光太郎第二の故郷ともいうべき岩手花巻から、企画展示の情報です。 

令和元年度共同企画展 ぐるっと花巻再発見!~イーハトーブの先人たち~ 「光太郎からの手紙」

期 日 : 2019年12月7日(土)~2020年1月26日(日)
会 場 : 高村光太郎記念館 岩手県花巻市太田第3地割85番地1
時 間 : 午前8時30分から午後4時30分まで
料 金 : 一般 350円(300円) 小中学生 150円(100円)
      高等学校生徒及び学生 250円(200円) ( )は20名以上の団体
休館日 : 12月28日~1月3日

市内の文化施設である、花巻新渡戸記念館、萬鉄五郎記念美術館、花巻市総合文化財センター、花巻市博物館、高村光太郎記念館の5館が連携し、統一テーマにより同一時期に企画展を開催します。

光太郎が差し出した手紙を通じて太田村在住当時の様子、創作活動に関わる光太郎周辺の人々との関わり合いをたどります。

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他館開催内容

花巻新渡戸記念館 テーマ「島善鄰~生誕130年~」
「リンゴの神様」と言われリンゴ研究の第一人者。後に、北海道大学長となった島善鄰について紹介します。

萬鉄五郎記念美術館 テーマ「阿部芳太郎展」
宮沢賢治の詩集『春と修羅』の外箱装丁に携わり、彼が推し進めた農民劇の背景画を担当した花巻の画家として知られています。賢治との交友はもとより萬鉄五郎と交流し、同地域の美術運動をけん引し続けました。今展は、阿部芳太郎の画業を紹介するとともに、賢治や萬との関わりにも光を当てていきます。

花巻市総合文化財センター テーマ「ぶどう作りにかけた人々 ―北上山地はボルドーに似たり―」
昭和22・23年に襲ったカスリン・アイオン台風被害は、現在のぶどう作りのきっかけとなりました。その取り組みに関わった人々やぶどう、ワイン作りの歩みについて紹介します。

花巻市博物館 テーマ「松川滋安と揆奮場」
文武の藩学「揆奮場」を設立するため奔走した、松川滋安。苦難を乗り越えたその生涯を明らかにします。

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関連行事

ぐるっと歩こう!スタンプラリー
共同企画展の会期中、開催館5館のうち3館のスタンプを集めた人に記念品を差し上げます。さらに、開催館5館全てと協賛館1館のスタンプを集めた人に、追加で記念品を差し上げますので、この機会に足を運んでみませんか。

ぐるっと花巻再発見ツアー
企画展開催館を一度にまわれるバスツアーを開催します。無料で参加できますので、ぜひお申し込みください。
 1回目:2019年12月12日(木) 午前9時から午後3時10分
 2回目:2020年1月9日(木)  午前9時から午後3時10分


花巻市内5つの文化施設で「ぐるっと花巻再発見!~イーハトーブの先人たち~」という統一テーマの元に行われる共同企画展。高村光太郎記念館さんが参加するのは今年で3回目となります。一昨年が「高村光太郎 書の世界」、昨年は「光太郎の食卓」でした。

で、今年は「光太郎の手紙」。同館所蔵の光太郎書簡の展示になります。書簡類は、内容もさることながら、光太郎の味わい深い文字も魅力の一つです。リスト等まだ送られてきてませんので、具体的にどういう手紙が展示されるか不明ですが、わかり次第ご紹介します。ただ、先頃報じられた神奈川の女性から寄贈を受けたハガキは出ると思われます。


また、当方の把握している限り、総合文化財センターさんの展示で、光太郎がらみの展示品が出ます。

詩「開拓に寄す」(昭和25年=1950)の、光太郎自筆草稿を印刷したものです。

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同年、盛岡で開催された岩手県開拓5周年記念の開拓祭で配付されたもの。平成21年(2009)頃、テレビ東京系の「開運!なんでも鑑定団」に、これ(または昭和30年=1955作の「開拓十周年」を同じように印刷したものだったかもしれません)が出ました。鑑定依頼人(亡父の遺品、的な感じだったと思います)は直筆だと思っていたようですが、印刷ということで1万円くらいの鑑定結果だったと記憶しております。ただ、印刷ではありますが、現存数もそう多くなく、貴重なものではあります。当方、入手したいと思いつつ果たせていません。

ぜひ足をお運び下さい。


【折々のことば・光太郎】

一億の生活そのものが生きた詩である。

散文「戦争と詩」より 昭和18年(1943) 光太郎61歳

それはそうなのでしょう。そうなのでしょうが、この後に続く一文はいただけません。曰く「一切の些事はすべて大義につらなり、一切の心事はすべて捨身の道に還元せられる。」捨て身の覚悟で聖戦完遂にのぞむべし、ということですね。

また、この後の部分にはこんな一節も。「皇国の悠久に信憑し、後続の世代に限りなき信頼をよせて、最後にのぞんで心安らかに、大君をたたへまつる将兵の精神の如き、まつたく人間心の究極のまことである。このまことを措いて詩を何処に求めよう。」

同じ文章で「一億の生活そのものが詩である」といいながら、将兵たちの「このまことを措いて詩を何処に求めよう」。矛盾しています。或いはすべての日本人が前線の将兵の如き心構えをもって事に当たれ(いわば「国民皆兵」)ということでしょうか。

今年ももうすぐ12月8日、太平洋戦争開戦の日となります。毎年のように自称“愛国者”が光太郎の翼賛詩をネットで紹介し、「これぞ大和魂の顕現」とありがたがる憂鬱な時期です。