一昨日、六本木の国立新美術館さんでの第120回記念 2025年太平洋展拝観後、品川に足を向けました。次なる目的地は品川駅近くのキヤノン S タワー内にあるキヤノンオープンギャラリー。こちらで「東京写真月間2025 国内企画展 髙村 達 写真展 Re Flowers」が開催中です。
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髙村達氏は、長男でありながら家督相続を放棄した光太郎に代わって髙村家を嗣いだ光雲三男にして鋳金分野の人間国宝・髙村豊周令孫の写真家です。お父さまの故・規氏も写真家でした。

ここで写真展詳細情報を。

東京写真月間2025 国内企画展 髙村 達 写真展「Re Flowers」

期 日 : 2025年5月20日(火)~6月23日(月)
会 場 : キャノンオープンギャラリー1 港区港南2-16-6 キヤノン S タワー2F
時 間 : 10時~17時30分
休 館 : 日曜日
料 金 : 無料

 本展は写真家 髙村達氏による写真展で21点の作品を展示します。東京写真月間実行委員会が主催する「東京写真月間2025」の国内企画展の一環で、「写真の力で伝えよう 未来に希望を」をキャッチフレーズにSDGsを意識した写真展のシリーズVol.4として開催します。
 なお、本年の国内企画展は「写真で伝えようSDGs」を継続テーマとして、日頃写真を通して様々なアプローチでSDGsを表現している7名の出展者が選出され、都内6会場で写真展を開催します。展示作品は日本写真協会会員を対象にした公募形式で作品を募集しました。いずれも多面的な視点で「SDGs」についての取り組みが表現された写真展です。
 本会場の作品はすべてキヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」を使用してプリントし、展示します。

作家メッセージ
 高精細な表現と長期保存のプリント作品を意識するようになり風景写真と同じくマクロ撮影に興味を持ち、自然の中の緻密な植物の模様や表情をスタジオで撮影した。植物のディテールが撮影できた時、植物に対する興味が深まり散歩をしながら落ち葉やお花など植物を拾いノートに挟んだ。背景も金属の板に模様を描いては削り外で雨や風にさらして錆を繰り返して作りライティングをして僅かな陰影を活かし撮影をしました。今回の「Re Flowers」押し花は自然の中のお裾分けの一部であり今後も撮り続けていきたいテーマです。
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達氏が副会長を務められている日本写真家協会さんとしての「国内企画展 SDGsシリーズvol.4 写真の力で伝えよう SDGs」の一環という位置づけだそうです。

さて、レポートを。
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入口から入ると、基本的に会場内は暗く、黒い壁をバックにして各作品にスポットが当てられているという構成。藤城清治氏の影絵のような。と言っても真っ暗というわけではありません。こういうやり方もありなんだな、と思いました。
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来場の方に開設されている達氏。この後、当方も詳しく説明を拝聴しました。

基本、風雨に晒して錆びさせた鉄板をバックにし、散ったり朽ちかけたりした葉や花弁などを置いて撮影されているそうです。ものによって拡大率等が異なるようですが、マクロ撮影が中心ですね。そのデータをキャノンさんのプリンタを使って、漆喰をシート状に加工した特殊なインクジェット紙にプリントアウトする「フレスコジクレー」という技法です。それによって顔料が漆喰に浸透して耐久性が増し、褪色が防げるとのこと。中世ヨーロッパのフレスコ画に近いやり方ですね。
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参観された方から「智恵子の紙絵に似ていますね」という声が寄せられたそうです。なるほど、と思いました。

和紙にプリントされた作品も。
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実際に上記の方法で制作された作品そのものも1葉、いただいて参りました。ハガキ大の小さなものですが。
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もはや一般的な「写真」という概念には収まらない感じですね。絵画や彫刻などの世界でも、新しい素材が開発されたり従来見られなかった手法が取り入れられたりと日進月歩ですが、写真の分野でもそうなのだと思いました。

今後のさらなるご活躍を祈念いたします。

皆様もぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

此間の絹地の小さい方に「わが山に」のうたを書きました、小包にするのが厄介なので中西さんの奥さまに托しました いつでもお渡し出来ます、


昭和28年(1953)7月29日 奥平英雄宛書簡より 光太郎71歳

奥平英雄は戦時中から交流のあった美術史家。この頃、東京国立博物館に勤務していました。

書もよくした光太郎、奥平には書画帖『有機無機帖』をはじめ、多くの書を進呈しています。「わが山に」は短歌。複数の揮毫例があり、「わが山に」ではなく「吾(われ)山に」となっているものが多く存在します。
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上記は奥平に贈られた物ではありません。「吾山に 流れてやまぬ 山みづの やみがたくして 道はゆくなり」と読みます。

また、「道はゆくなり」が「この道はゆく」、「あしき詩を書く」などとなっている異稿も存在します。