先週始まった企画展です。

時代の転換と美術「大正」とその前後

期 日 : 2019年9月18日(水)~10月20日(日)
会 場 : 和歌山県立近代美術館 和歌山市吹上1-4-14
時 間 : 9:30~17:00
料 金 : 一般510(410)円、大学生300(250)円
       消費税率変更に伴い10月1日より:一般520(410)円、大学生300(260)円
       ( )内は20名以上の団体料金
休館日 : 月曜日(ただし9月23日、10月14日は開館)、9月24日(火)、10月15日(火)

当館では和歌山県ゆかりの人物を軸に、大正時代に活躍した作家やグループに関わる展覧会を継続して開催してきました。それらの展覧会を通して作品や資料の収集が進んだことにより、大正時代とその前後にわたる時期の充実したコレクションが形成されつつあります。この展覧会では、そのコレクションの中から洋画と版画を中心とした作品を、同時期の社会と人に関わるテーマを通して紹介いたします。

大正は、1912年7月から1926年12月までの14年あまり、大正天皇が在位していた期間の元号です。過去のある連続した時間のまとまりを、文明や社会、政治体制など、特定の観点によって区切ったものが時代ですが、一世一元の制が定着した近代以降の日本においては、元号がそのまま時代区分として機能してきました。

元号が改まったからといって、ある日を境に人や社会が激変する訳でないことは、私たちが身をもって体験したばかりです。しかし、大正時代を中心にその前後を見渡してみれば、大逆事件、第一次世界大戦、本格的な政党内閣の成立、関東大震災、普通選挙法と治安維持法の公布、満州事変など、国際的にも国内的にも、見方によっては時代の転換点と言えるような出来事が続きました。

美術作品が人間の作り出すものである以上、ある時に起こった大きな出来事や、社会的、文化的な流行などが、その表現やテーマに影響を与えることはしばしばあります。もちろん作品の特徴を時代と結びつけるのは一面的な見方ではありますが、作り手の意図する/しないに関わらず、作品からは当時の人や社会のあり方、またそれらが変化する様子を読み取ることもできるでしょう。

元号が改められた本年、美術作品を通しておよそ100年前を振り返ることで、近代から現代に至る時代のつながりと変化を、改めて見つめ直したいと思います。

展示構成

1 自己意識の高まり –自己主張する若者たち–
 この時代の美術作品からは、自己意識を高めた若者たちの姿がうかがえます。自分とは何か、
 自分はどう生きるのか、その答えを探すかのように生まれた表現をご覧いただきます。
2 うつりかわる都市 –たち上がる帝都東京–
 新たに現れた都市の風景は、さまざまな画題を提供しています。江戸から東京への移行、関
 東大震災による崩壊から再び帝都としてたち上がる東京の姿を中心にご紹介します。
3 欧米との距離 –モダニズムの成熟–
 1918年に第一次世界大戦が終結すると、多くの日本人がヨーロッパに向かいます。西欧で新
 しい表現に目覚めた画家たちと、日本で自己の表現を深めた画家たちの作品を紹介します。
4 風景の意味 –日本を見つめる、東アジアを描く–
 交通手段、そしてメディアの発達は、見たことのない、あるいは見てみたい場所に画家たち
 を誘います。日本、そして東アジアの風景から、風景が描かれた意味を探ります。

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関連行事

◇フロアレクチャー(学芸員による展示解説)
  9月22日(日)、10月6日(日) 14時から 展示室にて(要観覧券)
◇こども美術館部「かわるがわるかわるとわかる」(小学生対象の作品鑑賞会)
  10月5日(土) 11 時から12 時 展示室にて
  (小学生は無料、同伴される保護者は要観覧券)
  *2 日前までに電話(073-436-8690)かメール(bijutsukanbu@gmail.com)で。
◇だれでも美術館部(みんなでお話しをしながら作品を楽しむ鑑賞会)
  10月5日(土) 14時から 展示室にて(要観覧券)


光太郎の油絵「佐藤春夫像」(大正3年=1914)が出て000います。若き日の佐藤が光太郎に依頼し、描いてもらったもので、これを機に、佐藤は光太郎との交流を深めていきます。

描いてもらった経緯などは、佐藤の『小説髙村光太郎像』(昭和31年=1956)などに詳細が語られています。

この絵、平成28年(2016)に、東京ステーションギャラリーさんを皮切りに、今回と同じ和歌山県立近代美術館さん、下関市立美術館さんを巡回した「動き出す!絵画 ペール北山の夢―モネ、ゴッホ、ピカソらと大正の若き洋画家たち―」展にも出品されました。

というか、今回の展覧会、「動き出す!絵画……」と、コンセプト的にも共通するものがあり、ヒユウザン会(のちフユウザン会)関係など、出品作もけっこうかぶっているようです。

他に、光太郎と交流のあった作家たちの作もかなり出ています。梅原龍三郎、有島生馬、石井柏亭、岸田劉生、戸張孤雁、木村荘八、石井鶴三、藤島武二などなど。

お近くの方、ぜひどうぞ。


【折々のことば・光太郎】

怒は人間を浄める。 怒は人類の向きをただす。 腹が立つのをおそれない。

詩「或日の日記より」より 昭和2年(1927) 光太郎45歳

のち、「怒」と改題され、内容も大幅に改訂されて詩集『道程改訂版』に収められました。

たしかに怒るべき時には怒るべきですね。