何とも意外な系統の雑誌で光太郎特集を組んで下さいました。

別冊漢字館 Vol.112

2023年10月19日 株式会社ワークス発行 一般社団法人パズル検定協会監修 定価560円(税込)

特集 ある芸術家の愛と哀 高村光太郎
 アメリカ・フランスに留学し、ロダンに傾倒した彫刻家の高村光太郎。詩人としてもすぐれた作品を数多く残し、特に妻・智恵子との日々を描いた『智恵子抄』は、時代を超えて愛され続けています。今回の特集は、今年で生誕140周年を迎えた日本の芸術家『高村光太郎』です。
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表紙を見てわかるとおり、漢字ナンクロの専門誌です。「ナンクロ」は「ナンバークロスワードパズル」の略で、熟語の一部を構成する複数のマスに書かれているナンバーが同じであれば同一の漢字が入る、というのが基本ルールです。

例えば表紙のこの部分。17のマスにはどうやら「会」が入りそうです。「会談」「会合」「入会地」……。すると下の方の「立×○」は「立会○」。となると「立会人」で、11のマスは「人」かな……というふうに埋めてゆくものです。
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この手のパズルが全45問掲載されています。おおむね見開き2頁で1問。一部、片袖折を使って見開き4頁という巨大なものも。

これでどうやって光太郎特集を組むのかと思ったら、45問中の3問で、みごとに光太郎にからめて作成されていました。

第35問が「正統派ナンクロ」。詩「道程」を使って、枠外にボナンザ(ヒント)。それで全66文字中の18文字がわかりますので、あとはそれを手がかりに……というわけです。
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第34問は、「スケルトン風」。こちらは埋まるべき熟語がいくつか提示されており、それを糸口に、という構成です。「智恵子」やら「白樺」やらを配し、「いやー、うまいな」と感じました。
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上記2問、まだ暇がなくて取り組んでいませんが、次にご紹介する第33問のみ、解いてみました。こちらは「大マス入り」だそうで。「なんじゃ、そりゃ?」と思ったら、「中央の大マス「高村光太郎」は、いずれか1文字が隣り合うマスとつながって熟語になります」とのこと。つまり、こういうことですね。
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「高村」の「村」と、右下の2マスで「村役場」となるわけです。こういうタイプもあるんだ、と感心しました。ただし、上記2問と異なり、ヒントはこの部分だけです。

この第33問だけ、解いてみました。悪戦苦闘すること約50分で完成。「中級」と謳われており、50分というのは早いのか遅いのか、何ともわかりませんが。ものすごく難しい漢字は使われていませんでした。しかし、熟語としては広辞苑レベルの辞書でないと載ってないんじゃないの? というものもあったり、もっと長い熟語の一部として含まれるけど、この二文字だけでは使わないぞ、というのもあったりして苦労しました。また、この2文字とこの3文字で5字熟語にするかぁ? というものも。50分かかった負け惜しみですが(笑)。

そして、全3問とも、「全部解けたら、チェック表から抜き出した文字で、高村光太郎と縁のある3つの言葉を言葉を作って下さい」。
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第34問と第35問はまだ手をつけていないのでわかりませんが、第33問では、できあがる3つの言葉も上手くつながっていまして、舌を巻かされました。光太郎は「○×▲」の「●□」に「■△」した、という感じです。詳しく見ていませんが、懸賞もついており、この部分を書いて応募するのでしょう。

問題の難易度等に応じていろいろコースがあるようで、最高は「現金10,000円」。その他「万能電気鍋」だの「防災多機能ラジオ」だのに混じって、岩波文庫版『高村光太郎詩集』も。思わず「いらねーよ!」と呟いてしまいました(笑)。すみません(笑)。
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というわけで、ぜひお買い求めの上、チャレンジしてみて下さい。当方の行った新刊書店さんでは、平積みになって置いてありました。

【折々のことば・光太郎】

おてがみで御申越の玉子の事はむしろ子供達におあげ下さい。今日は大人よりも子供等を一層大切にせねばなりません。次代の為にはすべてを捧げるやうにしたいと思つてゐます。


昭和17年(1942)5月15日 石黒しづえ宛書簡より 光太郎60歳

戦時下での食料不足の折、「卵を送りましょう」という申し出に対しての断りです。遠慮する理由がいいですね。壮年期から老境の光太郎、こうした若い世代への心遣いは一貫して持ち続けました。