11月7日(木)、ぽっと時間が出来ましたので、群馬県に行っておりました。


前橋市の前橋文学館さん、高崎市の群馬県立土屋文明記念文学館さんをハシゴ。現在、両館で共同企画展「萩原恭次郎生誕120年記念展」を開催中です。

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両館のフライヤーを並べると、一枚につながるというなかなかのアイディアです。

萩原恭次郎は、明治32年(1899)、群馬県勢多郡南橘村(現・前橋市)生まれの詩人。萩原朔太郎とは血縁は無いそうですが、10代の頃から朔太郎の元に出入りし、影響を受けていました。

筑摩書房さん刊行の『高村光太郎全集』には恭次郎の名は出て来ませんが、『全集』完結後に見つけたアンケート「上州とし聞けば思ひ出すもの、事、人物」(『上州詩人』第17号 昭和10年=1935)に、その名が記されていました。

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曰く「上州と聞けば赤城山 高橋成重、萩原恭次郎」。「高橋成重」は「高橋成直」の誤植と思われます。「高橋成直」は、前橋出身の詩人・高橋元吉のペンネームです。

「上州とし聞けば」の問いに、朔太郎や山村暮鳥の名をあげず、恭次郎の名を出している光太郎。あまり深い交流はなかったものの、作品から受けるインパクトが余程強かったのではないかと思われます。ちなみに光太郎と恭次郎、同じ雑誌やアンソロジーで、共に作品が掲載されているというケースが結構ありました。

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そんなわけで、群馬の二館をハシゴした次第です。

まず向かったのは、前橋文学館さん。こちらに伺うのは初めてでした。

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こちらでの展示に関しては、以下の通り。

萩原恭次郎生誕120年記念展「何物も無し!進むのみ!」

期  日 : 2019年11月2日(土)~2020年1月26日(日)
会  場 : 前橋文学館 群馬県前橋市千代田町三丁目12-10
時  間 : 9:00~17:00
休館日 : 水曜日 年末年始(12/29~1/3)

料  金 : 400円
      11月9日(土) 12月7日(土) 1月9日(木) 1月11日(土)は無料


多くの近代詩人を輩出してきた前橋。その中にあって、大正末期から昭和初期にかけて、きわめて先鋭的な活動を展開した詩人・萩原恭次郎――。
初期の抒情詩を経て、未来派、ダダイズム、構成主義といった前衛芸術の波に身を投じ、1925(大正14)年には、日本におけるアヴァンギャルド芸術運動の記念碑的詩集『死刑宣告』を刊行。アナキズム、農民詩へとスタイルを変え、美術や音楽、舞踊、演劇など、他ジャンルとの往還的な活動を繰り広げ、39歳で早逝した詩人は、常に時代の先端を疾走し続けました。
本展では、生誕120年にあたって、その前衛性や革新性を中心に、萩原恭次郎の詩作品と活動の軌跡を紹介します。

 
また、萩原恭次郎生誕120年記念展は群馬県立土屋文明記念文学館においても開催されます。
コラボ企画も複数ありますので、是非両館に足をお運びください!


[コラボ企画]
群馬県立土屋文明記念文学館×前橋文学館両館の展示をご覧いただいた方に、『月に吠えらんねえ』オリジナルグッズを差し上げます。
※両館の観覧券の半券を、どちらかの館の受付にご提示ください。
他にも様々な連動企画を予定しています。お楽しみに!


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関連行事

学芸員による展示解説
2019年11月9日(土)、12月7日(土)、2020年1月11日(土)
*各日とも13時00分〜14時00分

詩集『死刑宣告』を踊る
期 間 : 2019年11月16日(土)
会 場 : 前橋文学館 3階ホール
内 容 :
舞踏家・奥山ばらばさんが萩原恭次郎の詩集『死刑宣告』をイメージした舞踊を群馬交響楽団・片倉宏樹さんのコントラバスに合わせて、オリジナルの振付で踊ります。公演後は舞踊評論家・鈴木晶さんと萩原朔美館長も交え、萩原恭次郎と舞踊の関係性を紐解くアフタートークを行います。
〈出演〉
舞踊 奥山ばらば(舞踏家)
コントラバス演奏 片倉宏樹(群馬交響楽団)
アフタートーク 鈴木 晶(舞踊評論家)×奥山ばらば×萩原朔美(前橋文学館館長)

 
「孤児の処置」(村山知義作)リーディングシアターVol.10
期 間 : 2019年12月14日(土)
会 場 : 前橋文学館 3階ホール
内 容 :
創作上で互いに深く関係しあっていた村山知義と萩原恭次郎。恭次郎の第一詩集『死刑宣告』には前衛的な文芸美術雑誌「マヴォ」を主宰した村山らの写真が挿入され、日本近代詩に視覚的な変革をもたらした作品として高い評価を得ました。また、村山が手掛けた戯曲作品「孤児の処置」の中には、登場人物が「最近の詩人の詩」として恭次郎の詩「何物も無し!進むのみ!=小さき行進の曲=」を絶叫するシーンがあります。この作品に荒井正人さんが演出を加え、オリジナルリーディングシアターとして上演いたします。
〈演出〉荒井正人
〈音楽〉荒木聡志
〈出演〉手島実優、萩原朔美(前橋文学館館長)ほか 

アフタートーク
やなぎみわ(美術作家・演出家)×荒井正人(演出家)×萩原朔美



こちらは恭次郎遺稿、遺品、作品掲載誌などの展示が中心でした。先ほど、「光太郎と恭次郎、同じ雑誌やアンソロジーで、共に作品が掲載されているというケースが結構ありました」と書きましたが、この展示を見てそう感じた次第です。

また、同館、4階まであり、4階では萩原朔太郎を主人公のイメージとし、光太郎も登場する、清家雪子さん作『月に吠えらんねえ』関連のミニ展示も行われていました。

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左上は窓に提げられたタペストリー。第4巻の表紙原画を元にしたもので、アッコさん(与謝野晶子)とチエコ(智恵子)があしらわれています。これは欲しい、と思いました。

右上は、ミュージアムショップで購入した缶バッヂ。コタローくん(光太郎)とチエコさん(ロボット)です。

さらに清家さん筆、物語の舞台である□街(しかくがい・詩歌句街)地図。


左下にコタローくんが。


続いて、高崎市の群馬県立土屋文明記念文学館さんへ。意外と近かったので、驚きました。

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こちらの展示情報です。

萩原恭次郎生誕120年記念展「詩とは?詩人とは?ー大正詩壇展望ー」

期  日 : 2019年10月5日(土)~12月15日(日)
会  場 : 
群馬県立土屋文明祈念文学館 群馬県高崎市保渡田町2000
時  間 : 9:30~17:00
休館日 : 火曜日
料  金 : 一般410円 大高生200円

詩人萩原恭次郎の生誕120年を記念した企画展です。
萩原恭次郎は、大正時代を通じて詩壇の中心に在った民衆詩派に対抗するように、詩集『死刑宣告』によって既存の詩を否定、芸術の改革を叫びました。
本展では、当時の時代背景に着目しながら、大正詩壇の様相及び日本近代詩の変遷に迫ります。草野心平、中原中也らの貴重資料も展示予定です。

同時期開催
前橋文学館 萩原恭次郎生誕120年記念展 「何事も無し!進むのみ!」
前橋文学館と連携し、両館で切り口を変えた展覧会を同時期に開催します。コラボレーションした企画を展開し、広報物も両館で一つのデザインになっています。両館観覧特典として、漫画「月に吠えらんねえ」オリジナルグッズも用意しています。


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関連行事

(1)記念講演会
各日14時00分~15時30分 定員150名 無料
• 11月17日(日) 「萩原恭次郎と大正という踊り場」
講師:佐々木幹郎氏(詩人)
• 11月30日(土) 「萩原恭次郎とダダ・未来派・アナーキズム―『死刑宣告』を中心に―」
講師:塚原史氏(早稲田大学名誉教授)
※電話または当館受付カウンターにて事前にお申し込みください。(申込順)
※定員に達しない場合は、当日も受け付けます。

(2)朗読イベント
• 11月4日(月・休) 14時00分~15時30分 定員150名 無料
「詩を声に翻訳する―歌い、叫び、演じ 萩原恭次郎、萩原朔太郎、宮沢賢治、草野心平、中原中也」
演出:萩原朔美(前橋文学館長) 出演:手島実優、磯干彩香(あかぎ団)ほか
※電話または当館受付カウンターにて事前にお申し込みください。(申込順)
※定員に達しない場合は、当日も受け付けます。

(3)展示解説
10月5日(土)、11月3日(日・祝)、12月7日(土) 各日 13時30分~(30分間程度)
※申込不要、参加には企画展観覧券が必要


こちらの展示は、恭次郎をひときわ大きく紹介しつつ、全体としては大正詩壇を概観するというコンセプトで、したがって、光太郎に関してもそれなりに大きく取り上げられていました。代表作「道程」(大正3年=1914)がパネルに大きくプリントされ、詩集『道程』(同)が展示されています。

見返しに「人間の心の影のあらゆる隅々を尊重しよう 高村光太郎」と、詩「カフエにて」(大正2年=1913)の一節の識語署名が入っています。

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ちなみに詩集『道程』は200部ほど自費出版で作られ、50部ほ011どにはこの手の識語署名が入っているとのこと。嘘かまことか、書店を通じてきちんと売れたのは七冊だけだったそうで、現在残っているものは、光太郎が友人知己に献呈したものがほとんどと考えられます(当方も一冊持っていますが)。それでも残本が多く、中身はそのままに奥付と外装を換えて何度か刊行されました。国会図書館さんのデジタルデータで公開されているものは、大正4年(1915)の改装本です。

その他、当会の祖・草野心平や、宮澤賢治、中原中也といった、光太郎と交流のあった人物についてもそれなりに大きく取り上げられており、こちらの図録は購入せざるを得ませんでした(笑)。

それから、こちらでもロビーに『月に吠えらんねえ』の展示。ちなみに両館の半券をコンプリートすると、オリジナルグッズがもらえるということで、いただいて参りました。群馬ということで、朔(朔太郎)、ブンメイ(土屋文明)、恭くん(恭次郎)があしらわれたコースターでした。

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プレミアがつくかも知れません(笑)。

というわけで、両館ハシゴ、皆様もぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

せめて一度日本に来て奈良あたりの古芸術を見て貰ひたかつた。そして今日翁を信ずる者のある事を知つて貰ひたかつた。

談話筆記「ロダン追悼談話」より 大正6年(1917) 光太郎35歳

ジャポニスムの影響もあったでしょうが、ロダンは日本贔屓でもありました。確かにロダンに白鳳、天平の仏像などを見せたらどう言っただろうか、興味深いところです。