奥付では今日発行ですが、既に店頭に並んでいるでしょう。日本女子大学校での智恵子の先輩にして、智恵子に『青鞜』創刊号の表紙絵を依頼した平塚らいてうの伝記漫画です。電子版も出ています。

小学館版 新学習まんが人物館 平塚らいてう

発行日 : 2025年3月30日
著者等 : 監修 差波亜紀子 まんが 上川敦子 シナリオ 江橋よしのり
版 元 : 小学館
定 価 : 1,100円+税

元始、女性は太陽であった!
累計300万部突破の「学習まんが人物館」シリーズが、新たなソフトカバーのシリーズとなりました。その第4弾として「平塚らいてう」が登場します。女性だけの手による雑誌『青鞜』を創刊。その創刊号で彼女は「元始、女性は太陽だった」とうたいあげます。創刊号の表紙は長沼智恵子(後の高村光太郎夫人)が担当。さらに歌人の与謝野晶子が原稿を寄せるなど、そうそうたるメンバーでの船出でした。また彼女は、婦人参政権の獲得を目指して「新婦人協会」を立ち上げるなど、女性の権利を求め続けます。一人の女性として、母として、人間として85年の生涯を駆け抜けた彼女の原点に迫ります。

2025年は国連が「国際女性デー」(3月8日)を制定してから50年の節目の年です。SDGs的な観点からもたいへんためになる1冊です。また、まんがを描いた上川敦子さんは、これまで「上川敦志」のペンネームで『ロボットボーイズ』『スティーブ・ジョブズ』『学習まんが 日本の歴史(15巻、16巻)』(すべて小学館)などの著作がありますが、今回は「平塚らいてう」を描くということで、あえてご自身の性である女性名での登場です。実際に1児の母である彼女の、魂のこもった作画にもご注目ください。
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目次
 平塚らいてう写真館 女性の権利を求め続けた不屈の運動家 平塚らいてう
 プロローグ
 第1章 良妻賢母なんて知らない
 第2章 わたくしはわたくし
 第3章 「新しい女」とよばれて
 第4章 母となる
 第5章 母性保護と婦人参政権
 エピローグ
 学習資料館
  解説 女性の生きづらさに抗議した運動家 差波亜紀子
  学習人物ガイド 平塚らいてうゆかりの人物 与謝野晶子 長沼智恵子 市川房枝 伊藤野枝
  年表 平塚らいてうの時代


小学館さんで刊行されていた「学習まんが人物館」シリーズ。当会顧問であらせられた故・北川太一先生の監修になる『高村光太郎・智恵子 変わらぬ愛をつらぬいたふたつの魂』(平成9年=1997)も含まれていました。関係するラインナップとして本書の帯に紹介されています。

そちらが全74巻でいったん完結し、新シリーズとして4冊が刊行され、そのうちの1冊です。旧シリーズがハードカバーだったのに対し、ソフトカバーに変更、判型も一回り小さくなりました。

監修及び解説は日本女子大学さんの差波亜紀子教授。女子教育史等がご専門で、やはりらいてうを扱ったNHK Eテレさんの「先人たちの底力 知恵泉 新しい女の生き方 明治・大正編 平塚らいてう」(令和2年=2020)などにもご出演されています。

で、智恵子。あまり登場シーンは多くありませんが、主要登場人物の一人と位置づけられています。
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初登場のシーン。明治37年(1904)頃、日本女子大学校のテニスコートです。
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同じシーンが、朝日新聞出版さん刊行の『週刊 マンガ日本史 平塚らいてう 飛び立て「新しい女たち」』(初版 平成22年=2010、改訂版 平成28年=2016)だと、智恵子は完全に悪役顔でしたが(笑)。
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そして『青鞜』。
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分量としては『青鞜』時代までが多く、その後の与謝野晶子らとの母性保護論争や婦人参政権獲得の運動、戦後の平和活動などはざっとという感じですが、全体になかなかの出来だと思いました。

ぜひお買い求めを。

【折々のことば・光太郎】

東京は空気がわるいだらうとおもふのでこれだけは少々心配です。山の空気があまりきれい過ぎますから。


昭和27年(1952)7月23日 安藤一郎宛書簡より 光太郎70歳

生涯最後の大作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)」制作のため、上京する旨を伝えた後の一節です。足かけ8年の岩手での暮らしを経て、かつて「東京に空が無い」とつぶやいた智恵子の心境に共感できるようになっていたようにも思われます。