本日開幕です。
《出品予定作家》
松本明慶 高橋勇二 高村光雲 平櫛田中 他
フライヤーに光太郎の父・光雲の「太子像」。光雲が得意としたモチーフの一つで、複数の作例が確認できています。ただ、画像だけでは、弟子の手が入った「工房作」なのか、光雲単独の作なのかは判然としません。
おそらく5月8日(水)~18日(土)、そごう大宮店さんで開催された同名の展観の巡回的な、同じ業者さんによるものだと思われます。
光雲の木彫、間近に見られる機会はそう多くありません。
ところで「光雲」「弟子」といえば、昨夜、地上波テレビ東京さん系でオンエアされた「開運!なんでも鑑定団」。番組予告欄に「上野&皇居前のアノ像を作った…<天才彫刻家作>ウマすぎる像」とあったので、てっきり光雲だと思って紹介したのですが、光雲ではなく、上野公園の西郷隆盛像の犬、皇居前広場の楠正成像の馬を手がけ、「馬の後藤」と呼ばれた後藤貞行の作でした。「ウマすぎる像」の「ウマ」は「馬の後藤」に引っかけていたのですね。気づきませんで、「そうだったのか、やられた!」という感じでした。
依頼品はその後藤作という馬の丸彫り。
以前に同じ番組で、レリーフや絵が出たことがありましたが、丸彫りは初めてではないでしょうか。
作者紹介のVはいつもどおり秀逸な出来でした。光雲にも触れて下さいました。
この「ツン」の部分は後藤の手になるものだ、と。
西郷像より前に楠公像制作の依頼があった際(いろいろあって除幕は西郷像の方が先でしたが)は、後藤は東京美術学校に勤務しておらず……しかし、馬の部分にはどうしても後藤の手を借りたい光雲は校長・岡倉天心に直談判。このエピソードは『光雲懐古談』に語られています。
そうして美校に雇ってもらった後藤ですが、だからといって妙な忖度はせず、光雲ともやり合いました。このあたり、気骨を感じますね。
期 日 : 2024年5月29日(水)~6月4日(火)
会 場 : 大和百貨店富山店 5階コミュニティギャラリー 富山市総曲輪3丁目8番6号
時 間 : 10:00~19:00
料 金 : 無料
今展は、大仏師松本明慶先生の仏像彫刻作品を中心とした木彫作品約40点の展観です。
《出品予定作家》
松本明慶 高橋勇二 高村光雲 平櫛田中 他
フライヤーに光太郎の父・光雲の「太子像」。光雲が得意としたモチーフの一つで、複数の作例が確認できています。ただ、画像だけでは、弟子の手が入った「工房作」なのか、光雲単独の作なのかは判然としません。
おそらく5月8日(水)~18日(土)、そごう大宮店さんで開催された同名の展観の巡回的な、同じ業者さんによるものだと思われます。
光雲の木彫、間近に見られる機会はそう多くありません。
ところで「光雲」「弟子」といえば、昨夜、地上波テレビ東京さん系でオンエアされた「開運!なんでも鑑定団」。番組予告欄に「上野&皇居前のアノ像を作った…<天才彫刻家作>ウマすぎる像」とあったので、てっきり光雲だと思って紹介したのですが、光雲ではなく、上野公園の西郷隆盛像の犬、皇居前広場の楠正成像の馬を手がけ、「馬の後藤」と呼ばれた後藤貞行の作でした。「ウマすぎる像」の「ウマ」は「馬の後藤」に引っかけていたのですね。気づきませんで、「そうだったのか、やられた!」という感じでした。
依頼品はその後藤作という馬の丸彫り。
以前に同じ番組で、レリーフや絵が出たことがありましたが、丸彫りは初めてではないでしょうか。
作者紹介のVはいつもどおり秀逸な出来でした。光雲にも触れて下さいました。
この「ツン」の部分は後藤の手になるものだ、と。
西郷像より前に楠公像制作の依頼があった際(いろいろあって除幕は西郷像の方が先でしたが)は、後藤は東京美術学校に勤務しておらず……しかし、馬の部分にはどうしても後藤の手を借りたい光雲は校長・岡倉天心に直談判。このエピソードは『光雲懐古談』に語られています。
そうして美校に雇ってもらった後藤ですが、だからといって妙な忖度はせず、光雲ともやり合いました。このあたり、気骨を感じますね。
「なるほど、そういうものか」と、後藤の方が折れましたが。
依頼品は、明治天皇に献上された南部馬「金華山号」に関わるもののようでしたが、そうだと断定できない、また、「おそらく後藤の作」としか言えないという点で金額は差っ引かれました。それでも高額の鑑定がつきました。
後藤貞行、もっともっと注目されていい彫刻家だと思います。
さて、富山大和さんの「近代木彫秀作展」。お近くの方、ぜひどうぞ。
【折々のことば・光太郎】
花巻滞在中にはレコードコンサートであのバツハの「ブランデンブルグ」をきいて感動したり、「モロツコ」の映画再演を見たりしました。十数年前見たデイトリヒを久しぶりで又見て、昔の映画情趣を味ひました。今日のアメリカのスリラアなどに比べると随分テムポののろいものですがやはりいいものがあります。芸術の世界では古いものににも価値が厳存するので面白くおもひます。
隠棲していた旧太田村から花巻町に出ると、賢治実弟の清六らとともに映画を観ることもしばしばでした。この際は、ゲイリー・クーパー、マレーネ・ディートリヒ主演の「モロッコ」。昭和5年(1930)公開のアメリカ映画でした。
「芸術の世界では古いものににも価値が厳存するので面白くおもひます。」そのとおりですね。
依頼品は、明治天皇に献上された南部馬「金華山号」に関わるもののようでしたが、そうだと断定できない、また、「おそらく後藤の作」としか言えないという点で金額は差っ引かれました。それでも高額の鑑定がつきました。
後藤貞行、もっともっと注目されていい彫刻家だと思います。
さて、富山大和さんの「近代木彫秀作展」。お近くの方、ぜひどうぞ。
【折々のことば・光太郎】
花巻滞在中にはレコードコンサートであのバツハの「ブランデンブルグ」をきいて感動したり、「モロツコ」の映画再演を見たりしました。十数年前見たデイトリヒを久しぶりで又見て、昔の映画情趣を味ひました。今日のアメリカのスリラアなどに比べると随分テムポののろいものですがやはりいいものがあります。芸術の世界では古いものににも価値が厳存するので面白くおもひます。
昭和22年(1947)10月24日 椛沢ふみ子宛書簡より
光太郎65歳
光太郎65歳
隠棲していた旧太田村から花巻町に出ると、賢治実弟の清六らとともに映画を観ることもしばしばでした。この際は、ゲイリー・クーパー、マレーネ・ディートリヒ主演の「モロッコ」。昭和5年(1930)公開のアメリカ映画でした。
「芸術の世界では古いものににも価値が厳存するので面白くおもひます。」そのとおりですね。