光太郎彫刻の出品がある展覧会、2件ご紹介します。

まず広島県から。既に始まっています。

東京藝術大学大学美術館名品展 美の殿堂への招待

期 日 : 2025年10月4日(土)~12月7日(日)
会 場 : ふくやま美術館 広島県福山市西町二丁目4番3号
時 間 : 9:30~17:00
休 館 : 月曜日 10月13日(月・祝) 11月3日(月・祝) 11月24日(月・振休)は開館、翌日休館
料 金 : 一般1,800円 (1,440円) 高校生以下無料  ​
       ( )内は前売りまたは有料20名以上の団体料金

 東京藝術大学は、その前身である東京美術学校(1887年設置)の時代から美術教育のための優れた美術品の収集に力を注いできました。現在、収蔵品の数は、古美術から現代美術までおよそ30,000件を数えます。1999年には、そのコレクションを学外の人々にも紹介するため東京藝術大学大学美術館が開館し、現在に至るまで数多くの展覧会が開催され、収集活動が続けられています。
 本展は、大学が所蔵する膨大なコレクションの中から近代の美術作品に焦点を絞り、「1.近代美術の幕開け」、「2.ロマン主義のなかで」、「3.自画像-画家たちの青春」、「4.モダニスムを超えて」の4つの章で構成し、大学と関わりの深い美術家たちを中心に、すぐれた作品を余すことなく紹介します。
 出品作品は、高橋由一《鮭》、狩野芳崖《悲母観音》(前期展示)などをはじめ、日本画、洋画、彫刻、工芸などの各分野からあわせて120点を紹介します。ふだんあまり目にすることが出来ない、貴重な作品の数々を一堂に観覧することで、大学美術館におけるコレクションの魅力をより身近に感じていただけることを願って開催します。
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関連行事
(1)記念講演会1「藝大コレクションの起源と現在、そして瀬戸内」
 日  時:10月4日(土)14:00~15:30
 講  師:村上 敬(東京藝術大学大学美術館 准教授)
 会  場:ふくやま美術館1階ホール
 定  員:100名 ※当日先着順、聴講無料
(2)記念講演会2「東京藝術大学所蔵の工芸」
 日  時:11月15日(土)14:00~15:30
 講  師:黒川 廣子 (東京藝術大学大学美術館 館長)
 会  場:ふくやま美術館2階多目的室
 定  員:80名 ※当日先着順、聴講無料
(3)ギャラリートーク ※各日ともに特別展観覧券が必要
 日  時:10月4日(土) 10:00~11:00 
 講  師:村上 敬 (東京藝術大学大学美術館 准教授)
 会  場:ふくやま美術館1階企画展示室、2階常設展示室第1室

 日  時:11月15日(土)10:00~11:00 
 講  師:黒川 廣子 (東京藝術大学大学美術館 館長)
 会  場:ふくやま美術館1階企画展示室、2階常設展示室第1室

 日  時:11月22日(土) 14:00~15:00
 講  師:当館学芸員
 会  場:ふくやま美術館1階企画展示室、2階常設展示室第1室
(4)ワークショップ 「身近なもので絵具を作ろう!」
 身近な土や貝を使って自分だけの絵具を作るワークショップを実施します。
 展示している作品にも様々な色が使われています。
 そんな色たちとより深く関わってみましょう。
 日 時:11月16日(日)  (1)10:00~12:00 (2)13:30~15:30
 会 場:ふくやま美術館1階 ロビー
 講 師:当館職員
 対 象:どなたでも(こどもの場合は保護者同伴)
 参加費:1人500円 ※予約不要
(5)第64回ミュージアムコンサート「美の殿堂、その先へ―音で聴く東京藝大展」
 日 時:10月25日(土)開場18:00 開演19:00
 ※開演前に「東京藝術大学大学美術館名品展 美の殿堂への招待」をご鑑賞いただけます。
 出 演:切田光星(バリトン)、小林広歩(ピアノ)
 会 場:ふくやま美術館1階ロビー
 入場料:一般 1,500円、高校生以下無料(整理券有)、未就学児入場不可
 定 員:150名(先着順)

ネット上に出品目録が出ています。
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光太郎彫刻はブロンズで「獅子吼」(明治35年=1902)。東京美術学校の卒業制作です。経巻を擲って腕まくりをし、憤然として立つ日蓮をモチーフとしています。
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それから光太郎実弟にして鋳金分野で人間国宝となった豊周の「提梁花瓶」(昭和21年=1946)。
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令和元年(2019)、東京都庭園美術館さんで開催された「アジアのイメージ―日本美術の「東洋憧憬」」の際に拝見して参りました。

さらに、出品目録に名は記されていませんが。光太郎・豊周兄弟の父・光雲の木彫も。作品名は「綵観」。明治38年(1905)の作で、18人の作家による合作のため、出品目録では全員の名を割愛したようです。
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11月3日(月・祝)までの前期で、光雲木彫部分(上の画像で言うと右から二枚目)を含む表面が展示されます。

こちらは平成29年(2017)年、東京藝術大学大学美術館さんで開催の「東京藝術大学創立130周年記念特別展「皇室の彩(いろどり) 百年前の文化プロジェクト」」で拝見して参りました。

他にも荻原守衛、横山大観、藤田嗣治など、ビッグネームがずらりです。また、それほど有名ではありませんが、白瀧幾之助、南薫造など、光太郎と交流の深かった面々の作も。

紹介すべき事項の山積が続いており、同様に光太郎彫刻の出る展覧会をもう一件。今度は北海道です。

札幌芸術の森開園40周年記念 彫刻三昧 札幌芸術の森美術館の名品50選

期 日 : 2025年10月11日(土)~2026年1月4日(日)
会 場 : 本郷新記念札幌彫刻美術館 札幌市中央区宮の森4条12丁目
時 間 : 10:00~17:00
休 館 : 月曜日(月曜祝日の場合開館し火曜日休館)、年末年始(12/29~1/3)
料 金 : 一般600円(500円)、65歳以上500円(400円)、高校・大学生400円(300円)
      中学生以下無料 ( )内は10名以上の団体料金

 国内外の近現代彫刻史を彩る作家の作品をたっぷりと楽しむことができる展覧会です。
 彫刻に生命の息吹を吹き込み〝近代彫刻の父〟と言われるロダン。その影響を受けながらも独自の造形を開花させたブールデル、デスピオ、マイヨール…。また、ドガやルノワールなどの画家も絵画の作風そのままに彫刻を手がけています。さらに、キュビスムの彫刻への応用や、再現を離れた純粋な抽象化へ挑戦、戦後イタリアでの新たな具象の試みなど、次々と立体造形の可能性を広げる斬新な表現が生み出されていきました。
 日本においても、海外の動きを受容しながら、伝統的な美意識とも照らしつつ、切磋琢磨するなかで、多彩で豊かな展開がみられます。そこには、戦後、街なかや公園などへの彫刻設置が全国的に盛んになるという追い風もありました。
 1986年に開園した札幌芸術の森は、来年40周年を迎えますが、そのメイン施設である野外美術館には、二度の拡張を経て、日本彫刻が最も勢いがあったと言われる’80~’90年代を代表する彫刻家の作品が多数設置されています。札幌芸術の森美術館では、その多種多様な表現につながる近代以降の流れをたどれることを目指して開館準備段階から収集を続け、国内有数の彫刻コレクションを形づくってきました。
 本展は、その中から厳選した50点を展示するものです。魅力溢れる彫刻の数々をお楽しみください。
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こちらでの光太郎作品は「薄命児」(明治38年=1905)。浅草花やしきで興行を打っていたサーカス団の幼い兄妹がモデルです。ただ、現存するのは兄の方の頭部のみですが。
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先程の「獅子吼」にしてもそうですが、留学に出る前、光太郎はこうしたストーリー性のある彫刻を喜んで作っていました。日本の彫刻界全体がそんな感じでしたし。しかし、後にそれは邪道だと気づき、物語を排した純粋な造型を目指すようになっていきます。

他には光太郎の心の師・ロダンをはじめ、ブールデルやマイヨール、日本人ではやはり荻原守衛、さらに石井鶴三、高田博厚、佐藤忠良、舟越保武など、ある意味お約束の面々が並びます。

それぞれぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

――其頃の芸術家は「見る」眼を持つてゐたのです。しかるに今日の芸術家は盲目です。此所に一切の相違がある。ギリシヤの女達は美しかつた。しかし其の美は彼等を再現した彫刻家の頭の中に存してゐたのです。


光太郎訳 ロダン「ロダンの言葉 ポール グゼル筆録」より
大正5年(1916)頃訳 光太郎34歳頃

とにかく「見る」眼がないと、どうにもならないとのことで……。