6月15日(土)のことですが、千葉県匝瑳(そうさ)市にある松山庭園美術館さんに行って参りました。

そもそもは先月末の地元のタウン紙に載った紹介記事。
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「第21回猫ねこ展」だそうで、こちらを拝読し、猫好きの妻を連れて行こうと考えました。

ちなみに妻に溺愛されているのはこいつです。子猫の時に娘が拾ってきて、今月で8歳になりました。
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あくまで溺愛しているのは妻であって、当方ではありません(笑)。

閑話休題。同館について調べてみると、光太郎とゆかりの作家達の作品も複数点が収蔵展示されていることが分かり、これは行かねば、と思った次第です。

自宅兼事務所から1時間弱。
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「庭園美術館」と謳うだけあって、なるほど、里山的な環境を取り入れた庭園。新緑がいい感じでした。
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楓の木が多いので、紅葉シーズンは見事でしょう。館のパンフレットも紅葉をあしらっていました。
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元々はアート作家・此木三紅大(このきみくお)氏がご自身のアトリエを美術館に改修されたそうで、開館25周年だそうです。

此木氏、猫好きなのでしょう。猫をモチーフとした氏の作品がお出迎え。
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氏の作品に混じって、氏が集められたと思われる年代物の猫アート、猫オブジェもあちこちに。
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既に「猫だらけ」(笑)。

さて、第一目的の常設展示室へ。
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まずは、何はなくともこれが観たかった、光太郎曰く「火だるま槐多」こと村山槐多のデッサン。4月に信州で見逃しましたので。
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右側に槐多自身の詩が書き込まれています。

われもし盲せば/この語程かなしく辛きはあらず、/われには更に二十年の艶麗なる視覚世界のまてるに、/大丈夫 天は俺を愛して居るぞ

いいですね。

他にも光太郎人脈。

光太郎が東京美術学校彫刻科を卒業してから入学し直した西洋画科で教鞭を執っていた藤島武二。ちなみにその際の同級生には藤田嗣治、岡本一平などがいました。ただし光太郎、そちらは卒業せず、中退の形で欧米留学に出ました。そこで卒業生名簿の西洋画科の項には名が無く、藤田や岡本と同級生だったことは意外と知られていないようです。
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大正初め、ヒユウザン会(のち、フユウザン会)で光太郎と一緒だった萬鉄五郎。
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主宰する雑誌『雑記帳』に光太郎の寄稿を仰いだ松本竣介。
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他に三岸好太郎、長谷川利行などのビッグネームも。
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これらを堪能したところで、第二目的の「猫ねこ展」。猫好きの妻は既にそちらに(笑)。
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プロアマ問わずの公募展で、何と350名、500点ほどの「猫」。絵画あり、彫刻あり、写真あり、クラフト系あり、モチーフ的にも写実にとどまらず、パロディあり、オマージュあり……。とにかく「猫づくし」です(笑)。
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右上の縦に2枚並んでいる絵は、お笑い芸人コンビ・U字工事さんのお二人の作。6月5日(水)にオンエアのあったBS-TBSさんの番組「ねこ自慢」で、お二人が同館をご訪問、「猫ねこ展」紹介の後、お二人も猫絵に挑戦、というコンセプトで描かれたものでした。
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ちなみに、観覧者を対象に展示作品の人気投票があり、当方が選んだのはこちら。
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こうしたメッセージ性もアートの重要な要素ですから。

展示室にはリアル猫も(笑)。
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同館、10匹の猫がいて、気ままに過ごしています。

「ねこ自慢」から。
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この日はこのうち7~8匹程と遭遇できました。

まず既に入場する前から。
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同一の個体かどうか、のちほどバックヤードでご飯中の黒猫も(笑)。
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下の画像の子は我々が到着してから帰るまで、ずっとこうでした(笑)。
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オッドアイの子も。
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まだまだ居ます(笑)。
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まさに「猫まみれ」(笑)。

「第21回猫ねこ展」、7月28日(日)までの開催です。ただし、金土日および祝日のみの開館ですのでご注意下さい。

帰途、回り道をして、隣接する旭市の「道の駅 季楽里(きらり)あさひ」さんに立ち寄りました。
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花卉の販売コーナーが充実しており、「あるかな?」と思って入ったところ、ありました。
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グロキシニアです。通常の花屋さんなどだとほとんど見かけません。明治45年(1912)5月末か6月初頭、竣工成った駒込林町の光太郎アトリエ兼住居の新築祝いとして、前年に知り合った智恵子が持参した花です。その後光太郎は、くりかえしこの花を詩文に謳い込みました。

かつて二本松でいただいたもの一昨年購入したものは枯れてしまい、またぜひ入手したいと思っていましたので、タイムリーでした。

というわけで、松山庭園美術館さん、道の駅 季楽里(きらり)あさひさん、ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

鎌田さんから数日前に「智恵子抄」の再出版の見本を送つて来ましたが、貴下のおてがみによると、澤田さんと十分の諒解が無かつたことが分り、その当時澤田さんの許諾をうけたやうに申された鎌田さんの言を信じてゐた小生としては、何だかみんなイヤになりました。又当分出版に関係するのは止めようかと考へてゐます。


昭和23年(1948)1月11日 森谷均宛書簡より 光太郎66歳

オリジナル『智恵子抄』は太平洋戦争開戦直前の昭和16年(1941)8月に澤田伊四郎の龍星閣から刊行され、戦時にもかかわらず昭和19年(1944)の13刷まで増刷されました。その後、戦争の影響で龍星閣は休業。戦後になると店頭からは『智恵子抄』が消えてしまっていました。

そこで休業中の龍星閣に代わって、白玉書房の鎌田敬止が『智恵子抄』復刊を企図し、澤田から許諾を得たので、と光太郎に打診。光太郎もGOサインを出し、さらに戦後の詩「松庵寺」「報告」を追加して前年に刊行されました。

しかし、澤田が「鎌田に許諾した覚えはない」と言いだし(このあたり、真相は闇の中です)、昭和25年(1950)に龍星閣が復興すると、翌年から『智恵子抄』の再刊を始めます。

ここまでいかずとも似たようなトラブルが他にもあり、光太郎にとって受難の時期でした。