昨日からのつながりで、まず、新聞各紙に載ったコラム等から。
最初は、11月10日(日)、『産経新聞』さんに載ったイラストレーターのみうらじゅん氏の連載コラム「収集癖と発表癖」。サブタイトルが「菊人形 恐怖乗り越え仲間入り」。
みうら氏といえば、その仏像愛でも有名で、今年、開眼100周年を迎えた光太郎の父・光雲とその高弟・米原雲海による信州善光寺さんの仁王像等をめぐる「善光寺サミット」でも講師を務められました。
長いので全文は引用しませんが、幼児期から最近までの、菊人形を巡るみうら氏の体験等がユーモラスに語られています。
京都ご出身のみうら氏、幼稚園に通われていた頃、お母様たちに連れられて、初めて見た菊人形展で、リアルなその人形に恐怖を覚え、トラウマとなったそうです。なるほど、小さい子供にとっては恐ろしく見えるかもしれません。
しかし、長じて、「トラウマを再調査したくなって」、各地の菊人形展を積極的に見て歩いたそうです。
角川映画『犬神家の一族』で菊人形が生首と変わるシーンを観(み)た時、原作者の横溝正史もたぶん幼い頃、僕と同じような体験をしたに違いないと思った。
以来、トラウマを再調査したくなって、大阪の遊園地、ひらかたパークの『ひらかた大菊人形展』(現在は終了)や、福島県の『二本松の菊人形』の会場に足を運んだ。こんなカンジである(写真❷)。
写真❸は、二本松の菊人形による『智恵子抄』の一幕。何とストーリー仕立てで、智恵子と夫である高村光太郎(当然、ご両人は体中に菊の花を差し、グラム・ロック・テイストで)舞台から迫(せ)り上がってくるという仕掛けだ。僕の驚きは恐怖からそのエンターテインメント性に移行し、釘付(くぎづ)けとなった。
そして、“いつか僕も菊人形の仲間入りをしてみたい”とまで思ったのだが、NHK大河ドラマの出演経験もなく、まして高村光太郎のような偉人でもない僕にとってそんなチャンスは訪れるはずもない。
しかし、昨年、ご自身のイベント会場にご自身の菊人形を飾られたとのこと。素晴らしい「菊人形愛」です(笑)。
ちなみにみうら氏がご覧になった二本松の光太郎智恵子、平成6年(1994)のようです。二本松の菊人形、現在開催中ですが、最近は光太郎智恵子人形が出なくなってしまいましたので、このブログではご紹介していません。ぜひ復活させてほしいものです。
平成26年(2014)の光太郎智恵子。
翌平成27年。この年は智恵子のみでした。
続いて、11月12日(火)の『読売新聞』さん。「時代の証言者」という連載で、サブタイトルが「令和の心 万葉の旅 中西進19 比較文学 広がる視野」。新元号「令和」の考案者であらせられる国際日本文化研究センター名誉教授の中西進氏へのインタビューです。
これも長いので全文は引用しませんで、光太郎に関わる箇所のみ。
そもそも日本文学とか中国文学とか生物学、天文学というのは、人間が勝手につくったジャンルで、古代の人は、漢籍どころか、中東の影響も受けながら、日々、自然を見つめ、天を眺め、生命の歌を歌っている。それをしっかり受け止めるには、広く世界のことを見つめなければならないと思います。
・春の苑(その)紅(くれなゐ)にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女(をとめ)
これは万葉集を編纂(へんさん)した大伴家持(やかもち)の代表歌ですが、この歌は、聖書の「アダムとイブ」や中国の唐代に盛行した樹下美人図にも通じるところがあります。
《樹下に立つ女性を描く樹下美人図は、古代アジアでは広く行われ、唐代に流行した》
現代では高村光太郎の詩「樹下の二人」にもつながります。このように古典の息吹を現代に伝えるには、幅広い目配りが大切です。
なるほど。
中西氏、ご専攻は比較文学ですので、まさにこういったお考えなのでしょう。言わずもがなですが、「樹下の二人」(大正12年=1923)は「あれが阿多多羅山/あの光るのが阿武隈川」のリフレインで有名な、智恵子の故郷・二本松を舞台とした詩です。
もう1件、同日の『毎日新聞』さん。
デジタル版の記事は、もう少し長い内容でした。そして結びが「「時代の先端は福島のほんとの価値に気づいています」と左今さんが言った。 福島の名峰、安達太良(あだたら)山(1700メートル)の上に広がる美しい空を「 ほんとの空」と表現した詩人・高村光太郎の妻智恵子の言葉を想起させた。」
これも「なるほど」と思わせられました。
続いて、安達太良山系のテレビ放送もご紹介しておきます。
安達太良山。「令和」改元に伴って、『万葉集』という強力なライバルが出現してしまい(笑)、「『智恵子抄』に謳われた山」という枕詞が使われなくなってきましたが、「ほんとの空」的な紹介もしていただきたいものです。
それから、地上波テレビ朝日さんでは、安達太良山、智恵子の生家等でロケが行われた、伊東四朗さん、羽田美智子さん主演の「おかしな刑事~居眠り刑事とエリート警視の父娘捜査 東京タワーは見ていた!消えた少女の秘密・血痕が描く謎のルート!」の再放送があります。11/18(月)13:59~15:53です。
ぜひご覧下さい。
【折々のことば・光太郎】
一般に仏像といへば、殆ど金ピカなるものであるが、清浄な白木の仏像の製作を亡父は思ひ立つたのである。
最初は、11月10日(日)、『産経新聞』さんに載ったイラストレーターのみうらじゅん氏の連載コラム「収集癖と発表癖」。サブタイトルが「菊人形 恐怖乗り越え仲間入り」。
みうら氏といえば、その仏像愛でも有名で、今年、開眼100周年を迎えた光太郎の父・光雲とその高弟・米原雲海による信州善光寺さんの仁王像等をめぐる「善光寺サミット」でも講師を務められました。
長いので全文は引用しませんが、幼児期から最近までの、菊人形を巡るみうら氏の体験等がユーモラスに語られています。
京都ご出身のみうら氏、幼稚園に通われていた頃、お母様たちに連れられて、初めて見た菊人形展で、リアルなその人形に恐怖を覚え、トラウマとなったそうです。なるほど、小さい子供にとっては恐ろしく見えるかもしれません。
しかし、長じて、「トラウマを再調査したくなって」、各地の菊人形展を積極的に見て歩いたそうです。
角川映画『犬神家の一族』で菊人形が生首と変わるシーンを観(み)た時、原作者の横溝正史もたぶん幼い頃、僕と同じような体験をしたに違いないと思った。
以来、トラウマを再調査したくなって、大阪の遊園地、ひらかたパークの『ひらかた大菊人形展』(現在は終了)や、福島県の『二本松の菊人形』の会場に足を運んだ。こんなカンジである(写真❷)。
写真❸は、二本松の菊人形による『智恵子抄』の一幕。何とストーリー仕立てで、智恵子と夫である高村光太郎(当然、ご両人は体中に菊の花を差し、グラム・ロック・テイストで)舞台から迫(せ)り上がってくるという仕掛けだ。僕の驚きは恐怖からそのエンターテインメント性に移行し、釘付(くぎづ)けとなった。
そして、“いつか僕も菊人形の仲間入りをしてみたい”とまで思ったのだが、NHK大河ドラマの出演経験もなく、まして高村光太郎のような偉人でもない僕にとってそんなチャンスは訪れるはずもない。
しかし、昨年、ご自身のイベント会場にご自身の菊人形を飾られたとのこと。素晴らしい「菊人形愛」です(笑)。
ちなみにみうら氏がご覧になった二本松の光太郎智恵子、平成6年(1994)のようです。二本松の菊人形、現在開催中ですが、最近は光太郎智恵子人形が出なくなってしまいましたので、このブログではご紹介していません。ぜひ復活させてほしいものです。
平成26年(2014)の光太郎智恵子。
翌平成27年。この年は智恵子のみでした。
続いて、11月12日(火)の『読売新聞』さん。「時代の証言者」という連載で、サブタイトルが「令和の心 万葉の旅 中西進19 比較文学 広がる視野」。新元号「令和」の考案者であらせられる国際日本文化研究センター名誉教授の中西進氏へのインタビューです。
これも長いので全文は引用しませんで、光太郎に関わる箇所のみ。
そもそも日本文学とか中国文学とか生物学、天文学というのは、人間が勝手につくったジャンルで、古代の人は、漢籍どころか、中東の影響も受けながら、日々、自然を見つめ、天を眺め、生命の歌を歌っている。それをしっかり受け止めるには、広く世界のことを見つめなければならないと思います。
・春の苑(その)紅(くれなゐ)にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女(をとめ)
これは万葉集を編纂(へんさん)した大伴家持(やかもち)の代表歌ですが、この歌は、聖書の「アダムとイブ」や中国の唐代に盛行した樹下美人図にも通じるところがあります。
《樹下に立つ女性を描く樹下美人図は、古代アジアでは広く行われ、唐代に流行した》
現代では高村光太郎の詩「樹下の二人」にもつながります。このように古典の息吹を現代に伝えるには、幅広い目配りが大切です。
なるほど。
中西氏、ご専攻は比較文学ですので、まさにこういったお考えなのでしょう。言わずもがなですが、「樹下の二人」(大正12年=1923)は「あれが阿多多羅山/あの光るのが阿武隈川」のリフレインで有名な、智恵子の故郷・二本松を舞台とした詩です。
もう1件、同日の『毎日新聞』さん。
デジタル版の記事は、もう少し長い内容でした。そして結びが「「時代の先端は福島のほんとの価値に気づいています」と左今さんが言った。 福島の名峰、安達太良(あだたら)山(1700メートル)の上に広がる美しい空を「 ほんとの空」と表現した詩人・高村光太郎の妻智恵子の言葉を想起させた。」
これも「なるほど」と思わせられました。
続いて、安達太良山系のテレビ放送もご紹介しておきます。
にっぽんトレッキング100「満喫!紅葉ワンダーランド~安達太良山&磐梯山~」
NHK BSプレミアム 2019年11月20日(水) 21時00分~22時00分
今回の舞台は福島を代表する安達太良山と磐梯山。紅葉の名山としても知られる2つの山で秋を満喫!水と火山が生んだ絶景が錦秋の山々に彩られる様はまさにワンダーランド!
古くは万葉集にも歌われた安達太良山。いまが紅葉の真っ盛り。美しい渓谷沿いを歩けば、滝と紅葉との見事なコラボレーションが!歩いてしかいけない温泉の山小屋に泊り、絶景の稜線を堪能する。一方、300もの湖沼群が作り出す絶景が魅力の裏磐梯。神秘的な沼と紅葉がこの時期ならではの景観を生み出している。さらに磐梯山に登れば、火山が生み出す絶景の数々に遭遇!秋真っ盛り、火山と水と錦秋のトレッキングを満喫!
出演 大杉亜依里 一双麻希 語り渡部紗弓 大嶋貴志
安達太良山。「令和」改元に伴って、『万葉集』という強力なライバルが出現してしまい(笑)、「『智恵子抄』に謳われた山」という枕詞が使われなくなってきましたが、「ほんとの空」的な紹介もしていただきたいものです。
それから、地上波テレビ朝日さんでは、安達太良山、智恵子の生家等でロケが行われた、伊東四朗さん、羽田美智子さん主演の「おかしな刑事~居眠り刑事とエリート警視の父娘捜査 東京タワーは見ていた!消えた少女の秘密・血痕が描く謎のルート!」の再放送があります。11/18(月)13:59~15:53です。
ぜひご覧下さい。
【折々のことば・光太郎】
一般に仏像といへば、殆ど金ピカなるものであるが、清浄な白木の仏像の製作を亡父は思ひ立つたのである。
散文「父・光雲作の仏像」より 昭和11年(1936) 光太郎54歳
彩色を施さない白木の仏像。確かに寺院のご本尊などにはありませんね。古仏で彩色が剥げ、白木のように見えるものも、元々は極彩色だったわけで。