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酒場・下宿・路地をめぐる46人の「やらかしと逸話」 文豪てくてく散歩

発行日 : 2026年5月29日
著者等 : 進士泰丸
版 元 : KADOKAWA
定 価 : 1,700円+税

さあ、地図を片手に、天才たちの「黒歴史」の現場を歩こう! 太宰治が愛した一杯を味わえるバーから、いわく付きの事故物件跡まで。天才たちの「黒歴史」の現場を歩ける文学散歩本が誕生!

太宰治が愛し、『人間失格』にも登場する“あの一杯”。梶井基次郎が「アナーキスト万歳!」と叫んだ、新橋駅のホーム。江戸川乱歩が商才ゼロで潰してしまった古本屋跡。46人の文豪たちの“やらかし”と“逸話”を軸に、笑いと哀愁が滲む132スポットを超充実収録。これを片手に街を歩けば、文豪がもっと好きになる!

【散歩できる物語】
『雁』森鴎外、『坊っちゃん』夏目漱石、『たけくらべ』樋口一葉、『ローマ字日記』石川啄木、『墨東綺譚』永井荷風、『神楽坂七不思議』泉鏡花、『破船』久米正雄、『細雪』谷崎潤一郎、『注文の多い料理店』宮沢賢治、『五重塔』幸田露伴…他多数

【登場する文豪たち】
芥川龍之介、有島武郎、宇野千代、江戸川乱歩、尾崎紅葉、梶井基次郎、川端康成、菊池寛、北原白秋、小林秀雄、坂口安吾、佐藤春夫、島崎藤村、高村光太郎、太宰治、坪内逍遙、徳田秋声、中原中也、平塚らいてう、三島由紀夫、宮本百合子、室生犀星、与謝野晶子…他多数

【本書掲載エリア】
本郷・神保町・神楽坂・早稲田・銀座・浅草・吉原・田端・谷中・根津・千駄木
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目次
 はじめに
 本郷
  東京大学 鉄門/育徳園心字池/樋口一葉旧居「桜木の宿」跡・法眞寺/カフェ銀時計/
  「燕楽軒」跡/「菊富士ホテル」跡/石川啄木・金田一京助旧居「赤心館」跡/
  徳田秋声旧居跡・終焉の地/石川啄木・金田一京助旧宅「蓋平館別荘」跡/
  樋口一葉菊坂旧居跡・旧伊勢屋質店/樋口一葉終焉の地/金田一京助旧居跡/
  坪内逍遥旧居・常盤会跡/宮沢賢治旧居跡/石川啄木旧居「喜之床」跡/
  梶井基次郎旧居「蓋平館支店」跡/「藤むら」跡/竹むら
 神保町
  神保町ブックセンター/「らんぼお」跡/神田 天麩羅 はちまき/文房堂/「錦輝館」跡
 神楽坂
  紀の善ビル/志満金/泉鏡花旧居跡・北原白秋旧居跡/助六/丸岡陶園/末よしビル/
  「常盤屋」跡/「魚徳」跡/神楽坂 小割烹 め乃惣/善國寺/「尾澤薬舗」跡/
  「紅谷」跡/「いろは」跡/「牛込亭」跡/赤城神社/芸術倶楽部跡・島村抱月終焉の地/

  圓福寺/尾崎紅葉旧居跡/泉鏡花旧居跡
 早稲田
  早稲田大学坪内博士記念演劇博物館/夏目漱石誕生の地/新宿区立漱石山房記念館/
  有島武郎旧居跡/坪内逍遥旧居跡/永井荷風旧居跡/小泉八雲旧居跡/
  三島由紀夫生誕の地
 銀座 
  新橋駅/末げん/中央区立泰明小学校/きよ田/「銀座よし田」跡/石川啄木碑/空也/
  スタイル社跡/銀座ウエスト本店/バー・ルパン/「カフェー・タイガー」跡/
  Book café&&Bar十誠/鳩居堂/木村屋總本店/煉瓦亭/はち巻岡田/
  ローマイヤレストラン/資生堂パーラー/カフェーパウリスタ/「はせ川」跡/竹葉亭/
  MATSUZAKISHOTEN/改造社ビル
 浅草
  等光寺/風流お好み焼 染太郎/久保田万太郎生誕の地/亀十/尾張屋/神谷バー/
  弁天山美家古寿司/梅園/中清/浅草フランス座演芸場東洋館/「オペラ館」跡/
  木馬亭/「浅草凌雲閣」跡/草津亭/「老松」跡/池波正太郎生誕の地
 吉原
  吉原弁財天/鷲神社/台東区立一葉記念館/千束稲荷神社/浄閑寺
 田端
  芥川龍之介旧居跡/「天然自笑軒」跡/「楽天堂医院」跡/
  平塚らいてう・奥村博史旧居跡/北区立童橋公園/田端文士村記念館/
  サトウハチロー旧居跡/そば処浅野屋/室生犀星旧居跡/大龍寺/
  堀辰雄下宿「紅葉館」跡/ポプラ坂/佐多稲子旧居跡/小林秀雄・田河水泡旧居跡/
  萩原朔太郎旧居跡/上田端八幡神社
 谷中・千駄木・根津
  羽二重団子/「天王寺五重塔」跡/谷中霊園/幸田露伴居宅跡/菊見せんべい総本店/
  団子坂/文京区立森鷗外記念館・森鷗外旧居「観潮楼」跡/佐藤春夫下宿跡/
  宮本百合子旧居跡/高村光太郎旧居跡/養源寺/「三人書房」跡/青鞜社発祥の地/
  藪下通り/森鷗外・夏目漱石旧居跡/根津神社/根津遊郭跡/喜久月/
  国立国会図書館国際子ども図書館
 COLUMN
  菊地寛暴行事件の顛末 芥川龍之介と文 平塚らいてうの『青鞜』誕生秘話
 春日ゆらの漫画でてくてく散歩!
  ①東京理科大学近代科学資料館に行ってみよう ②歌舞伎座と夏目漱石
  ③田端文士村で芥川龍之介旧居跡を探す
 文豪紹介
 おわりに

 参考文献

目次の通り、23区内の特にほぼ東半分、つまりはおおむね江戸府内だったエリアでの文学散歩ガイド的なものです。

現存する建造物等については現状の写真、「跡」となっているスポットは古写真などがふんだんに使われ、理解の手助けとなっています。また、目次では割愛されていますが、それぞれの場所に関わる「ミニコラム」、各スポットを舞台とした書籍の紹介なども細かく。

光太郎に関しては、「谷中・千駄木・根津」の章で旧駒込林町25番地(現・千駄木3丁目)の「高村光太郎旧居跡」が取り上げられ、そこに掲げられたミニコラム「高村光太郎と森鷗外の事件」で「軍服着せれば鷗外だ事件」が扱われている他、近くの「菊見せんべい総本店」の項でも光太郎の名が。

ただ「菊見せんべい総本店」さんの項では、勘違いもあるようです。第一に「高村光太郎は学生時代、菊見せんべいの店先で働く娘に一目惚れしちゃって毎日せんべいを買いに行ったという話がありますが、これはどうも根拠のない噂話のようです」とありますが、「一目惚れしちゃって」は光太郎によれば「根拠のない噂話」でなく事実です。

 塩せんべい屋は店先でせんべいを押し、刷毛で醤油を付けながら焼く。そこの娘がちゃんとしたきりっとした娘で、子供の時から店に出ていて私も知っていたが、美術学校に行く途中でその煎餅屋の前に来ると、私は顔が赤くなる。それが自分で分かる。何故か分からぬがそうなる。はじめは気がつかなかったけれど、毎日毎日そうなるので何だか恥ずかしくなってきた。店の処まで歩いてくると胸がどきどきして顔がほてって困った。しまいにはどうしてもその通りが通れなくなった。だから根津の方を遠回りして学校に行ったけれども、後で考えると、その娘に思し召しがあって、娘の顔を見ると顔がほてったのだと知った。むこうでも真っ赤になっていた。あれがむかしの純情な子供の気持ちなんだろう。(「私の青銅時代」昭和29年=1954)

思し召しがあって」は、「気になるところがあって」といった意味ですね。「毎日せんべいを買いに行った」とは書かれていません。そういう話が流布しているのだとしたら、そちらは「根拠のない噂話」と言えるでしょう。

第二に、「その娘さんの名前は「智恵子」だったといわれ、高村光太郎の代表作『智恵子抄』になぞらえてそんな与太話が生まれたようです」とも書かれています。これも決して「与太話」などではなく、菊見せんべいさんの店主氏の証言が残っています。地域雑誌『谷中根津千駄木』第9号(昭和61年=1986)に掲載されています。
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話を戻しますが、『文豪てくてく散歩』、「青鞜社発祥の地」に関わるコラム「平塚らいてうの『青鞜』誕生秘話」では、智恵子が『青鞜』創刊号表紙絵を描いたことが紹介されています。

全文は未読ですが、光太郎智恵子に関してはおそらく以上だと思われます。他にタイトルにある通り「46人の文豪」。なかなかの労作です。

ぜひお買い求めを。

【高村光太郎書誌】

選集等(単独) 30 『高村光太郎集』日本の詩 第5巻

昭和53年(1978)10月25日 集英社 伊藤信吉編
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目次
 蝉を彫る<彫刻詩篇>
  五月のアトリエ 鉄を愛す 後庭のロダン 葱 鯰 金 首の座 刃物を研ぐ人
  鯉を彫る 孤坐 蝉を彫る 美しき落葉 十和田湖畔の裸像に与ふ 石くれの歌
 秋の祈<『道程』詩篇>
  失はれたるモナ・リザ 根付の国 食後の酒 寂寥 新緑の毒素 地上のモナ・リザ
  犬吠の太郎 さびしきみち 冬が来る 夜 冬が来た 道程 五月の土壌 秋の祈
 雨にうたるるカテドラル<人生的詩篇>
  わが家 小娘 丸善工場の女工達 雨にうたるるカテドラル クリスマスの夜 下駄
  落葉を浴びて立つ  少年を見る 新茶 冬の奴 母をおもふ 北東の風、雨 天文学の話
  平和時代 或る墓碑銘 冬の言葉 さういふ友 或る筆記通話 激動するもの
  孤独が何で珍らしい お化け屋敷の夜
 ぼろぼろな駝鳥<ヒューマニストの歌>
  白熊 苛察 雷獣 ぼろぼろな駝鳥 火星が出てゐる 花下仙人に遇ふ 上州湯桧曽風景
  上州川古「さくさん」風景 似顔 もう一つの自転するもの
 レモン哀歌<「智恵子抄」>
  郊外の人に 深夜の雪 人類の泉 晩餐 樹下の二人 夜の二人 あどけない話
  同棲同類 人生遠視 風にのる智恵子 千鳥と遊ぶ智恵子 値ひがたき智恵子
  山麓の二人 レモン哀歌 亡き人に 梅酒 荒涼たる帰宅 松庵寺 若しも智恵子が
  元素智恵子 メトロポオル 裸形 案内 あの頃
 青空<抒情小詩・エピグラム>
  泥七宝抄 とげとげなエピグラム抄
 典型<岩手の山小屋で>
  雪白く積めり 「ブランデンブルグ」 山口部落 かくしねんぶつ クロツグミ ヨタカ
  別天地 女医になつた少女 山の少女 山からの贈物 月にぬれた手 鈍牛の言葉
  一九五〇年 典型
 暗愚小伝<生涯の途>
  家
   土下座 ちよんまげ 郡司大尉 日清戦争 御前彫刻 建艦費 楠公銅像
  転調
   彫刻一途 パリ
  反逆
   親不孝 デカダン
  蟄居
   美に生きる おそろしい空虚
  二律背反
   協力会議 真珠湾の日 ロマン ロラン 暗愚 終戦
  炉辺
   報告(智恵子に) 山林
 高村光太郎・生命感の詩人 伊藤信吉
 年譜 北川太一

この手の光太郎選詩集を何冊も編んだ伊藤信吉ですので、既存のものとの区別のためもあるのでしょうか、作品配列に工夫が為されています。いきなり「彫刻詩篇」と題して彫刻家としての光太郎自身が謳われる詩篇をもってくるあたり。