先月12日に開幕した和歌山県立近代美術館さんの「佐藤春夫の美術愛」展。佐藤が所蔵していた美術作品、61件148点の寄贈を受けて開催されています。

開幕前の準備段階で、そのうちの光太郎に関わる出品物について照会があり、分かる範囲でお答えいたしました。すると、その御礼というわけでしょう、同展図録及び招待券等が届きまして、恐縮している次第です。
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図録は正確には「パンフレット」と銘打たれており、A5判並製の簡易的なものです。それでもオールカラー30ページ、解説も充実しており、いい出来です。

以前にも書きましたが、光太郎作品が2点。油彩の「佐藤春夫像」(大正3年=1914 以前からの寄託品)と、ブロンズの「大倉喜八郎の首」(大正15年=1926)です。光太郎と交流のあった石井柏亭や川西英の作品も含まれ、他に川上澄生、谷中安規、恩地孝四郎、ゴヤ、ビゴーなどのビッグネーム。そして佐藤自身が描いた日本画や油絵。興味深く拝読しました。

同展についてはNHKさん、『読売新聞』さんの報道をご紹介しましたが、『朝日新聞』さんでも光太郎に触れつつ記事にして下さいました。

佐藤春夫ゆかりの版画や絵画を展示 和歌山県立近代美術館

 明治から昭和にかけ、小説や詩などで大きな足跡を残した和歌山県新宮市出身の佐藤春夫(1892~1964)ゆかりの版画や絵画など美術作品を紹介する展覧会「佐藤春夫の美術愛」が、県立近代美術館(和歌山市)で開かれている。6月29日まで。
 主に文学の世界で活躍した春夫だが、「二十のころの希望は文学と美術との二つに分かれていた」と若き日のことを回想している。上京後には高村光太郎と親交を結び、自ら絵筆をとって二科展で連続入選を果たしたこともある。
 同館は昨年度に春夫の遺族から美術作品148点の寄贈を受けたことがきっかけで、初めて企画展を開催した。会場には、高村が描いた春夫の肖像画や、春夫自身が筆をとった油彩画「花」などを展示。春夫と親交が深かった版画家・谷中安規(たになかやすのり)の作品なども並ぶ。
 開館時間は午前9時半から午後5時(入場は4時半まで)。休館日は月曜日(5月5日は開館)と5月7日。観覧料は一般600円、大学生330円。高校生以下、65歳以上、障害のある人は無料。
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佐藤春夫が描いた「花」、版画家・谷中安規の作品「文豪 佐藤春夫」、高村光太郎が描いた「佐藤春夫像」

同展、6月29日(日)までです。ぜひ足をお運びください。

【折々のことば・光太郎】

今日は日曜なので少しゆつくりいたしました、なるべく外出もせず、人にもあはぬやうにしてゐます、


昭和28年(1953)2月8日 椛沢佳乃子宛書簡より 光太郎71歳

佐藤が青森県と光太郎を仲介し、実現を見ることとなった生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作に関わります。光太郎にとっては「月月火水木金金、土曜日曜あるものか」でしょうが、雇っていたモデルに対してはそうもいかないようで、この日は制作を休みました。その分、溜まっていた来翰への返信をたくさん書いています。