全日本合唱連盟さん主催の全日本合唱コンクール。今年は第76回となり、全国大会は10月から11月にかけ、小学校部門で福岡県、中高部門は香川県、大学職場一般部門が新潟県で、それぞれ開催されます。
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7~8月に都道府県大会、9~10月には支部大会(北海道、東北、関東……)があり、それぞれを勝ち抜いて全国への切符が手に入ることになります。
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やはり主催に入っている『朝日新聞』さんの各都道府県版で、都道府県大会の結果等が報じられ続けています。そのうち、神奈川大会高校部門について。

6団体が関東大会へ 県合唱コン、高校A・B /神奈川県

 第66回神奈川県合唱コンクール(県合唱連盟、朝日新聞社など主催)の高校A、B部門が19日、横浜市西区の県立音楽堂であり、計21団体が出場した。
 関東大会常連で全国大会出場全国大会出場を目指す日本女子大付属高校は、課題曲「Salve Regina」、高村光太郎作詩の「亡き人に」を歌った。部長の伊藤優梨愛さん(3年)は「課題曲ではラテン語に挑戦した。巻き舌や母音の時の口の開き方が日本語とは違って、難しかった。」
 金賞、そして関東大会出場権を得たが、「今日の歌は未完成。自由曲の方は、もっとみんなと歌詞の解釈を話し合って、関東大会ではより深みを出したい」と表情を引き締めた。
 高校部門では、系6団体が9月に水戸市で開かれる関東大会への出場を決めた。結果は次の通り(◎は県代表)。
 【高校A】金賞 ◎日本女子大、◎海老名、◎神奈川学園、◎清泉女学院、▽銀賞 多摩、鵠沼、相模女子大、青山学院横浜英和、中央大横浜▽銅賞 相模原中等教育、相模原弥栄、生田、洗足学園、麻生総合、慶応湘南藤沢▽奨励賞 法政二、麻溝台、大船、湘南台
 【高校B】金賞 ◎湘南、◎桐光学園

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画像は高校B部門(出演人数33名以上)金賞の湘南高校さんですが、同A部門(6名以上32名以下)では日本女子大付属高校さんが金賞。自由曲で「高村光太郎作詩の「亡き人に」を歌った」とあります。

「亡き人に」は、おそらく鈴木輝昭氏作曲の「女声合唱とピアノのための組曲 智恵子抄」と思われますが、違っていたらごめんなさい。この組曲は智恵子の母校・福島高等女学校の後身である県立橘高等学校合唱団さんの委嘱作品です。同団、全3曲のこの組曲から1曲ずつ自由曲として選曲し、平成21年(2009)から3年間、全日本合唱コンクール全国大会に出場し上位入賞しています。また、神奈川の清泉女学院さんも平成26年(2014)の同大会で「亡き人に」を自由曲に選定し出場、金賞を受賞されました。

   亡き人に005

 雀はあなたのやうに夜明けにおきて窓を叩く
 枕頭のグロキシニヤはあなたのやうに黙つて咲く

 朝風は人のやうに私の五体をめざまし
 あなたの香りは午前五時の寝部屋に涼しい

 私は白いシイツをはねて腕をのばし 
 夏の朝日にあなたのほほゑみを迎へる

 今日が何であるかをあなたはささやく
 権威あるもののやうにあなたは立つ

 私はあなたの子供となり
 あなたは私のうら若い母となる

 あなたはまだゐる其処そこにゐる
 あなたは万物となつて私に満ちる

 私はあなたの愛に値しないと思ふけれど
 あなたの愛は一切を無視して私をつつむ

詩は智恵子が亡くなった翌年の昭和14年(1939)、雑誌『新女苑』に発表されました。
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光太郎の手元に残された控えの原稿によれば、制作日は7月16日。7年前の7月15日、智恵子は睡眠薬アダリンの大量服用で自殺未遂を起こしました。「今日が何であるか」はそのあたりに関わるような気もします。

グロキシニヤ」は、光太郎にとって、智恵子との様々な思い出を象徴する花ですね。詩の右に載せた画像は、当方自宅兼事務所のグロキシニア。今年6月に撮影した画像です。残念ながらもう花は散ってしまっています。

さて、合唱コンクール関東大会は茨城県の水戸市民会館さんで9月16日(土)の開催。日本女子大付属高校さんには、ぜひとも全国大会出場を果たしていただきたいものです。『朝日新聞』さん記事には「自由曲の方は、もっとみんなと歌詞の解釈を話し合って、関東大会ではより深みを出したい」とあり、こういう取り組みも大切だと存じます。そして、若い世代にも光太郎智恵子の世界が受け継がれていってほしいものです。

【折々のことば・光太郎】

此を書いてゐるうちにもちゑ子は治療の床の中で出たらめの嚀語を絶叫してゐる始末でございます、看護婦を一切寄せつけられぬ事とて一切小生が手当いたし居り殆ど寸暇もなき有様です、御無沙汰の失礼平におゆるし下さい、


昭和9年(1934)12月28日 中原綾子宛書簡より 光太郎52歳

半年あまり預けていた九十九里浜の母と妹夫婦の元から、心を病んだ智恵子を再び連れ戻しました。翌年2月末に南品川ゼームス坂病院に入院させるまで、光太郎にとって(智恵子にとっても?)地獄のような日々が続きます。