責人をしておのれを忘れしむるなり。
 われこれをきいて襟を正し、
 人間時に清く、
 弱
ものき亦時に限りなく強きを思ひ、
 内にかくれたるものの高きを
 凝然としてただ仰ぎ見るなり。


今年はやはり中止となってしまいましたが、毎年5月15日に行われている花巻高村祭では、花巻高等看護学校さんの生徒さんが、この詩を必ず朗読なさっています。画像、上は花巻病院さんの古絵葉書、下は過去の高村祭です。

カードにある「3.11震災のとき、多くのボランティアの共感を呼びました」というのは存じませんでした。なるほど、そう言われてみればそういう内容ですね。そして、今、まさに最前線で新型コロナと闘われている医療関係の皆さんに、この詩を贈りたく存じます。

このカレンダーとマスク、5月14日(木)と翌日、盛岡と花巻で開催予定だった市民講座(講師は当方の予定でした)の際にセットで販売予定だったものだそうです。ところがやはり新型コロナのために講座は延期となり、品物が余ってしまっているとのこと。花巻市内で必要な方に譲られているそうですが。

そこで、「当会ブログサイトやフェイスブックで呼び掛けますから、ネット販売的にやってみてはいかがですか」と提案しました。そこで協議していただいたところ、マスクそのものはネット販売だとトラブルの元になるかもしれないということで、「カレンダーのみ」、「カレンダーとマスク型紙・素材(手ぬぐい)のセット」で注文を受けることにしたそうです。

詳細は以下の通りになります。

光太郎の食卓カレンダー 001

1冊 500円(送料込み)
2冊以上6冊まで 一冊分300円+送料180円
  (例:4冊……300円×4+180円=1,380円)

代金は郵便切手可



 

カレンダーとマスク型紙・素材(手ぬぐい)のセット

1セット 1,500円(送料込み) 手ぬぐい1枚からマスク4枚制作可 代金は郵便切手可

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申し込み方法

 品名、数量、送付先郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記の上、代金(郵便切手可)を以下まで。

 〒025-0037 岩手県花巻市太田3-85-1 花巻高村光太郎記念館内 記念館物販担当 井形様宛

申し込み期限
 2020年5月15日(金)まで または、カレンダー、手ぬぐいの在庫(各100)がなくなり次第終了します。


お問合せ先 Eメールアドレス
 
kotarocafe30@gmail.com     花巻高村光太郎記念館内 井形様  まで


ふるって(ふるわなくても結構ですが(笑))お申し込み下さい。


【折々のことば・光太郎】

然し、光に面してゐる人のみが光を求めてゐる人達だと断言することはいけない。社会の闇の面に対し、それを正視しつゝ苦しんでゐる人達も光を求め、闇を貫いて光を求めてゐるのだと云ふことは忘れてはならない。

アンケート「闇を貫く光」より 昭和12年(1937) 光太郎55歳

この後の部分には、「真つ暗な不遇の境遇の真中で胸の中の小さな光を消されまいと、雄々しく闘つてゐる者もゐる」という一節もあります。

新型コロナ、最前線で身を削って闘われている医療関係の皆さん、休業や自粛で収入が激減し不安を抱える皆さん、休みたくても休めず仕事を続けるしかない皆さん、そして罹患して重症となり苦しい思いをされている皆さん、それを支える家族や周りの皆さん、あきらめることなく、闘いましょう。

最後に光太郎はこう結んでいます。「要は「光」への信仰を失はなければ、如何なる闇に向ふとも、否向ふ程、その人の光は浄く明るく輝くのだと思ふ。