昨日は神奈川県川崎市に行っておりました。JR川崎駅前のミューザ川崎さんで開催された「歌曲アンサンブル研究会 第286回 6月例会」拝聴のためでした。
PXL_20260618_084625444 PXL_20260618_090922548
プロまたはそれに準ずるクラシック系歌手の皆さんなどの団体で、毎月の「例会」では公開講座や「試演会」と銘打たれたコンサートなども行われています。公開講座はおそらく中堅からベテランと思われる歌手の方や、作曲家の皆さんなどが講師を務められ、会員の方から希望者が公開でレッスンを受けるという形式のようです。

昨日の講師は作曲家の朝岡真木子氏。三人の歌手の方とそれぞれのピアノ伴奏の方が、朝岡氏作曲の歌曲をテキストになさいました。
001
会場はよくある音楽練習室的なちょっと広めの部屋。場合によっては小ホール的な使い方もできるのかな、と思われました。ただ、ステージはありません。そこでグランドピアノを囲んで並べられた椅子に聴講者が座って聴くという形です。もう足を洗いましたが(笑)、学生時代、それから社会人になってからもわりと本格的に合唱をやっていた当方としては「この配置、懐かしいなぁ」という感じでした。

講師の朝岡氏は聴講者と向かい合う形で座られ、だいたい40分くらいずつ、3組の皆さんに対する公開レッスン。レッスンを受ける歌手の方々は、通常時のそれとは異なり聴講者に向かって歌う形ですので、その意味での緊張感もあったと思います(当方は絶対やりたくありません(笑))。

取り上げられた朝岡氏作品は、与謝野晶子作詩「君死にたもうことなかれ」、川瀬巴水の新版画からインスパイアされた林望氏作詞の 歌曲集「夕暮れ巴水」から短い2曲、そして組曲「智惠子抄」から「レモン哀歌」。
PXL_20260618_112530761
「3組の皆さん」と書きましたが、朝岡氏、ピアノ伴奏の方に対しても「ここはもっと、こう」的なアドヴァイスを頻繁に入れられ、ピアノは添え物ではないというところをがっつりと。最初から最後までご自身の曲だけを扱われる「朝岡真木子歌曲コンサート」では全曲おん自らピアノを弾かれる朝岡氏ならではだなと思いました。

もちろん歌手の方に対しても、要所要所でいろいろと助言やら提案やら。多く発せられたのが「楽譜にはそこまで書いていませんが……」という一言がついたそれ。確かに楽譜はあくまで最小限の記号としてしか書いてありませんので、細かなニュアンスやら作曲家の意図やらは演奏者が汲み取って表現しなければなりません。音符や休符や「p」「ff」「クレッシェンド」などは言ってしまえば機械的なプログラミング言語のようなものにすぎませんし、たとえ欄外に「sostenuto」とか「meno mosso」とか書かれていても、作曲者の意図が完璧に表現し切れているわけではないのでしょう。実際、途中で演奏を止めて入れられる朝岡氏の一言一言が、「なるほど」の連続でした。

そして作曲者の意図を汲み取るプラス、歌い手さんなりピアニストさんなりのそれぞれの表現者が自分で「ここはこうしたい」みたいなことを盛り込んで行くべきで(朝岡氏、そういうことをどんどんやってください、というスタンスでした)、それが全く無かったらそれこそボーカロイド的な無味乾燥の演奏になってしまうでしょう(一概にボーカロイド的なものを否定するわけではありませんが)。自分で合唱をやっていた頃の楽譜など真っ黒になるくらい書き込みしたっけな、などと思いながら拝聴していました。

組曲「智惠子抄」が収められた『朝岡真木子歌曲集2』(「君死にたもうことなかれ」も入っています)。全音さんから令和4年(2022)に刊行されました。そして今月、第3版が出ました。昨日はこれを片手に拝聴いたしました。ただ奥付は6月25日で、まだ正式には流通していないらしく、全音さんのサイトでは今日現在で「在庫切れ」となっていますが。
002 002
巻末の「詩と付記」の項で、朝岡氏に請われ、詩集『智恵子抄』および作曲された「人に」「あどけない話」「千鳥と遊ぶ智恵子」「値(あ)ひがたき智恵子」「レモン哀歌」の解説を執筆いたしました。初版と第2版にはそれが無く、そういうページが欲しいというわけで。

「おやすい御用です」と、バーッと書いて送ったところ、過分な執筆料を頂いてしまいました。「過分」というより「法外な」ともいうべき金額でした(笑)。普段、通常の出版社相手ですと「掲載誌何冊か現物支給のみ」程度のことも珍しくありませんので(笑)、嬉しいやら申し訳ないやら……。まぁ、全音さんというより朝岡氏のポケットマネーだったようですが。

正式に発売になったらぜひお買い求め下さい。

ちなみに昨日は、一度、花巻にお連れした宮沢賢治作詞の曲なども歌われている黒川京子氏、3月の「朝岡真木子歌曲コンサート第9回」で組曲「智惠子抄」から「人に」と「あどけない話」を歌われた前澤悦子氏もいらしていました。前澤氏、組曲「智惠子抄」をまた歌いたいとおっしゃっていたそうですし、昨日の講座で「レモン哀歌」を取り上げて下さった広川法子氏、ピアノの末松茂敏氏も、今度は演奏会でもラインナップに入れていただきたいところです。さらに朝岡氏には他の光太郎詩をテキストとした新作も期待したいと思っております。

というわけで、以上、レポートを終わります。

【高村光太郎書誌】

選集等(単独) 47 『高村光太郎詩集 道程』豊かなことば 現代日本の詩①

平成21年(2009)11月10日 岩崎書店 高村光太郎著 伊藤英治編
PXL_20260610_021833760
PXL_20260610_021846880 PXL_20260610_021859931
目次
 一 詩人
  根付の国 刃物を研ぐ人 あたり前 道程 ぼろぼろな駝鳥 父の顔 母をおもふ
  その年私の十六が来た パリ 友よ 最低にして最高の道 さびしきみち 詩人
 二 風にのる智恵子
  風にのる智恵子 あどけない話 鯰 千鳥と遊ぶ智恵子 値ひがたき智恵子 レモン哀歌
  荒涼たる帰宅 おそろしい空虚 報告(智恵子に) 美に生きる
 三 樹下の二人
  十和田湖畔の裸像に与ふ 冬が来た 冬の言葉 秋の祈 上州川古「さくさん」風景
  雪白く積めり 山 樹下の二人 犬吠の太郎
 四 山のともだち
  クロツグミ 山からの贈物 山口部落 冬の子供 少年に与ふ 山のともだち
  女医になつた少女 山の少女 別天地
 高村光太郎略年譜

児童書の出版を中心に手がける岩崎書店さんの「豊かなことば 現代日本の詩」シリーズの1冊。まだ新刊で取り寄せができるようです。