昨日は都内に出て、書道展を2つハシゴいたしました。レポートします。

まずは、銀座の東京銀座画廊美術館さんで開催中の「東京書作展2020 選抜作家展」。昨秋、第64回高村光太郎研究会でご発表なさった、書家の菊地雪渓氏からご案内を頂きまして、参じました。

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菊地氏、一昨年の第38回日本教育書道藝術院同人書作展では「智恵子抄」の詩句を書かれた作品で最優秀にあたる「会長賞」を受賞、昨年の第41回東京書作展では、大賞にあたる内閣総理大臣賞を受賞なさいました(そちらの作は光太郎ではなく白居易でしたが)。

今回は、杜甫の漢詩でした。

枯淡の味わいといいますか、実にいいですね。

他に、光太郎詩「道程」(大正3年=1914、雑誌『美の廃墟』に発表された際の102行あった原型から抜粋)を書かれた方がいらっしゃり、ありがたく存じました。


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こちら、会期は本日までです。

続いて、新宿へ。目指すは小田急百貨店さん。

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こちらでは、本館10階の美術画廊・アートサロンさんで「幕末・明治 偉人の書展」を開催中。

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光太郎の書も1点、出ています。現物は撮影不可でしたが、入り口のポスターから撮ったものがこちら。

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小さめの色紙で、短歌「海にして太古の民のおどろきをわれふたたびす大空のもと」が揮毫されています。短歌自体は明治39年(1906)、留学のため横浜港を出航したカナダ太平洋汽船の貨客船・アセニアンの船上で詠んだものですが、筆跡の感じからして、昭和戦前の揮毫ではないかと思われました。先日も書きましたが、光太郎、この短歌を書いてくれと求められることが多かったそうで、かなり後になっても作例が確認できます。

ちなみにこの展覧会、即売会も兼ねており、こちらは約50万円。まぁ、妥当な価格ですね。

他に、光太郎の師・与謝野晶子や、光太郎と論争もした夏目漱石などの書も。興味深く拝見しました。

こちらは18日(火)までの開催です。ぜひ足をお運びください。


【折々のことば・光太郎】

一々認識する事も出来ない、無数の原因から出来上つた自己性情の傾き、自己内心の要求、そお原始的な根源に立つてこそ、人の社会行動は確実な意味を持つて来る。
散文「天」より 昭和3年(1928) 光太郎46歳

題名の「天」に関しては、同じ文章の冒頭で「人間社会の歴史を貫く、超個人的な、社会そのものゝ数理的必然性」と定義しています。

上記短歌では「太古」と言い、ここでは「原始的」と言い、光太郎、どうも光太郎、自らを含む人間はそのDNAレベルで「なるようになる」ようにプログラミングされている、的な考えも持っていたようです。

先頃亡くなった当会顧問であらせられた北川太一先生は、この文章を「戦争期から戦後に至るその行動を解き明かす、一つの鍵が隠されているように思われる」としていました。