週に1~2冊、古書店から目録が届きます。通販用の在庫カタログといった位置づけです。今ほどインターネットが普及していなかった時代には、地方在住者としては非常にありがたいものでした。昨今は古書店もネット販売を取り入れているところがほとんどですが、紙の目録もまだまだ役に立つものです。
先日、本郷の森井書店様から届いた目録。80ページ中の約50ページがカラー版で、近代作家の肉筆ものなどが多数載っており、見ているだけでも楽しいものです。

ちなみに上の画像は表紙ですが、上から順に横光利一の草稿、岡本かの子・一平合作の短冊とかの子の草稿、永井荷風の書簡です。
残念ながら、どうしても必要なものは載っていなかったので注文しませんが、「ほう」と思ったものが何点かありました。
まず、識語署名入りの龍星閣版『智恵子抄』。

見返しに短歌「わが為事(しごと)いのちかたむけて成るきはを智恵子はしりき知りていたみき」がペン書きで書かれています。「光」の署名も。この短歌は『智恵子抄』に収められた「うた六首」の中の一つ、有名な作品です。筆跡的に光太郎のもので間違いありません。
本自体は、函がしっかりついていますが、重版なので、この識語署名がなかったら1,000円ぐらいのものです。しかし、この識語署名があることによって売価380,000円。妥当な値段かな、と思います。ここまでしっかり有名な短歌が書かれているという点では、識語署名というより、一つの書作品に近いといえるでしょう。美術館や文学館の企画展などで展示されてもおかしくないものです。
有り余るほどの資産があれば購入するのですが、そうもいきません。どなたか心ある方の手元に行ってほしいものです。
他にも数点、「ほう」と思うものがありましたが、ブログのネタかせぎのため、明日に回します。
【今日は何の日・光太郎】4月30日
昭和30年(1955)の今日、結核のため、赤坂山王病院に入院しました。
7月には小康状態となり、退院していますが、もはや手の施しようはなかったようです。