昨日はぶらりと銚子犬吠埼に行って参りました。ほぼ生活圏なのですが、最近はあまり銚子に所用も無く、久しぶりでした。

ふと、新鮮なネタを使った寿司が食べたくなったというのもあるのですが、今年1月に廃業となった旅館・ぎょうけい館さんの現状を見ておこうと行った次第です。SNS上で解体している、という情報が出ていまして……。

ぎょうけい館さん、元は漢字で「暁鶏館」と書き、明治7年(1874)創業の老舗でした。大正元年(1912)夏には前年に知り合った光太郎智恵子が宿泊、愛を確かめ合いました。光太郎、この年の12月には、雑誌『朱欒』へ、後に『智恵子抄』に収めた詩「郊外の人に」を発表、その中で「わがこころは今大風の如く君に向へり」と高らかに宣言しています。

また、ここで働いていた知的障害のあった青年を主人公に「犬吠の太郎」という詩も作りました。
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その後、経営が代わり、建物も創業当時のものはとっくに建て替わっていましたが、「ぎょうけい館」の名は受け継がれてきていました。

当方、宿泊したことはありませんでしたが、食事を摂ったことはあり、また、各種打ち合わせ等でロビーを使わせていただいたことも。

やはりコロナ禍が大きかったのでしょう、1月に閉館となりました。

そして昨日の様子。工事関係の皆さんはちょうど昼食休憩だったようでした。
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「はーーーーーー」という大きなため息が……。「色即是空」「諸行無常」とは申しますが……。

明治期に作られ、生け簀として使われていた波打ち際の石組みはそのまま。
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そちらから見た犬吠埼灯台
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逆に灯台側から見たぎょうけい館址。
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「ふーーーーーー」と、再び大きなため息……。

更地にして、今後、どうなるのか、ネットで情報を探してみましたが見つかりませんでした。更地にしておくのではなく、なにがしかの活用がなされてほしいもので、さらに「暁鶏」の名も残していただきたいものです。

隣接していた「磯屋」さんという大きなホテル(こちらには当方、何度か宿泊しました)は数年前に廃業、しかし、「銚子グランドホテル」として再オープンするなど、明るい兆しも見えます。今後に期待したいところです。002

【折々のことば・光太郎】

今度「造型美論」といふ本を出しましたから別便でお送りします。一応御覧下さい。


昭和17年(1942)2月3日 
田村昌由宛書簡より 光太郎60歳

『造型美論』はこの年1月、筑摩書房から刊行された美術評論集です。書き下ろしではなく、かつて雑誌等に発表したものの集成。前年には同じ趣旨の『美について』を道統社から上梓しており、そちらの売れ行きがけっこう良かったようで、二匹目のドジョウを狙ったようです。