たびたびご紹介しておりますアートオークション大手の毎日オークションさん。時折、光太郎や光太郎の父・光雲関連が出品されます。
9月7日(土)開催の「第608回毎日オークション 絵画・版画・彫刻」では、光太郎、光雲、そして光雲の師・東雲の孫にして、光雲に学んだ高村晴雲の作が出ます。 

第616回毎日オークション 絵画・版画・彫刻000

日  程 : 2019年9月7日(土) 10:30~
会  場 : 毎日オークションハウス 東京都江東区有明3-5-7
下見会 : 2019年9月5日(木)・9月6日(金) 10:00~18:00


まずは光太郎。短冊にしたためられた書です。

書かれているのは短歌で、以下の通り。

爪きれば指にふき入る秋風のいとたへがたし朝のおばしま

明治43年(1910)の雑誌『スバル』に発表されたものです。


昨年、明治古典会さん主催の七夕古書入札市の一般下見展観に伺った際、やはりこの短歌がしたためられた短冊を見ましたが、別のものでした。どうも光太郎自信作だったのか、求められることが多かったのか、繰り返し同じ短歌を揮毫したようです。

002

















金地絹本の短冊だそうですが、あまり保存状態は良くないようです。それでも予想落札価格は10万~15万。ただ、非常に味のある字で、もう少し行きそうな気もします。


続いて、光雲作品。

003

004



005

006


偽物というわけではありませんが、あくまで複製扱いとなるものです。


そして高村晴雲作品。

001

こちらは木彫。予想落札価格は20万~30万。これももう少し行ってもいいような気がします。光雲や東雲ほどのバリューがないということなのでしょうか。作品自体は穏健な作風の、非常にいいお顔をされた西王母です。

それぞれ、おさまるべきところにおさまってほしいものです。


【折々のことば・光太郎】

詩の翻訳は結局不可能である。意味を伝へ、感動を伝へ、明暗を伝へる事位は出来るかも知れないが、原(もと)の「詩」はやはり向うに残る。其を知りつつ訳したのは、フランス語を知らない一人の近親者にせめて詩の心だけでも伝へたかつたからである。

雑纂「訳書『明るい時』序文」より 大正10年(1921) 光太郎39歳


『明るい時』は、ベルギーの詩人、エミール・ヴェルハーレン(光太郎の表記では「ヹルハアラン」)が、妻のマルト・マッサンとの日々を謳った、いわばベルギー版『智恵子抄』。実際、のちの『智恵子抄』に収められた詩篇にその影響が見て取れます。

言わずもがなですが、「フランス語を知らない一人の近親者」は智恵子です。