11月2日(土)、盛岡を後に、レンタカーで一路、花巻へ。宿泊先である在来線花巻駅前のかほる旅館さんにチェックイン。かほる旅館さんは、先月の市民講座「高村光太郎記念館講座 詩と林檎のかおりを求めて 小山先生と訪ねる碑めぐり」の際に引き続いてです。初めて泊めていただいたのが20数年前、それ以来、何だかんだで10回近くはお世話になったでしょうか。

一泊素泊まり5,000円也。夕食は外で。

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徒歩数分の、いとう屋さんへ。戦後の光太郎日記にたびたび記述があり、当時の花巻町中心部で光太郎が最も多く利用したと思われる食堂です。建物はリニューアルされていますが。

腹を満たしたところでかほる旅館さんに帰り、入浴、就寝。翌朝は7時に出ました。

まずレンタカーを向けたのが、大沢温泉さん。

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出来ればこちらに泊まりたかったのですが、紅葉シーズンの土曜日で、頼もうとした時にはもう満室でした。しかし、意地でもここの露天風呂につかりたいと思い(笑)、日帰り入浴600円也で入湯。

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紅葉が見頃でした。


露天風呂だけが目的ではなく、メインの目的は、休業中の菊水館さんを使っての「昔ギャラリー茅(ちがや)」の拝見でした。

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花巻で宿泊予約する際、まず菊水館さんに当たるのが習慣で、年に数回泊めていただいていましたが、昨年8月の台風で、こちらにつながる道路の法面(のりめん)が崩れ、食材やらの物資搬入等が困難ということで、昨年9月いっぱいで一時休業となってしまいました。そこで、今年6月から「昔ギャラリー茅」として、いろいろな展示を行っています。

先月、花巻に伺った際には立ち寄る時間が無く、今回、お邪魔した次第です。

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建物は築170年近いもので、やはり戦後の光太郎日記に、光太郎もこちらに泊まったことが記されています。

展示も入れ替えがあるようで、現在は「大沢温泉×岩手大学 学生 コラボレーション企画 今昔の彼方へ」ということで、現代アート的な作品の展示もありました。

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上記は当方、一度泊まった部屋。ただ、よく泊めていただいていた梅の間の棟は使っていませんでした。

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こちらは菊水館さんの内湯・南部の湯の女風呂。当方、初めて足を踏み入れました(笑)。

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他に、宮澤賢治関連、南部のお殿様関連、昔の品々などの展示も。エンドレスで流れていたアナウンスでは光太郎関連も、という内容でしたが、今回は見あたりませんでした。

こちらは元の食堂。ここに泊めていただいた時には、朝夕、素朴ながらも美味しい料理に舌鼓を打っていたことを思い出し、涙が出そうになりました。

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ギャラリーとしての活用もいいと思いますし、皆様にもぜひ足をお運びいただきたいのですが、やはり宿泊施設として、一日も早い再開を希望します。


大沢温泉さんをあとに、花巻高村光太郎記念館さんへ。

先月、ダッシュでしか見られなかった企画展示「高村光太郎 書の世界」をゆっくり拝見。


額の裏に、当会の祖・草野心平の揮毫のある作品も。

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昨年の企画展示「光太郎と花巻電鉄」の際に、ジオラマ作家・石井彰英氏に制作をお願いしたジオラマは、常設展示室に移動していました。広い部屋に置くと、この大きさがさらに際だつなと思いました。

その後、事務室で今後の企画展等についての相談やらを受け、さらに隣接する光太郎が暮らした山小屋(高村山荘)へ。

こちらも紅葉がいい感じでした。最近はキツネが出没するそうです。

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内部の照明に手を入れたそうで、確かに以前より見やすくなっていました。

お土産に当方大好物のリンゴをたくさんいただき、大感激のうちにこちらを後にし、最後の目的地へ。市街桜町の、故・佐藤進氏邸です。

先月11日に亡くなられた進氏、父君の佐藤隆房は賢治の主治医で、賢治の父・政次郎ともども、昭和20年(1945)4月の空襲でアトリエ兼住居を失った光太郎を花巻に招き、その後も物心両面で光太郎を支えてくれた人物です。隆房は光太郎歿後に結成された花巻の財団法人高村記念会初代理事長となり、進氏ご自身も、光太郎と交流がおありで、父君が亡くなったあと、そのあとを継がれて永らく彼の地での光太郎顕彰に骨折って下さいました。

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こちらは高村山荘套屋内部に飾られている写真。前列中央が光太郎、後列右端が進氏、一人おいて父君です。

先月のご葬儀には参列適わず、弔電は送らせていただいたのですが、やはり四十九日前にはご焼香を、と思い、参じました。奥様がいらしていて、対応して下さいました。

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改めてご冥福をお祈り申し上げます。


その後、東北新幹線新花巻駅でレンタカーを返却、帰途に就きました。以上、東北レポートを終わります。


【折々のことば・光太郎】

人間以上の人間がそこにいるように見える。美はここに至つて真に高い。われわれの魂はもろもろの附属物を洗い去られて、ただ根源のものこそ貴重だということを悟らせられる。

散文「ロンダニーニのピエタ」より 昭和25年(1950) 光太郎68歳

ロダン同様、光太郎が終生敬愛して已まなかったミケランジェロの有名な作品の一つ、「ロンダニーニのピエタ」に関してです。

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当方、光太郎の彫刻に関して、同じようなことを感じます。