既に始まっている展示です。
状況をわかりやすくするため、『北海道新聞』さん記事から。
開催情報を。
状況をわかりやすくするため、『北海道新聞』さん記事から。
賢治、有島の初版本 100年の時超えて 道立文学館 特別展に200冊
道立文学館(札幌)で特別展「100年の時を超える」が開かれている。宮沢賢治の詩集「春と修羅」(1924年=大正13年)、有島武郎の訳した「ホヰットマン詩集」(2冊、21、23年)初版本など主に明治、大正期に出版された約200点を、外国文学、詩集、歌集・句集・川柳、小説など6項目に分けて展示している。
すべて道立文学館の所蔵。ケースに入って手にすることはできないが、主な作者や本の概要、装丁などについて解説文を付けている。
このうち外国文学では、米国の詩人ウォルト・ホイットマンの「ホヰットマン詩集」は、有島が翻訳と装丁を手がけた。表紙はホイットマンの手書きの原稿の写しの上に、表題を記した紙を斜めに貼っている。
貴重なのは宮沢賢治の「春と修羅」で、賢治の生前に刊行された唯一の詩集。萩原朔太郎の初詩集「月に吠える」(17年)は54編を収録し、病的で奇怪な感覚を描いて反響を呼び、日本の近代詩を代表する詩集となった。高村光太郎の第1詩集「道程」(14年)は初版本と白布装の「異本」があり、異本には高村直筆の書き込みがある。
このほか画家竹久夢二が装丁した吉井勇「源氏物語情話」(18年)、坪内逍遥の「新曲 浦島」(04年)、芥川龍之介の名作童話「杜子春」などを収めた豪華本「三つの宝」(28年)もある。
苫名直子副館長は「100年前の本に込められた作り手の思いとともに、200点を超える書籍を見て日本の近代文学のバリエーションの豊かさを感じ取ってほしい」と話している。
3月24日まで。月曜休館。一般500円、高大生250円、中学生以下と65歳以上無料。問い合わせは同館、電話011・511・7655へ。
開催情報を。
特別展「100年の時を超える ―〈明治・大正期刊行本〉探訪―」
期 日 : 2024年2月3日(土)~3月24日(日)
会 場 : 北海道立文学館 札幌市中央区中島公園1番4号
時 間 : 9:30~17:00
休 館 : 月曜日(ただし、月曜日が祝日等の場合は開館)
料 金 : 一般500(400)円、高大生250(200)円、中学生以下・65歳以上無料
( )内は10名以上の団体料金
今回展示されているという「異本」、これと同一のものか、あるいは川島氏が所蔵されていたものか(氏は入手なさったものも手許に置いておかないことが多いようなので)、という感じです。
ちなみに文語定型詩全盛だった当時の「詩集」という概念を突き抜けていた『道程』、売れ行きはさんざんで、光太郎曰く、きちんと版元から売れたのは七冊だけだったとのこと。現在残っているもののほとんどは光太郎から友人知己等に贈られたものと推定されます。
刊行翌年の大正4年(1915)以降、残本を改装して奥付を変えたものが何度か刊行され、国会図書館さんでデジタルデータとして公開されているものもこちらです。道立文学館さんで今回展示されているものは、同館の所蔵リストに依れば大正3年(1914)刊とのことですので、これではないでしょう。
他に宮沢賢治の『春と修羅』、北原白秋が『思ひ出』、薄田泣菫の『白羊宮』、吉井勇著・竹久夢二装幀『源氏物語情話』、萩原朔太郎『月に吠える』などが並んでいます。
文豪マニアの方など、ぜひどうぞ。
【折々のことば・光太郎】
この四日の朝山を降りて花巻に来ました、智恵子の祥月命日と亡父の十三回忌の法要を五日に当地の松庵寺といふ浄土宗のお寺で営みました。
光太郎、敬虔な仏教徒というわけではなかったのですが、この手の法要はほとんど欠かしませんでした。
明治・大正――この時代、西洋の制度や文化を取り入れて世の中が大きく変わり、今の我々の社会や生活の基盤がつくられます。多くの混乱を伴いながら急速な近代化への道を進む中で、本の世界にも当時の文学の新潮流や社会情勢が反映され、多種多様な書籍が出版されました。併せて装幀も抒情的な感性を示すもの、色鮮やかでモダンなものなどが次々と登場し、魅力が尽きません。
北海道立文学館では、貴重な初版本も含め、この時期に刊行された本を多数所蔵しています。1926年に大正が幕を閉じてから、100年が経とうとする今、近代日本の息吹を感じさせる本の数々によって、明治・大正という時代に思いを馳せていただければ幸いです。
フライヤーには画像がありませんが、光太郎第一詩集『道程』の通常版と「異本」と、二種類が出ているとのこと。
通常版は当方の書架にも一冊ありますが、紺色の紙の表紙です。
フライヤーには画像がありませんが、光太郎第一詩集『道程』の通常版と「異本」と、二種類が出ているとのこと。
通常版は当方の書架にも一冊ありますが、紺色の紙の表紙です。
今回展示されているという「異本」、これと同一のものか、あるいは川島氏が所蔵されていたものか(氏は入手なさったものも手許に置いておかないことが多いようなので)、という感じです。
ちなみに文語定型詩全盛だった当時の「詩集」という概念を突き抜けていた『道程』、売れ行きはさんざんで、光太郎曰く、きちんと版元から売れたのは七冊だけだったとのこと。現在残っているもののほとんどは光太郎から友人知己等に贈られたものと推定されます。
刊行翌年の大正4年(1915)以降、残本を改装して奥付を変えたものが何度か刊行され、国会図書館さんでデジタルデータとして公開されているものもこちらです。道立文学館さんで今回展示されているものは、同館の所蔵リストに依れば大正3年(1914)刊とのことですので、これではないでしょう。
他に宮沢賢治の『春と修羅』、北原白秋が『思ひ出』、薄田泣菫の『白羊宮』、吉井勇著・竹久夢二装幀『源氏物語情話』、萩原朔太郎『月に吠える』などが並んでいます。
文豪マニアの方など、ぜひどうぞ。
【折々のことば・光太郎】
この四日の朝山を降りて花巻に来ました、智恵子の祥月命日と亡父の十三回忌の法要を五日に当地の松庵寺といふ浄土宗のお寺で営みました。
昭和21年(946)10月7日 小盛盛宛書簡より 光太郎64歳
光太郎、敬虔な仏教徒というわけではなかったのですが、この手の法要はほとんど欠かしませんでした。