地方紙『福島民友』さんから。

日本人は星より月の文化 渡部潤一さん「季節ごと違い楽しんで」

000 国立天文台上席教授の渡部潤一さん(会津若松市出身)は17日、福島市で「日本人はいかに宇宙を愛(め)でてきたか」と題して講演し、日本人の宇宙への向き合い方について解説した。
 国際天文学連合(IAU)の「アジア太平洋地域の天文学に関する国際会議(APRIM)」が7~11日に郡山市で開催されたことを記念し、県文化振興財団が企画した。
 渡部さんは「日本は季節感が明瞭なため、方位や季節を知る目的で星を見る必要がなかった」とした上で「日本人は星よりも月の文化」と紹介。小説や短歌にも月が登場することに触れ「季節ごと、時間ごとの月の違いを楽しみ、積極的にめでてほしい」と語った。
 月への信仰にも触れ、江戸時代、旧暦23日と26日に人々が集まり、寝ずに月の出を待ち祈る「月待ち行事」が流行したと説明。県内にも行事を記念して造られた月待ち塔が数多く残るとし「オールナイトで大宴会したようだ。楽しみの一つだったのだろう」と思いを巡らせた。
 渡部さんは「県内は天文施設も充実しており、日新館天文台跡(会津若松市)などの貴重な史跡も残っている」と解説。詩人高村光太郎の詩集「智恵子抄」の「ほんとの空」を例に挙げ「福島にはほんとの夜空がある。月や星を見上げ、自由に思いをはせてほしい」と話した。

この講演会、福島県歴史資料館さんで開催中の企画展示「収蔵資料展 空を眺めて-江戸・明治時代の天文・大気現象など-」の関連行事だったとのこと。
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福島ご出身の渡部氏、昨年やはり福島市で開催された「写真展 138億光年宇宙の旅」(同氏ご監修)で「ほんとの空」の語を使って下さいましたし、郡山市ふれあい科学館さんで過去6回開催された「ふくしま 星・月の風景 フォトコンテスト “ほんとの空”のあるふくしまの星・月の風景をあなたの感性で捉えて下さい。」で審査員を務められたりもなさいました。

今後とも福島の「ほんとの空」の伝道師として、ご活躍を祈念いたします。

【折々のことば・光太郎】

ちゑさんの病気はどうか気ながに御看護下さい。今度は二十一日に参上いたし一泊御厄介になつて二十二日に帰京したいと存じてゐます。薬もその時持参します。父の方は今の処かはりありません。


昭和9年(1934)5月16日 長沼セン宛書簡より 光太郎52歳

心の病の療養のため智恵子を預けた九十九里の智恵子実母宛。「」はホルモン剤の「オバホルモン」。ほとんど効果はなかったのではないかと思われますが……。「父の方」は、光太郎の父・光雲が胃潰瘍で帝大病院に入院していたことを指します。
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