ひと頃よりだいぶ規模は小さくなりましたが、それでも日本最大の古書入札市、都内の古書籍商さんの組合・明治古典会さんが主催する「七夕古書大入札会」。出品物を直接手に取ってみられる「下見展観」が開催されます。

七夕古書大入札会下見展観

期 日 : 2026年7月3日(金)・4日(土)
会 場 : 東京古書会館 千代田区神田小川町3-22
時 間 : 3日(金) 午前10時〜午後6時 4日(土) 午前10時〜午後4時
料 金 : 無料

七夕古書大入札会(七夕)とは、明治古典会が開催する国内最大かつ最も歴史あるオークションです。入札形式で行われ、最高値を入札した方に落札されます。入札会の前に東京古書会館で行われる下見展観(プレビュー)は一般のお客様もご入場いただき、出品される貴重な文化資料や美術品をお手に取ってご覧いただけます。
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ほぼ毎年、何らかの光太郎がらみの出品があります。今年は署名本、書簡など。

まず昭和25年(1950)、光太郎生前最後の単行詩集『典型』の識語署名本。
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昭和26年(1951)となっていますし「読売文学賞受賞」という帯が付いていますので、重版と思われますが、見返しに表題作「典型」の一節「小屋にゐるのはひとつの典型 一つの愚劣の典型だ」が毛筆で記されています。ちなみに箱の題字も光太郎自身による木版を基にしています。

書簡が3セット。

年代順に、明治33年(1900)9月25日、父・光雲の高弟だった加藤景雲にあてた墨書のかなり長い封書。都内の古書店さんで数年前から売りに出しているものですが、改めて出品されました。巻物に仕立てられているようです。
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キャプションに「朶木庵発信」とあり、まるで場所のような書き方ですが、「朶木庵」はこの頃光太郎が俳句を投稿する際に使っていたペンネームなので、場所というニュアンスではありません。

それから、中央公論社の編集者だった栗本和夫に宛てた戦前から戦後にかけての書簡群が、封書と葉書に分けて出品されます。
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加藤景雲宛てを含め、全て筑摩書房『高村光太郎全集』に収録されています。

さらに、光太郎の装幀になる吉井勇著『酒ほがひ』(明治43年=1910)。「ほがひ」は古語「ほがふ(寿ふ)」の名詞化。
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表紙と、それから画像にはありませんが裏表紙にペルシャ文字があしらわれたデザインです。この頃、光太郎はペルシャ系にも興味を持っていました。

『高村光太郎全集』別巻(平成10年=1998)所収の、当会顧問であらせられた北川太一先生による「高村光太郎聞き書」(昭和30年=1955~昭和31年=1956)の一節。

――ペルシャには随分関心をもっていらっしゃいますね。

 アメリカのはじめの頃、ペルシャに行ったら帰らないつもりだった。ペルシャ語なんか習ったりして、なんでもいいからあそこに行って生活しようと思った。ニューヨークでは、もう生活できないような気がして、こんなことならメディアの文化の中にとけ込んで生活しようと思い、本当に行きかけた。あの頃は美術を捨ててもいいと思った。それを親父や弟からも反対され、真日毎日そんなことで頭の中がぐらぐらしていた。アメリカが嫌だからじゃなくて、もっといいところがあればそっちに行きたいという気持ち。


「メディア」はこの場合、古代カスピ海沿岸にあったメディア王国を指します。まぁ「中東」といった意味合いでの使用でしょう。そちらの方に行きたいというのがどの程度本気だったのかは何ともいえませんが……。

昭和3年(1928)の雑誌『地上楽園』に載った「紐育より巴里へ」の中にも「其頃はペルシヤのテヘランへ行かうと思つて計画した事もあつた」という一節があります。

ただし『酒ほがひ』装幀に使われたペルシャ文字は、「酒ほがひ」の意味を翻訳したかったらしいのですが、専門家によれば誤字があるとのことです。

とりあえず直接光太郎に関わる出品物は以上です。もう1点、「美ならざるなし」と書かれた戦後と思われる色紙も出品予定でしたが、今朝見たらなぜか出品取り止めになっていました。
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目録を見ていて驚いたのは、光太郎の姉貴分・与謝野晶子の「百首屏風」が出ていたこと。
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複数の作例があるのですが、これまで市場に出て来たことはほとんど無いのでは、と思われます。基本的には明治44年(1911)、夫・寛の外遊資金を捻出するために書かれ、支援者らに買ってもらったものです。ただ、その際の作ではない晩年のものなども存在するようですが。

下見展観、基本的には出品物を手に取って見ることができます。通常、文学館等では厳重にガラスケースなどに収められているものに触れられる貴重な機会です。入札は加盟している古書店さんを通じて行う形になります。

ご興味おありの方、ぜひどうぞ。

【高村光太郎書誌】

選集等(部分) 7 『現代詩人全集(四) 近代Ⅳ』

昭和36 年(1961)9月10日 角川書店(角川文庫) 著者代表 室生犀星
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目次
 高村光太郎
  失はれたるモナ・リザ 根付の国 食後の酒 寂寥 冬が来る 冬が来た 道程
  秋の祈 わが家 小娘 雨にうたるるカテドラル 落葉を浴びて立つ 鉄を愛す 葱
  後庭のロダン 雷獣 白熊 象の銀行 火星が出てゐる 刃物を研ぐ人 首の座
  ばけもの屋敷 ぼろぼろな駝鳥 上州湯桧曽風景 上州川古「さくさん」風景 似顔
  蝉を彫る もう一つの自転するもの 荻原守衛 郊外の人に 樹下の二人 夜の二人
  あどけない話 同棲同類 山麓の二人
 武者小路実篤 (略)
 千家元麿 (略)
 尾崎喜八 (略)
 高橋元吉 (略)
 片山敏彦 (略)
 中勘助 (略)
 生田春月 (略)
 室生犀星 (略)
 宮崎孝政 (略)
 福士幸次郎 (略)
 百田宗治 (略)
 白鳥省吾 (略)
 富田砕花 (略)
 福田正夫 (略)
 井上康文 (略)
 三野混沌 (略)
 解説 伊藤信吉

手持ちのものは昭和44年(1969)3月30日の第8版です。