本日開幕の企画展示です。昨日、ご紹介しようと書き始めたところ、公式サイトがメンテ中だったと見えてアクセス出来ませんでしたので……。

特別展 志村ふくみ 百一寿 ―夢の浮橋―

期 日 : 前期 2026年3月3日(火)~4月12日(日)
      後期 2026年4月14日(火)~5月31日(日)
会 場 : 細見美術館 京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
時 間 : 10:00~17:00
休 館 : 毎週月曜日(ただし、5月4日は開館)、5月7日(木)
料 金 : 一般 2,000円 学生 1,500円

 紬織の重要無形文化財保持者であり、随筆家としても知られる志村ふくみ。自然から限りない色彩を抽き出し、経糸と緯糸の交わりによって深く果てしない世界を表現する稀有の染織作家です。2025年秋に101歳を迎えた現在も、美しいものを手に取りながら穏やかな日々を過ごし、心をゆさぶる自然や色彩への深いまなざしを持ち続けています。
 本展では『源氏物語』や「紫」、そして作家、石牟礼道子(いしむれみちこ)原作の新作能
『沖宮(おきのみや)』の装束など近年の特徴的なテーマを中心に、作品と綴られた言葉によって、色彩、生命、自然への尽きることのない思索と、未来へ語り伝える想いを紹介します。本展を機に構想・制作された作品2領を初公開。作家の永く実り豊かな歩みを称え、言祝ぐ展覧会です。
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主な出品作品
 新作 《朧月夜》 2025年 志村ふくみ監修 制作 都機工房
  絹糸・金糸/紫根、藍、臭木【通期展示】
 新作 《夢の浮橋》 2025年 志村ふくみ監修 制作 都機工房
  絹糸/紅花、茜、紫根、藍、刈安 【通期展示】
 《若紫》 2007年 絹糸/紫根、茜 【前期展示】
 舞衣《紅扇》 2021年 志村ふくみ監修 制作 都機工房
  絹糸/紅花、藍、刈安、臭木、紫根 【前期展示】
 小袖《Francesco》 2020年 志村ふくみ監修 制作 都機工房
  絹糸/臭木、藍 【前期展示】
 《月の湖》 1985年 絹糸/藍、玉葱 【前期展示】
 《風露》 2000年 絹糸/紅花、藍、刈安、紫根 【後期展示】
 《雛形 若菜》 2006年 絹糸 【前期展示】
 《雛形 紫格子白段》 2006年 絹糸 【前期展示】
 《雛形 蛍 生絹》 2006年 絹糸 【後期展示】
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 《五月のウナ電》 詩:高村光太郎 書・裂:志村ふくみ 【後期展示】
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光太郎詩「五月のウナ電」(昭和7年=1932)をモチーフとした裂(きれ)が展示されます。令和5年(2023)、都内の銀座大黒屋ギャラリーさんで開催された「志村ふくみ氏・洋子氏母子の作品展示販売会 五月のウナ電」の際にも展示されたものです。画像はその冒頭部分で、全体ではこの4倍ほどになっていました。

平成21年(2009)に人文書院さんから刊行された志村氏のエッセイ集『白夜に紡ぐ』中に、ずばり「五月のウナ電」というタイトルの一篇が含まれ、宇宙の彼方から、地球の木々や鳥獣禽魚たちに届けられた電報、そこに語られるアジテートへの共鳴がつづられています。

 いつの頃か、私はどこかの雑誌にのっていたこの詩につよく心ひかれて、ノートに写していた。そしていつかどんな形かで、この詩を自分の手で飾りたい、と思っていた。十数年経ったこの頃またまた読みかえし、思い切って和紙を貼ったパネルに筆でカタカナを書いてみた。全くぶっつけ本番に。そしたら文字が踊るようで、ゼンマイはうずまくし、ウソヒメやホホジロがうたい出すし、トチノキは蠟燭をたてるし、人間なんかにかまわずにみんながうたい出した。私はうれしくなって、ところどころの隙間に小さな裂をチョンチョン貼ってこの詩を飾った。

そして志村氏、交友のあった版画家の山室眞二氏と組まれて限定65部の『配達された五月のウナ電』という可愛らしい書籍も作られました。解説は当会顧問であらせられた故・北川太一先生。ちなみに山室氏は、光太郎と交流の深かった詩人・尾崎喜八令孫の石黒敦彦氏が編まれた北川先生の『高村光太郎と尾崎喜八』の装丁もなさっています。
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関連行事として、ご令嬢の志村洋子氏による講演「うつろいゆく紫の物語」(5月10日(日))も開催されます。展示のメインとなる『源氏物語』系のお話が中心かとは存じますが、「五月のウナ電」にも触れていただきたいものです。
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《五月のウナ電》は後期(4月14日(火)~5月31日(日))での出品になりますが、ぜひ足をお運び下さい。

【高村光太郎書誌】

本人著作(全体)61 『道程』名著復刻全集 近代文学館

昭和43年(1968)9月10日 日本近代文学館 高村光太郎著
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目次
 一九一〇年 失はれたるモナ・リザ 生けるもの 根付の国
 一九一一年 画室の夜 熊の毛皮 人形町 甘栗 庭の小鳥 亡命者 鳩 食後の酒 寂寥
  声 風 新緑の毒素 頽廃者より 「河内屋与兵衛」 髪を洗ふ女 「心中宵庚申」 夏
  なまけもの 手 金秤 はかなごと めくり暦 地上のモナ・リザ 葛根湯 夜半
  けもの
 あつき日 父の顔 泥七宝 ビフテキの皿
 一九一二年 青い葉が出ても 赤鬚さん あをい雨 友の妻 ――に 夏の夜の食慾 
  或る夜のこころ おそれ 犬吠の太郎 さびしきみち カフエにて 梟の族 冬が来る
  カフエにて 或る宵 夜 狂者の詩 郊外の人に 冬の朝のめざめ カフエにて
  師走十日
 戦闘
 一九一三年 人に カフエにて 深夜の雪 人類の泉 山 よろこびを告ぐ 現実
  冬が来た
 冬の詩 牛 僕等
 一九一四年 道程 愛の嘆美 群集に 婚姻の栄誦 万物と共に踊る 瀕死の人に与ふ
  晩餐
 五月の土壌 淫心 秋の祈

大正3年(1914)に抒情詩社から出た初版のカバーまで含めた完全復刻です。最初の段階では復刻としての奥付は函に貼られていました。のち、ほるぷ出版さんに版元が移ってからの版は最終ページに奥付が附されたような記憶があります。おそらくそうしないと「初版」と偽って売る悪徳業者がいたのではないかと思われます。