都内から朗読&ジャズのライブの情報です。

ノスタルジックな世界[]

期 日 : 2024年6月29日(土)
会 場 : 名曲喫茶ヴィオロン 
      東京都杉並区阿佐谷北2-9-5
時 間 : 19:00~
料 金 : 1,000円(1ドリンク付)

出 演 : ピアノ弾き 藤澤由二
      朗読、歌うたい MIHOE

宮沢賢治、中原中也、高村光太郎その他オリジナルなど

藤澤氏のJAZZ演奏 古い蓄音機に囲まれたヴィオロン店内 ノスタルジックな詩とJAZZの世界

お客様一人ひとりがゆったりと思いを馳せる時間 「ノスタルジックな世界」ライブです お待ちしております

MIHOE氏、藤澤由二氏、確認できている限り、一昨年昨年(2回)も同じ会場で光太郎詩を取り上げて下さいました。このスタイルに思い入れがおありなのでしょうし、繰り返しやられるということは好評なのでしょう。

当方、足を運ぶつもりでおります。皆様もぜひどうぞ。

【折々のことば・光太郎】

「ブランデンブルグ」などおよみ下された由、小生の詩感は当然前時代的ですが、生きてゐる以上はそんな事を顧慮してゐる暇もなく、小生は小生なりに自己内面の世界を押し進める外ありません。小生まつたく一人は一人の世界となりましたので、山の中にゐて却つて遠い世界にまで心が解放されたやうな思です。

昭和23年(1948)1月14日 真壁仁宛書簡より 光太郎66歳

ブランデンブルグ」は前年に書いた詩。この年元日号の雑誌『展望』に発表されました。同じ日の『群像』には「脱卻のうた」(「卻」は「却」の正字)を寄稿しています。

前年、懸案だった自己の生涯や戦争責任を振り返る連作詩「暗愚小伝」20篇を発表し、一つステージが上がったかな、という感じです。003

  脱卻の歌

 廓然無聖と達磨はいつた。
 まことに爽やかな精神の脱卻だが、
 別の世界でこの脱卻をおれも遂げる。
 一切を脱卻すれば無価値にいたる。
 めぐりめぐつて現世がそのまま
 無価値の価値に立ちかへり、
 四次元世界がそこにある。
 絶対不可避の崖つぷちを
 おれは平気で前進する。
 人間の足が乗る以上、
 けつきよく谷川のいっぽん橋も
 ブウルバアルも同じことだ。
 よはひ耳順を越えてから、
 おれはやうやく風に御せる。
 六十五年の生涯に
 絶えずかぶさつてゐたあのものから
 たうとうおれは脱卻した。002
 どんな思念に食ひ入る時でも
 無意識中に潜在してゐた
 あの聖なるもののリビドが落ちた。
 はじめて一人は一人となり、
 天を仰げば天はひろく、
 地のあるところ唯ユマニテのカオスが深い。
 見なほすばかり事物は新鮮、
 なんでもかでも珍奇の泉。
 廓然無聖は達磨の事だが、
 ともかくおれは昨日生まれたもののやうだ。
 白髪の生えた赤んぼが
 岩手の奥の山の小屋で
 甚だ幼稚な単純な
 しかも洗ひざらひな身上で、
 胸のふくらむ不思議な思に
 脱卻の歌を書いてゐる。

国全体、そして光太郎自身も道を踏み誤らせた天皇制の呪縛からの解放、ということになるでしょうか。

右上画像はこの詩の一節を揮毫した書。智恵子の故郷・福島二本松、岳温泉の「あだたらの宿扇や」さんロビーに飾られています。