昨日は、六本木の国立新美術館さんに行っておりました。ご案内を頂いておりました第38回日本教育書道藝術院同人書作展拝見のためです。
関東甲信は昨日、梅雨明け。強い日差しでしたが、東京メトロ千代田線の乃木坂駅からほぼ直通で行けますので、助かります。
受付にて図録を購入。
展示室には力作がずらり。
さすが都心。平日にもかかわらず、それなりに観覧の方がいらっしゃいます。
ご案内を下さった菊地雪渓氏。今年の連翹忌に初めてご参加下さいました。なんと、最優秀にあたる「会長賞」を受賞なさっていました。
題材は「智恵子抄」などの光太郎詩6篇。半切8枚を使った堂々たる作品です。
流れるようでいて、力強さも感じられる筆跡。余白の使い方にも妙味を感じます。光太郎詩にふさわしい書法、筆法といえましょう。どこか、光太郎自身の書にも通じるような。
他にも光太郎詩を取り上げて下さっている方が複数いらっしゃいました。
「山からの贈り物」(昭和24年=1949)。花巻郊外太田村での蟄居中の詩です。
「あれが阿多多羅山/あの光るのが阿武隈川」のリフレインが有名な「樹下の二人」(大正12年=1923)。やはり「智恵子抄」収録作品です。
そして、会場では見落としてしまっていましたが、「晴天に酔ふ」(昭和12年=1937)。
ありがたいかぎりです。
また、与謝野晶子や北原白秋など、光太郎と交流の深かった人々の詩歌文も数多く取り上げられていました。さらに現代詩や童謡、J-POPの歌詞などを書かれている方もいらっしゃり、「へえ」という感じでした。そういう意味でも拝見していて楽しい展覧会でした。無論、それぞれの出品者の方々の美しい文字あってこそですが。当方、書の公募展というのは初めて拝見しましたが、こういう楽しみ方もあるのだな、と思いました。
こうした公募展等、大小さまざま常に各地で開催されていると存じますが、日本語としての美しさを存分に湛える光太郎詩文、どんどん取り上げていただきたいものです。また、数は少ないのですが、智恵子の詩文にも面白いものがありますし。書家の方々、よろしくお願い申し上げます。
展覧会は7月8日(日)迄の開催です。ぜひ足をお運びください。
【折々のことば・光太郎】
紐育には秋風は吹けども萩の葉の音もなく、透きとほりたる空の色のみ唯おなじながめに御座候。此地にありては何分にも余暇なく未だに何も御送り致さず候へども、此十一月中には何か御届け致さむ心組に候へば御諒承下されたく候。
散文「演劇学校」より 明治39年(1906) 光太郎24歳
留学先のニューヨークから、与謝野夫妻の『明星』に寄せた文章の末尾です。現在も続くライシーアム劇場附属の演劇学校などについての書簡体で書かれたレポートですが、遠い異境の地での青年期の気概や、「萩の葉」云々からはホームシック的な感傷も読み取れます。