9月13日(日)、恵比寿の東京都写真美術館さんで「出光真子 おんなのさくひん――ある映像作家の自伝」を拝観後、六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリーさんに移動しました。こちらでは「方丈記に学ぶ –生きるを編み直す小さな建築–」が開催中で、さらにこの日は関連行事としてのトークイベント「『方丈記』巡礼」が行われました。レポートいたします。
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 21_21 DESIGN SIGHTギャラリーさん、いくつか展示スペースがあり、目的の会場は向かって右のギャラリー1および2でした。
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展示は地下、受付が1階。受付の前はミュージアムショップとなっており、オリジナルグッズの他、今回の展示に関わるコーナーも。すると、新潮文庫版の『高村光太郎詩集』と『智恵子抄』も並べられていました。ありがたし。
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『智恵子抄』は皆川明氏装幀の新装版でした。

地下に降りて展示を拝見。

コンセプトは、鴨長明の『方丈記』を中心に据え、「建築家、デザイナー、美術家、企業など多彩な参加者が、それぞれの方丈の庵を構想します」だそうで。

まずギャラリー1。入口にはフライヤーにも使われ、展示全体のイメージアートとして使われている田部井美奈氏の絵画作品。田部井氏は後ほど拝聴したトークにもご出演。
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鴨長明が暮らした京都郊外の「方丈」の再現。
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トークの中で語られましたが、調度品等にもこだわったそうで。緑色の長方形の部分は寝床。干したワラビを敷きつめてあるとのこと。

周囲の壁には、『方丈記』受容史的なパネル展示。
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平成25年(2013)に乃木坂のTOTOギャラリー・間(ま)さんで開催された「中村好文展 小屋においでよ!」展についても触れられていました。

さらに鴨長明同様、「方丈」を構えた人々(良寛、松尾芭蕉、ソロー、猪谷六合雄ら)の紹介などもあって、光太郎も。戦後に7年間の隠遁蟄居生活を送った花巻郊外旧太田村の山小屋(高村山荘)を中心に据えています。
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鴨長明の名は『高村光太郎全集』に見当たりません。しかし『方丈記』については記述がありました。松尾芭蕉の「古池や」の句を引用した後、

 此の俳句を読んでこの閑寂の美を味ひ得るためには、われわれはこの俳句の背後に千百年の歳月の連綿たるものがある事にも気づかねばならぬ。この俳句が美である為には、そのうしろに宗因があり、西行があり、新古今集があり、更に方丈記があり、平家物語があり、紫式部があり、往生要集があり、水にすむかはづの古今集があり、又杜甫があり、白楽天がある事を要する。さいういふ因子が無ければ此の俳句はただの自然記録であるに過ぎない。

昭和15年(1940)に書かれた「芸術上の良知」という評論の一節です。

光太郎が山小屋暮らしに踏み切った理由の一つに、実際に身近な人々の同様の例があったことも挙げられます。千葉三里塚の光太郎が設計した小屋に住んだ水野葉舟、甲州四尾連湖畔に小屋を建てて暮らした野沢一、蝦夷地で開拓に取り組んだ更科源蔵、「新しき村」の武者小路実篤、常陸牛久沼の小川芋銭、羅須地人協会の宮沢賢治ら。そして鴨長明のことも頭の片隅にはあったのではないでしょうか。

隣接するギャラリー2では、鴨長明の方丈オマージュ作品群。

江戸の町と現代の東京を織り交ぜた絵画で有名な山口晃氏。建築も手がけるとは……。
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神社建築風ですが、海外の方。
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プロレタリア文学者・川崎長太郎オマージュ。
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なんと、モバイルの「方丈」。
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中庭まで使った作品も。やはり後ほどのトークにご出演された正田智樹氏と、竹中工務店さん。
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幼い頃の「秘密基地」が彷彿とさせられ、ワクワクしてしまいました。しかし、令和の子供たちはそういう経験はしていないのでしょうね(笑)。

そうこうしているうちに、トークショーの開始時刻となりました。
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中央が展覧会ディレクターの塚本由晴氏、向かって左に田部井氏、右で正田氏。

ギャラリートーク的に、出品作等の解説、さらに本展のためにロケハンのように「巡礼」なさった場所の紹介。
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京都・糺(ただす)の森に復元された鴨長明の方丈(左)、同じく京都で平家滅亡後に建礼門院徳子が暮らした庵の跡地(右)。

花巻高村山荘も。
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最後の画像は、同じ花巻市内の宮澤賢治記念館さんで、20年ほど前でしたでしょうか、光太郎展的なものを開催した際の説明パネルの一部。廃棄するのももったいないので山荘套屋内部に掲げてあります。光太郎の装幀作品の一例ということでロマン・ロランの『愛と死の戯れ』(片山敏彦訳 大正13年=1924)、『ヘンデル』(高田博厚訳 昭和2年=1927)。無料でいただける文庫サイズの簡易図録が発行されていますが、田部井氏によればその裏表紙はここからのインスパイアだそうでした。
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そちらでの花巻パート。
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高村山荘以外に、賢治命名のイギリス海岸、光太郎と親しくなった僧侶にしてチベット仏教学者の多田等観が暮らした円万寺観音堂、賢治設計の花壇が残る茶寮かだんさんも。

公式サイトには京都、花巻のフォトレポートもアップされています。会場内でこれらをスライドショー的にモニターで上映するのもありかな、と思ったのですが……。

というわけで、なかなかに充実の展示でした。会期は比較的長く、来年1月11日(月・祝)までです。ぜひ足をお運びください。

【高村光太郎書誌】

詩華集 59 『岳』

昭和18年(1943)8月15日 山と渓谷社 川崎隆章編
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収録作家
 中村清太郎 安西徹 千家元麿 新村出 今西錦司 藤木九三 田辺和雄 佐藤昌彦
 木村幸一郎 小島三郎 岡田冝一 向井潤吉 金田一京助 館脇操 柳壮一 犬飼哲夫
 嶺一三 清棲幸保 三木露風 伊藤秀五郎 小寺融吉 大町文衛 龍居松之助 阿部庸三
 藤島亥治郎 結城哀草果 相馬御風 山口弥一郎 西川義方 中川善之助 藤澤古実
 会津八一 土屋文明 高村光太郎 半田良平  関口泰 依田秋圃 田中八百八 今村学郎
 田中薫 川崎隆章 本田正次 竹中要 前田夕暮 直良直夫 香取秀真 斎藤茂吉
 尾上柴舟 小島烏水 阿部正直 広瀬潔 藤原咲平 田辺泰 日夏耿之介 太田水穂
 田中冬二 野尻抱影 高田浪吉 釈迢空 茨木猪之吉 加納一郎 佐藤井岐雄 荻原井泉水
 今村巳之助 吉沢庄作 田口龍雄 川田順 中島正文 中西悟堂 八木貞助 富安風生
 中村星湖 吉村信吉 岡麓 鳥山悌成 佐佐木信綱 北田正三 伊東祐一 渡邊万次郎
 竹内亮 橋本伝左衛門 朝倉文夫 大谷東平 石川欽一郎 徳田御稔 逗子八郎
 西沢勇志智 下山重丸 南薫造 浅井治平 荒木俊馬 川崎隆章

戦時中にもかかわらず、ほぼほぼ戦争とは関係ない作品が集められています。口絵は岡田三郎助と牧野富太郎でした。光太郎作品は「浴泉歌」という題で、さまざまな時期の山岳に関わる短歌12首が収められています。