昭和31年(1956)、光太郎が没する直前、草野心平に編集を託し、その年の7月に初版が刊行された新潮文庫版『智恵子抄』。デザイナー・皆川明氏による新たなカバーデザインとなった新装版が発行されました。
新潮社さんのプレスリリースから。
新潮社さんのプレスリリースから。
不朽の名作、高村光太郎『智恵子抄』(新潮文庫)がminä perhonenデザイナー・皆川 明さんによる新装版カバーで登場。
詩人・彫刻家でもあった高村光太郎と、画家・紙絵作家の妻、智恵子。情熱のほとばしる恋愛時代から、短い結婚生活、智恵子の発病、そして永遠の別れ……。夫の光太郎がふたりの深い愛を謳った名詩集が『智恵子抄』です。
高村智恵子の切り絵を敬愛し、『智恵子抄』を長年愛読してきたminä perhonenデザイナー、皆川 明さんによる美しい切り絵で装いを新たにしました。 新装版は2026年「新潮文庫の100冊」にラインナップされており、全国書店にてお買い求めいただけます。
把握している範囲では、令和3年(2021)6月にマガジンハウスさんから出たムック『& Premium特別編集 あの人の読書案内。』、同年12月、同じくマガジンハウスさんの雑誌『BRUTUS』、2022年1月1日・15日合併号。後者に載ったものは令和6年(2024)発行のムック『BRUTUS特別編集 合本 本が人をつくる。』に再録されました
皆川氏曰く「好きだという気持ち以上の、お互いを肯定している無垢な二人の関係が伝わってくるようで、恋愛小説よりも強い気持ちが感じられます」「カフェに座ってこれを読んでいると落ち着く、というと簡単な表現ですが、頭の中には好きな世界が広がって、外側には違うカルチャーがある。それが案外心地いい」
そういう思い入れがおありの皆川氏に白羽の矢を立てた新潮社さん、グッジョブです。
これまで、百数十刷を数える中で、何度か装幀・カバーデザインが変遷しています。
昭和31年(1956)の初版(左上)刊行時には、パラフィンカバーと帯のみ。昭和35年(1960)頃の版から新潮文庫全体としてカラー印刷のカバーがかけられるようになりました(右上)。袖には「カバー 眞淵聖」とクレジットが入っていますが、眞淵聖という人物、寡聞にして不分明です。
収録詩篇の改訂等があっての改版が昭和42年(1967)12月。その際に左下の智恵子紙絵を使ったカバーに変更されたと思われます。そして右下はつい最近まで使われていたカバー。
智恵子紙絵のカバーでなくなるのは少し寂しい気もしますが、おそらく巻頭の口絵には智恵子紙絵画像が残るのではないかと思われます。最近までの版で7葉使われていました。
そして『智恵子抄』、「新潮文庫の100冊」ラインナップに復帰というのが嬉しいところです。昭和51年(1976)から毎年夏に行われているフェアで、今年で50周年とのこと。
『智恵子抄』は昭和51年(1976)の初回から平成21年(2009)頃までラインナップに入っていましたが、その後に外れ、残念に思っておりました。それが復活ということで、ありがたし。大きめの新刊書店さん等では100冊を平積みにする特設コーナーなども作って下さいますし、売り上げが伸びるでしょうから。
ちなみに50年連続でラインナップ入りしているのは以下の10冊だそうです。
『こころ』夏目漱石/『人間失格』太宰治/『銀河鉄道の夜』宮沢賢治/『黒い雨』井伏鱒二/『塩狩峠』三浦綾子/『老人と海』ヘミングウェイ/『罪と罰』〈上下〉ドストエフスキー/『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ/『変身』カフカ/『異邦人』カミュ
というわけで、新装版『智恵子抄』、ぜひお買い求め下さい。
ともに生前に交渉のあった朔太郎と賢治と共に一冊が構成されたことについて、晩年の光太郎はどう感じたでしょうか。
【切り絵でつながる『智恵子抄』】
2026年は高村光太郎没後70年の年。長年カバーに使用されてきた高村智恵子による花柄の切り絵から、次の世代へとより長く愛され続けられるように、皆川 明さんによる花と鳥の切り絵を使用したカバーにうまれかわりました。
光太郎と智恵子をイメージした鳥と花の切り絵は、切り絵ならではの細やかな影の表情を再現するために、カメラマンの白石和弘さんに撮影していただき、どこか懐かしく優しい雰囲気を持つ、手元にずっと置いておきたくなるような本となりました。
【皆川 明さんのコメント】
にがくて、すっぱくて、ときどき あまい 苦しくて愛おしいいのち
愛とはつかめない光のようでもありおおわれた影のようでもある。
宿命の海原で泳ぎ心の空を翔ぶように生きる姿が放つ光と影は智恵子の生きた証であり光太郎の生きがいであった。
【書籍内容】
明治の末年、グロキシニヤの鉢植えをもってアトリエを訪れた智恵子嬢を“人類の泉”と讃えた恋愛時代から、「東京に空が無い」と語り合った幸福な結婚生活を経て、夫人の発病、そして昭和十三年十月にやってきた永遠の別れ――。死後なお募る思いを「智恵子の裸形を残して、わたくしは天然の素中に帰ろう」と歌い、昭和三十一年四月の雪の夜に逝った詩人の、全生涯を貫く稀有な愛の詩集である。
【著者紹介】高村光太郎(タカムラ・コウタロウ)
(1883-1956)上野公園の西郷隆盛像で知られる木彫家光雲の長男として東京に生れる。東京美術学校で彫刻、洋画を学ぶ。1906年、欧米留学。パリでは美術・彫刻の他、ヴェルレーヌ、ボードレールらの詩を学んだ。帰国後、気鋭の美術評論、評伝、エッセイを次々と発表して注目された。1914年、処女詩集『道程』で芸術院賞を受賞。1941年、『智恵子抄』を刊行。1950年、『典型』で読売文学賞を受賞。他に『ロダン』『造形美論』『暗愚小伝』など著書多数。享年73。
【書籍データ】
【タイトル】『智恵子抄』
【著者名】高村光太郎
【造本】文庫
【定価】473円(税込)
【ISBN】978-4-10-119602-2
カバーデザインの皆川明氏、座右の一冊的に『智恵子抄』を挙げて下さったことがおありです。把握している範囲では、令和3年(2021)6月にマガジンハウスさんから出たムック『& Premium特別編集 あの人の読書案内。』、同年12月、同じくマガジンハウスさんの雑誌『BRUTUS』、2022年1月1日・15日合併号。後者に載ったものは令和6年(2024)発行のムック『BRUTUS特別編集 合本 本が人をつくる。』に再録されました
皆川氏曰く「好きだという気持ち以上の、お互いを肯定している無垢な二人の関係が伝わってくるようで、恋愛小説よりも強い気持ちが感じられます」「カフェに座ってこれを読んでいると落ち着く、というと簡単な表現ですが、頭の中には好きな世界が広がって、外側には違うカルチャーがある。それが案外心地いい」
そういう思い入れがおありの皆川氏に白羽の矢を立てた新潮社さん、グッジョブです。
これまで、百数十刷を数える中で、何度か装幀・カバーデザインが変遷しています。
昭和31年(1956)の初版(左上)刊行時には、パラフィンカバーと帯のみ。昭和35年(1960)頃の版から新潮文庫全体としてカラー印刷のカバーがかけられるようになりました(右上)。袖には「カバー 眞淵聖」とクレジットが入っていますが、眞淵聖という人物、寡聞にして不分明です。
収録詩篇の改訂等があっての改版が昭和42年(1967)12月。その際に左下の智恵子紙絵を使ったカバーに変更されたと思われます。そして右下はつい最近まで使われていたカバー。
智恵子紙絵のカバーでなくなるのは少し寂しい気もしますが、おそらく巻頭の口絵には智恵子紙絵画像が残るのではないかと思われます。最近までの版で7葉使われていました。
そして『智恵子抄』、「新潮文庫の100冊」ラインナップに復帰というのが嬉しいところです。昭和51年(1976)から毎年夏に行われているフェアで、今年で50周年とのこと。
『智恵子抄』は昭和51年(1976)の初回から平成21年(2009)頃までラインナップに入っていましたが、その後に外れ、残念に思っておりました。それが復活ということで、ありがたし。大きめの新刊書店さん等では100冊を平積みにする特設コーナーなども作って下さいますし、売り上げが伸びるでしょうから。
ちなみに50年連続でラインナップ入りしているのは以下の10冊だそうです。
『こころ』夏目漱石/『人間失格』太宰治/『銀河鉄道の夜』宮沢賢治/『黒い雨』井伏鱒二/『塩狩峠』三浦綾子/『老人と海』ヘミングウェイ/『罪と罰』〈上下〉ドストエフスキー/『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ/『変身』カフカ/『異邦人』カミュ
というわけで、新装版『智恵子抄』、ぜひお買い求め下さい。
【高村光太郎書誌】
選集等(部分) 4 『高村光太郎集 萩原朔太郎集 宮澤賢治集』現代日本文学全集24
昭和29年(1954)7月25日 筑摩書房 高村光太郎/萩原朔太郎/宮澤賢治著
目次
目次
高村光太郎集
道程
失はれたるモナ・リザ(明治四十三年) 生けるもの 根付の国
画室の夜(明治四十四年) 熊の毛皮 人形町 甘栗 庭の小鳥 亡命者 鳩 食後の酒
画室の夜(明治四十四年) 熊の毛皮 人形町 甘栗 庭の小鳥 亡命者 鳩 食後の酒
寂寥 声 風 新緑の毒素 頽廃者より 「河内屋与兵衛」 髪を洗ふ女 「心中宵庚申」
夏 なまけもの 手 金秤 はかなごと めくり暦 地上のモナ・リザ 葛根湯 夜半
夏 なまけもの 手 金秤 はかなごと めくり暦 地上のモナ・リザ 葛根湯 夜半
けもの あつき日 父の顔 泥七宝 ビフテキの皿 青い葉が出ても(明治四十五年)
赤鬚さん あをい雨 友の妻 ――に 夏の夜の食慾(大正元年) 或る夜のこころ
おそれ 犬吠の太郎 さびしきみち カフエにて 梟の族 冬が来る カフエにて
或る宵 夜 狂者の詩 郊外の人に 冬の朝のめざめ カフエにて 師走十日
或る宵 夜 狂者の詩 郊外の人に 冬の朝のめざめ カフエにて 師走十日
人に(大正二年) カフエにて 深夜の雪 人類の泉 山 よろこびを告ぐ 現実
冬が来た 冬の詩 牛 僕等 道程(大正三年) 愛の嘆美 群集に 婚姻の栄誦
冬が来た 冬の詩 牛 僕等 道程(大正三年) 愛の嘆美 群集に 婚姻の栄誦
万物と共に踊る 瀕死の人に与ふ 晩餐 五月の土壌 淫心 秋の祈
「道程」以後
「道程」以後
わが家(大正五年) 小娘(大正六年) 湯ぶねに一ぱい
丸善工場の女工達(大正九年) 米久の晩餐(大正十年)
クリスマスの夜(大正十一年) 沙漠 樹下の二人(大正十二年) 珍客(大正十三年)
清廉 白熊(大正十四年) 傷をなめる獅子 狂奔する牛 車中のロダン 葱
象の銀行(大正十五年) 十大弟子 鯰 苛察 夜の二人
あなたはだんだんきれいになる (昭和二年) 怒 或る墓碑銘 美を見るもの
龍(昭和三年) あどけない話 花下仙人に遇ふ ぼろぼろな駝鳥 或る日
上州湯桧曽風景(昭和四年) 刃物を研ぐ人(昭和五年) 孤坐
丸善工場の女工達(大正九年) 米久の晩餐(大正十年)
クリスマスの夜(大正十一年) 沙漠 樹下の二人(大正十二年) 珍客(大正十三年)
清廉 白熊(大正十四年) 傷をなめる獅子 狂奔する牛 車中のロダン 葱
象の銀行(大正十五年) 十大弟子 鯰 苛察 夜の二人
あなたはだんだんきれいになる (昭和二年) 怒 或る墓碑銘 美を見るもの
龍(昭和三年) あどけない話 花下仙人に遇ふ ぼろぼろな駝鳥 或る日
上州湯桧曽風景(昭和四年) 刃物を研ぐ人(昭和五年) 孤坐
美の監禁に手渡す者(昭和六年) 蝉を彫る 先生山を見る(昭和七年)
晴天に酔ふ(昭和八年) 人生遠視(昭和十年) 風にのる智恵子 村山槐多
もう一つの自転するもの(昭和十一年) 荻原守衛 千鳥と遊ぶ智恵子(昭和十二年)
値ひがたき智恵子 夢に神農となる 老耼、道を行く 山麓の二人(昭和十三年)
団十郎像由来 レモン哀歌(昭和十四年) 芋銭先生景慕の詩 へんな貧
梅酒(昭和十五年) 荒涼たる帰宅(昭和十六年) 寒夜読書(昭和十八年)
救世観音を刻む人 南瓜賦(昭和十九年)
典型
雪白く積めり(昭和二十一年)
暗愚小伝(昭和二十二年)
暗愚小伝(昭和二十二年)
家 転調 反逆 蟄居 二律背反 炉辺
「ブランデンブルグ」(昭和二十三年) 脱卻の歌 人体飢餓 東洋的新次元
おれの詩(昭和二十四年) 悪婦 山荒れる(昭和二十二年) 月にぬれた手
鈍牛の言葉 典型
田園小詩
山菜ミヅ(昭和二十二年) 山のひろば 山口部落(昭和二十二年) かくしねんぶつ
クロツグミ クチバミ(昭和二十五年) 別天地(昭和二十三年)
岩手の人(昭和二十四年) 山からの贈物 この年
岩手の人(昭和二十四年) 山からの贈物 この年
「典型」以後
元素智恵子(昭和二十五年) 案内 吹雪の夜の独白 噴霧的な夢 女医になつた少女
人間拒否の上に立つ(昭和二十六年) 山のともだち
十和田湖畔の裸像に与ふ(昭和二十九年)
十和田湖畔の裸像に与ふ(昭和二十九年)
萩原朔太郎集 (略)
宮澤賢治集 (略)
高村光太郎の詩業 草野心平 萩原朔太郎 河上徹太郎
もろともにかがやく宇宙の塵となりて 谷川徹三 解説 伊藤信吉
もろともにかがやく宇宙の塵となりて 谷川徹三 解説 伊藤信吉
年譜
月報
彫刻の先覚高村光太郎 石井鶴三 高村光太郎氏素描 難波田龍起 萩原朔太郎断片 伊藤整
朔太郎残影 恩地孝四郎 兄とレコード 宮澤清六












