昨日は上京し、杉並公会堂さんでの「POEM*CONCERT V ほんとの空 ~高村光太郎の哀歌~」を拝聴して参りました。
「POEM*CONCERT」ということで、聖心女子大学さん他にお勤めの松野志保氏、ソプラノの黒川京子氏を中心にした二期会所属の歌手の方々等によるコンサートで、年に一回、一人の詩人にスポットを当て、その詩人が作詞したり、その詩人の詩に後から曲が付けられたり、またはその詩人の世界観を表したりといった歌曲を、松野氏の朗読と解説を交えながら演奏するというコンセプトです。
これまでに取り上げられたのは、金子みすゞ、立原道造、中原中也、そして昨年が宮沢賢治だったため黒川氏と今回も出演された清水邦子氏を、昨年2月に花巻にお連れし、賢治記念館さんやイギリス海岸、光太郎揮毫の賢治詩「雨ニモマケズ」碑など、それから光太郎関連のスポットをご案内しました。その流れで今年は光太郎。
せっかくの機会ですので一回聴くだけではもったいないと思い、午前中からお邪魔し、リハーサルも拝聴。ピアノの田中明子氏は出ずっぱりで大変だったろうと思いました。
プログラム順に行くと、続いて朝岡真木子氏作曲の「値ひがたき智恵子」「レモン哀歌」をメゾソプラノの清水邦子氏が。これが最も新しいもので、令和4年(2022)に全音さんから出た『朝岡真木子歌曲集2』に収められていますし、清水氏の歌唱によるCDもリリースされています。
休憩後の第2部で、黒川氏が蒔田尚昊氏作曲の「あどけない話」「同棲同類」「レモン哀歌」。黒川氏、他の機会にも蒔田氏の歌曲集「智恵子抄」から抜粋で歌われています。黒川氏は蒔田氏と個人的に繋がりがおありだったようで、昨日は未亡人もお見えでした。これのみ全曲の楽譜が公刊されていないのですが、昨日聞いた話では近く出版されるそうで、良かったと思いました。
続いて「智恵子抄」からいったん離れ、戦時歌謡の「歩くうた」(飯田信夫作曲)、箕作秋吉作曲の「鳩」、朝岡氏の「冬が来た」。
「鳩」は明治44年(1911)の詩に昭和7年(1932)になって箕作が作曲したもので、確認できている限り最も古い光太郎作詞の歌曲です。箕作にはこの他、やはり戦時歌謡の「こどもの報告」(1939)があります。「鳩」を聞いた光太郎が作曲者として推薦しました。昨年の時点で今回の「POEM*CONCERT」は光太郎を取り上げるということで、「こんな曲があるよ」と、楽譜や音源のあるものをお教えしまして、モンデンさんの「あどけない話」、「歩くうた」、「鳩」はそこに入っていたものですが、「こどもの報告」はあまりに黒歴史過ぎる歌なので紹介しませんでした。「歩くうた」もひどいものですが(客席の聴衆の皆さん、明らかにドン引きでした)、15年戦争時に光太郎がいろいろとやらかした事実を印象づけるにはもってこいです。「こどもの報告」は輪を掛けてひどいものです。
最後に別宮貞雄氏の「智恵子抄」から「人に」「千鳥と遊ぶ智恵子」「レモン哀歌」を、テノールの紀野洋孝氏。紀野氏、こちらを繰り返し歌われ、CDもリリース、さらに博士論文がこの歌曲集の考察だったそうで。
さまざまな作曲家による「智恵子抄」の聴き比べといった趣でしたが、なるほどねぇ、と思わされるものでした。特に「レモン哀歌」は3バージョンでしたし。
合間に松野氏の、演奏曲目には入っていなかったり、そもそも曲が付けられたことのなかったりの光太郎詩の朗読、さらに光太郎智恵子の生涯の解説。これまでこの「POEM*CONCERT」で取り上げてきた詩人達が比較的短命だったのに対し、数え74歳まで生きた光太郎を追うのはなかなか大変だったと思われますが、後で見せていただいたお客さんの書いたアンケートでも「光太郎智恵子の歴史がよくわかった」などと好評でした。黒歴史についてもきちんと紹介して下さいました。ちなみに来年は萩原朔太郎だそうで、光太郎よりは短い生涯。それでも大変でしょうが。
アンコールは氏がNHKさんの「」のために書かれた「道程」。楽譜は公刊されていないようですが、お渡しした音源から内藤雅人氏という方が二部合唱に編曲され、よくある「会場の皆さんもご一緒に」。
すべての終演後。
ホワイエで。
朝岡氏、それから朝岡氏の「智恵子抄」から抜粋で歌われたこともおありの前澤悦子氏もいらしていました。
今回は基本、クラシック系でしたが、他にもインストゥルメンタルを含め、それこそモンデンさんなどさまざまなジャンルの音楽家さんたちがそれぞれの解釈で「智恵子抄」系を作品にされています。そうしたジャンルの垣根を越えてのコンサートなどもあると面白いなとも思います。自分でプロデュースしようとは思いませんが(笑)。どなたか旗を振っていただければ幸いです。演奏家さんたちのご紹介などはいくらでもやります(笑)。
関係各位のますますのご活躍を祈念いたします。
【高村光太郎書誌】
「POEM*CONCERT」ということで、聖心女子大学さん他にお勤めの松野志保氏、ソプラノの黒川京子氏を中心にした二期会所属の歌手の方々等によるコンサートで、年に一回、一人の詩人にスポットを当て、その詩人が作詞したり、その詩人の詩に後から曲が付けられたり、またはその詩人の世界観を表したりといった歌曲を、松野氏の朗読と解説を交えながら演奏するというコンセプトです。
これまでに取り上げられたのは、金子みすゞ、立原道造、中原中也、そして昨年が宮沢賢治だったため黒川氏と今回も出演された清水邦子氏を、昨年2月に花巻にお連れし、賢治記念館さんやイギリス海岸、光太郎揮毫の賢治詩「雨ニモマケズ」碑など、それから光太郎関連のスポットをご案内しました。その流れで今年は光太郎。
せっかくの機会ですので一回聴くだけではもったいないと思い、午前中からお邪魔し、リハーサルも拝聴。ピアノの田中明子氏は出ずっぱりで大変だったろうと思いました。
午後2時、開演。一曲目が、シャンソン系歌手・モンデンモモさん作曲の「あどけない話」を黒川氏、清水氏の二重唱で。'90年代から主に「智恵子抄」系の光太郎詩に曲を付け、ご自分で歌われているモンデンさんですが、当方とはそのころからの付き合いで、平成21年(2009)、「楽譜集を出版するから解説を書け」「御意」「ついでに何曲か合唱曲に編集して」「承知」という流れでできたものです。実は合唱バージョンを生演奏で聴くのは初めてで、我ながら「ああ、これ、いいじゃん」と思い、さらに不覚にもうるっときてしまいました(笑)。もちろんお二人の確かな歌唱力あってのことですが。
ちなみに当方を介してモンデンさんにも招待券を発送したところ、いらしてくださいました。
メインは、清水脩氏、朝岡真木子氏、蒔田尚昊氏、そして別宮貞雄氏がそれぞれ作曲された歌曲集「智恵子抄」から抜粋で。朝岡氏以外はすべて鬼籍に入られています。清水氏のものが最も古く、光太郎存命中の昭和30年(1955)から四期に分けて作曲され、全12曲の完成が昭和46年(1971)。のちの作曲家たちはいかにこの清水氏作品と毛色を変えるかという視点からも曲作りを行っているように感じられます。こちらからはバリトンの馬場眞二氏が「あなたはだんだんきれいになる」を歌われました。ちなみに当方を介してモンデンさんにも招待券を発送したところ、いらしてくださいました。
プログラム順に行くと、続いて朝岡真木子氏作曲の「値ひがたき智恵子」「レモン哀歌」をメゾソプラノの清水邦子氏が。これが最も新しいもので、令和4年(2022)に全音さんから出た『朝岡真木子歌曲集2』に収められていますし、清水氏の歌唱によるCDもリリースされています。
休憩後の第2部で、黒川氏が蒔田尚昊氏作曲の「あどけない話」「同棲同類」「レモン哀歌」。黒川氏、他の機会にも蒔田氏の歌曲集「智恵子抄」から抜粋で歌われています。黒川氏は蒔田氏と個人的に繋がりがおありだったようで、昨日は未亡人もお見えでした。これのみ全曲の楽譜が公刊されていないのですが、昨日聞いた話では近く出版されるそうで、良かったと思いました。
続いて「智恵子抄」からいったん離れ、戦時歌謡の「歩くうた」(飯田信夫作曲)、箕作秋吉作曲の「鳩」、朝岡氏の「冬が来た」。
「鳩」は明治44年(1911)の詩に昭和7年(1932)になって箕作が作曲したもので、確認できている限り最も古い光太郎作詞の歌曲です。箕作にはこの他、やはり戦時歌謡の「こどもの報告」(1939)があります。「鳩」を聞いた光太郎が作曲者として推薦しました。昨年の時点で今回の「POEM*CONCERT」は光太郎を取り上げるということで、「こんな曲があるよ」と、楽譜や音源のあるものをお教えしまして、モンデンさんの「あどけない話」、「歩くうた」、「鳩」はそこに入っていたものですが、「こどもの報告」はあまりに黒歴史過ぎる歌なので紹介しませんでした。「歩くうた」もひどいものですが(客席の聴衆の皆さん、明らかにドン引きでした)、15年戦争時に光太郎がいろいろとやらかした事実を印象づけるにはもってこいです。「こどもの報告」は輪を掛けてひどいものです。
最後に別宮貞雄氏の「智恵子抄」から「人に」「千鳥と遊ぶ智恵子」「レモン哀歌」を、テノールの紀野洋孝氏。紀野氏、こちらを繰り返し歌われ、CDもリリース、さらに博士論文がこの歌曲集の考察だったそうで。
さまざまな作曲家による「智恵子抄」の聴き比べといった趣でしたが、なるほどねぇ、と思わされるものでした。特に「レモン哀歌」は3バージョンでしたし。
合間に松野氏の、演奏曲目には入っていなかったり、そもそも曲が付けられたことのなかったりの光太郎詩の朗読、さらに光太郎智恵子の生涯の解説。これまでこの「POEM*CONCERT」で取り上げてきた詩人達が比較的短命だったのに対し、数え74歳まで生きた光太郎を追うのはなかなか大変だったと思われますが、後で見せていただいたお客さんの書いたアンケートでも「光太郎智恵子の歴史がよくわかった」などと好評でした。黒歴史についてもきちんと紹介して下さいました。ちなみに来年は萩原朔太郎だそうで、光太郎よりは短い生涯。それでも大変でしょうが。
アンコールは氏がNHKさんの「」のために書かれた「道程」。楽譜は公刊されていないようですが、お渡しした音源から内藤雅人氏という方が二部合唱に編曲され、よくある「会場の皆さんもご一緒に」。
すべての終演後。
ホワイエで。
朝岡氏、それから朝岡氏の「智恵子抄」から抜粋で歌われたこともおありの前澤悦子氏もいらしていました。
今回は基本、クラシック系でしたが、他にもインストゥルメンタルを含め、それこそモンデンさんなどさまざまなジャンルの音楽家さんたちがそれぞれの解釈で「智恵子抄」系を作品にされています。そうしたジャンルの垣根を越えてのコンサートなどもあると面白いなとも思います。自分でプロデュースしようとは思いませんが(笑)。どなたか旗を振っていただければ幸いです。演奏家さんたちのご紹介などはいくらでもやります(笑)。
関係各位のますますのご活躍を祈念いたします。
【高村光太郎書誌】
詩華集 50 『日本海洋詩集』
昭和17年(1942)5月5日 海洋文化社 丸山薫編
収録作家
海洋精気篇
高村光太郎 佐藤惣之助 真壁仁 森山啓 城左門 瀧口武士 草野心平
吉田一穂 大江満雄 吉江喬松 岡崎清一郎
海浜篇
北原白秋 三木露風 室生犀星 三木露風 佐藤惣之助 萩原朔太郎 佐藤春夫
野口米次郎 日夏耿之介 生田春月 三富朽葉 百田宗治 福田正夫 堀口大学
金子光晴 中西悟堂 大木篤夫 加藤介春 三好達治 安西冬衛 近藤東 高橋新吉
阪本越郎 丸山薫 田中冬二 中野重治 伊東静雄 中原中也 菱山修三 宮澤賢治
山本和夫 中勘助 福原清 高橋元吉 神保光太郎 蔵原伸二郎 津村信夫 菊岡久利
渡辺修三 大井満雄 逸見猶吉 小野十三郎 藤原定 岡崎清一郎 大木実 壺井繁治
収録作家
海洋精気篇
高村光太郎 佐藤惣之助 真壁仁 森山啓 城左門 瀧口武士 草野心平
吉田一穂 大江満雄 吉江喬松 岡崎清一郎
海浜篇
北原白秋 三木露風 室生犀星 三木露風 佐藤惣之助 萩原朔太郎 佐藤春夫
野口米次郎 日夏耿之介 生田春月 三富朽葉 百田宗治 福田正夫 堀口大学
金子光晴 中西悟堂 大木篤夫 加藤介春 三好達治 安西冬衛 近藤東 高橋新吉
阪本越郎 丸山薫 田中冬二 中野重治 伊東静雄 中原中也 菱山修三 宮澤賢治
山本和夫 中勘助 福原清 高橋元吉 神保光太郎 蔵原伸二郎 津村信夫 菊岡久利
渡辺修三 大井満雄 逸見猶吉 小野十三郎 藤原定 岡崎清一郎 大木実 壺井繁治
大洋篇
島崎藤村 森鷗外 薄田泣菫 北原白秋 佐藤惣之助 高村光太郎 萩原朔太郎
千家元麿 川路柳虹 野口米次郎 川路柳虹 北村初雄 富田砕花 加藤介春 阪本越郎
竹村俊郎 深尾須磨子 尾崎喜八 丸山薫 瀧口武士 竹中郁 岩佐東一郎 村野四郎
中原中也 伊藤整 田中克己 西村皎三 塚山勇三 小沢豊吉
千家元麿 川路柳虹 野口米次郎 川路柳虹 北村初雄 富田砕花 加藤介春 阪本越郎
竹村俊郎 深尾須磨子 尾崎喜八 丸山薫 瀧口武士 竹中郁 岩佐東一郎 村野四郎
中原中也 伊藤整 田中克己 西村皎三 塚山勇三 小沢豊吉
港篇
千家元麿 佐藤惣之助 尾崎喜八 金子光晴 笹沢美明 萩原朔太郎 木下杢太郎
柳沢健 堀口大学 北川冬彦 竹中郁 春山行夫 丸山薫 津村信夫
島嶼篇
柳沢健 堀口大学 北川冬彦 竹中郁 春山行夫 丸山薫 津村信夫
島嶼篇
土井晩翠 室生犀星 伊良子清白 木下杢太郎 堀口大学 加藤介春 北川冬彦
宮澤賢治 中西悟堂 菊岡久利 阪本越郎 北原政吉 西川満
宮澤賢治 中西悟堂 菊岡久利 阪本越郎 北原政吉 西川満
漁獲篇
蒲原有明 西條八十 佐藤春夫 北村初雄 百田宗治 千家元麿 福田正夫 白鳥省吾
山村暮鳥 瀧口武士 菊岡久利 石川善助
翼賛詩的なものも含みますが、そうでないものも多数。光太郎詩は「地理の書」「龍」「無為の白日」の三篇です。
山村暮鳥 瀧口武士 菊岡久利 石川善助
翼賛詩的なものも含みますが、そうでないものも多数。光太郎詩は「地理の書」「龍」「無為の白日」の三篇です。


























