アンソロジーものの新刊です。

パリと日本人 近代文学セレクション

発行日 : 2025年12月
著者等 : 高村光太郎、林芙美子ほか 著 和田博文 編
版 元 : 平凡社
定 価 : 2,200円+税

日本人は憧れの都をどう描いたか――第一次世界大戦期から1960年代にかけてのパリにまつわるエッセイ、小説、詩のアンソロジー。

第一次世界大戦期にあたる1910年代から、五月革命が勃発する1960年代後半まで、多くの日本人が花の都パリを訪れた。彼らの目に、激動の時代のパリはどう映ったのか。最先端の美術に触れ、新たな画風を模索した蕗谷虹児、職を辞して、異国の街で思索を紡いだ森有正……。小説家や画家、哲学者など、多彩な人々によるパリを描いた31編のエッセイ・小説・詩を一冊に編む。
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目次
 第1章 憧憬の都市と、第一次世界大戦の空襲・長距離砲 第一次世界大戦以前のパリと日
 本人
  巴里の旅窓より  与謝野晶子
  雨にうたるるカテドラル  高村光太郎
  ルノワル先生  梅原龍三郎
  戦争の空気に包まれたる巴里(抄)  島崎藤村
  リュウ・ドュ・テアトルの頃  長谷川昇
  爆弾下の巴里──千九百十八年三月──  吉江喬松
  巴里の此頃  森田恒友
 第2章 ツーリズムの時代、リベリテ・エガリテという幻想 一九二〇年代~三〇年代前半
 のパリと日本人
  パリー  岡本一平
  牢屋の歌  大杉栄
  日本贔屓  獅子文六
  巴里の懺悔  芹沢光治良
  秋の一日  九鬼周造
  レヴュウ『パリゼット』  白井鐵造
  私の巴里四年  蕗谷虹児
  佐伯君の死とその前後  伊藤廉
  夜のモンマルトル  酒井潔
  異国食餌抄  岡本かの子
  『滞欧画信』より  竹久夢二
  泥手・泥足  金子光晴
  巴里の片言  林芙美子
 第3章 ファシズムの跫音、占領下のパリ ファシズムの時代のパリと日本人
  革命祭  野上弥生子
  ルーヴルの立退き  大森啓助
  巴里の雨  久生十蘭
  街頭スケッチ  関口俊吾
 第4章 哲学思想・ソルボンヌ・五月革命 一九四五年の敗戦~一九六〇年代末のパリと日
 本人
  渡仏前後  小川国夫
  私のエコール・ド・パリ地図  辻邦生
  わが哲学時代から  辻邦生
  パリの冬とその街  森有正
  ソルボンヌの壁新聞  開高健
  パリ・その象徴  草野心平
  「五月革命」のパリから  朝吹登水子
 編者エッセイ パリの視覚装置と、オルセー美術館  和田博文
 あとがき

「パリ」に特化したアンソロジーで、リアルタイムでのパリ、あるいは日本に帰ってから記憶を記したものなどがほとんどのようです。

のべ30名程の詩文が採択されていますが、登録情報としては「高村光太郎、林芙美子ほか 著」となっている他、帯に大きく印刷されている「はるか遠くの国から来たわかものの胸はいつぱいです」は、本書に採択されている光太郎詩「雨にうたるるカテドラル」(大正10年=1921)の一節です。

他に光太郎と関わりの深かった面々の作品も多数掲載されています。与謝野晶子、梅原龍三郎、草野心平、岡本一平など。

ちなみに編者の和田博文氏は、同じ平凡社さんから『日本人美術家のパリ 1878-1942』という書籍も刊行されています。アンソロジー系でも筑摩書房さんからちくま文庫の一冊として『猫の文学館Ⅰ 世界は今、猫のものになる』など。

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【折々のことば・智恵子】

ほんとうに両人のいたづらをお目にかける様なものなのです。極りのわるひ展覧会です。くだらないものと御承知で、見にいらしつて下さいまし。

「『あねさま』と『うちわ絵』の展覧会」案内状より
明治45年(1912) 智恵子27歳

光太郎と知り合った翌年、光太郎の手を離れた画廊・琅玕洞で開催された田村俊子の「あねさま人形」と智恵子の「うちわ絵」の二人展案内状から。

ことによると文面の執筆は田村かもしれませんが。