都内で開催中の企画展です。

楽しい隠遁生活―文人たちのマインドフルネス

期 日 : 2023年9月2日(土)~10月15日(日)
会 場 : 泉屋博古館東京 東京都港区六本木1丁目5番地1号
時 間 : 午前11時 ~ 午後6時 金曜日は午後7時まで開館
休 館 : 月曜日、9月19日(火)、10月10日(火)
      9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館
料 金 : 一般1,000円 高大生600円 中学生以下無料

 安らぎと自由の追求。
 忙しない俗世を離れ、清雅な地での隠遁生活を送りたいと願うのは、超高速の情報が飛び交う現代社会に生きる私達ばかりではありません。むかしの人たちも政治や社会のしがらみから逃れ、清廉な生活にあこがれたがために、自ら娯しみ遊戯の精神を忘れず、自由を希求する「自娯遊戯」の世界を描いた絵画や工芸品を求めたりしました。そのために、東洋の山水画には、生き方の理想や文学的なテーマが隠されていることが少なくありません。そこには、田舎暮らしのスローライフを求める「楽しい」隠遁から、厳しい現実を積極的に切り抜ける「過激な」隠遁まで、実に多種多様な隠遁スタイルが見いだせます。
 本展は、理想の隠遁空間をイメージした山水・風景や、彼らが慕った中国の隠者達の姿を描いた絵画作品とともに、清閑な暮らしの中で愛玩されたであろう細緻な文房具なども併せて展示いたします。中国の士大夫や日本の文人たちが抱いたマインドフルネス(安寧な心理状態)に触れることで、暮らしを楽しむ生の充実の一助となれば幸いです。

同時開催:特集展示「住友コレクションの近代彫刻」
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メインの「楽しい隠遁生活―文人たちのマインドフルネス」ではなく(そちらはそちらで優品がいろいろ出ているのですが)、同時開催としてひっそり行っている特集展示「住友コレクションの近代彫刻」で、光太郎の父・光雲作の「楠木正成銅像頭部木型」(明治26年=1893)が出品されています。

その名の通り、皇居前広場に立つ「楠木正成銅像」の頭部の木型です。像自体が巨大なものですので、頭部のみとはいえ、像高70㌢ほどの大きなものです。当方、平成14年(2002)に茨城県近代美術館さん他を巡回した「高村光雲とその時代展」、平成30年(2018)に小平市平櫛田中彫刻美術館さんで開催された「明治150年記念特別展 彫刻コトハジメ」で拝見しました。

元々「楠木正成銅像」は、住友家の別子銅山開坑200周年という意味合いもあって奉納され、その関係でこの作品が住友コレクションに入っています。頭部以外の木型は行方不明となりました。
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他に光雲高弟の一人、山崎朝雲や東京美術学校での光雲の同僚にして盟友・石川光明、光太郎と交流のあった木内克の作なども出ています。
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また、「住友コレクションの近代彫刻」に絞った記念講演会も開催されます。

講師:野城今日子氏(渋谷区立松濤美術館学芸員) 定員:50名(予約制)

ぜひ足をお運び下さい。

【折々のことば・光太郎】

今日碑文の石刷り到着、彫刻の早く出来たのに驚きました。 文字の拙さは汗顔の至りでありますが、石屋さんの彫刻は大層やはらかにうまく彫れたと感心しました。 今部屋にかけて眺めて居ります。


昭和11年(1936)11月19日 宮沢清六宛書簡より 光太郎54歳

この年、宮沢家の依頼で揮毫した「雨ニモマケズ」詩碑の拓本が届けられたことに対する返信です。同碑は全国に数ある賢治碑の第一号です。

石屋さん」は今藤清六。昭和21年(1946)、詩碑の誤字脱字の追刻の際にも鑿を振るいました。