1泊2日で仙台に行っておりました初日の7月22日(月)、仙台市内をぶらぶらしました。

まずは仙台駅近くの青葉区本町にある島川美術館さん。以前は蔵王山麓の遠刈田温泉にあり、その頃の名称が「エール蔵王 島川記念館」でした。それが令和元年(2019)に仙台市内に移転、「島川美術館」と改称されました。

健康食品販売メーカー「ジャパンヘルスサミット」という会社の島川隆哉社長のコレクションが根幹で、主に国内の近代美術作家の作品、1,000点ほどが収蔵されています。一部、海外のものも。
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光太郎の父・光雲作の木彫「聖観音像」もあるということで、お邪魔しました。「エール蔵王 島川記念館」時代から収蔵されており、平成29年(2017)にやはり蔵王の青根温泉不忘閣さんに宿泊した際、すぐ近くを通っていながらその頃はそれを存じませんで、通り過ぎていました。そこで、現在「聖観音像」も常設展示されているという情報を得、今回、お邪魔した次第です。

失礼ながら、「え、こんなところに?」という立地でした。広瀬通り、勾当台通り、定禅寺通りといった大通りから入っていく細い道沿いで、いかにも、という佇まいではないごく普通のビルでした。
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c3a12284こちらの2階から5階が展示フロアで、受付の方曰く、まず5階までエレベータで上がり、順繰りに階下に降りて行くのがしきたりだそうでした。

云われた通り5階に上がりますと、まずは現代美術がメインのフロア。続いて4階に降りたところ、入口付近に「聖観音像」が鎮座ましましていらっしゃいました。「鎮座」というか、立像ですが(笑)。

昭和3年(1928)、光雲数え77歳の作だそうで、そろそろ晩年、もはや刀技は円熟の境地に入っています。ことによると弟子の手が入り、仕上げのみ光雲という工房作かもしれませんが、そうでない可能性の方が高いかな、という見事な作でした。

若い頃、「生涯に百体の観音像を彫りたい」という目標を持った光雲ですが、昭和7年(1932)に記録された談話では「今日では二百体であるか三百体であるか一寸数え切れない程観音様を作つて居ります」と語っていて、もうこの頃には眼をつぶっていても出来てしまうんじゃないか、という感じですね(笑)。といっても「粗製濫造」という言葉は全く当てはまりません。

それでも「逃げるべきところはきちんと逃げている」というのが確認できました。

ポイントは、持物(じぶつ)の蓮華や衣など。
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赤丸を附けた部分、垂れ下がった衣や紐が身体や台座とくっついています。蓮華も正面からだと分かりませんが、横から見ると、肩に触れているのです。このくっついている部分を切り離して作るとなると、細く彫り出した部分が折れてしまう危険性が非常に高くなりますが、それをくっつけて彫ることによって、その危険度が軽減しますし、手間もかなり省けます。結局、「穴」をあけることになるわけで。

よくよく注意して見ないと気づかない点で、おそらく受けとった注文主などもそんなことは全く気にしないでしょうし、それが気にならないように自然にやっているわけですね。いい意味での「手抜き」といえるのではないでしょうか。そういう工夫をしなければ量産は不可能でしょう。

この持物等が身体にくっついている件、光雲令孫から花巻市さんに寄贈された「天鈿女命」像と、そのための原図を見ていて気づきました。
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005原図では身体から離れている榊の枝が、完成作では後頭部にくっついています。

「聖観音像」でも同じようなことをやっていたんだなというのが確認できました。

ふむふむ、と思いながら3階に降りたところ、やはり入口付近でびっくりしました。「え、あなた、なぜここに居るの?」。といっても人ではなく、右図の光太郎作「十和田湖畔の裸婦群像(通称・乙女の像)中型試作」です。

ブロンズの像は同一の型から鋳造したものが複数存在し、この像も花巻高村光太郎記念館さんはじめ、二本松の智恵子記念館さん、信州安曇野碌山美術館さん、千葉県立美術館さん、大阪の御堂筋彫刻ストリートなどにあるのですが、島川さんでも持っているというのは存じませんでした。

ちなみに隣には「乙女の像」のDNAを受け継ぐ秋田田沢湖の「たつこ像」(舟越保武作)も仲良く並んでいました。

その他、光雲・光太郎と交流のあった美術家の作がずらり。横山大観、岸田劉生、梅原龍三郎、安井曾太郎、板谷波山など。

それから、意外と珍しい田中一村や鴨居玲などの作品もあり、まさに眼福でした。

帰りがけ、A4変形版150ページ近い図録を購入。「聖観音像」も載っています。「エール蔵王 島川記念館」時代に刷られたもので、「収蔵作品選」と題されていました。この厚さでほぼオールカラーですので「2,500円くらいだろう」と予想したのですが、何とたったの1,000円。
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ついでに云うなら、入館時、拝観料1,000円を払ったところで、クリアファイルとポストカード3枚組も頂いてしまいました。何と良心的な館なのだろう、と感じ入りました。

というわけで、島川美術館さん、仙台にお出での際はぜひお立ち寄り下さい。

【折々のことば・光太郎】

記念碑の写真おうけとりしました。碑はきれいに彫れたやうに見うけます。


昭和23年(1948)9月2日 宮崎稔宛書簡より 光太郎66歳

「記念碑」は宮崎の父・仁十郎が檀家総代を務めていた茨城取手の長禅寺に建てられた「開闡郷土」碑。光太郎がその題字を揮毫しました。
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碑は長禅寺参道石段の右手に現存しますが、繁茂する篠竹に覆われ、視認が困難な状況になっています。