古美術・骨董愛好家対象の雑誌『小さな蕾』さん最新号の2024年2月号
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巻頭特集が「骨董を楽しむ 再再訪K氏コレクション」全28ページ。「K氏」というのは、記事自体を執筆なさっている古美術愛好家・加瀬礼二氏という方のようです。

古陶磁が中心ですが、光太郎の父・光雲の作も2点。
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まず、鋳金にして量産したと思われるレリーフの原型「因陀羅大将」。おそらく石膏でしょう。裏面には見覚えのある光雲の筆跡で「大正六年一月二日 試作」と書かれています。因陀羅大将は薬師如来十二神将の一柱で、元々インドの土俗信仰の神だったものが仏教に取り入れられたものです。十二、というわけで他の神将ともども方角や年月日などの干支に割り振られ、因陀羅大将は「巳」の担当です。

もう一点、こちらはブロンズで「聖徳太子孝養立像」。
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何が「孝養」かというと、父・用明天皇の病気平癒を祈願するお姿、というわけです。こちらもある意味伝統的な図題で、聖徳太子信仰とともに昔から作られ続けてきたモチーフです。

光雲も好んだというか、注文されることが多かったようで、木彫による複数の作例が確認できています。令和3年(2021)にはテレビ東京さん系の「開運!なんでも鑑定団」に木彫の像が登場、1,500万円の鑑定額がつきました。
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人気の図題と言うことで、ブロンズに写されたものが販売されています。現代の鋳造であればさほどの値段にはなりませんが、光雲生前に、光太郎実弟にして光雲の三男・豊周が鋳造を手がけたものであれば、そこそこの値がつくものです。『小さな蕾』さん掲載のものは大正9年(1920)、豊周鋳造だそうで、まさにこのタイプのものですね。

ちなみに筆者の加瀬礼二氏、令和3年(2021)9月号の同誌にも「高村光雲 聖徳太子像」という記事を寄稿され、他のタイプのブロンズ聖徳太子像をご紹介下さいました。

というわけで、『小さな蕾』2月号、ぜひお買い求めを。

【折々のことば・光太郎】

昨日は猛烈な吹雪で二丁も歩けないほどでした。もうもうとけむるやうな雪の粉が風景をまつたくかき消してしまひました。開墾にもまだ手がつきません。

昭和21年(1946)3月16日 宮崎丈二宛書簡より 光太郎64歳

いわゆる地吹雪というやつですね。前年秋から独居生活を始めた花巻郊外旧太田村、3月半ばでもこうなのか、と、新鮮な驚きだったようです。